トライアル・自然山通信
【2008年08月03日】
北海道は黒山4連勝
3連勝中の黒山健一は、北海道大会でも勝利して、今シーズン4連勝を達成した。しかし試合の大半でリードをとっていたのは小川友幸で、黒山は負傷の影響もあって、ぎりぎりの勝利だった。
トップ争いは黒山と小川、そして前回近畿大会で大けがを負った田中太一の3人によって争われた。勝負は、3ラップ目の最後の5セクションで決まった。最後の5セクションで、3人の順位はころころとひっくり返ったのだった。
野崎史高はマシントラブルもあって4位。国際A級は西元良太が今シーズン3勝目。国際B級は小野田理智がシーズン2勝目を挙げた。
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セクションやコースは、例年とほぼいっしょ。なぜか大岩が年々高くなっている気がするとは、MFJのセクション査察をやっている伊藤敦志さんの感想だが、岩が成長することはないはずだから、手前の川が掘れていたりするのかもしれない。ライダーの感覚からすると、ちょっとしたコンディションのちがいが大きな差になるのかもしれないが、毎年観戦している目には、例年同じものが用意されているという印象。北海道に限らず、どこの大会も、セクション設定には変化がないことが多くなっている。大会の運営の負担が大きくなっているということだろうが、ちょっとさびしい(その点、関東大会は会場こそ同じだが、毎年最大限に変化が加えられている)。
いつもと同じ第1セクションでは、序盤の緊張からか、一様に走りが不安定。黒山健一が1点をつけば、小川友幸はカード不通過をとられて減点5でスタートを切った。第1セクションをクリーンしたのは野崎史高と、この大会が負傷からの復活戦となった田中太一の二人だけだった。
田中は、近畿大会で負った負傷から、まだ完全には癒えていない。あごや頭蓋骨にも骨折があって、これが完全にはついていない。当然、チームではこの大会への参加に慎重論もあったというが、田中本人が強く参加を希望したという。
田中は、今回はふつうのジェット型トライアルヘルメットで参戦したが、特別製フェイスガードも開発中とのこと。トライアルに必要な視界を確保し(意識して見ていない真下の視界も重要とのこと)、さらに強い衝撃を受けたときに首への衝撃をやわらげる機能など、トライアルが要求する過激なセクション時代のヘルメット(装備品)の開発も、田中のアクシデントの副産物かもしれない。
今回の大会は、いつもとちがって1ラップ目の持ち時間が2時間半に設定された。いつもは3時間半だから、ずいぶんと忙しい設定だ。
とはいえ、もともと3時間半の設定は、コースが(全日本と比べると)気が遠くなるほど長くセクション数が15の世界選手権のルールを踏襲したもので、全速力で回れば2分ほどで回れて、10セクションしかないこの大会では、3時間半は余裕がありすぎともいえる。懸案となっている、第1セクションでの長い間合いの取り合いは解消され、きびきびした試合展開が期待された。
野崎と、病み上がりの田中が好調に滑り出しを見せた北海道大会。続く第2セクションでは黒山のみがクリーンし、野崎は1点。田中は5点で、小川は3点。始まったばかりだが、黒山と野崎のヤマハ勢が1点ずつと好調で、田中が5点、小川は8点と大きなビハインドを負ってしまった。
小川は、とにかくライディングが乱れていた。続く第3、第4でも1点ずつを失い、序盤4セクションでクリーンがひとつもないというらしくない展開。
「今年は、どうしても走りが守りに入ってしまっている。それが、今回も出てしまった」
と小川は序盤の不調を振り返る。攻める気になれば単純に結果がでるものでもないから、むずかしいところだ。
一方、ライディングがさえていた野崎も、そのままではすまなかった。第3セクションでは、ただひとり美しいクリーンをしたかに見えたのだが、マシンにテープが接触していて、見事にテープを切断してしまった。こういうミスが、野崎の課題でもある。けれどこの時点では、走りの質の高さを考えると、野崎の勝機も充分にあった。不運はその直後。マシンが不整脈を起こし、異音も発生したという。調子を見ながらの試合続行となったが、以後、野崎はトップ争いから徐々に後退していくことになる。
第5セクション、先行していた小川も含めて、全員が動きを止めた。第5セクションはそんなに難しい設定ではなかったが、そういうところこそ、かけ引きが重要となるものかもしれない。2時間半の持ち時間でもまだかけ引きをする余裕があると見るべきなのか、トライアルにかけ引きはつきものとあきらめるべきなのか、トライアルとタイムコントロール問題の結論は、まだ決着がつかない。
さて、減点をまとめているのは、やはり黒山だった。細かい失点はあるものの、序盤5セクションを終えたところで5点がひとつもないのは黒山だけ。このまま今シーズン4勝目に突き進むかと思われた黒山の序盤の走りだった。
しかし実は、黒山は大きなハンディもかかえていた。1週間前、鈴鹿でのデモンストレーションに参加した黒山は、足首をしたこま痛めてしまっていた。この痛みが、黒山の試合からスムーズさを奪っていた。さらに痛み止めで処方した座薬が、黒山から平衡感覚や距離感覚を奪っていた。
ここ数年の闘いを見ると、水のある後半のセクション群ではヤマハは弱いといえるのだが、彼らのマシンも急速に成長している。もはや、水があるから調子が悪いなどということはありえないのだが、されどそのジンクスは今年も生きていた。
