トライアル・自然山通信
【2007年10月22日】
セルつきTYSで81歳の勝利
年に一度、40歳からトライアルをはじめた高齢ライダーが一堂に会し、お互いの生存と健康を確認し近況とからだの衰えなどを報告しあい、翌日は平坦で転んでも痛くない昔ながらのトライアルセクションで老いを競う全国大会、全日本四十雀トライアルミーティングが、10月21日に山口県下関市フィールド幸楽トライアル場で開催された。
1歳1点の年齢ハンディもあって、優勝は81歳の堀内浩太郎さんとなった。堀内さんはこれで12回目の四十雀優勝となる。
堀内さんの乗ったマシンは、ヤマハの木村治男さんが堀内さん用に仕立てた堀内スペシャルで、リヤフェンダーの立ちが押さえされていてまたぎやすくなっているほか(これは余談)、セルモーターが装着されていて、足腰の衰えに悩むライバルをうらやましがらせていた。
40歳からのトライアルということで四十雀トライアルと命名したのは伝説の名主催者、長尾籐三さんだが、40歳になれば誰でも参加資格はある。女性に年齢を正すのは失礼なので、女性の場合は一律20歳とみなして「うぐいす部門」が設けられている。さらに14歳以下の少年少女のために「じゅうしまつ部門」もある。参加できないのは、働き盛りトライアル盛りだけってことになる。
ハンディは1歳1点だから、40歳で今年初めて参加資格を得たライダーは、堀内さんに対して41点のハンディをちょうだいすることになる。堀内さんが41点減点し、40歳の若造がオールクリーンすれば同点だが、年よりは国の宝、けがをさせてはいかんと、セクションは安全第一で作ってある。その一方、ターンはそれなりにむずかしく、また若造はつい挑発に乗ってしまうようなラインも設けられているので、若造がオールクリーンをするのはそれなりの試練がある。そしてオールクリーンをしたところで勝ち目はないので、たいていの若造は華々しく散ることになる。
勝ち目がないのは40歳そこそこの若造ばかりではなく、今年73歳になる松永義夫さんなども「おれたち若いものは、堀内さんに出てこられたら勝ち目はない」とおっしゃる。事実、ハンディを加算して、堀内さんの減点は4点、松永さんは12点で、堀内さんのぶっちぎりということになった。
堀内さんは、1ラップ目と2ラップ目にそれぞれエンストがあった。MFJのトライアルルールでは、エンスト+足つき+停止は5点と採点される。堀内さんは1ラップ目にはその3点セットで、2ラップ目にはバックまでしていたから文句なしの5点なのだが、しかしこれは四十雀である。四十雀では、ルールとして「がんばっている限りは3点」と明記してある。温情とかおまけとか収賄ではなく、きっちりルールとしてこうなっているのだから、堀内さんのエンスト後退は5点ではなく3点なのだ。全日本や草大会などで、ほんとはバックしたのに5点にならない、というのとは次元がちがう話であることには注意しておかないといけない。
しかし結果的には、もしも堀内さんがこの両セクションを5点とカウントされても、トータル減点は10点で、優勝は揺るがなかった。去年の四十雀は欠場している堀内さんなので、大会は本当に本当に久しぶり。それなのにていねいなターン、ライディングにたいする向上心は年齢のことなど忘れさせてしまう職人芸で、松永さんならずとも脱帽。
堀内さんは、元ヤマハ発動機の重役さん。数々のボートやヨットの設計に携わり、ローマオリンピック、東京オリンピックでは監督を務めた他、自身もボート選手として活躍してこられた。トライアルマシンさばきが見事でも、ちっとも不思議はないのだが、それにしても81歳なのだから、何度でも脱帽だ。
今回の四十雀出場については、及び腰の堀内さんを、ヤマハのミスタートライアル木村治男さんが熱心に誘い込んだ。「クリーンしなくてもいい、足をついてもいい、転んでもいい、もしかしたら午前中でやめてしまってもいい」という堀内さんの条件を全部のんで、さらに堀内さんのために特別仕立てのマシンを用意した。セルモーターつきのTY-S125Fだ。TT-R125のパーツを流用し、クランクケースを交換して作られたこのマシン。個人で改造するにはいささかパーツ代がかさみそうだが、フレームの改造などは基本的に必要ないという。バッテリーはスイングアームのデッドスペースにきれいにおさまっている。
セルつきTY-Sについては、今後の動きは未定。
・個人で改造に挑戦するしか方法はない
・どこかのショップがキットパーツを市販する
・スコルパが純正オプションを用意する
・次の次くらいのモデルからセルつきが用意される
などが想像されるが、とういうことになるかは今はまださっぱりわからない。当然ながら若干の重量増にはなるから、必要ない人にはよけいな装備となるだろう。ただし、四十雀の現場では、人生の最後の余力を振り絞ってマシンに火を入れているご老体が多いことから、セルつきマシンは例外なく羨望の対象だった。
2008年の四十雀トライアルは、淡路島で開催の予定だ。
投稿 : 2007年10月22日 12:35
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