トライアル・自然山通信
【2007年10月15日】
小川友幸、全日本チャンピオン
小川友幸が、ついに全日本チャンピオンになった。
10月14日、愛知県キョウセイドライバーランド。この大会でのタイトル決定はほぼ決定的ではあったが、最後の最後までなにがあるかわからない。小川は集中力たっぷりに大会を戦い、最終戦を勝利。8戦中5勝をあげて、初の全日本チャンピオンの座についた。
黒山健一は2位、3位に野崎史高が入った。小川と黒山の減点差は9点。優勝5回2位3回の小川に対し、黒山は優勝3回2位2回3位3回で、最終的なポイント差は12点だった。
中部大会は、他の全日本選手権とちょっとシステムがちがっている。世界選手権のスタイルにのっとり、長らく15セクション2ラップで開催されていたが、ここ数年は13セクション2ラップに加え、IASクラスのみに3セクションのスペシャルセクションが用意されている。通常の13セクション2ラップを終えたあと、3セクションのSSをこなしてゴールするシステムだ。
このシステムで持ち時間もいつもとは異なる。ライバルの走りを見てからトライしたいのがトライアルを勝負するものの常だから、第1セクションではお互いに牽制しあってなかなかトライに入らない。第1セクションにトップライダーがトライしたのは、結局スタート後1時間が経過してからだった。
結果的には、ほとんどのライダーがタイムオーバー減点をとるのだから、意味のない牽制のしあいにもみえるところだが、トップライダーにとってトライ順は勝敗を決める重要な要素。減点をとるためにトライを遅らせているのではなく、これも勝負のかけ引きだから、いたしかたない。
今回は、小川毅士が久々に参戦している。イタリアにトライアル留学をしていて、北海道以来の全日本参戦となる。
第1で毅士が3点、野崎が1点。第2でも野崎は2点ついて、序盤から失点を重ねてしまった。第3では田中太一が3点、小川が1点ついて、クリーンを続けているのは早くも黒山ひとりとなった。
「試合が始まる前から、試合の1週間も前から、へんな緊張感があった。みんな、がんばれではなくおめでとうと言ってくるから、肝心の試合をどう走ったらいいものなのか、わからなくなってしまった」
初タイトルに臨む小川の悩みである。そしてその緊張は、試合が始まっても続いていた。濡れて滑りやすい第4セクションを3点で抜けた以外はクリーンを続ける黒山に対し、小川は第4で3点をとった他、第3と第7で1点を失った。まだまだ試合は始まったばかりだが、小さいミスで差が開くのはくいとめたい。
異変は第8セクションで起こった。ここはトップライダーはみなクリーンをしたセクション。黒山は朝一番でキャブレターにトラブルをかかえ、本番では新品のキャブレターを装着して臨んだ。これが、岩ではねてなお急坂に挑む黒山のタイミングを狂わせた。坂の頂点で5点。これで黒山の減点はいっきに8点となった。野崎が11点、田中と小川が5点ずつ。試合序盤の好不調は、ここで一気に白紙に戻された。
続く第9セクションは、去年も勝負の鍵となった難セクション。次々と5点になる中、野崎が1点で通過。小川と太一の10点に続く3位に浮上。黒山は13点。セクションの難度が高いので、このような逆転劇の可能性が、そこここにあった。
11セクションの岩登りもむずかしいポイントのひとつだった。ここでは太一と黒山がつかまった。野崎は3点、小川は1点でここを通過。試合の流れが、少しずつ小川に傾きはじめてきた。
しかしこの頃から時間との戦いが始まった。第1セクションで1時間を使ったつけが回ってきて、大忙しだ。最終13セクションでは、太一が5点になるのを見ると、野崎、黒山、小川が次々にエスケープ。待ちかまえていたお客さんをがっかりさせることになったが、これもまたルールに従った勝つための作戦だ(この戦い方に批判的な関係者も少なくなかったが、たとえばエスケープに20点ほどの減点を課せば、戦い方も変わってくるはず。現在のルールではこの戦い方がベストなのだから、お客さんには気の毒だが、しかたない)。それでも、小川が4点、黒山が5点、太一が6点、野崎が7点と、それぞれタイムオーバー減点を計上した。
