私事ですが(日記なんだから、それでいいじゃんね)このところ同窓会づいてます。小学校の同窓会に続いて、高校の同窓会に行ってきた。全員同い年という共通点はあれど、小学校の同窓会は親戚の甥っ子姪っ子に会うような感じ。高校の同窓会は(当時の関係がどうで、そしてぼくがまったくもてなかったとしても)初恋の思い出との再会の場となる感じで、趣がちがう。小中高一貫教育なんかで育った人は、このコントラストが味わえないわけですね。かわいそうに。
学校の同窓会はこのふたつだけだけど、考えてみると、四十雀トライアルにでかけたのも同窓会みたいなもんだ。あれこそ究極の同窓会かもしれない。なんせ戦艦武蔵の沈没から生還した人もいるくらいの強者ぞろいだけど、若造としては、そんなお仲間に入れてもらえるのもうれしい。同窓会も、同級生だけじゃなく全体の部に参加したら、四十雀のノリになってくるんだろうけど、残念ながらいまだ参加したことはない。尊敬する和田誠さんが先輩だし、同窓の集いには興味はあるんだけど。
さてさてしかし、30年ぶりに出会う人に今のニシマキを解説するのは至難でした。自然山通信の使命と存在を解説するのもむずかしい。トライアルについて10人にひとりが知っているのが幸いといえば幸いだった。どこから聞いたのか、ニシマキはずっと砂漠に行きっぱなしだと思っているのもいた。そんな人には、ぼくが行きはじめた頃のぎりぎり冒険の香りのあったパリダカと、その後のコマーシャリズムをバックボーンとしたシステマチックなパリダカとのちがいを説明しなければいけなくなる(ぼくはそのコマーシャリズムからドロップアウトした。と書くとかっこいいな。あらゆるところからドロップアウトしているのがぼくの歴史です)。
パリダカの話、サハラのど真ん中でクルマを壊した話、一夜明けてそこから出てきた話、世界20カ国の仲間とジャングルで泥遊びをする話。誰に話をしたのかは忘れちゃったけど、こういう話はまじめに生活されているみなさんにはさぞ縁遠かったことでしょう。日記に書いた、鈴鹿サーキットはつきつめるとオフロードコースだという話に興味を持ってくれた人も(ほんの少し)いた。
こういう話は、みんなぼくの経験談だけど、何度か話をしているうちに、自分の経験を話しているのではなく、過去に話したシナリオをなぞるようになってくる。講演てのはもうかるらしいけど(一度だけ、赤面もののやつをやったことあるけど、いくらもらったかは忘れた)講演が商売になったら、シナリオを何本持っているかが勝負になるんでしょうね。
でもやっぱり面と向かってお話するときには、シナリオではなく実際のシーンを思い出して語りたい。砂漠やジャングル三昧をしていた日々からも、もう20年前後の月日が流れるので、だいぶ記憶もあやしい。若い頃は、事実をそのまま記録すりゃいいのに、歴史の研究ってのはどうしてこうもいろんな異説が出てくるものかと思ったけど、自分史でさえあやしいのだから、歴史があやしいのも当然でしょう。時間の流れとは、そういうものだ、きっと。
ぼくらは商売で過去の事例を語っている。特に写真は、未来の映像は撮りようがない。すべて過去を振り返るめめしい商売が、ぼくらの仕事だ。その取材対象である選手たちは、過去のことを振り返るのは得意ではないし、好きじゃない人が多い。彼らの頭の中は、近い未来に自分が勝利を得ることばかりが渦巻いていて、終わった試合は終わったことだ。そういう人たちと話をして、過去の成功や失敗を聞きだして思い出話を綴る因果な商売をずっとやってきた。
いやいや、ライダーが過去の話に無頓着かというと、そうとばかりはいいきれない。語るのは苦手なのに、書いたものを発表すると「あの場面とこの場面は反対だった」なんてつっこみをしてきたりする。イタリアとフランスのどっちだったかは覚えていなくても、登りそこねた岩のかたちは正確に覚えていたりする。これは職業柄なんだろうね。小学校の同級生の歯医者は、顔や形をいわれてもわからん、思い出させるなら歯型を見せろと言ってた。記憶を引きだすトリガーには、いろんなものがある。
同窓会のみなさんには、自然山の読者やトライアル愛好者はいなかったけど、いろんな旧友に「日記を読んでる」と言われました。お恥ずかしい。しかしありがとう。されどトライアル仲間のみなさんには「読んでる」なんて言われたことはほとんどない。これは読んでないということなのか(さびしい)、空気のような存在なのでいまさら報告はしないということなのか、どっちだろう。
豚もおだてりゃ木に登るので、読者がいると思うと、日記を書こうとがんばれます。ほめて育てるというのは、トライアルに限らず、いろんな選手とコーチの関係を見ても重要です。同窓会にいって、ちょっと豚になったニシマキでした。
写真は、例によってなにも関係ない、東北道か常磐道のパーキングエリアにあった庭園。抹茶が飲みたくなりました。
4ストローク化の流れに、最後まで知らん顔を決め込んでいたガスガスが、ミラノショーでついに4ストロークマシンを発表した。まだプロトタイプというからこれから変更もあるかもしれないけど、開発方針が180度変わっちゃうこともないだろう。
登場したガスガス4ストロークマシンは、なんとサイドバルブだった。サイドバルブってのは、その名の通りバルブがシリンダーの横についてるからこういう名前なんだが、いまどき、ライトバンだってDOHCエンジンを積んでいるから、サイドバルブエンジンの登場は、ちょっとびっくりだ。
