2008年03月09日 - 2008年03月15日
ボウ2年連勝目前
インドアトライアル世界選手権は、3月8日にイタリアのミラノで4戦目が開催された。この大会、藤波貴久が全戦に引き続き3位入賞。アダム・ラガが2位に入り、優勝はトニー・ボウ。
ボウはこれで3勝目を挙げて、昨年に引き続きインドアチャンピオンへの道を突っ走っている。
選手権は残り1戦。ボウは最終戦のクォリファイに出場すれば、チャンピオンを決定できるだけの点差を築いた。
前戦グラナダ大会と今回のミラノ大会の間には、本来ならポルトガルの首都リスボンでの大会が予定されていたが、これがキャンセル。もともと全部で6戦しかなかった2008年インドアシリーズは、全5戦となってしまった。
これで残りは、今回のミラノと最終戦のマドリッドだけ。勝負は最後の最後までなにがあるかわからないが、インドアトライアルはもともと参加者が少ないうえ、クォリファイに参加すれば最低限のポイントを獲得できる(今回最下位の7位のポイントは2点)。ボウは今回の勝利でランキング2位のラガに9点の点差をつけたので、最終戦でラガが優勝したとしても、あと1点だけポイントを積み足せば2008年のタイトルを獲得できる。ほぼ、タイトルは決定したといっていいだろう。
藤波は、グラナダ大会で初の表彰台に乗り、今回もまた3位表彰台を獲得した。しかし今回は、1週間前からひどい風邪をひき、体調を崩したままの参戦となった。練習不足はもちろん、からだがふらふらしてバランスをとるのもままならず(得意のダブルレーンで、今回は全敗している)、それで3位表彰台獲得は、藤波の潜在的ポテンシャルが上向いている証明かもしれない。
クォリファイ
1 トニー・ボウ 0
2 アダム・ラガ 2
3 藤波貴久 6
4 アルベルト・カベスタニー 8
5 ジェロニ・ファハルド 8
6 ドギー・ランプキン 20
7 ジェイムス・ダビル 19(ダブルレーン前までの減点)
ファイナル
1 トニー・ボウ 9
2 アダム・ラガ 19
3 藤波貴久 33
ランキング
1 トニー・ボウ 38
2 アダム・ラガ 29
3 アルベルト・カベスタニー 27
4 藤波貴久 22
5 ジェロニ・ファハルド 16
6 ドギー・ランプキン 11
7 ジェイムス・ダビル 9
8 ジェローム・ベシュン 1
<Posted in 08.03.12 11:55( 08.03.12 12:15 Modified)>
トライアルが、変わる?
トライアルの運営方法が、変化を模索している。全日本は、すでに中部大会でスペシャルセクションという見やすい観戦を主な目的としたシステムを導入しているが、これとは別に、今年の中国大会(第5戦9月7日開催)で、実験的に今までとはまったく異なるタイムスケジュールで大会を運営することになった。
時期を同じくして、スペイン選手権でも、従来とはまったく異なるぎょうてんの大会運営がされている。どちらも、その目的はお客さんに見やすい(スペインの場合はテレビ中継などの可能性も含んでいる)大会運営だ。
全日本選手権開幕戦の土曜日のライダースミーティングで、MFJトライアル委員長の西英樹氏より、中国大会で実験的な運営をしてみたいので賛同してくれないかという提案があった。この提案は次の通り(概略)。西さんは中国エリアのトライアル委員長でもある。全日本選手権の前日にシニアとレディースの大会を開催してみたり、試みには熱心。「なにか変えていかないけん」が西さんの合い言葉だが、日本全国を変えるのは抵抗があっても、自分のところならそれが比較的容易ということで、中国大会での実験運用を検討することになった。
・IBクラスは午前7時半(現在の標準より30分程度早い)に第1ライダーがスタートするが、1分1台ではなく、1分2台のスタートとなる。60台参加とすると、最終ライダーのスタートはだいたい8時ちょうど、ゴールは12時ちょうど。
