トライアル・自然山通信
【2008年09月08日】
野崎史高、3年ぶりの勝利
連勝を続けている黒山健一の連覇を阻んだのは、2007年チャンピオンの小川友幸ではなく、黒山の僚友の野崎史高だった。野崎は2004年2005年と、世界選手権に参戦している当時、全日本最終戦(どちらもSUGOだった)で勝利をおさめたが、以来勝ち星に恵まれず、今回の勝利は3年ぶり3勝目となった。
2位は小川友幸。小川は2ラップめの失敗が響き、1ラップめのトップの座を維持できずに2位となった。黒山健一は今回は不調を克服できずに2ラップを終えてしまって3位。中盤までは田中太一に遅れをとっていたが、最終ラップに好スコアをマークして逆転3位。
国際A級は西元良太が勝利をもぎ取り、国際B級は小野田理智が2連勝。
なお今回の大会は、国際B級が朝一番でスタートし、国際A級はお昼過ぎにスタートするという実験的新方式で開催された。この方式には賛否があったが、実際に運用することでメリットもデメリットも見えてきた。今後、よりよい全日本システムのあり方を模索する、大きな提言となるにちがいない。
●詳細リザルトは
自然山リザルト(全日本)
をご参照ください。
新方式の採用によって、国際A級スーパークラスのスタートは12時半頃となった。いつもなら、8時過ぎには会場入りをしている時間に起きれば間に合うというスケジュールは、スーパークラスの面々には快適だったようだ。しかし、朝が遅ければすべてよいというわけではない。そして、この新方式が大会の結果にどう影響したのかも、すぐには結論が出せるものではない。
さしあたり、ライダーにとって大きな問題だったのは、今まで5時間半だった持ち時間が3時間40分となり、3時間半あった1ラップめの持ち時間が、1時間40分となったことだった。
持ち時間については「ライダーはどうにでも合わせられる」と小川友幸は試合後に語った。持ち時間がたっぷりあった方が途中で休憩もできるし駆け引きの間合いも取れる。しかしそれは絶対に必要な時間ではなく、与えられた条件の中で戦っていることだ。実際に、ときおり持ち時間が残り少なくなって、エンデューロのようにセクションを駆け抜けるシーンも見受けられる。すべての大会がそうあるのはよろしくないけれど、最悪の場合、ライダーはそれができる順応性を持っているということだ。
とはいえ、10セクションを1時間40分、つまり100分ちょうどということは、1セクションあたりたったの10分ということだ。セクショントライの持ち時間は1分だから、残り9分で下見をし、次のセクションまでの移動をしなければいけない。トラブルが発生したら、万事休すだ(現実に、クランクケースにダメージを負った三谷英明は、完走はしたものの、今大会では戦線離脱も同然となった)。
もちろん、悪いことばかりではない。第1セクションでスーパークラスのライダーがトライするまで1時間も待たされるという、不可解な試合展開は当然ない。てきぱきとした進行は小気味がよい。
第1セクションは、こういった持ち時間のことも加味されてか、比較的セクション脱出が容易な設定となっていた。1点2点の減点はあったが、5点が一人もなく1ラップめのトライが終わった。しかし続く第2セクションからは、難セクション続きとなった。
第2セクションをアウトできたのは、3人だけだった。小川友幸と黒山健一、井内将太郎。正直なところ井内は、いまだトップ4に切り込むにはパワー不足が否めないが、一方、マシンをなんとか押し出す威力はなかなかあなどれない。今日もその井内パワーが、早くも第2セクションで炸裂した。
野崎は、カードを落としたりテープを切ったりといった失点が多い。野崎にとって、カードの類は鬼門中の鬼門だ。どうやらチームのボス、大月信和氏には「カードを蹴っ飛ばしたりしたら罰金だぞ」と檄を飛ばされているらしい。ところがこのセクションで、そんな失敗が出た。抜け道防止のために設けられている黄色マーカーの存在を見落として、大きく迂回をしてしまったのだ。この迂回をしなくてもセクションを出るのは可能だったと思われるから、なんとももったいない5点となった。しかし「この5点で目が覚めた」と、野崎はあとで語った。野崎にとって幸いだったのは、こういう失敗がよくて3点のセクションで発生したことだ。クリーンセクションでの失敗だったら、取り返しがつかないところだった。
