トライアル・自然山通信
【2008年03月09日】
黒山、大差で開幕戦勝利
全日本選手権第1戦は茨城県真壁トライアルランドでの関東大会。ゼッケン1番をつけて初めて試合に望む小川友幸の戦いぶりに注目が集まったが、開幕戦を制したのは黒山健一だった。それも小川にダブルスコアに近い大差をつけての圧勝だった。2007年は、スーパークラスのエントリーが激減した年だった。開幕前に尾西和博が負傷し、シーズン中盤には坂田匠太が負傷、また独特のキャラクターが人気だった渋谷勲がシーズン途中で戦線を離脱した。2008年は仕切り直し。イタリアから小川毅士も帰ってきて、国際A級からは三谷英明と小森文彦もこのクラスにステップアップしてきた。参加11名は、久々の盛況といえる。ただし国際A級チャンピオンを獲得した成田匠は、さすがに愛車SY125Fでスーパークラスのセクションに立ち向かうわけにもいかず、といって国際A級クラスでの継続参加は認められず、今シーズンは全日本選手権はお休みという結果になった。全日本にはできるだけ足を運ぶということだから、運がよければ、成田匠と一緒に観戦、というトライアルの楽しみも可能かもしれない。
さて、当日の真壁はあたたかかった。日中、風はちょっと冷たかったが、お天気もよく、風もすぐに止んだ。去年は雨、おととしは寒く、グリップが低下してセクション難度はことさらに高かったが、今年は狙い通りの設定となったのではなかったろうか。各クラス、トップクラスには失敗が許されない神経戦で、下位ライダーにもなるべく危険がない設定となっていた。
ただし、マインダーのいないスーパークラスはやはり悲惨で、果敢にチャレンジする三谷英明の大転倒シーンもあった。A級上位の者はスーパークラスに自動的に昇格というシステムは理にはかなっているが、参戦体制などを整えないと、やはり敷き居は高いようだ。三谷と小森は、規則的には昇格の必要はないのだが、A級クラスにとどまって毎年チャンピオン争いをしている実情をふまえて、後進に道を譲るべくスーパークラスへの参戦を決意したという。本心としては、あまり積極的な決断ではなかったようだ。
去年は、第1セクションでトップライダーがなかなかセクションインをせず、お客さんを延々と待たせていいものかという論争がわいたが、今回は人数が多く、三谷などが率先してセクションに入って言ったためもあって、ぴくりとも動かないという状況はいくぶんは改善されていたと思う。しかし結果的には、スーパークラスには大量のタイムオーバー減点が出た。お互いに牽制するのも勝負のおもしろさだとは思うが、トライアル勝負をしらないお客さんにもトライアルを楽しんでもらいたいと思えば、せめて現場で今なにが起こっているかの解説くらいは必要と思うし、牽制したあげくに20分前後のタイムオーバーに苦しむという試合運びは、結果表を見て首をかしげてしまうのは事実。しかしこれもまた、勝負ではある(もっとも、タイムオーバーはスーパークラスだけではなく、国際A級にも国際B級にも出ていた)。
第1セクションは、真っ先にトライした三谷英明が1点で通過。しかし小川毅士や田中太一は5点となるなど、あらためて三谷の才能を思い知らされる。結果的には9位となってしまった三谷だが、スーパークラスにあって、三谷の走りのキャラクターは独特。いろいろな個性が競い合うのは、やはり楽しいことだ。
この第1セクションで、小川友幸は1点。この日の小川は、ゼッケン1番のプレッシャーなのか、ちぐはぐな走りを続けて、チャンピオンらしい堂々たるところは見られなかった。存在感は昨年以前とはまったくちがって大きくなっているのだが、今回はなにか歯車が噛みあわなかったと思うしかない。第3セクションで黒山が足付減点を冒したあげくにタイムオーバーで5点になると、トップに立ったのは小川だったが、本人はここでトップに立ったのは意外以外のものではないらしく、この日のできとしては、2位を取るのも奇跡的なことだったという。
黒山は、序盤こそいくつかのミスがあったが、小川のことを気にするからいけないのだと、去年の課題を思い起こして試合をリセット、以後は17セクションにわたってクリーンし続けるという圧倒的強さを見せつけた(1ラップは11セクションだが、ラップオールクリーンは残念ながら達成せず)。 その減点は、ちょん足を2回ついた以外は5点が3つ、バランスを崩したマシンを支えられずに落としてしまったのが2回と、もう1回は本人はやや不本意、カードに触ったという採点での5点だった。いずれにしても、ライディングの内容的には、パーフェクトに近い。