・IAクラスとIASクラスは、12時半に第1ライダーがスタートする。こちらも1分2台。IA、IASあわせて40台の参加があるとすると、最終スタートは12時50分ほどで、最終ゴールは約16時50分となる。
・IBクラスの表彰式は、IBクラスがゴールしたあとにおこなわれる。
この運営方法の実験の目的は、普及促進を目的とした観客へアピールできるトライアル競技への見直しとされている。セクションの下見に費やす時間が長いこと、それが時間が足りなくなってエスケープするなど、お客さんをがっかりさせる事態にもつながること、各クラス混走のために渋滞が発生することなどが、現状の懸案としてあげられている。
選手側の反応は、IBクラスが蚊帳の外におかれるような寂しい感じがある、という意見があった一方、お客さんに見やすい大会運営の模索は必須であり、新しい実験はどんどんやっていくべきである、という受けとり方が多かった。ちなみに真壁大会のタイムスケジュールを見ると、IBの最初のスタートが8時で、最終スタートが9時ちょっとなので、IBの面々は30分〜1時間早起きを強いられることになる。
蚊帳の外という感覚は、表彰式が上位クラスと別に行われるのと、早い時間には観客がいないという思いがあるようだ。現状では、IBの2ラップ目にはそろそろIASがスタートしていて、IBライダーも大観衆の前でトライすることができる。
自然山通信の感想としては、早起きしなければいけないのは大いにつらいが、これまで朝のうちしか観戦できなかったIBクラスを全試合にわたって追いかけられるのはたいへん興味深い。IBクラスはこれからの才能の宝庫の上に、ベテラン勢のがんばりもあって、多彩な顔ぶれを楽しむことができる。仕事ではIASを追いかけたいが、個人的にはIBを追ってみたいと思うことも多々あったから、この運営方法は大歓迎だ。ただ、IAクラスを追いかけられないのは従来同様で、中国大会では突然IBクラスに手厚いレポートが書けるかもしれないけど、IAクラスはIBとIASのついで、という扱いになってしまうかもしれない。IA専用の取材陣が置ければいいのだが、そんな取材体制がとれているところはどこにもないので、IAの方々にはごめんなさいです。つまり自然山的には、この運営方法で蚊帳の外におかれてしまうのは、IAクラスです。
従来から思っていたことがある。トライアルの試合は、なぜこんなに朝が早いのかと。競技時間が長いから、必然的に朝が早いのは理解できるのだが、もっともスタートが遅いIASでも、12時を少し回った頃には1ラップ目がだいぶ進んでいて、それも真壁大会のように競技時間が慌ただしいことになると(それが選手の時間の読みまちがいなのか運営面の問題かはここでは棚上げするとして)、お昼にきた観客は大急ぎの試合展開を見なければいけなくて、現実問題として、トライアルの醍醐味に入っていくのは不可能だろうと思う。
F1やモトGPを見ると、あれはテレビ中継とのかねあいもあるのだが、午後2時頃にスタートする。それまでは前座レースをやったり125や250のレースをやって、目玉レースはゆっくり(といっても家をでるのは早朝になるだろうけど)やってきたお客さんにも間に合うようなタイムスケジュールだ。午前中に、一番の目玉の試合の大半が決着しているなんてスポーツイベントは、トライアル以外にあるだろうか? その解答のひとつが、全日本中部大会のスペシャルセクション(通常の2ラップのあと、IASは難度を増した見ごたえのある3セクションを走る)であり、今回の中国大会の実験的運営システムだ。
こういった取り組みについては、全日本が国際組織であるFIMのルールや運営とかけ離れてしまっていいものかという議論が必ず出る(15セクション2ラップの世界選手権に対して日本の標準は10セクション3ラップなので、現状でFIMを踏襲しているとも言いにくいのだが)。ところがときを同じくして、世界選手権参戦ライダーの大半が出場するスペイン選手権で、世界選手権とはがらりと異なる運営方式を採用した。
