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四十雀トライアル

07四十雀スタート風景

 去年に引き続いて、四十雀トライアルに行ってきました。去年は淡路島。今年は下関での開催で、締めきりの最中に下関まで出かけていくのはちょっと勇気がいったけれども、行ってきた。デ・ナシオンと日程が重なっていたり、毎年参加できるわけではないけれど、四十雀は、ぼくにとってはなんとなくはずせないイベントのひとつです。


 最初に四十雀に参加したとき、ぼくは40歳になったばかりだった。四十雀のピチピチの新入生。40歳になったらみんな四十雀に入学するものだと思っていたけど、その後の様子を見ていると、どうもそういう感じではないみたい。かつてぼくにトライアルの「ト」の字を教えてくれた大阪のN師匠なども「トシはとったが、ワシはツートラや四十雀に参加するほど落ちぶれたくない」とおっしゃっていた(記憶に基づいて書いてるんで、もしかしたら少しニュアンスはちがったかもしれない)。勝負をかけてゴリゴリトライアルをやってきた人にとって、四十雀は生ぬるいってことなんだと思う。ぼくはゲートボールのことはしらないけど、ゴルフに熱中している人に「年取ったってゲートボールにはひよらないぞ」と思っている人もいるんじゃないかしらん。例によってたとえは悪いと思うけど、まぁそんな隔たりが、ふつうのトライアルと四十雀にはあるみたいなのだ。
 四十雀の居心地がいいのは、トライアルの勝負が本当に二の次であることだ。「勝負は二の次、楽しむことがトライアル」というお題目の大会や、そういうポリシーをお持ちのトライアル愛好家の方々は数多い。ところがそういう向きのトライアルを見ていると、なんのことはない、ごりごりに勝負だったりする。一生懸命勝利に向かって突っ走っているのを、なんとなく照れていて、それで「勝負は二の次」なんて言ってるみたい。だまされて、とまどったこと、たくさんあった。
 四十雀は、トライアル大会ではなく、トライアルミーティングだ。なので、メインイベントは土曜日の夜にある。土曜日の夜、参加者がそれぞれの近況を報告し、日本の将来について熱く語り、1年元気でいたことを感謝するという高尚なミーティングである。なので「四十雀に参加したいけど、競技だけでもいいですか?」という問い合わせもあるらしいんだけど、主旨ちがいも甚だしいので、こういうのはお断りなのだ。どっちかというと、ケガをしたりしてオートバイには乗れないので、メインのミーティングだけ参加します、というほうが正しい。今年もそういう方はいらっしゃったし、過去にもいた。勝負は二の次、というコンセプトが、ちゃんと根を張っている証拠だ。
 四十雀の勝負は、年齢ハンディが大きく行く手をふさいでいるから、若者が勝とうと思ったって不可能だ。いや、主催者を丸め込めば勝てるかもしれない。国内B級ほどのセクションを設定して、最高齢の人がオール5点になるようなセクションを作って(10セクション2ラップだと100点になりますね)、40歳の人(現状ではハンディが41点)がオールクリーンをしたらぶっちぎりで勝てる。でもそれは四十雀らしくないということになっている。最高齢の方でも、オールクリーンが可能、でもちょっと油断をして点数をとっていただくというのが、セクション設定の目安になっている。せっかくここまで長生きをしてきたのだから、お楽しみのトライアルでケガはしたくないし、させるのもいやです。同じ転び方をしても、若者とご高齢では、壊れ方もちがうかもしれないしね。
 大会の名前のとおり、40歳からまともにトライアルを習いはじめたニシマキにとって、こういう四十雀のセクションは、おおむね快適。若気の至りで、最初は「セクションが簡単すぎるなぁ、生ぬるいなぁ」とよけいなところを走ってリヤフェンダーを折ったりしたこともあった。10年たって今思うに、簡単すぎる、生ぬるいと思ったら、まずオールクリーンしてみろってんだよね。
 その後、マシンがいいと、セクションに対して油断するんで、ポンコツの50ccマシンを持っていったこともあった。そのときは郡上のスキー場での開催だったんで、登らなくて苦労したなぁ。みなさんのやっている上品なトライアルとは、ちょっと異質すぎる感じがしたので、ポンコツでの参加はそれ一回きりになった。
 その頃、ぼくはトライアンフタイガーカブを手に入れた。イギリス製OHVエンジンを積んだ200cc。SSDTのプリ65では華々しいトライアルを見せてくれるのもこのマシンだけど、ニシマキにはなだらかな土の上を登ったり降りたりするくらいがちょうどいい。原瀧山の大会にはこれを持っていった。でもあのときは、タイガーカブより初出場させた小学生の相手で忙しかった。
 四十雀には、三部門がある。40歳以上のおっさんたちの四十雀クラスと、お嬢様方のうぐいすクラス。どんなお歳の方が参加されても、エントリーリストには20歳と表示される。土曜日のミーティングで紹介を受けるときは「堀内浩太郎さん、81歳」「西巻裕さん、50歳」「山田花子さん、20歳!」となる。山田花子さんが、実は50歳だろうと70歳だろうと、声高らかに20歳と紹介される。還暦となった人にお祝いが配られたのだけど、その中に、さっき20歳と紹介されたお嬢様がいらした。それもよきかな。
 で、もうひとつのクラスが14歳以下の十姉妹だ。四十雀をはじめた長尾さんはしゃっけのある人で、ただの親父ギャグではない。「四十から」と「十四待つ」。25年前に、トライアルの将来をタイトルに託したわけだけど、その思いに応えられているのかどうか、ちょっと心もとない。
 十姉妹には、昔は田中裕人とかも参加していた。由緒あるクラスだ。最近じゃ、うちの娘以外に参加がない。基本的におっさんたちの集いだから、若いぼっちゃんじょうちゃんは退屈かもしれないけど、もっと出てきてほしいなぁ。といいつつ、うちのふうみは14歳を卒業してしまったので、次にでるとしたら「うぐいす」になる。15歳なのに「西巻芙海さん、20歳」と紹介されちゃうのかな。まぁ、それもよきかなです。
 話がぼんぼん飛んでますが、タイガーカブはその後置き場所に悩んだりレギュレーターがパンクしたりして放置されたので、今回久しぶりに走らせることになった。乗りたい人がいたら乗ってもらおうと思ったけど、みんな遠慮しちゃうんだね。転がしたりしたらどうしようと思うんでしょう。ぼくも、実はびくびくしながら走らせてます。
 土曜日の午前中、会場へ行ったら全日本らしくセクションの査察というのをやっていた(笑)。査察のポイントは「神様堀内さんが走られてケガせずに抜けられるだろうか」というものだ。その方針に基づいて「これはあぶないやろー」と60歳くらいの若者たちが、石を積んだり岩をどかしたりした。ぼくはそれを手伝いながら、問題は堀内さんではなくて、ぼくのタイガーカブが無事に走り抜けられるかどうかだなぁと考えていた。