黒山は、小川の前でスタート。小川には、時間的な余裕があった。これが小川をまた危機に立たせた。第7セクション、土の斜面を黒山だけがきれいにクリーン。続いてトライした野崎史高が、滑り落ちてくるときにつかまった立ち木が根こそぎ抜けてしまってセクションが壊れてしまった。その修復を待っているうち、小川の大量タイムオーバーが決定づけられた。
当の野崎も、このときに燃料ホースに穴を開けして待ってその修復に時間をとられ、小川をしのぐ大量タイムオーバーを喫してしまった。
この二人には先行して走っていた田中太一も、時間ぎりぎりの中で前輪をパンクさせ、セクションをいくつかエスケープして時間の帳尻を合わせることになった。田中も、今回は5点が多く、なかなか自分のペースに試合をもってこれなかったひとりである。タイムオーバーについては、今回、スーパークラスのライダーは井内将太郎を除いては、全員タイムオーバー減点をとっている。
現在の全日本が使っている集計ソフトは、1ラップ目のタイムオーバー減点を入力できない(このソフトが作られたときには、1ラップ目の設定タイムがルールになかったのだ)。なので本部が発表する途中経過もタイムオーバー減点が加算されておらず、試合展開は選手たちを含めて、なぞのまま進んでいくことになった。しかしそんな中でも黒山のアドバンテージはほぼ確実。3ラップとも減点は一桁だし、タイムオーバーはくらったものの小川や野崎よりもオンタイムに近いのもわかっていた。なにより、本人が勝利を実感していた。
肩の手術からの復帰が長引いた(お医者さんの見立てでは予定通りだった)のもあったが、2007年はそれまで勝ちすぎた反動が出て、勝利から見放されていた黒山健一。ここにきて、再び強い黒山健一が戻ってきた。
2位争いは、結局小川のものとなった。野崎や田中にしてみれば、小川が調子を乱している今回は2位を狙えるチャンスだったが、同じように試合運びを乱してしまった。野崎は走りの自己評価は高かったが、第7セクションの転倒でマシントラブルと大量のタイムオーバー減点を一度にもらったり、いくつかのセクションでカードに触ったなどの減点ももらった。こういった細かい試合運びをつめていくのが、今後の大きな課題だと語る。
今回は上位勢の乱れに乗じて、中盤までは井内や尾西の活躍も光っていた。しかし結局、1日を走り終えるとそれぞれあるべき位置につけてしまう。1日をトータルで戦うのがトライアルだから、序盤の数セクションでは結末は占えないのだが、限定条件ではあっても、上位陣との差がつまってきたのは興味深いことだ。
井内将太郎は、今年は新車のベータを操っている。田中善弘は、ホンダRTLにマシンを変えた。これがなにかを変えたのか、最下位が定位置だった昨年までの善弘とはちがっていた。変化はどんな場面でも必要なことなのかもしれない。
■国際A級
成田、三谷、小森がこのクラスからいなくなって、国際A級は若者らしいクラスになった(念のため、小森はまだまだ充分若い)。スーパークラス経験者は、本多元治、岡村将敏、佃大輔くらいのものだ。
今回は、西元良太が大きな成長を遂げた。これまで見るからにメンタルの弱さを背負ったトライアルをしていた西元が、大きな自信を身につけて走っている。シーズンオフにたっぷり練習をしたというが、動じない集中力はどうやって身につけたのだろう。表彰式で渡されたマイクに向かってのスピーチもなかなかのものだった。
1ラップ目こそ、小野貴史がトップを奪ったが、5点ひとつで勝負は簡単にひっくり返る。小野は2ラップ目にひとつ、3ラップ目にひとつ5点があった。この間、西元はなんと2、3ラップをオールクリーンしている。これにはライバルは手も足も出ない。タイムオーバーは2点もらったが、西元の勝利は揺るぎなかった。自転車トライアルでは世界チャンピオンになっている西元の、これが全日本初勝利だった。
2位は本多元治。3ラップ目の1点は西元に次ぐベストラップだが、1ラップ目に6点をとった時点で結果的には勝利には届かなかったということだ。3位岡村、4位小野とベテラン勢がかためるが、5位齋藤、6位宮崎、7位柴田、8位永久保、9位野本と、この後ろは若手がずらり。そしてなんと12位には、B級から昇格してきたばかりの藤巻耕太が入っている。藤巻のマシンは昨年同様に125cc。昇格緒戦でポイントをとるのも素晴らしいことだが、藤巻にはまだまだ大きな可能性が秘められているようだ。
■国際B級■
毎年8名のA級昇格者を輩出する国際B級クラスは、年が変わると新たな才能が芽を出してくる。経験の浅い若者がベテラン勢にもまれながら、徐々に力をつけてくるのをながめるのが、このクラスを観戦する楽しみだ。
