トライアルを始めましょう
トライアルは、はじめた人の多くが、長くずっと楽しんでいます。だからきっと、とってもおもしろいモータースポーツなのです。一番年長の方では、なんと80歳になってもトライアルを楽しまれています。誇張ではなくて、一生続けられるモータースポーツです。
それでも、けっして簡単にはじめられるスポーツともいえません。少なくとも「トライアル、おもしろそうだなぁ、どうしようかなぁ」と思っている人には、なにから手をつけていいのか、さっぱりわからないにちがいありません。
というわけで、自然山通信的「トライアルを始めましょう」講座です。トライアルを始めたいけどどうしたらいいのかわからないという人のためのトライアル入門ガイドです。
ここに紹介した方法以外にも、もっといい入門方法があるかもしれませんが、ひとつの目安として、ご活用ください。
いつか、トライアルの現場で、お会いできることを楽しみにしています。
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2005年01月09日
トライアルって、なんだ?
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トライアルとは、オートバイの操縦技術そのものを競うモータースポーツです。
ロードレースでもモトクロスでも、ライダーは適確にオートバイをコントロールしています。だけど勝負は、オートバイのコントロール技術を使ったその結果の、スピードで決まります。トライアルでは、コントロール技術がこのスポーツの主役なのです。トライアルが、あらゆるモータースポーツの基礎という言われ方をすることがありますが、オートバイのコントロール技術を徹底的に要求されるゆえに、技術的に基本から高度なところまで、学ぶことができるからです。
一方、トライアルはとてもむずかしいという概念があります。トライアルがオートバイの基礎である割には、トライアルはむずかしくて、オートバイ初心者にはすぐにはとけこめないところがあるのも事実です。
初心者にすれば、ロードレースやモトクロスをかじるだけなら、たいていのコースは、自分のペースでそれなりに走れちゃいます。トップライダーが1分で回るところを10分かかったとしても、同じところを走ることが可能です。ところがトライアルでは、トップライダーと同じところなどまったく不可能。そればかりか、ごく初級といわれている簡単そうなところでも、トライアル技術を基礎からひとつひとつ身につけていかないと、歯が立たないことがよくあります。
トライアルというと、競技としてのモータースポーツを意味することが多いのが現実ですが、広い意味のトライアルは、オートバイのコントロールを意識するということ、そのものではないかと考えます。なんとなく走らせていたオートバイ、その操縦方法についてじっくり研究し訓練してみようと思う気持ちが、トライアルライディングの第一歩だと思います。
さぁ、今この瞬間から、あなたのトライアルは、始まります。
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2005年01月10日
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トライアルマシンというもの
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トライアルをするなら、トライアルマシンが必要です。ここでは、あえてそう言い切ってしまうことにします。
今持っているオフロードマシンでトライアルできないかと考えている人もいるかもしれませんが、トライアルの訓練をするのに、オフロードマシンは、あんまりお勧めできません。初歩の初歩ならもちろん充分楽しむことができますが、ちょっと上達してその先へ進もうと思えば、マシンが重たくて大きいので、なかなか上達しないし、けがも心配です。
ただし、オフロードマシンでオフロードに走り慣れておくことは、トライアルをはじめるうえでもけっして遠回りではありません。トライアルといっても、まったく特殊なことをするわけではなく、基本通りにオートバイを走らせるだけですから、いわゆるトライアル訓練らしい練習をする前に、オフロードを走るのに慣れておくのは、たいへんに意味があることです。
オフロードマシンで上手にトライアルを楽しむ人はたくさんいますが、そういった人は、ほとんどみなトライアル経験がある人たちです。上手な人のまねをすると痛い思いをするのはどんなスポーツにも共通ですが、オフロードマシンでのトライアルはその傾向も顕著ですから、ご注意ください。オフロードマシンのトライアルについては、お勧めできる環境ができたらあらためて紹介します。
で、トライアルマシンですが……
で、トライアルマシンですが、予算の許す限り新しい、程度のいいものを見つけてください。修理の手間もないですし、各部の動きもしっかりしているという点で新車が一番いいのですが、トライアルマシンは季節もので、あたたかいシーズンになると、在庫がなくなっていることも少なくありません。
そこで、価格的にも中古マシンを手に入れるという選択が多くなると思います。上手な人、選手権を戦っている人はシーズンが新しくなる時にマシンを新しく切り替えますから、毎年11月ごろから2月ごろまでは、市場に中古車が多く出る季節です。この季節をはずすと、中古車のタマも少なくなります。
