2010年全日本選手権は、3月14日に茨城県真壁トライアルランドで開催。従来とは異なり、9セクション2ラップに、IASのみスペシャルステージの2セクションがおこなわれるという新しい試みが組み込まれていた。
序盤は田中善弘、野崎史高、渋谷勲などの好調が光ったが、やはり黒山健一が中盤以降実力を発揮して堂々の勝利。小川友幸も、最後にスペシャルステージで野崎を逆転して2位にはいった。
ルーキーでは、スーパークラスのセクションに不安があると語っていた宮崎が10位となって最上位を得た。
開幕戦は、もうここ何年も真壁トライアルランドで開催することになっている。同じ会場だから、セクションに使われる地形も同じ。新鮮なセクションを提供したいという主催者側は雪や雨の中、苦労を重ねて会場設営。今回のセクション設定をしたのは、成田匠だった。
今回は、セクション設定の他、新鮮なシステム変更があった。IASクラスのみ、スペシャルステージの導入だ。スペシャルステージは、大昔(成田匠が国際B級だった頃と記憶している)に全日本に導入されたことがあったが、賛否両論のままに廃止され、それがこの数年、中部大会実験導入されていた(中部大会ではスペシャルセクションと呼んでいる)。
中部のSS(頭文字をとるとどちらもSS)はギャラリーにも好評で、これがトライアル委員会でも一定の評価を受け、各地の全日本でもこういった試みを積極的に取り入れていくという申し合わせがあったということだ。
同時に、セクション数は9セクションとなった。コンパクトでスピーディな試合進行を目指したものだが、運営スタッフの人手不足も影響しているという。少子化で人口が減っているのはトライアル界だけではないのだが、トライアルの運営側の人口減は深刻なのかもしれない。
さて、今回の最初のスタートライダーはエキジビジョン125の倉持俊輝。13歳の中学生ライダーで、トライアルアカデミーの出身者だ。エキジビジョン125は若年層のトライアルライダーへの啓蒙活動で設けられたクラスだが、このクラスの参加者ももうちょっと増えてくれないものかと願うところ。倉持は国際B級のリザルトと照らし合わせると63位。まだまだ修業中といったところだが、動きのいいアクションは今後が期待できるところだ。
■国際A級スーパークラス
スーパークラスのメンバーは、昨年から三谷英明がいなくなり(IAに移動)、尾西和博と坂田匠太がお休み(スポット参戦の可能性はありとのこと)。代わってIAから3人の若手が昇格してきた。09年IAチャンピオン藤巻耕太、そして野本佳章、宮崎航の3人だ。昨年昇格した柴田暁、斎藤晶夫、西元良太(08年IAチャンピオン)の3人も、上位を目指して参戦してきた。
今回のIASセクションは、9個のすべてが難攻不落というわけでもなく、結果表を見ても12人の全員がクリーンを獲得している。成田匠によると「かなりメリハリをつけてセクションを設定した」ということだった。
第1セクションは最後のポイントが難関だった。ここは結局、柴田以外の1年生、2年生は全員が5点となった。しかし西元と藤巻、IAチャンピオンのふたりは、IASならではの難関ではなく、前半のポイントで失敗している。いわば、IAラインで5点になっているわけだ。彼らがIAを走っていたらこんな結果にはなっていなかったはずで、IASを走るという緊迫感が、平常心を失わせていたのかもしれない。
渋谷勲、小川毅士はここを2点で通過。小川友幸、野崎史高、そして柴田暁が1点で通過。柴田の1点は素晴らしかった。そしてここをクリーンで通過したのは二人。黒山健一と田中善弘だった。
第2セクションでは、柴田は5点に終わったものの、今度は斎藤が1点、宮崎航がなんとクリーン。宮崎は土曜日の時点では「IASのセクションを走るのが不安」と語っていたが、同時に開き直って走れるから、それがいい結果に結びつけばとも語っていた。
第3セクションも大岩が複雑に配置された難所だった。ここまでオールクリーンしていた田中善弘がここで2点。このセクションは、斎藤以外の11人が5点とならずに通過している。宮崎と藤巻のルーキー二人が1点、西元がクリーンと、ルーキーたちもがんばっていることを実証している。
3位の野崎史高