第3セクションは、アウト目前の大岩がくせ者。田中太一がなんとかこれを登って喜びの叫びとともにセクションアウトした。野崎は失敗で5点。続く黒山は、足を出さずに大岩に登ってきて、これならクリーンかと思った矢先、マインダーが支える間もなく真っ逆さまに転落してしまった。これで黒山は腰を強打。しばらく起き上がれずに心配させたが、どうやら大事には至らない様子で先のセクションに進むことができた。しかし痛みは相当にひどかったらしい。
このセクションでは、最後に小川が1点で抜け出すことに成功。3セクション終了時点で黒山に7点、野崎に6点、太一に5点の差をつけてトップに立った。小川のタイトル争いは限りなくむずかしい状況になっているが、タイトル争いはともかく、まず一勝がほしい小川にとっては、この序盤戦は悪くない。
4セクション、黒山がまたしても5点を喫した。黒山にすればなんということのない土の斜面を登っているときの事件だった。腰を強打した転倒の影響が甚大なのか(あとで、この影響はないとは言わないが、本質的な問題ではなかったと本人が語っている)、この日の黒山は、明らかにおかしい。
ここでは、井内が2点で抜け出したのを始め、太一3点、小川1点、そして野崎がクリーンをたたき出している。マーカーを見落としたミスは、このクリーンによって、少なくとも野崎の気持ちの中では帳消しとなったにちがいない。
第5セクションは国際A級とまったく同じラインを走る。さすがに減点をするライダーはごく少ないが、それでも全員が目をつぶってクリーンするというわけにもいかない。トライアルがメンタルスポーツであるゆえんでもある。
第6セクションは再び難セクション。いくつかの大岩を越えたあと、浮き石のような飛び石に前後輪をそれぞれのせて、そこから最後の岩にトライする設定。細かいマシンさばきと大胆なアクションとがあわせて要求される。
ここでは、小川毅士、井内、尾西らもセクションを抜け出ている。黒山が第5のクリーンに続いて2点でアウト、悪い流れを払拭したいところだ。田中太一も3点で抜け出た。ここで小川が失敗。ちょっと痛いミスが出たが、この日は難セクションが多いから、ひとつふたつの失敗はまだ取り返せる。最後に野崎が完璧なライディングでクリーンして、このセクション唯一の減点ゼロとなった。いよいよ、野崎が実力を発揮してくるのが、この頃からだ。この時点で、ひとまず野崎と小川は同点となっている。
第7セクションも厳しかった。地形はすり鉢状の土の斜面だが、スーパークラスはそこを右に左に迂回させられながら登っていく。ここでは黒山がテープを切って5点。野崎がなんとかマシンをセクションアウトさせると、小川が1点でここを抜けてみせるという技の品評会となった。
前の晩の激しい雨で、水気は森の中にたっぷり残っている。そこに当日は好天となったから、蒸し暑い。しかも休憩を取れる時間的余裕はない。セクション難度の高さもさることながら、そうでなくてもなかなか厳しい試合模様となっていった。
第8セクションは滑りやすさが天下一品。トライするそばから5点となっている。黒山はなんとかアウトができたのだが、残り1メートルほどのところで1分めの笛が鳴った。無情。時間内にアウトできたのは、小川友幸だけだった。第7セクションでの1点とここの3点で、小川は再びリーダーとなった。
しかし最後にわなもあった。第9セクションに到着したスーパークラスの面々を待っていたのは、A級の2ラップめの渋滞だった。田中太一は時間内にトライを終えて2ラップめにはいっていったが、黒山、野崎、小川の3人はそろってタイムペナルティを受けることになった。トライ順もこの順だったか、スタート順が一番遅い黒山が減点も少ない。最後にトライした小川は、5分以上の遅れで、1ラップめのタイムコントロールに飛び込んだ。
小川にとって幸いだったのは、直接のライバルの野崎も、小川とほとんど変わりなくタイムペナルティを食らっていたこと、黒山や太一は、はるかに多くの減点を食らっていたことだった。黒山にいたっては、タイムペナルティをあわせると尾西と同点となるという状況だった。
2ラップめ、ここで小川がやや減点を増やしてしまった。小川以外はみな減点を減らしてきたから、これはちょっと痛い。これで小川は、リードを守るどころか野崎に6点のリードを作られてしまった。2時頃に雨がぱらついたが、全体的にはコンディションは好転してきていて、終盤での再逆転はむずかしい状況だった。
3ラップめ、3位の座を太一に守られていた黒山が、いきなり復調した。これまで攻めあぐんでいた難セクション群を、端からクリーンしていく。2ラップめ終了自邸での太一のアドバンテージは3点だったが、この差はあっという間になくなった。結局、黒山の3ラップめの減点はたったの3点。この日のぶっちぎりのベストラップである。しかしそれでも、黒山が3位以上に浮上することはなかった。1ラップめの黒山の減点は30点だから、いかに3ラップめを3点でまとめようとも、そのハンディは大きすぎた。