中古マシンの情報は、仲間の情報網を利用するか、自然山通信の売買欄などを参照します。個人売買だと流通価格は安めですが、信頼のおけるショップを通じて購入すれば、マシンのコンディションも安定しているし、その後の維持にも相談に乗っていただけると思います。値段が魅力(安いという意味)でも、あまり古くて程度の悪いマシンは、乗るよりも修理するのに忙しくて上達が遅くなるだけじゃなく、修理費もかさみ結局高い買い物になったという事例が多くあります。もちろん、古くてもきちんと整備されたマシンは、充分に一線級のポテンシャルを発揮する、素晴らしいトライアル練習マシンとして機能してくれるはずです。
日本のメーカーは、2006年現在トライアルマシンを作っていません(そして2009年現在もやはり日本製のトライアルマシンはありません)。ホンダのマークのあるマシンはスペインのモンテッサと同じで、日本の設計ですがスペインで作られています。一部の全日本トップライダーが乗っているヤマハは、フランス製のスコルパというマシンそのものです(ただしヤマハの技術が加わって、いろいろなモディファイが施されています)。モンテッサのエンジンは日本製(2005年現在)、スコルパのエンジンはヤマハ製ですが、マシン全体の組みあげは、ヨーロッパの工場で行われています。
これからトライアルを始める方は、日本製以外のマシンに違和感を感じるかもしれません。確かに、日本製品の常識では考えられない設計がされていることもあります。しかし機械に詳しい方も詳しくない方も、多くの方がすでに外国製トライアルマシンでトライアルを楽しんでいます。トライアルを始めるとともに、外国製マシンとのつきあいも、検討してみてください。
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2005年01月11日
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トライアルマシンって、特殊なの?
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昔は、トライアルマシンとほかのジャンルのオートバイとは、そんなに特別ちがうスタイルをしていませんでした。でも今は、性能がどんどんあがってきて、スタイルもトライアルマシンならではのものになっています。
世の中にはいろんなオートバイがありますが、トライアルマシンの不思議な形は、トライアルに興味がある人でも、やはりかなり違和感のあるもののようです。ましてやトライアルを知らない人にとっては、理解できない形をしている乗り物、としてうつるようです。でもそのすべてが、しっかり意味があるかたちなのです。
まずシートがないこと。ハンドルがまっすぐで広いこと。細かく見れば、チェンジペダルに足が届かないことなども特殊です。タイヤとエンジンは、これでもかというほどの低速でのグリップ力を発揮します。
日本製がほとんどないので、みんな輸入車ばかりで、すこし高価なのと、ふだんの足に使えないというところは残念。つまりは、競技用のスペシャルマシンなのです。
シートがないのは、スポーツの道具として、必要がないからです。マシンを自由にコントロールするため、シートに座らず、フットレストに立ってマシンを操縦します。厚いシートは、ボディアクションをさまたげるので、ついていないのです。反面、シートに座ってどこかに移動する道具としては、使いにくいものになっています。
広いハンドルバーは、荒れた路面を安定して走れるように、押さえやすい幅になっています。ライダーの好みにより、左右幅は750mm〜820mmとなっています。
タイヤは、競技では前輪はバイアスタイヤ、後輪はラジアルタイヤを使います。タイヤはゴム質も柔らかく、石などを包み込むようになっています。そして全体も柔らかく、地形に合わせて、変幻自在に形を変えて、グリップ力を生み出しているわけです。
エンジンは、数値上のパワーはたいしたものではありませんし、トライアルマシンでは、もっとも大きくても300cc程度の排気量なので、ほかのカテゴリーのマシンに比べると、パワフルとは言えません。しかしトライアルマシンのパワーは、ごくごく低速、あるいはスピードがまったくゼロのところから一気に発揮されるので、そのパワフルぶりは誰でもトライアルマシンに触れたとたんに感じることができるでしょう。不用意に発進スタートをしようものなら、いきなりロケットのような加速をしますから、要注意でもあります。
足の届かないチェンジペダルは、意地悪をしているわけではありません。フットレストに乗せた足で、簡単に操作ができる位置にチェンジペダルがあると、トライアル走行中に、不用意にチェンジ操作をしてしまうおそれがあります。場合によってはこれはたいへん危険なので、わざわざ遠い位置に設定してあります。トライアルでは、ロードレースやモトクロスのような、ひんぱんなギヤチェンジをおこなわないというのも、このチェンジペダルの位置を実現している理由です。
その他、各部が徹底的に軽量化されていて、スリムですが、これらはトライアル競技に特化した性能の現れです。
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2005年01月11日
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トライアルテクニックとは?
