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無からはじめる

鉄腕アトム

本日のぼくの携帯の
待ち受け画面

 なにもないところからなにかを生み出すのはとてもおもしろい仕事です。幸い、ここまでそんなような仕事をずっとさせてもらってきました。幸せな人生だったと思います。いえいえ、これは遺書じゃないので、これからも幸せな人生を歩んでいきたいと思います。


 さて、ここんとこ、将来のオフロードバイク市場について考えることが多かった。まだまだ自分の中で解答は出てないんだけど、途中経過ということで。
 ぼくら世代(30代後半から老人まで)のオフロード愛好者は、誰に勧められるともなく、自然とオフロードの楽しみを知った人が多い。考えてもごらんよ。昭和50年代のニッポンは、まだまだ舗装率が低くて、ツーリングに行けば好むと好まざるとに関わらず未舗装路(=ラフロードで、オフロードとは別物という議論はとりあえず置いておいて)を走らされたもんだった。東京育ちのニシマキがそうなのだから、地方にお住まいのみなさんだったら、もっとひんぱんにオフロードに出会うチャンスはあったことと思う。
 好きで入りこんだわけじゃないから、こうやってオフロードを知った人の全員がオフロード愛好者になったわけじゃないと思う。でも、中にはひぃひぃいいながらオフロードを抜け出てきて、すっかりオフロードが好きになっちゃった人もいる。
 今、巷にはオフロードがない。トライアルパークはオフロードだらけなんだけど、こんなところには、誰も入りこもうと思わないし、そもそもふつうの人は、トライアルパークがどこにあるのかわかんない。オフロードに触れる機会は、今の世代の人には、ほとんどないんじゃないかと思うのである。その点が、ぼくらの世代とは大きくちがう。
 メーカーの人と話をすると「最近のオートバイ乗りは本当のオートバイの楽しさをしらないし、オフロードの楽しさをしらない」という主旨の発言をする人が多い。そのとおり、売れるのはスクーターばっかりだし、オフロードスポーツのカテゴリーは壊滅状態だ。
 でもね、そこでメーカーはなにをしてきたのかと、ぼくはとても疑問に思うわけだ。「最近のオートバイ乗りは……」といっている人は、自然とオフロードに親しんだ年齢層の人が多い。そしてまた、オフロードマシンは売れないから、スクーターでも作っていようと決めている人も、こういう世代の人が多い。やらせてみれば本当はオフロードが大好きになる人たちがいっぱいいる(かもしれない)のに、メーカーは「だれも寄ってこないから、今日はもう商売をやめよう」と言っている。これでいいのか。
 メーカーに言わせれば、オフロードスポーツは絶滅したカテゴリーなのだろう。自然に絶滅したのだから、救いようがない。トキのえさを作ったからといって、誰も買ってくれる人はいない。しかしね、絶滅しかけた動物たちだって、環境が整えば帰ってくる。昔と同じ環境がなくなっちゃったから、オフロードスポーツはそれでおしまいというのは、あまりにも悲しい。
 日本にはモーター文化がないと、あっちこっちでよく言われる。でも文化なんてものは、無意識にしろ、誰かが作ろうとしなければできないんじゃないか。日本のモータリゼーションは、単に商売として工業製品が売れるから発達して、売れなくなったから衰退しているだけなのだから、そんなもの文化とはいえない。
 これからトライアルをきちんと根付かせていくには、今までトライアルライダーを育ててきたような方法論は通じないと、ぼくは思います(トライアルライダーが、自分の子どもにトライアルをさせるのはここでの話の流れとは少し別問題)。トライアルを始めるに至る、オフロードとの親しみ、トライアルとの接点、その他もろもろ、ここまでトライアルライダーが誕生してきた背景は、ことごとく消え去っているのだから。
 さて、今、この世に存在しない市場が、トライアル。世の中から完全に隔離されて生息しているのが、ぼくらトライアル仲間だということを、ぼくらはもっと意識しないといけないんじゃないかと思う。で、存在しない市場を開いていこうと思うと、これからもきっとたいへんだなぁと思う一方、これまた、なにもないところからなにかを生み出す作業になるんだろうなと思うのでありました。
 トライアルは困ったものだ愚痴りたい気持ちもあるんだけど、愚痴は言うのも聞くのもつまんないので、今、トライアルにはなにもないのだと思うと、ちょっと気が楽になりますね。

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