07四十雀のタイガーカブトライアンフ・タイガーカブ

 タイガーカブに試乗した伊藤敦志さん(念のため書いておくと、3回の全日本チャンピオン)によると「ふつうのトライアルマシンとして走っていける」という感想だったけど、ぼくにはそうはいかない。ブレーキは左側についてるし、しかもきかない。フライホイールが重たいので、機敏なアクセル操作には反応しない。そして、重たいし少しハンドリングにくせがあるので、狙ったところにマシンを運べない。だもんで、生ぬるいかもしれないし簡単すぎるかもしれないけど、四十雀のセクションは、ちょうどいい。二番目に長老の藤沼平八郎さんは、油断するととんでもないところに挑んでいったりするから、ああいう気の若い人はほうっておいて、ここでも堀内さんのあとについて回っていく。
 ところが、二つ目のセクションにして足をついてしまって、オールクリーンの夢はついえた。堀内さんがあっさりクリーンしたので油断してしまいました。あー、まだ修業が足りない。
 4つ目のセクションは、堀内さんがクリーンしたラインが簡単そうではなかったので、ラインがずれると岩から落ちておっかないけど、なんとかなるだろうと思われる一直線ラインでクリーンした。ためしにあとから堀内さんがクリーンしたラインでやらせてもらったけど、うまくいかず、3回挑戦してようやくクリーンした。堀内さんには脱帽です。
 この4セクション、堀内さんは1ラップ目にエンストしたけど、とっさにセルを回して走り出した。MFJのルールでは、足をついてエンストしたら5点だ。オブザーバーは「うっ、5点だな、でもセルだしな、神様だしな」と困った感じになって、足をついた数だけ、2点という採点をした。
 中国地方のオブザーバーはとっても優秀な人が多くて、こういう環境に育つと、採点についてはみんな正義感あふれている。エンストしたのに2点にしちゃうなんて、と思っているかもしれない。ところが四十雀には「がんばっている限りは3点」というルールがある。温情やインチキではなくて、ルールなんだから従わなければいけない。
 2ラップ目の第8セクションでも、堀内さんはエンストした。セルを回そうと手を放したら、たぶんブレーキからも指が離れてしまったのか、ずるずるとバックしてしまってあぶなかった。でも堀内さんはすかさずマシンを止めてエンジンを再始動して、そのセクションをアウトした。それで2点。エンストもしたしバックもしたし、さらにいえば足をついてハンドルから手を放してマシンの他の部分を触れたという点でも5点なのだけど、MFJのそういうのとは別のルールがここには存在する。
「がんばっている限り3点」というのは、四十雀が(たぶん)発祥だけど、それ以外の大会でも使われることがある。スポーツなんだから、いさぎよく5点の宣告を受ければいいのにと思う。四十雀でも「がんばっている限り3点というルールがあると、わしら若者には勝ち目はないなぁ」という人々がいる。若者といっても、70歳くらいの若者である。気持ちはわかるような気もするし、気持ちがわかる前に笑ってしまいたい気もする。もうしわけない。

07四十雀堀内さんと木村さん堀内さんと木村さん。木村さんのこんなに献身的なサポートは全日本でもヨーロッパでも見たことがない。

 今回木村さんは、堀内さんを出場させる気持ちにさせるのに一苦労だった。おからだの不調もあったし、奥さまを亡くされたという不幸もあった。でも(セルつきのマシンにほだされて?)堀内さんは元気にお姿を見せてくださった。自己紹介の持病の欄には「男やもめ」と書かれていた。奥さまの分まで楽しんで、奥さまの分までがんばっていただかないといけない。
 お年寄りに「がんばれ」というのはときになかなか酷なことだ。だからご自身ががんばっている限り3点というのは、四十雀に限っては、とてもよいルールだと思う。バックしてもなにをしても5点にならないずるずるのトライアルは見ててもまったく美しくないけど、それと四十雀の「がんばってる限り3点」はずいぶん意味がちがうのだと思う。10年前にはわかんなかったけど、こういうことも、トシを取るとわかってくるのかもしれない。
 20年前、30歳の頃に四十雀を取材で訪れたとき、ぼくは「おい、カメラマンさんよ」なんて呼ばれていた。あたりまえだけど、仲間じゃない。
 40歳になって、今度は仲間になったつもりで四十雀に参加したけど、本当の意味でみんなと仲間になれるかもしれないのは、もうちょっと時間が必要かなと今は思ってます。全国の(トライアル大好きのじじいの)みなさん、末長くよろしくお願いします。

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