ライダーは、土曜日にセクションの下見ができるが、スタートしたら下見ができない(!)。そして第1セクションをトライしたら、もう一度第1セクションをトライして、第2セクションへ向かう。第2セクションも2回トライする。そして第3へ。第5セクションを終えたところと、第10セクションを終えたところでタイムコントロールがあり、決められた時間を超過していると、ペナルティが科せられる。もちろん15セクションを終えたところでもタイムコントロールがある。持ち時間は3時間15分。今までは2周していたのを1周しかしないが、15セクションを2回やるのは変わらない。従来は5時間半だったから、かなり忙しいトライアルになる。
始まる前は、ライダーはみなブーイングだったそうだが、ヨーロッパは(スペインは)やると決めたら多少不完全なものでもやってしまって、あとからかたちにしていく技を持っている。いまやようやく日本でも浸透してきたユース125クラスも、最初はなんだかわからないまま始まったものだった。で、順応性が高いのもあちらの人たちの特徴だ。あちらの人たちとは国籍はちがうが、世界チャンピオンをとったくらいの人だから、藤波貴久も順応性は高い。「やってみたら、意外に悪くなかった」とは藤波の感想だ。
スペイン選手権とも全日本選手権ともちがうが、日本にはお巡りさんの大会もある。全国の警察が戸道府県ごとにチームを作ってトライアルやジムカーナ、その他いろいろ、白バイ隊員としての技術を競うのだが、そこにトライアルもある(マシンがないため、存続の危機だそうだが)。このトライアルが、下見は前日のみというルールでやっている。しっかりセクションを記憶しておくのも、白バイ大会ではトライアルの技術のうちなのだ。これは余談でした。
さてスペイン選手権では、やはり全日本と同様いくつかのクラスがあるが、この運営方法をとるのは、藤波らが走るトップクラスのみだそうだ。彼らのクラスはいわばIASクラスで、IAやIBは従来通り15セクションを2ラップして、下見をするのもご自由だそうだ。そしてその一番最後を走るライダーがだいたい10セクションあたりについた頃、スペインのIASクラスはスタートする。IASはひとつのセクションを2回ずつ走るから、IAに追いつくことはない。昨今、ユースクラスの人気でトップクラスがユースなどの2ラップ目に追いついて渋滞を発生することが少なからずあったが、これは新運営方式で一気に解決だ。
反面、下見がまったくできないというのは、危険でもある。下見をするなというのは、日本のようにライダーやマインダーのセクション改変を問題にしたのではなく、テレビカメラがセクション内にいる人間を排除したかったからだと思われるが、テレビ放映も重要だが、危険なのではちょっと困る。
3時間15分の持ち時間では、現実的に下見をしている時間はないので、どうしても下見の必要がある場合はライダー判断で自由に下見をさせてもいいのではないかというのは藤波案。持ち時間は、マシントラブルがあったら万事休す、あと少々余裕があったほうがいいが、それでも不可能な持ち時間ではなかったということだ。マシントラブルへの対処については、時間が少なくなっただけ、いよいよチーム力の発揮するところとなるため、これまで以上にチームのパワーが結果に影響するのではないかというのが、藤波の観測でもあった。日本では、マインダーのいるライダーといないライダーの格差が問題になっているが、マインダーがいるのが標準となったスペインでは、その先のチーム力の問題が発生しようとしている。
スペインの国内選手権での運営だから、そういうてんでは全日本での運営実験とまったく同じ試み(内容は異なるが)ということになるが、ところがなんせスペインであるから、これが好評をとるようなら、あるいは近い将来、世界選手権がこの運営方式になるかもしれない。
こちらも自然山の感想としては、今まで見たくても見るチャンスの少なかったユースやジュニアの選手をじっくり見られるようになって、歓迎すべき運営方法だと思うのであった。