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トライアルを始めるにあたって、あんなことがやりたい、こんなことがやりたいという希望があると思います。昔っから、身につけたいテクニックの第一位はウイリー。30年前には、オートバイでの華麗なテクニックといえば、ほとんどウイリーしかなかったものなのですが、30年たって、ウイリーそのものがそれほど目ぼしいテクニックでなくなっても、初心者、素人、初級者にとって、そうおいそれとはまねができないテクニックであるのには変わりません。
最近では……
最近では、ジャックナイフをマスターしたい、ホッピングができるようになりたいという人も多いようです。でもさすがに、藤波選手みたいに世界選手権のセクションを華麗に走りたいという人はいない模様。それは無理だと、悟っているんでしょうね。
これらと並んで人気のテクニックが、障害物越えです。いわゆるステアケース。前輪を宙に浮かべたまま走り、また段差を越えていく。ふつうのオートバイライディングではなかなかお目にかかれないので、トライアルをはじめるからには習得したいテクニックとなると思います。どちらも重要なトライアルテクニック。トライアルでは、前輪が宙に浮いていることが多いので、このコントロールのためにもウイリーテクニックは大事です。
障害物を越えるテクニックも、一言では語れないほど、たくさんあります。岩の形や状況に応じて、いろんなテクニックを使い分けます。実際にやるのも、解説するのも理解するのも、ちょっと高等テクニックとなります。
それでもはじめに学ぶべき基本としては、ターンのテクニックがあります。いっぱい切れるトライアルマシンのハンドルをめいっぱい切ったまま、くるくるとまわります。ターンはウイリーや障害物越えに比べると地味なテクニックですが、絶対に必要なテクニックであり、奥の深いテクニックです。
ウイリーや障害物越えなどに比べると地味だし、練習していても地味感があるので(でもものすごく汗かきます。そして、つぼがわかってくると、はまります)、人気のあるテクニックとはいえません。しかしそのせいなのか、トライアルを始めたばっかりでターンが上手という人はほとんどいません。これ、もっとしっかり練習した方がいいテクニックです。
さらにこういうアクションの基本には、静止した状態で安定して立っていられるスタンディングスティルというテクニックがあります。トライアルがオートバイに立ち続けて乗るスポーツですから、スタンディングスティルを学びながら適切なライディングフォームを学ぶことが、重要な基礎訓練となるかもしれません。
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2005年01月11日
大会への参加
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始めたばかりの人は、大会に出ましょうと誘うと「まだまだ早いです」と尻込みします。にはとってもむずかしいものです。でも大会は、いろんなことを教えてくれます。
トライアルの右も左もわからないうちは、練習方法もなかなかわかりにくいもの。自己流で練習に精を出すのも悪くないですが、やってることに行き詰まったり、やってることが正しいかどうか自身がなくなったりすることはないでしょうか。自分の身の丈にあった大会に出ることで、自分のレベルを確認することができます。それがトライアル大会に出場する大きな意義です。
実際にセクションを走ることで、自分の弱点や長所が見えてきます。同じような成績で回っているAさんより、自分はここはへたくそでここはじょうず。だったら、へたくそなところを勉強したら、次はAさんには勝てるのではないかという観察ができれば、上達も約束されたようなものといえます。
セクションの作り方も、参考になるかと思います。練習をするにも、なんの練習をしたらいいのかわからない人は多いはず。大会のセクションの作りを覚えておいて、それを練習していけば、自己流で練習を重ねるより、上達ははるかに早いはずです。
どんな大会に出場するかは、充分吟味してください。簡単すぎる大会に出場すると、あまり吸収するものもなく退屈かもしれません。でも、むずかしい大会に出場してしまうと、走っていてぜんぜん楽しくないばかりか、けがをしてしばらく乗れないなんてことにもなりかねません。それなら、一度下のレベルのクラスに出場して、レベルを確認してステップアップした方が、結局早道ということになります。
どんな人がどんな大会に出ればいいかは、実は自然山通信でもなかなか把握はできていません。そういう前提のもと、お迷いの方がいらっしゃれば、ご相談ください。
そして実は、一番大きな意味を持つのが、草大会でお友だちができることです。友だちを作るのが得意な人も得意じゃない人もいるでしょうけど、トライアル大会にはトライアル友だちになれそうな人がいっぱいいます。そういう人たちがいるところに出かけなければ、友だちができるものもできません。友だちからは、いろんな情報(ときどき、大まちがいの情報も含まれますが)が発信されてきます。もちろん、仲間がいれば、トライアル会場はうきうきしたものになっているのは、まちがいありません。