そんな中で、今年は大物の参戦があった。上福浦明男。1989年にはトライアル・デ・ナシオンの日本代表にも選出された日本のトップライダーだ。その後事業に専念していたが、最近は地元中国大会にのみ参加していた。今年は可能な限りシリーズを追いかけたいとしている。若者にとっては、大きな目の上のたんこぶの登場だ。安定したセクション走破力を発揮して、1ラップ目もトップにつけ、勝利はかたいと思われていた。
ところが結果は、上福浦は2位だった。勝ったのは小野田理智。10年ほど前に若手ライダーとして、技術を切磋琢磨していた有望株のひとりだが、小野田もまた、長いブランクのあと、昨年最終戦で全日本に復帰、古いマシンで3位に入って周囲をわかせたものだった。
今回の注目株は熊本の23歳、松浦翼。前年の無得点圏から一気に6位入賞は、なかなかの快挙だ。もちろん去年昇格を逃した前間、大田、木下、荒木などの若手の活躍も目が離せないところだ。
ところで、今回はこのクラスに紅一点の女性ライダーがいた。今まで紅一点といえば関東の高橋摩耶だったが、高橋は全日本を欠場、変わって登場したのが関西の長谷山ちえみ。スーパークラス田中善弘と同じくチーム波田の所属。IBクラスのポイントランカーである西村亜弥がおめでたになったので、日本代表選手としても期待がかかる存在だ。初めての全日本はなかなか体当たりだったようだが、走破力が高そうな印象で、今後が楽しみでもある。
トップ争いもおもしろいが、100人近い参加者を集める全日本選手権、それぞれいろんなドラマをもって会場にやって来る。ひとつひとつの物語を見つけられれば、全日本はさらにおもしろい。
投稿 : 2008年03月09日 07:55
■2010年3月号300円
3月号、いよいよ新しいシーズンが始まります。3月号の発送は、2月27日と28日の両日にわたっておこないました。
今月号は、ちょっと変わったトライアル風景が表紙です。でも、そのスピリッツは、世界選手権とも同じはず。トライアルの思い、広く伝わってほしいと思います。
実は、今月号は自然山通信13年目の創刊記念号でした(印刷屋さんに渡してから、それに気がつきました。とほほ。なので、4月号に、13年目の思いをまとめたいと思います)。
■2010年2月号300円
早いもので、2010年の最初の1ヶ月がすぎ、自然山通信は2月号を発売させていただきました。2月号は(珍しく?)2月1日にお手元に届いたと思います。もし年間購読の方で、まだ到着していない方がいらしたら、ご連絡ください。すぐ再送させていただきます。
今月も、2010年モデルのインプレッションはつづきます。日本に本格上陸のチスパ125とガスガスシリーズに乗ってみました。25周年を迎えたど・ビギナートライアルは、主催者萩原さんやスタッフ、参加者の寄せ書き寄稿。そのコメントの影に、トライアルの本質が隠れています。
黒山和江ちゃん参戦記は、ロッキートライアルの巻。
■2010年1月号300円
あけましておめでとうございますの新年号です。本屋さんではこの時期2月号を売っていますが、1月に2月号を売らなければいけない書店流通競争システムはおかしいと信じて、自然山通信は1月に1月号を売らせていただいています。
2010年モデルのインプレッションや25周年を迎えたど・ビギナートライアルについてなど。黒山一郎さんの、愛娘和江ちゃんのマシンの整備日記は、マシン整備の手引きとしても必読。
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2010ニューモデルインフォメーション、OSSA、SHERCO、SCORPA、BETA、HONDA/全日本トライアル選手権R7東北最終戦・黒山健一パーフェクト盤石の有終の美。他
■自然山通信09年11月号300円
全日本トライアル選手権R6中部・堂々、黒山健一がまんの貫禄勝ち他レポート。いつでも買える、誰でも乗れる‥‥‥ヤハマトリッカー改・YSP京葉/多摩テック、有終の美‥‥‥/四十雀トライアル/深山トライアル/寺井一希インタビュー
■09全日本R5中国1,980円
送料無料自然山通信DVDマガジン第5弾。9月6日開催の全日本選手権R5中国大会。岡山県原瀧山トライアルパークで、朝8時よりエキシビション125、国際B級がスタート、国際A級と国際A級スーパークラスは、12時10分からのスタートとなった。昨年からトライされている実験運用だ。試合序盤、昨年優勝の野崎史高(ヤマハ)が絶好調。そして黒山健一(ヤマハ)がじりじり追い上げる。
■自然山通信09年10月号300円
全日本トライアル選手権R5中国/FIM SPEAトライアル世界選手権R9スペイン/R10フランス最終戦/ライア・サンツ最終戦を残してタイトル獲得/2009FIM世界選手権ランキング
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