なお全日本では、下見の方法が厳しくなっていた。土曜日にセクションを見るのは(セクションに入れるのは)、エントリーしたライダーのみ。当日も、スタートするまではセクションには入れない(もちろん、観客エリアからの下見はご自由だ)。前日も当日も、マインダーのセクション立ち入りはご法度(お助けのため、オブザーバーに許可を求めてはいるのは許される)。
マナーが悪いから、規則がどんどん厳しくなっていく、というのはとある競技役員さんのつぶやきだが、規則に違反しなければ(=ペナルティをもらわなければ)できることはすべてやって勝利をめざすのは競技人ととしての本能という気がする。わかりやすい規則が充実していくのは、これも歓迎すべきことではないだろうか。
<Posted in 08.03.11 08:00( 08.03.11 08:07 Modified)>
黒山、大差で開幕戦勝利
全日本選手権第1戦は茨城県真壁トライアルランドでの関東大会。ゼッケン1番をつけて初めて試合に望む小川友幸の戦いぶりに注目が集まったが、開幕戦を制したのは黒山健一だった。それも小川にダブルスコアに近い大差をつけての圧勝だった。■国際A級スーパークラス■
2007年は、スーパークラスのエントリーが激減した年だった。開幕前に尾西和博が負傷し、シーズン中盤には坂田匠太が負傷、また独特のキャラクターが人気だった渋谷勲がシーズン途中で戦線を離脱した。2008年は仕切り直し。イタリアから小川毅士も帰ってきて、国際A級からは三谷英明と小森文彦もこのクラスにステップアップしてきた。参加11名は、久々の盛況といえる。ただし国際A級チャンピオンを獲得した成田匠は、さすがに愛車SY125Fでスーパークラスのセクションに立ち向かうわけにもいかず、といって国際A級クラスでの継続参加は認められず、今シーズンは全日本選手権はお休みという結果になった。全日本にはできるだけ足を運ぶということだから、運がよければ、成田匠と一緒に観戦、というトライアルの楽しみも可能かもしれない。
さて、当日の真壁はあたたかかった。日中、風はちょっと冷たかったが、お天気もよく、風もすぐに止んだ。去年は雨、おととしは寒く、グリップが低下してセクション難度はことさらに高かったが、今年は狙い通りの設定となったのではなかったろうか。各クラス、トップクラスには失敗が許されない神経戦で、下位ライダーにもなるべく危険がない設定となっていた。
ただし、マインダーのいないスーパークラスはやはり悲惨で、果敢にチャレンジする三谷英明の大転倒シーンもあった。A級上位の者はスーパークラスに自動的に昇格というシステムは理にはかなっているが、参戦体制などを整えないと、やはり敷き居は高いようだ。三谷と小森は、規則的には昇格の必要はないのだが、A級クラスにとどまって毎年チャンピオン争いをしている実情をふまえて、後進に道を譲るべくスーパークラスへの参戦を決意したという。本心としては、あまり積極的な決断ではなかったようだ。
去年は、第1セクションでトップライダーがなかなかセクションインをせず、お客さんを延々と待たせていいものかという論争がわいたが、今回は人数が多く、三谷などが率先してセクションに入って言ったためもあって、ぴくりとも動かないという状況はいくぶんは改善されていたと思う。しかし結果的には、スーパークラスには大量のタイムオーバー減点が出た。お互いに牽制するのも勝負のおもしろさだとは思うが、トライアル勝負をしらないお客さんにもトライアルを楽しんでもらいたいと思えば、せめて現場で今なにが起こっているかの解説くらいは必要と思うし、牽制したあげくに20分前後のタイムオーバーに苦しむという試合運びは、結果表を見て首をかしげてしまうのは事実。しかしこれもまた、勝負ではある(もっとも、タイムオーバーはスーパークラスだけではなく、国際A級にも国際B級にも出ていた)。