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2005年01月11日
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<BS>トライアルへの誘い01
おもしろくてむずかしい。それがトライアルってもんだ
これは、バイカーズステーション誌に連載しているものです。パイカーズステーション誌は印刷もきれいなので(もちろん自然山通信とちがってカラー)ぜひ本誌でごらんになってください。
トライアルっていうと、みんな、とってもむずかしいものだと思っている。某BS誌のS編集長も「おれなんてなんにもできないしさ」と逃げ腰でいらっしゃる。でもしかし、トライアルはオートバイライディングの基本であると、どこかで誰かに聞いたことはないだろうか? そのとおり。トライアルは基本だから、トライアルができないのにオートバイに乗ってては、危険があぶない。
それでも、みんなトライアルに手を出さないのは、自分の身の丈にあったトライアルを見つけられないからだ。テレビ(最近は、CS放送で世界選手権や全日本選手権を見ることができる)や雑誌で紹介されるのは、頭の上まで一気に飛んでいくような、腰をぬかさんばかりの達人の技ばかり。あんなもの、誰もがまねできるわけがないし、ましてS編集長にやってもらおうなんて思ってない。デモ「トライアルやりませんか」と誘われると、あんなことさせられちゃうと思っちゃうんですね、みんな。
ところが、3mの断崖絶壁を駆け上がらなくても、平らな地面の上にほんの少し土が盛ってあるだけで、あるいはほんのちょっとの石ころがあるだけで、てきめんにむずかしい。S編集長、なだらかな石ころの山を越えていく右の写真をご覧になって「こんな平和なところだったら、おれでも走れる」とおっしゃった。そうです、S編集長にやっていただきたいのは、まさにこれ。平地に座布団セクションです。でもばかにしちゃいけません。これが意外と、むずかしいのですよ。
オートバイの基本は、走って曲がって止まることだと言われます。トライアルでも、これがきちんとできれば、まずは合格。そんなの、毎日オートバイに乗っていれば簡単だいと思うことでしょう。誰でもそう思います。じゃ、ちょっとやってご覧なさいとやってみてもらうと、みんな汗だくになって(冬でも! 真夏だったら脱水症状で死んでます)死にものぐるいで奮闘し、でもうまくいかなかったりします。
タイヤがふたつしかない二輪車が、なぜ転ばずに走っていられるのか。それはコマの原理だといわれますね。コマは回り続けることによって転ばずにいられます。それといっしょ。二輪車も、走り続けることでバランスを維持するようにつくられてます。
ところがトライアルでは、そうそう簡単にスピードを出させてもらえない。スピード違反なんてありませんから、いくらスピードを出してもいいんですよ。トライアルするようなところで100km/hも出すのはおっかないので、現実的なところ、20km/hも出せば、オートバイはうんと安定してくるはず。でも石がごろごろしていたり急に曲がらなきゃいけなかったりで、その20km/hが維持できません。最後には、止まるようなスピードになる。コマだったら転んでます。二輪車だって、転びます。そこを転ばずに走れっていうんだから、こりゃむずかしいわけです。
トライアル。全日本選手権なんかを見にいくと、どのライダーも素晴らしいテクニックを発揮して、強烈な地形を走破していく。この光景は、オートバイに乗る人も乗らない人も、みんなびっくりできます。
正直ぼくなんか、トライアルのシーンはたくさん見てしまって、最近ではそうそうのことではびっくりしなくなりました。だけどお客さんたちの反応を見ていると「どひゃー」「すげー」「信じられなーい」という歓声が聞こえてきて、おぉ、やっぱりトライアルはびっくりものなんだなと、あらためて気がつかされたりしています。
でもね、ふつうのライダーの視点から見てもびっくりするだろうけど、ちょっとでもトライアルをやってみて、それから彼らの走りを見にいってください。百聞は一見にしかず、じゃなくて、とにかく、自分で乗っている視点からみると、こりゃまたそのすごさがちがいます。S編集長にはぜひ平地の座布団セクションを走ってみていただきたいのだけど、人によっては、その座布団を越えるのに、たいそうな恐怖心を感じたりもいたします。3mの断崖絶壁を上がれといわれれば命の危険を感じますが、絶対死にそうにない安全なところだって、こわいところはあるんです。
で、全日本選手権なんかをそういう目でみると、こわくないところがない。断崖絶壁を上がるのもびっくりしますが、へっぽこトライアルライダーの視点からみると、こんなところにもびっくりです。
そしてまた、もうちょっと冷静に観察すると、なんとあの人たち、おっかないところとおっかないところをつないで走っているようにしか見えなかったりします。事実、へっぽこにはおっかなくても、それが彼らにとっては簡単で確実だったりするんですね。
なんだかわけがわかんなくなってきたって? そりゃ、トライアルは奥が深いですから、連載の1回ですべてをわかってもらってたまるもんですか。では!