4ストロークエンジンの歴史を思いきりどんぶりで振り返ると、最初にサイドバルブエンジンあり。しかし燃料室形状などに制約が多いので、バルブをピストンと向きあうように配置したオーバーヘッドバルブエンジンが高性能を絞り出す切り札となった。これを略してOHV。その時代はチェーンの信頼性があやしかったので、クランクのそばに配置したカムシャフトとバルブの連結には、プッシュロッドが使われた。今ではプッシュロッドを使ったエンジンのことをなんとなくOHVというけど、本来はバルブがてっぺんにあるエンジンのことを意味するわけだ。昔のBMWとか、ぼくが持っているトライアンフ・タイガーカブはこのエンジン形式です。
しばらくして、重たい金属の棒をしこしこ動かしているのがおっくうになった。往復運動は両端で折り返すときに慣性が発生する。プッシュロッドをやめて、カムシャフトもシリンダヘッドのてっぺんに持ってきた。オーバーヘッドカムシャフト。略してOHC。バイアルスもRTL250Sも250Fも、スコルパ125Fも、みんなこのOHC形式だ。カムシャフトの駆動はチェーンを使っている。チェーンは一方向に動き続けるから、往復運動の慣性の心配はなくなった。
でも欲はつきない。1本のカムで吸気と排気の2本のバルブを動かすには、ロッカーアームというシーソーみたいなパーツがいる。こいつの慣性を排除したくて、OHCはDOHCになった。Dはダブル。よくダブルをWと略す人がいるけど、あれは何語なのかしらん? 英語圏の人にも通じるのかなぁ。
さて給排気それぞれのバルブに1本ずつカムシャフトを置いて、ロッカーアームを使わずにカムがバルブが直接押すシステムだ。昔は一部のレーシングエンジンにしか使われなかった高嶺の花のメカニズムだったが、自動車でもオートバイでも、いまどきはわりとふつうのメカになっている。トライアルでは、スコルパSY250Fが、DOHCの5バルブエンジンを積んでデビューした。
商用自動車にDOHCの必要があるのかどうかはさておき、トライアルマシンはどうだろう。スコルパ250Fがデビューするとき「トライアルは、とっくの昔の遅乗り競争の時代を卒業した。これからのトライアルはDOHCのパワーが必要になる」という説があった。事実、高い高いヒルクライムなどで、2ストローク勢やホンダ4ストロークが登りあえぐところをスコルパDOHCがあっさり登った衝撃のシーンは少なくなかった。
スコルパ250Fは、もともとのエンジンはエンデューロマシンのWR250Fだ。たいしてモンテッサのためにホンダが用意したのは、CRF250Rのエンジンを大改造したものだった。大改造というより新設計に近い。ユニカムと呼ばれる高回転高出力用のご自慢のシステムを放棄して、ふつうのOHCに作り替えた。ユニカムは、シリンダヘッドが大きくて、トライアルには不向きという判断でもある。DOHCをそのまま積んだスコルパは、ホンダのやり方とは対照的だった。
しかしトライアルマシンにとって、軽量コンパクトは至上命令だ。シェルコは吸入効率のことを考えたらやりたくないだろうに、キャブレターからシリンダヘッドまで、ぐにゃりと曲がったインシュレーターを用意した。大胆。キャブレターがシート高を高くするのをきらったためだ。
みんな、それぞれ独特の技術と想像力でトライアルマシンを仕上げてきたが、スコルパのDOHC以外は、いずれもOHC(SOHC=シングルオーバーヘッドカム)を採用した。軽量コンパクトと高回転高出力の両方を満たすには、OHCが順当な選択だったのだろう。
というところに、サイドバルブの登場だ。もっとも新しいサイドバルブエンジンがいつ登場したのか、なんてのはエンジン史探究家におたずねしないとわかんないが、戦後、小さなオートバイメーカーが乱立していた時代はともかく、ホンダがマン島TTで一旗揚げようという時代には、サイドバルブを積んだオートバイなんて、見向きもされない傾向になっていた。サイドバルブは、いかにも遅いという代名詞みたいになっちゃっていた。
トライアルマシンが4ストローク化されるにあたって「トライアルなんてたいしたパワーはいらないんだから、サイドバルブにでもして小さなエンジンを作ったらいいのができるんじゃないのかなぁ」なんて冗談をいっていた覚えがありますが、手前の場合はまったく技術的根拠がない酔っぱらいの戯言です。しかしそんな戯言をいっている間に、スペインの技術者は、おおまじめにサイドバルブエンジンを開発していたのだった。しかもこのサイドバルブときたらフューエルインジェクション装備である。新しい技術と古来の技術の融合という点でも、おもしろい。
はたしてどんな性能が発揮されるのだろう。どんなトライアルができるんだろう。元祖インジェクションのホンダエンジンや、DOHCのヤマハエンジンとはどんな戦いを演じるんだろう。
ともあれこれで、現存するすべてのメーカーから世界選手権に参戦するための4ストロークエンジンが出そろった。2ストローク時代にはどれも同じようなスペックだったけど、4ストロークは見事にさまざまなスペックが並んだ。それでも最終的にトライアルの成績を左右するのはライダーのテクニックなんだろうけど、しばらくはマシンを(エンジンを)眺めているだけでも楽しい日々が続きそうだ。
| メーカー | 車名 | バルブ装置 | バルブ数 | 冷却 | 発表年 |
| スコルパ | 125F | SOHC | 2 | 空冷 | 2004 |
| モンテッサ | Cota4RT | SOHC | 4 | 水冷 | 2004 |
| シェルコ | 3.2 4T | SOHC | 4 | 水冷 | 2004 |
| スコルパ | 250F | DOHC | 5 | 水冷 | 2005 |
| ベータ | 4T | SOHC | 4 | 水冷 | 2007 |
| ガスガス | 4T | SV | 2 | 水冷 | 2007 |
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