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1511諏訪神社

201511/15

高田島諏訪神社彫り物物語(序章)

ぼくのいる高田島地区には、神社があります。小さなものまで入れるとけっこうたくさんあるんだけど、一番メジャー級なのが高田島諏訪神社。長野県の諏訪神社系の神様です。

その神社に、けっこう立派な彫り物があります。本日のお話は、それにまつわる昔話と、これから起こるべきお話の序章です。

神社には、全体に彫り物があるのですが、今回の主人公は十二支の彫り物。「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」が6枚の木彫になってます。

彫ったのは「シマさん」という人で、この神社を手がけた後、人間国宝になられたということだけど、高田島のみんなは記憶もあいまいで、その方のお名前も特定できないでいる。なんせ、今70歳くらいになった棟梁が、若い頃に弟子として建築にかかわった時代の建物と彫り物である。

ところがシマさんの作品は「午・未・申・酉・戌・亥」の六支、3枚しかない。残りのあるべき3枚は、長いことはいるべき空間だけがあって、からっぽだった。まぬけな状態で、おそらくはこの何十年が過ぎていった。

なんでそんなことになったのかというと、今の時代のおじさんたちの淡い記憶をつなげると、やっぱり金の問題だったという。シマさんは4年もの間、高田島に住みこんで彫り物をしていた。いくらで契約をしたのか、当時は子どもだった若きおっさんたちはよく知らないのだけど、それなりのお金の話がついていたんだと思う。しかしなんせこういう芸術家の方だから、仕事は時間がかかり、そのうちに子どもの教育費だとかなんだとか、お金が必要になった。それでシマさんは、お金の無心をしたらしい。彫り賃の値上げ交渉だ。シマさんの希望は25万円だったという。

今の25万円じゃないから、それなりに高額の交渉となったことだと思うけど、それを頑として受け付けなかった村人がいた。当時は(今もまぁそうだけど)頑固だったんですね。契約した金額は与えてある。納期は遅れている。このうえ、なんで金を渡さなければいけないんだ、という主張は一利あった。

それでシマさんは、十二支を半分投げ出して高田島から消え去ったという。

1511しまさんの彫り物

ちなみに、この木彫がシマさんの作品である。何十年たっても目の輝きは消えていない。

では、シマさんが彫り残した残りの六支はどうなったかというと、震災直前に、集落の役員さんがクマさんという彫師に依頼をし、万事まるくおさまるところだった。何十年も放置していたが、このままでは子孫や百年後にこの神社を訪れた人に恥ずかしいから、今のうちにきちんと彫り物を完成したいと思ったのだった。

ところがこのクマさんもまた、一筋縄ではいかなかった。集落のどなたかの紹介で、ほんとは石を相手にする彫刻家なんだということだけど、なんとかなるだろうと木彫に挑戦したのはまぁよかったけど、約束した納期に間に合わなくなって、なんとか1枚は彫ったけれど、残りの2枚は納期を迫られ2週間で彫り上げた、という代物だ。彫り上げたといえるのかどうかは、こちらをご覧ください。こちらは寅と卯。子と丑はこれよりももうちょっとうまくできていて、辰と巳はおよそなんだかわからない。ないしょだけど、ぼくは親愛をこめて「うんこ」と呼んでいる。

1511クマさんの彫り物

さてさて、そんなこんなで、今現在、諏訪神社には美しいシマさんの木彫と、なにかの罰ゲームかマンガの世界のような木彫と、ふたつの芸術が同居している。しかしこれでは、というか、これこそ末代に恥ずかしい。

ということで、神奈川から移住してきたOさんが木彫師のYさんと接点を作ってくれて、Yさんが残る六支を彫ってくれるかも、という話になって、Yさんがはるばるたずねてきてくれた。まず件の神社と今ある木彫を見てもらわないことには始まらない。

1511諏訪神社見学

これは立派な神社と彫り物ですね、と言ってくれたYさん。仮名になっているのは、ぼくがびびりだからだ。過去、シマさんとクマさんのふたりに仕事をしてもらって、何が悪いんだかわかんないけど、うまくいかなかった経緯がある。三度目の正直で今度は大丈夫、と思いつつも、まだ話は進行中だから、ちゃんと話が決まるまで登場人物は仮名にさせていただいてます。すいません。杞憂に終わっていただく予定なんですが。

1511もーちゃんの板

こちらは掘ることになるであろう欅の木を見てもらっているところ。木は高くて、へたをすると彫り賃よりも高いものになってしまうのではないかなんてことで、できれば今あるものを使いたい。といっても、これは獅子舞などの芸能の委員をしているEさんのもので、これを使わせてもらうについての最終的な話し合いもこれからだ(みんな、これを使うもんだと決めてかかっていて、この集落の人間関係とかこれまでの流れからして、その通りになると思うんだけど、なにせ人のものだから、もう少しだけちゃんと話をする必要がある)。

1511彫り物ミーティング

Yさんは、その日は泊まらずに帰るという。それで集まれる人だけ集まって、Yさんに木彫を頼むにあたっての相談と、懇親をした。Yさんとは、メールなどのやり取りを通じて当地の風土や十二支木彫の寸法、その他の情報を提供していたけど、地域のなりたちや現況などはわからないはずだし、ぼくらもYさんについてはほとんど知らない。作品の記録を見せてもらって、その彫りの深さに舌を巻くばかりだ。

おいくらで彫っていただけるのか、どれくらいの納期がかかるのか、材料はどうやって運ぼうかなど、いろいろ話をした。どれもきちんとしておかなければいけない問題で、こういう話はやっぱりひざを突き合わせて語るに限る。

1511ますさんの割りばし

それでも、やはり大事な話は酒のない席ではしてはならぬというのがこの地域の言い伝えだ(真偽は不明)。Yさんはその晩に新潟まで行くというから酒を飲んだら運転はできない。しかしお気の毒に、いっしょについてこられた奥さまが、その晩の宿まで運転していただけるということになって、舞台は本気の酒の席になった。まだお昼過ぎだったのだけどね。

1511ますさんの一幕

そしてかくして、当地のお祝い時には必ず登場するS商店のお刺身(うまいのだ。包丁さばきがいいのだろうけど、このあたりでは高田島の山の中では活きのいい魚がとれる、ということになっている)をつまみながら、福島は二本松の酒、大七(の、一番安いやつ)で気持ちよくなっていく。

お客人を接待しているのか、本人たちが楽しんでいるだけなのか微妙な感じもあるのだけれど、みんなが笑っているのだから、みんな幸せなのにちがいない。さてこの彫り物、はたしてどんなものが作られますやら、その前に、集落とYさんは、今後どのような関係を作っていくのだろうか。半分当事者に首を突っ込みながらも、興味はつきないのであった。

このお話は、きっと続きます。

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