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デ・ナシオンと自然山通信

カラスアゲハ

 毎年、トライアル・デ・ナシオン(TDN)の取材は欠かしたことがなかったのだけど、今年はどうも雲行きが怪しくなっている。今年は無理かなぁという感じになってきている。もう開催まであと1ヶ月になってしまっているけど、この時点でいまだ悩んでいるというのが、自然山時間なのでした。


 行けないかなぁというその理由はいくつかある。
 まず、この数年来の慢性的な円安で、海外に出るのはとてもつらくなっている。金利を安く設定している日本の金融政策の結果らしいけど、喜んでいるのは輸出産業の人たちばっかりじゃないかなぁ。トライアル界には、どっちかというと輸入産業の人が多いので、みんなして悲しがっている。
 ちょっと前、ヨーロッパで昼飯10ユーロなんていったら、大喜びだった。1000円するかしないかで、サラダ、メインディッシュ、パン、コーヒーのコース。日本のファミリーレストランのランチコースとはちがって、お楽しみ度は断然上。イタリアではコーヒーも1ユーロ弱で、80円ちょっとでエスプレッソが飲めるという感覚だった。
 ところが今や、ユーロは160円。大喜びの昼飯は1600円になった。コーヒーは今でも割安感はあるけど、それでも130円くらいになった。いちいち日本円に換算して「高いからやめよう」と品定めをしていると、買い物なんかできない。物価が高いんじゃなくて、日本人が貧乏なのだから、しょうがない。こんなに貧乏なのに、日本の景気は回復していると日本国家は喜んでいる。幸福の指針が狂っているとしか思えない。
 お次が、世界選手権最終戦ベルギー大会の中止だ。いったい、なんだって突然中止になっちゃったのか、さっぱりわからない。まぁヨーロッパでは、こういうことはよくあって、大局的には不思議でもなんでもないんだけど、最終戦ですよ。観戦や取材にいくんで、すでに格安チケットを手配している人もいた。格安チケットってのはキャンセルできない前提で安かったりするから、大会が中止になってもどうすることもできないのであった。お気の毒。
 世界選手権最終戦とTDNは、だいたいダブルヘッダーで組まれていることが多い。最終戦を取材して、そのまま1週間滞在していると、TDNが観戦できる。おいしいのである。その目玉のひとつがなくなって、大きく出鼻をくじかれてしまった。
 ニッポン女性チームが派遣されないというのも悲しいニュースだった。ノミネートされた3人(萩原真理子・西村亜弥・高橋摩耶)から参加見合わせの申し出があり、これを受けてトライアル委員会が女性チームの派遣中止を決定したものだ。男子チームは予定通り派遣されるから、TDNでの優勝争いの興味は少しも薄れることはないのだが、ここんところは日本女子チームの活躍も大きな目玉だったから、これを失うのは痛い。
 百歩譲って考えると、女子チームの参戦をお休みすることで、資金に余裕ができるって見方もある。選手会からの遠征費支援(みなさんからの募金活動で成り立っています。いつもありがとうございます)も金額がかさんで苦しいので、ここらで一回お休みしておくという選択肢もありなのか。
 でも、TDN参戦をお休みするとどうなるか。日本は2002年に参戦を中止した。そしたら翌年のスタートが一番最初になって(当然だけど)、ひどく苦戦をした。優勝を狙うには、優勝優勝と叫ぶばかりではなく、毎年きっちり参戦し続けていないとダメなんだというのを、あの時思い知った。だから去年(2006年)、3人の体制でとても勝ちを狙える状況ではなかったけど、それでも3位を得たのはとても意義があったと思うのだ。
 そういう意味では、萩原・西村・高橋の3人は日本のベストメンバーだけど、彼女たちがいけないなら、時点を繰り上げて選抜するという手段もあったのではないか。参加し続けてこそ勝利のチャンスがあるという点では、それが最善の道だった気がする。
 もっとも、選手個々に聞くと「行きたかったけど、残念」というコメントが返ってくる。このあたり、まだまだ体制的に、ニッポンチームは勝つべきところにはないのだと思い知るところだ。
 選抜メンバーの小川友幸、黒山健一、野崎史高には、裏切り者めという感じで「行きましょうよ」と誘いを受ける。今回はマン島での開催だから、イギリスチームには多くの応援が駆けつけると思われる。日本チームには応援がない。いつも取材していて、一番に思うのはライダーのトライがよかったの悪かったの以前に、それ以外の部分で日本は負けている。最初にやるべきは日本人の人口を増やすことだと痛感する。「TDN、もてぎでやるしかないですかねー」という声も聞くけれど、日本の応援団、もっとヨーロッパにいってくれないかなぁと、いつも思うのであった。
 と、こんなことをいっているそばから「今年は取材にもいきません」というのは、我ながら冷たいなぁと思うし、裏切り者と言われてもしょうがない。なんでも、巷ではTDN派遣をやめちゃうといううわさもあるそうだ。根も葉もないうわさを流すのが好きな人は多いし、選手たちが毎年たいへんな思いをして参戦しているのを見ると、うわさが出るのもしかたがないような気はする。ぼくらが取材に行かないと、このうわさにも拍車がかかるのかな。関係ないですよ。
 今、TDNを戦っているのは、いずれも世界選手権参戦経験者たちだ。この先彼らが引退したら、TDNを走る選手がいないではないかというのが、TDN撤退のうわさの根拠のひとつだけど、それならそれでいいではないか。今、日本は優勝を争うトップクラスにいる。ライダーが世代交替して同じ戦力を用意できないのだったら、イタリアやフランスに勝負を挑めばいいし、それも無理なら、Bクラスで優勝争いをすればいい。なんでもイチバンが好きな多くの日本のみなさんにはご不満かもしれないけど、次世代のニッポントライアルが花開くには、そのへんから始めるべきだと思ったりする。
 なんて、えらそうなことを言ってますが、取材にいけないのはほんとになさけない。そういえば、去年撮影した映像は、いまだ編集が終わっていなくて、自然山DVDにもなっていない。こういうのが「TDN派遣中止」のうわさの遠因になっちゃっりするんだろうな。なんとも申しわけないけど、根も葉もないうわさに振り回されないで、ニッポンチームを応援してくださいね。
 写真は、家の庭に飛来した(たぶん)カラスアゲハ。ちなみに藤田秀二さんのお兄さんは月刊むしという昆虫の専門誌を編集しています。

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