第1セクションは、真っ先にトライした三谷英明が1点で通過。しかし小川毅士や田中太一は5点となるなど、あらためて三谷の才能を思い知らされる。結果的には9位となってしまった三谷だが、スーパークラスにあって、三谷の走りのキャラクターは独特。いろいろな個性が競い合うのは、やはり楽しいことだ。
この第1セクションで、小川友幸は1点。この日の小川は、ゼッケン1番のプレッシャーなのか、ちぐはぐな走りを続けて、チャンピオンらしい堂々たるところは見られなかった。存在感は昨年以前とはまったくちがって大きくなっているのだが、今回はなにか歯車が噛みあわなかったと思うしかない。第3セクションで黒山が足付減点を冒したあげくにタイムオーバーで5点になると、トップに立ったのは小川だったが、本人はここでトップに立ったのは意外以外のものではないらしく、この日のできとしては、2位を取るのも奇跡的なことだったという。
黒山は、序盤こそいくつかのミスがあったが、小川のことを気にするからいけないのだと、去年の課題を思い起こして試合をリセット、以後は17セクションにわたってクリーンし続けるという圧倒的強さを見せつけた(1ラップは11セクションだが、ラップオールクリーンは残念ながら達成せず)。 その減点は、ちょん足を2回ついた以外は5点が3つ、バランスを崩したマシンを支えられずに落としてしまったのが2回と、もう1回は本人はやや不本意、カードに触ったという採点での5点だった。いずれにしても、ライディングの内容的には、パーフェクトに近い。
黒山は、小川の前でスタート。小川には、時間的な余裕があった。これが小川をまた危機に立たせた。第7セクション、土の斜面を黒山だけがきれいにクリーン。続いてトライした野崎史高が、滑り落ちてくるときにつかまった立ち木が根こそぎ抜けてしまってセクションが壊れてしまった。その修復を待っているうち、小川の大量タイムオーバーが決定づけられた。
当の野崎も、このときに燃料ホースに穴を開けして待ってその修復に時間をとられ、小川をしのぐ大量タイムオーバーを喫してしまった。
この二人には先行して走っていた田中太一も、時間ぎりぎりの中で前輪をパンクさせ、セクションをいくつかエスケープして時間の帳尻を合わせることになった。田中も、今回は5点が多く、なかなか自分のペースに試合をもってこれなかったひとりである。タイムオーバーについては、今回、スーパークラスのライダーは井内将太郎を除いては、全員タイムオーバー減点をとっている。
現在の全日本が使っている集計ソフトは、1ラップ目のタイムオーバー減点を入力できない(このソフトが作られたときには、1ラップ目の設定タイムがルールになかったのだ)。なので本部が発表する途中経過もタイムオーバー減点が加算されておらず、試合展開は選手たちを含めて、なぞのまま進んでいくことになった。しかしそんな中でも黒山のアドバンテージはほぼ確実。3ラップとも減点は一桁だし、タイムオーバーはくらったものの小川や野崎よりもオンタイムに近いのもわかっていた。なにより、本人が勝利を実感していた。
肩の手術からの復帰が長引いた(お医者さんの見立てでは予定通りだった)のもあったが、2007年はそれまで勝ちすぎた反動が出て、勝利から見放されていた黒山健一。ここにきて、再び強い黒山健一が戻ってきた。
2位争いは、結局小川のものとなった。野崎や田中にしてみれば、小川が調子を乱している今回は2位を狙えるチャンスだったが、同じように試合運びを乱してしまった。野崎は走りの自己評価は高かったが、第7セクションの転倒でマシントラブルと大量のタイムオーバー減点を一度にもらったり、いくつかのセクションでカードに触ったなどの減点ももらった。こういった細かい試合運びをつめていくのが、今後の大きな課題だと語る。
今回は上位勢の乱れに乗じて、中盤までは井内や尾西の活躍も光っていた。しかし結局、1日を走り終えるとそれぞれあるべき位置につけてしまう。1日をトータルで戦うのがトライアルだから、序盤の数セクションでは結末は占えないのだが、限定条件ではあっても、上位陣との差がつまってきたのは興味深いことだ。