試合の流れが変わったのが第4セクションだった。9セクション2ラップということで、IBによる渋滞に巻き込まれることをきらって誰よりも速いタイミングでトライに入っていた小川友幸が、最後のポイントで失敗して5点となった。その後、西元、野本が3点となると、野崎、渋谷、そして田中がクリーン。抜けられないセクションではないことが明らかとなった。ところがここで、黒山も5点になった。これでトップは野崎、2位に渋谷と田中だ並ぶという展開となった。この日はセクション数が少ないから、このまま野崎が逃げ切り、黒山や小川が5点ひとつが災いして敗退する可能性は少なくなかった。
黒山も、それを心配した。しかしそれを心配していても、残してしまった5点を覆すことはできない。かくなるは、ここから先のセクションをひとつひとつていねいに走り、ライバルの失点を待つしかない。
その後の黒山は、しかし見事な走りっぷりだった。第4セクションの5点以外はオールクリーンとまではいかなかったが、ふかふかのヒルクライムと最終のタイヤ一本ラインの登りとで1点を失い、1ラップ目のトータル減点は7点。
黒山を脅かすべき野崎は、1ラップ目には5点こそなかったものの、3点を二つ、1点をひとつと減点を重ねて、1ラップが終わったときにはわずか1点差ながらトップを黒山に奪われていた。
黒山と同じく第4で5点となり、野崎と同じように減点していた小川は、1ラップ目11点で3位。ふたりには、乗れっぷりにちょっと差があるような印象だった。ただし小川は、まだまだあきらめてはいない。少なくとも、3位になるのと2位を獲得するのとは、シーズンを戦う上で大きなちがいがある。
第1セクション、第4セクションをクリーンして気を吐いた田中善弘は、それ以降はちょっと点数をまとめられ切れず、1ラップ目は5位。2ラップ目には1ラップ目にクリーンした第1と第4で5点となるなど、ラップだけで見れば9位となって、トータル6位に落ち着いた。
2ラップ目に田中に勝るスコアを残しながら、田中に10点差、20点差をつけられたのが、スーパークラス2年目の柴田暁と西元良太、斎藤晶夫。柴田は「今年は3位以内を狙っていきたい」と具体的に夢を語る。対して西元は「がんばるしかない」と殊勝な豊富を語っていたのだが、8位は思ったよりもよい結果だったようだ。2ラップ目に4つのクリーンをたたき出して、1年生2年生の6人の中ではベストラップの23点をマークした斎藤は、1ラップ目が悪すぎて(最下位)9位。この上り調子が、フューチャー300での試合慣れができてきたということなら、次回以降が楽しみでもある。
10位から12位までは、昇格1年生が3人並んだ。この3人の中で最上位となったのは、IAランキングも5位で、セクションに対する不安も口にしていた宮崎航だった。不安と同時に、開き直ってセクションに挑めるので、それがいい結果につながることも期待していた宮崎。どうやら結果は、いい結果に出たようだ。
さて、今年の注目株といえば小川毅士。昨年、出身地の京都から真壁トライアルランドの近くに転居し、さらに今年は、チームとマシンを一気にスイッチした。日常、真壁で練習をしている愛好者からは「今年の毅士は絶好調」という声も多かった。
RTLからベータEVOへ。その乗り換えは、さぞマシンが軽くなったことだろうと思うのがふつうだが、実はマシンの重量は、さほど大きな変化はないという。毅士が乗っていたフューチュー300は、排気量をアップしているのと同時に、軽量化も進められている。スタンダードのEVOなら、重量自体は同じくらいではなかったかと、毅士は言う。今年の毅士号は、さらにいくらかの軽量化を進めているので、それで1kg〜2kgの軽量化が実現した。ただ、実際にマシンを操る際には、重量配分の問題か、EVOはやはり軽さが実感できるとのことだった。
もちろん、マシンが軽ければすぐに成績が出るわけでもなく、4ストロークから2ストロークへの乗り換えも簡単ではない。だいぶ慣れてはきたが、とっさのときについ2ストロークの乗り方が出てしまうということで、結果は渋谷勲に3点差の5位。毅士にすれば、大いに不満な結果となった。しかし、最後のスペシャルステージで見せたクリーンなど、今後の毅士に対する期待も、また大きい。