2ラップ目、第2セクションで小川が坂の頂点から転げ落ちる。足を痛めるも、試合はそのまま続行。ここをクリーンした黒山には4点差までつめよれらるが、ここからががまんだった。続く第3セクションを黒山と同じく1点で抜け4点差をキープすると、以後8セクションまで連続クリーン。難所の第9セクションに到着した。
1ラップ目は野崎のみが通過した難セクションだったが、今度はここを小川だけが1点で通過。黒山は5点となって、その差をふたたび8点に開くことに成功した。試合の流れ、この攻防でほぼ決着を見たといっていい。以後、小川も黒山も同じように減点を重ねながら、少しずつ小川が黒山より好スコアをマークして、ゴールまでトライを続けていった。
「最後の最後まで、まったく気が抜けない戦いでした。SSは簡単に勝負がひっくり返るこわさもある。ようやく少し安心できたのは、最後のSSにさしかかった頃だった」
最後のセクションにさしかかったときには、小川と黒山の点差は9点まで広がっていた。だからこの時点で勝利は決まっていたのだが、それでも小川は気をゆるめなかった。最後のセクションをトライし終えて、パンチを受け、タイムチェックを受け、カードを提出し、マシンの最終チェックを受ける。ひとつひとつのプロセスを確認して、万が一にも失格となるような落ち度がないように気を配ってから、それから初めて顔を緩ませて、マインダーの田中裕大と喜びを噛みしめあった。
2007年、新チャンピオン決定の瞬間だった。
【小川友幸】 中部は地元ですが、今まで地元の大会で優勝したことがなかったから、今日はそれが達成できたのが、まず喜びです。それとこの勝利で、勝率でも一番になれたことがうれしい。今日黒山選手に勝たれたら、チャンピオンにはなれても勝率では並ばれてしまうから、ちょっと悔いの残るシーズンとなってしまうところでした。 終わってみれば、今シーズンは完璧でした。5回勝てたし、勝てないときも2位をキープできた。考えられるベストを尽くすことができました。ここまで本当に長かったから、今はしばらく一番の喜びを噛みしめたいと思います。
【黒山健一】 今シーズンは、序盤に3位が続いたところで、ちょっといやな感じはありました。それでも勝っていられればよかったのですが、北海道大会で3位になって、あれが致命的だったと思います。あのときせめて2位に入れていれば、まだその後の挽回の可能性もあった。 今日は小川さんと勝率で並びたかったし、ヤマハのお膝元である中部大会でぜひ勝ちたかったのですが、朝一番でキャブレターが不調になって、それでキャブを交換して、自分のセッティングにしきれないまま試合が始まったのと、デ・ナシオンのときにやってぎっくり腰が再発しかけたのとで、小川さんの勝ちを許してしまいました。 今年はくやしいですが、出れば勝てるというふうに自分でも思っていたところがあったので、これで心機一転、挑戦者としてまたやりなおしたいと思います。
野崎と太一の3位争いは野崎が勝利。太一はSSの3セクションをすべて5点となるなど、時間のない中、後半に走りが乱れていた。
小川毅士は、トップ4とはやや点差を開いて5位。SSではルールを勘違いして、スコアカードを交換しないままトライ。3セクションすべてで不通過の10点減点を計上することになったが、結果的にはこれでも順位は変化がなかったことになる(仮にSSの3セクションをすべてクリーンしても、4位の太一にまだ7点差開いている)。
逆に尾西和博は、SSまでは6位に位置していたが、SSのひとつめで毅士と同じミスをおかした。すぐにスコアカードを交換したものの、ここでもらった10点によって、尾西の順位は6位から最下位の8位に転落することになってしまった。尾西はシーズン前に手首を骨折、不本意なシーズンとなったが、最後まで不本意な戦いを貫いてしまった。
投稿 : 2007年10月15日 07:55
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