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1409開会式

ボンダンス

1408ボンダンスで踊る

 あっという間に1ヶ月半前の話になっちゃったけど、お盆の川内村で恒例のボンダンスがあった。これ、震災前からやっているもので、さすがに2011年の夏はできなかったけれど、2012年からは元通りに開催している。盆踊りといえば地域のおっさんおばさんたちの恒例行事となっているのがふつうだけど、ここの盆踊りは、主催が若者ばっかりだ。村に残って仕事をしている若者、お盆の時期だけ帰ってきて、親の顔を見る間もなく祭りの手伝いをしている若者など、若者にもいろいろいる。役場にお勤めの若者も多いのだけど、これ、役場の行事ではなく、若者たちの自主的イベントというところがすごい。

 主催の対象はカピくんという。なぜカピなのかといえば、彼の名前はカズユキだかなんだかで、カズピーが短くなってカピになったということらしいんだけど、そういえば本名がなんだかはわかんない。「カピで通じるからいいんですよ」とまわりの連中もいっている。
 たったひとりで道端のゴミを拾って歩いたり、そういうことができるやつが、カピくんだ。

1408ボンダンスのカピこれがカピくんだ

 ボンダンスでは、いつもはトラックの荷台がステージだった。今年は立派なステージができていたから、さぞや村やどこかからかがっぽり補助金をいただいているんだろうと思ってしまうけど「くんないんですよ」とカピくんは笑っている。トラックがステージに昇格したのは、実は深いわけがあった。
 トラックは彼の仕事道具で、大荷物を運んでいる。ところが今年は、とある大規模復旧工事に従事したところ、そのトラックが基準を超えて汚染してしまったため、持ち出せなくなっちゃったんだそうだ。こういうところにいると、お祭りもまた、原発事故と無関係ではいられない。
 レンタルのトラックを借りるのと、ステージを借りるのと、ほとんど費用が変わらない。なので今回はステージを借りたんだという。出せなくなっちゃったやつを出してくるかどうかはともかく、ボンダンスのステージは似合うような気がする。来年はカピくんのトラックのステージが復活するといいなぁ。
 お盆の川内村は忙しい。全村をあげて戦う盆野球は、震災前には2日間に渡って開催されていた。ほかに、成人式もある。真夏に成人式というのも暑そうだけど、1月15日の成人式は凍ってしまう。それより、お盆にはみんな帰りやすいけど、お正月に帰ってきてまた15日に成人式に帰ってこれる人は多くないという理由もある。そんなこんなのイベントのあと、ボンダンスだ。ボンダンスの実行委員たちは盆野球の前線で戦う戦士たちでもあるから、大忙しだ。
 今年はこの他に、復興祭があった。復興祭は2012年からちょくちょくやっていて、今回はラジオ福島の中継なんかもあるし、お笑いのはなわさんも来ちゃったりして、なかなかにぎやかだ。チラシを見ると、福島原子力事故影響対策特別交付金事業なんだそうだ。会場は村の多目的施設のいわなの郷で、ボンダンス会場からはクルマで10分弱かかる。
 なんで別々にやるのか、その真意はよくわかんない。
 ボンダンスは、そもそもは盆踊りのイベントだけど、昼間っからステージにはいろんなバンドが登場する。イベントの経費は(いくばくかはいただくけれど)出店の売り上げで補填する、店を出したいやつがいたら、しょば代はとらずに勝手にやってくれというおおらかな仕切りで、昔からの村の若者に、震災後にやってきた企業や応援部隊の若手グループもいっしょになって出店をやっている。こういう広がりは頼もしい。

1408ボンダンスの村長と大ちゃん村長と大ちゃん

 開会式では村長がやってきてごあいさつした。村長は当然、復興祭からのハシゴだ。お客さんの中にもハシゴしてきた人が何人かいるけど、タダでなにが食えたとか、ホンモノのはなわを見た、というのが話題の中心だった。
 霞が関では、こういうことが震災復興につながると信じられているのだろう。お金が動くというのはいいことだから、どんどんやってくれればいい。でも、村の人たちの気持ちがそんなに動くとは思えない。