黒山は、第6セクションで5点になると、全員が5点となった第7セクションを入れて3連続5点。特に第7での5点は「加速していって気がついたら思ったよりも岩が近くにあって、もう間に合わなかった」という信じられない失敗だった。これも、どうやら座薬の副作用だったようだ。
黒山が減点を重ねていくのに乗じて、調子を上げてきたのが小川だった。第7こそみなと同じく5点だが、黒山が5点となった第6をクリーン、第7で1点と、一気に9点を取り戻した。さらに第8を1点で抜けた田中が最終セクションをクリーン。最終セクションは、1ラップ目には田中以外の全員が5点となっていたから、このクリーンは大きかった。1ラップ目が終わると、トップは小川、2位が田中で、黒山は3位に落ちてしまっていた。
2ラップ目、トップ3は揃って減点を減らし、小川、黒山は減点9、田中が減点10。しかしこの差は、順位を変えるほどのものではなく、小川、田中、黒山の順で最終ラップに突入していった。
「今日は勝利はあきらめて、2位を守ることに専念した」と作戦を切り替えていた黒山が、がぜん調子を上げたのが3ラップ目。4連続クリーン。その後も、5点はおろか3点も2点もないという抜群の試合運びを見せつける。
対して小川と田中は、3ラップ目に痛恨のミスがあった。小川は1ラップ目に華麗にクリーンした第6で、2ラップ目に続いて5点。田中のほうは、第6はクリーンしたものの、ここまで2ラップともクリーンしていた最終セクションで痛恨の5点。もし、田中が最終セクションをこれまで通りクリーンしていれば、田中は小川を破って2位に入っていたことになるし、もし小川が第6をクリーンするか、第6と第8を3点3点でまとめていれば、黒山の追い上げがあっても小川の勝利が決まっていた計算になる。終盤のトップ争いは、セクションひとつで泣き笑いが決まる、緊張感たっぷりの展開だった。
それにしても、黒山の終盤の執念もすごかった。最終セクションのコンクリートブロックは3段に積まれていたのだが、1ラップ目2ラップ目は3段目に登れず失敗した。3ラップ目も、3段目にアンダーガードをひっかけ、右足で無理やりマシンを送り込む苦肉の策での走破だった。あわや5点というところから、たった1点で切り抜けたところは、さすが黒山ではあった。ここで5点となっていたら、もちろん勝利はなかったわけだから、まさに背水の陣のトライだった。
「ケガをしたのはつらかったけれど、逆によかった面もある。いろんなジャンルのアスリートと話ができたし、これまで自分が甘い姿勢でトライアルに取り組んでいたということもあらためて痛感した。今はトライアルへの取り組みも、気合いが入っている」
と田中太一。体力的には1ラップ目の第2セクションで売りきれていたというが、その後もトップ争いをし続けたのは、気力が充実していたからだ。すでにデモンストレーション活動も再開している。全日本のトップ争いに、手ごわいキャラクターが戻ってきたのは、頼もしい。
野崎は、3ラップ目に復調して7点の好減点をマークしたが、すでに遅し。終わってみれば田中との点差は8点だったから、中盤での乱れが惜しまれるところとなった。
5位は小川毅士。黒山の39点に対して90点と、毅士がトップ3に切り込んでいくには、だいぶ減点を切り詰める必要がありそうだ。
6位以下は、いつもとちょっとちがった並び順となった。後半がんばった坂田匠太が6位。練習中の負傷と、マインダーなしの苦しい闘いをよくこなした井内将太郎が7位。田中善弘は3ラップ目に減点を増やしてしまって8位。減点がまとまらない尾西和博が9位で、三谷英明10位、小森文彦11位。スーパークラスは人数に関係なく10位までがポイントを獲得するので、今回は小森のみが無得点ということになった。
□国際A級
2008年は、西元良太が強い。終わってみれば、2位の柴田暁に8点差。1ラップ目に限っては、西元5点に対し2位の野本が12点だから、いよいよその差が光っている。
落ち着いたトライは、ますます磨きがかかっている。今回はクリーン数こそ、2位の柴田のほうが勝っていたが、ベストラップは3ラップ目の西元が出した4点。次点の5点も、西元が1ラップ目に叩きだしたものだった。
西元は2ラップ目に5点ひとつ3点三つという乱調ぶりを見せたが、これを3ラップ目に引きずらず、きっちり持ちなおしているところがすごい。
ランキングでは2位の柴田に24点差。まだまだタイトルは決まらないが、勢いは完全に西元のものになっている。
□国際B級
小野田理智と上福浦明男。ふたりのベテラン以外に勝ちのない今シーズンの国際B級。ここまでは上福浦の2勝1敗。勝利どころか、2位入賞もこの二人以外にはないという戦況だ。
「足をつけない!」
と悲鳴を上げる試合中の小野田。今回のセクションでは、全クラスを通じて第7セクションが難関だったが、小野田の減点11のうち、この第7セクションで9点が失われている。
2位神福浦は、今回はふたつの5点を含んで“完敗”。ランキング争いは2勝2敗同士で互角となった。残り3戦。二人の争いはどちらが勝利するのか、そしてこの二人以外に、トップ争いにくいこむライダーは現れるのだろうか。
3位荒木隆介は、去年の北海道大会で初ポイントを獲得し、今回は初表彰台。マインダーの父親の都合がつかず、自走で会場へやってきた大田裕一はマシントラブルを起こしながら15位で完走し、1ポイントを獲得した。鹿児島から大阪までフェリー、大阪から舞鶴まで自走、舞鶴から小樽までフェリーに乗り、小樽からは地元の方の協力を得てマシンを運んでもらうという若さあふれる参戦だった。
投稿 : 2008年08月03日 17:45
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