チャンピオンとしての面目にかけても、なんとしても一勝がほしかった小川だったか、3ラップめの減点は野崎と同じく8点だった。2ラップめまでの点差が、そのまま試合結果となった。
2位に6点差となって迎えた野崎の最終セクション、すでに勝利は決まっていたわけだが、野崎は最終セクションをじっくり下見しクリーンした。第4、第6、そして第9を3ラップともクリーンしたのは野崎ただ一人だった。
この日の結果、ランキングトップの黒山と小川のポイント差は12点。小川には、3点差で野崎が食い下がることになった。黒山は、次の中部大会で7位にはいればチャンピオンを決定できる計算だ。
今回、5位にはいったのは尾西和博。最下位となったり、試合中の感触とは裏腹不本意な結果となったり、思い通りにトライアルができない今シーズンの尾西。「カードを飛ばしたりの不運があって、今回もまたいつもと同じような結果か!と思ってしまったけど、今回は結果がついてきてよかった」と安堵の表情だ。抜群の走破力を見せた井内は6位。尾西の好調と裏腹、小川毅士が今季最悪の7位に沈んでいる。野崎以外で第6セクションをクリーンした唯一のライダーとなった田中善弘が8位となった。
前回6位にはいった坂田匠太は、1ラップめの序盤にしてマインダーのお父さんが負傷し、救急車出動となった。この影響で坂田はリタイヤとなっている。
■国際A級
12時10分よりスタートとなった国際A級。1ラップの持ち時間は1時間40分と忙しいのはスーパークラスと変わらない。
そのペースに翻弄されたか、すっかり安定感を増していた西元がちょっとミスしがちで1ラップめを終えた。5点と1点がふたつずつ、2点と3点が一つずつという結果はけっして悪いものではないが、それ以上のライバルがいる限り、負けは明らかだ。
1ラップめのトップは、ベテラン本多元治。西元との点差は、5点だった。
2ラップめ、西元は地道に減点を減らしにかかるが、圧倒的強さを発揮するにはいたらない。今日は勝てないのではないかという観測が、関係者からも聞こえてくる。しかし西元本人はあきらめてはいなかった。
こつこつとクリーンを重ねていく西元。本多もけっして調子を乱してはいないが、3ラップめの最終セクションで減点5。結果的には、これが1点ならば本多の勝ちだったから、今回も熾烈な勝負だったといっていい。
3位には、1ラップめの12位から急浮上してきた小野貴史。結果表を見ると、3位以下はラップごとにころころと変わる忙しさで、5点一つクリーン一つで結果が動く試合展開だったことがよくわかる。
国際A級、2位から15位までの各選手。左上から2位本多元治、3位小野貴史、4位野本佳章、5位柴田暁、6位佃大輔、7位宮崎航、8位岡村将敏、9位永久保恭平、10位村田慎示、11位斎藤晶夫、12位砂田真彦、13位藤巻耕太、14位徳丸新伍、15位三塚政幸
■国際B級
この日、いつもどおり朝8時からスタートしたのは国際B級のみ。ただしB級にとっても、1ラップの持ち時間は2時間といつもよりだいぶ短く設定されていた。
この持ち時間で大失敗をしたのがランキングのトップ争いをする上福浦明男だった。この日の上福浦は、多少調子が悪そうには見えたが、クリーン目前の5点などもあって、いつもの上福浦とまるで別人ということはなかった。事実、1ラップの減点数はトップの18点に対して24点で2位。充分に挽回も可能なものだった。しかし上福浦は、1ラップの持ち時間が2時間こっきりであることを知らなかった。のんびり最終セクションに到着した上福浦は、なんと9点ものタイムペナルティをもらってしまった。
9点のハンディは、小野田と上福浦の争いの中では致命的だった。そしてこのまま、この日の上福浦は優勝戦線から脱落していった。
今シーズン初めて、トップ3に二人の若手がはいることになった。前間元気と松浦翼。本来なら、もっと早く二人のベテランに割って入るべき素材だが、今シーズンのふたりはそれ以上に手強かったということだろう。
4位には、4ストローク125ccで戦う大田裕一がはいった。スケールアップなしの4ストローク125ccは大きなハンディだが、大田は2ラップめには2位にはいり、クリーン数も13と、ベストクリーンにあとひとつまで迫っている。若手の中でも異色の参戦体制として、ちょっと注目しておきたい。
投稿 : 2008年09月08日 08:03
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