1408ボンダンスのバンド

 今回のステージの主役は「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」。ボーカルを担当するとし・ろうさんは、震災直後に被災地に支援物資を運び込んだりと、震災に深い関心を持ち続けている。そんななか、川内からイチエフ作業に出かけているチームと関係ができて、今回のステージの実現につながっている。
 大阪に小原一真さんというフォトジャーナリストがいて、この人は精力的に原発事故に取り組んでいるんだけど(写真のセンスも素晴らしいし、なにより行動力がすごい。取材現場にぼくと彼がいて、彼のカメラが壊れちゃったとしたら、ぼくのカメラを貸してあげたほうが、きっと世のためになるだろうと思う数少ない一人)彼の仕事に原発作業員のルポルタージュがある。そこに登場するのが、村の若者作業員たちなのだった。

1408ボンダンスの仁さん

 ライブの最中に、ふと仲間と離れて、ひとりで盆踊りのやぐらの上から演奏を見守っている人を見つけた。それがこのイチエフ作業員の親方だった。
 彼の思いは、ぼくにはおいそれと語れないものだと思っている。ぼくは彼らのイチエフでの作業を見ていないし、まだまだ知らなすぎるから。でも強い男の涙している背中は、ぼくが知らないいろんなことを、語っているような気がした。

1408ボンダンスのらいと

 という熱い時間が過ぎて、夜になった。いよいよ盆踊りのはじまりだ。2012年、川内村では数日にわたって復興祭が開催されたけど、その動員実数のほとんどは、最終日の盆踊りの時間に記録されたものだったんじゃないかしらん。村のひとは、なんだかわかんないイベントにはわざわざ足を運びたがらない。盆踊りは毎年やってる村のイベントで、息子とかが焼きそばを焼いてたりするイベントだからでかけていく。復興祭は、特に最初の1回は、なんだかよくわかんないから出足がにぶるのはしょうがない。田舎の村は排他的だとよく言われるけど、顔が見えるようになった相手にはいたってあったかい。人事異動でいなくなってしまうお役人が田舎の村で仲良くするのは、きっとむずかしいだろうと思う。
 盆踊りの太鼓を叩いているのは、小学校2年生のRくん。お父さんのお仕事は、やっぱり原発の電気関係の整備もする会社をやっている。彼が太鼓を叩いているのを見て、お父さんやおじいちゃんのこととか思い浮かべると、今度はこっちが泣きべそかいてしまいそうだ。本人に会ったら、なんで泣いてるの、なんて言われてしまうだろうけれど。

1408ボンダンスの花火

 この頃になると、もうすっかりビール攻撃に負けてしまって、だんだん意識もあやしくなってきてしまった。クルマで来たから、最初は飲まないと決めてたんだけど、こんだけいろんな仲間がいると、同じ方向に帰る人だっていっぱいいるわけだ。乗せてってやるよ、という人を見つけて、クルマは置いていくことにした。丸一日くらいクルマを置いておいたって、なんの事件にもならないところが、村のいいところでもある。
 それでも乗せてってやるよ、と言ってくれた人が景気よくビールを飲んでいるのを見てしまってびびり、そしたらその娘と会って、だいじょぶ、あたしがめんどー見ます、とまた安心させられるなど、飲んで帰るのもそれなりに気苦労はあるのでした。えりちゃん、その節はどうもありがとうございました。

1408ボンダンスの花火

 ということで、2014年のお盆の祭は終わった。翌日、16日は朝から雨だった。クルマをとりに行くと、雨の中、ボンダンス実行委員のみんなが祭りの後片づけ中だった。
 この連中がいる限り、村はだいじょうぶだかもしれないと思う。

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