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2007年05月09日
今どきのトライアル
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30年前にトライアル遊びをされて、その後ずっと二輪とは遠ざかっていたNさんとメールのやりとりをしました。Nさんはすっかり浦島太郎で、現在のトライアルについて、なんにもご存知ではない。
解説をさせていただいたのですが、自動車雑誌関係の仕事をされているNさんがご存知ないのだから、一般の人にトライアルの現状なんてわかるはずがないよなと思い、Nさんへのお手紙をこちらにも転載です。
Nさんへの手紙
Nさんがトライアルバイクで早戸川を遊んでいた時代は、オートバイにしろ自動車にしろ、今から思えば黄金時代でしたね。石原慎太郎さんが青春を謳歌していた時代。いま、石原さんが三宅島でマン島TTみたいなことをやろうとして二輪界を困惑させているように、30年前のことを現代にスライドすると、いろいろ通じないことがあります。
ホンダTL、ヤマハTY、スズキRL、カワサキKTのラインアップは、ぼくは高校生の頃に雑誌で見るくらいしか接触はないけど、現代では、日本のメーカーはトライアルマシンを作っていません。
例外的にTLM220Rという2ストロークのモデルがあって、ホンダのカタログからはもうなくなっているけど、警察が白バイ訓練用にトライアルマシンを必要とするってんで、このTLMのみが、ときどき生産されて警察関係に納入されています。いっしょに、鈴鹿やもてぎのトレーニングセンターも注文を出せるみたいで、ごく一部の機関が新車の国産トライアルマシンを購入できるしくみになってます。
ただし、84年に発表されたTLMは公道走行用のモデルでしたが、今警察関係に納入されているのは登録用書類のないマシンです。
国際トライアルマシンで、もっとも設計が新しいのはヤマハのTYZスコティッシュというやつで、水冷250ccアルミフレーム。設計が90年初頭のもので、発表は1994年。これを最後に、トライアルモデルが日本のメーカーから発表されることはなくなりました。
まず、車両の規定がたいへん厳しくなった。キーをオンにしたらライトがつかなければいけないとか、追い越し騒音はこれこれ以下でならないとか、もちろん排気ガス規制もある。小さな排気量で、しかもトルクの山を低速に振っているトライアルマシンは、ふつうの基準で騒音測定されると、とてもうるさいオートバイになっちゃいます。だってほとんど全開だから。
でもこういう技術的な問題は、がんばればなんとかなるのだそうです。なんとかならないのは営業的な問題。つくったって売れないものは作れないというのが、今のメーカーの姿勢です。
でもヨーロッパのメーカーは作ってるんだから、売れないってこともないんじゃないの?と思う人は多いです。でもトライアルってニッチな世界だから、ユーザーはメーカーに対しても基本的に寛容です。モデルチェンジしたばっかりのマシンを買うと、スイングアームが折れたりポンポン焼きついたりすることがあるけど、こういうこともあるさと納得できる人が多いわけ。日本のメーカーのような作り方をしていたら、きっと採算が取れないんじゃないかと思います。まぁ、日本のメーカーは大きくなりすぎたから、小さな市場に向けては興味がないというのが正直なところなんでしょう。
今、トライアルマシンはスペインとフランスとイタリアで作られています。
スペインにはモンテッサとガスガスとシェルコがあります。モンテッサ以外は聞いたことないでしょ。ガスガスは80年代に、シェルコは90年代末にできたメーカーです。モンテッサはホンダの子会社だから、日本でもHRCからモンテッサのマシンを購入できます。でもメーカーの母体はスペインです。設計は朝霞研究所だけど。