井内将太郎は、今年は新車のベータを操っている。田中善弘は、ホンダRTLにマシンを変えた。これがなにかを変えたのか、最下位が定位置だった昨年までの善弘とはちがっていた。変化はどんな場面でも必要なことなのかもしれない。
■国際A級
成田、三谷、小森がこのクラスからいなくなって、国際A級は若者らしいクラスになった(念のため、小森はまだまだ充分若い)。スーパークラス経験者は、本多元治、岡村将敏、佃大輔くらいのものだ。
今回は、西元良太が大きな成長を遂げた。これまで見るからにメンタルの弱さを背負ったトライアルをしていた西元が、大きな自信を身につけて走っている。シーズンオフにたっぷり練習をしたというが、動じない集中力はどうやって身につけたのだろう。表彰式で渡されたマイクに向かってのスピーチもなかなかのものだった。
1ラップ目こそ、小野貴史がトップを奪ったが、5点ひとつで勝負は簡単にひっくり返る。小野は2ラップ目にひとつ、3ラップ目にひとつ5点があった。この間、西元はなんと2、3ラップをオールクリーンしている。これにはライバルは手も足も出ない。タイムオーバーは2点もらったが、西元の勝利は揺るぎなかった。自転車トライアルでは世界チャンピオンになっている西元の、これが全日本初勝利だった。
2位は本多元治。3ラップ目の1点は西元に次ぐベストラップだが、1ラップ目に6点をとった時点で結果的には勝利には届かなかったということだ。3位岡村、4位小野とベテラン勢がかためるが、5位齋藤、6位宮崎、7位柴田、8位永久保、9位野本と、この後ろは若手がずらり。そしてなんと12位には、B級から昇格してきたばかりの藤巻耕太が入っている。藤巻のマシンは昨年同様に125cc。昇格緒戦でポイントをとるのも素晴らしいことだが、藤巻にはまだまだ大きな可能性が秘められているようだ。
■国際B級■
毎年8名のA級昇格者を輩出する国際B級クラスは、年が変わると新たな才能が芽を出してくる。経験の浅い若者がベテラン勢にもまれながら、徐々に力をつけてくるのをながめるのが、このクラスを観戦する楽しみだ。
そんな中で、今年は大物の参戦があった。上福浦明男。1989年にはトライアル・デ・ナシオンの日本代表にも選出された日本のトップライダーだ。その後事業に専念していたが、最近は地元中国大会にのみ参加していた。今年は可能な限りシリーズを追いかけたいとしている。若者にとっては、大きな目の上のたんこぶの登場だ。安定したセクション走破力を発揮して、1ラップ目もトップにつけ、勝利はかたいと思われていた。
ところが結果は、上福浦は2位だった。勝ったのは小野田理智。10年ほど前に若手ライダーとして、技術を切磋琢磨していた有望株のひとりだが、小野田もまた、長いブランクのあと、昨年最終戦で全日本に復帰、古いマシンで3位に入って周囲をわかせたものだった。
今回の注目株は熊本の23歳、松浦翼。前年の無得点圏から一気に6位入賞は、なかなかの快挙だ。もちろん去年昇格を逃した前間、大田、木下、荒木などの若手の活躍も目が離せないところだ。
ところで、今回はこのクラスに紅一点の女性ライダーがいた。今まで紅一点といえば関東の高橋摩耶だったが、高橋は全日本を欠場、変わって登場したのが関西の長谷山ちえみ。スーパークラス田中善弘と同じくチーム波田の所属。IBクラスのポイントランカーである西村亜弥がおめでたになったので、日本代表選手としても期待がかかる存在だ。初めての全日本はなかなか体当たりだったようだが、走破力が高そうな印象で、今後が楽しみでもある。
トップ争いもおもしろいが、100人近い参加者を集める全日本選手権、それぞれいろんなドラマをもって会場にやって来る。ひとつひとつの物語を見つけられれば、全日本はさらにおもしろい。
<Posted in 08.03.09 07:55( 08.03.24 06:46 Modified)>