フランスはスコルパというメーカーがあります。ここは日本のメーカーとの資本関係はないけど、直訴してヤマハエンジンの購入契約を結びました。今、スコルパにはヤマハのDOHC5バルブエンジンとか、先のTYZエンジンとか、ブラジルで作った125ccエンジンとかが積まれています。ヤマハはトライアルチームを持っていますが、走らせているのはヤマハ製のマシンではなく、このスコルパです。
イタリアにはベータというメーカーがあります。工具のベータとは関係なし。社長自らがトライアルチームの一員として仕事したりしてます。ヨーロッパのメーカーは、会社のえらい人が、みんな泥だらけになってトライアル会場にいるのがふつう。HRCのえらい人が世界選手権に足を運んだとなると、ニュースになります。ベータの社長の場合は「今回の世界選手権はラポ(社長)がいないね」というのがニュースになります。
ただ、こういったヨーロッパのメーカーのトライアルマシンは、どれもが競技を前提に作られていて、ガソリンタンクは3リットルもはいりません。シートはついてない。オートバイとしては、たいへん乗りにくい代物です。唯一、スコルパだけがシートがついて、5リットル弱の大きな(!)タンクをつけたものを市販しています。TY-S125Fというんですが、これが今、なんとか町中も走れてトライアルもできるマシンとしてお勧めできる機種です。といってもフランス製ですから、日本製みたいに乗りっぱなしにしていては機嫌をこわします。ぼくも持ってますが、ブレーキパッドはあっという間に消耗する、エアクリーナーエレメントにアフターファイヤで軽く着火して煙が出る、付属のスピードメーターは50km走ると動かなくなる、などのトラブルが発生しました。でも、こんなもんなわけです。スコルパが、特にひどいマシンを作っているわけではありません。
というわけで、日本のメーカーはトライアルにほとんどタッチしていません。でもそれでいいじゃないかとも思います。自国製の道具がないとスポーツが発展しないなんて、他の国の人が聞いたら首をかしげちゃいます。日本のモータースポーツがメーカー主導で始まったところが悲劇の始まりなんですが、今、たまさかメーカーの傘から外にでているのが、トライアルってわけです。
乗る場所がないというのはご指摘の通り。特に30年前の極楽時代を知っている人には、例外なくそう指摘されます。でもそうなっちゃったんだから、しょうがない。たとえはうんと悪いけど、昔は談合やり放題、リベートや裏金でいい思いをしていたというのと同じじゃないでしょうか。今は時代がちがうから、そのへんの野山を勝手に走って遊ぶわけにはいかんのです。
だからみんな、けっこう遠くまで走りにいってます。東京の人だったら、トライアルやるのに1時間走るのはふつうです。中には自宅の近所で乗りたいからといって、自転車トライアルを始める人もいます。これなら、近所の公園でできるからって。ほんとに許されるかどうかは、よくわかんないけど。
ほんとは東京のど真ん中にもトライアルパークがほしいところだけど、今のように市場が小さかったら、成り立ちません。今のところは、それでもなんとなく昔からの慣例で走ってもよいとされている場所があるので、そういうところをこっそり維持していくためには、あんまり仲間が増えないほうがよいという考え方が支配的です。
でもそれじゃ、新しい仲間は増えようがない。いまどき、口コミのみが新規参入の広報主題というのはものすごい時代錯誤です。しかし現状ではしょうがないというところです。Nさんの時代錯誤を指摘しようと思って書きはじめたけど、結局は自分たちの時代錯誤に行き着いて終わりました。
それでもトライアルはおもしろい。昔のトライアルを知っている人も、最近復活しておもしろがっている人は多いし、今までトライアルを知らなかった人も、始めたとたんにはまったりしています。トライアルがおもしろいということだけは、確かなことのようです。
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2007年05月24日
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