9セクション2ラップが終わって、20分ほどのインターバルを置いてふたつのスペシャルステージセクションにトライ。この方式は、ライダーにはおおむね好評のようだ。観客にとっても、時間に追われて大急ぎのトライになることが多い通常の終盤戦は、試合の流れが見えないことが多いのに対し、スペシャルステージは試合の流れも整理ができる。なにより、ゆっくり観戦することができるのがいい。
強いていえばという注文としては、2ラップをゴールしてからスペシャルステージのオープンまでの20分が、間延びしてしまうという危険があった。選手にとっては、コンセントレーションを維持した状態のまま最後まで走りきれたほうがいい。観客側の視点からすると、待ち時間が少し長いきらいもあるが、食事をとったりなど、一息入れられる時間をとれたりもする。どちらがいいかは、選手側観客側、運営側のいろいろな事情がありそうだ。
スペシャルステージは、ひとつめは大岩中心のダイナミックなもの。前半の大技と、最後にダニエルで飛んでいくところが大きなポイントとなった。ふたつめは、名物となっている第ヒルクライム。いつもはある程度の助走を持って登りにかかるが、今回は助走がほとんどない状態でのアプローチとなった。
ひとつめのセクションは12人のうち半分の6人が5点。中でも、野崎と小川毅士が5点となったのは意外な展開となった。ふたりとも、ダニエルで飛んでいく最後のポイントでの失敗。野崎は「ああいうところは得意パターンなのに」とくやしがることしきり。
クリーンしたのは黒山、小川友幸、渋谷の3人。トップライダーにとっては、足が出る設定ではないが、ちょっと失敗が5点になる、油断できないセクションだったということになるのだろう。
SSの一つ目を終えたところで、黒山のリードが5点となり、黒山の勝利が決まった。シーズンオフに手術をし、まだ術後のコンディションには多少の不安もあったというが、結果的には試合は問題なし。セクションインを前に、エンジンで左手を暖める姿が見受けられたが、黒山が手術の影響を感じさせたのは、こういう瞬間くらいだった。
2位の小川友幸
最後のセクション。スペシャルステージの二つ目。こちらはひとつめよりも少し難度が高く、5点に沈んだのは7人になった。その中には、小川友幸も含まれている。小川は野崎と僅差での2位争いをしていて、結果、この5点で両者の点差はわずか1点となった。野崎がSSひとつめをクリーンしていたら、あるいは3点ででも抜けていたら……。小川にすれば、最後に転がり込んだ2位表彰台だった。
市販車マシンに乗って2年目。土曜日には素晴らしい仕上がりといっていたが……。
「実は、ないしょにしていましたが、仕上がりにちょっと不安があって、そんな中では今日の試合はよく戦えたと思ってます。準備不足は時間切れの結果なので、次の九州までには万全の体制で臨みたい。優勝できた去年の開幕戦は、自信を持って海上にやってきていましたから、そういう体制で次回は走りたい」
と、小川の試合後のコメント。
このSSのふたつめ。クリーンをしたのは、ひとつめのSSよりひとり減ってふたり。しかし今度は、上位陣が誰もクリーンできないという結果になった。
クリーンしたのは、まず小川毅士。ふけの鋭い2ストロークエンジンを上手に使ってそそり立つ頂点を極めた。そして最後にトライした柴田暁。柴田は登りの頂点にたどりついてから、体勢を整え、満を持してセクションアウトした。スーパークラス2年目のまだルーキー選手が、関東大会のエピローグを飾る、素晴らしいトライを見せたのは、うれしくも意外な結末となった。
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■国際A級
国際A級優勝の三谷英明
2年間のスーパークラス生活から、国際A級に戻ってきた三谷英明が見事な勝利。1ラップ目からトップを譲らず、5点もひとつだけという見事さだった。今回優勝したマシンは、去年の最終戦を走ったそのままの状態ということで、シーズンオフには別のマシン(フューチャー125)に乗り込んでいたという。突然出場してこの成績をおさめるというのも、三谷らしいところ。三谷が強いときには、練習をしていなかったりすることが多い。
それにしても、去年は、藤巻、野本ら、若手ライダーの活躍が注目を集めたシーズンだった。今年は一転、ベテランライダーが上位を占めた。昨シーズン後半、上位入賞ができるようになった滝口輝は、2週間前に追突事故に遭い、むち打ちに苦しみながらの15位。B級チャンピオンで逸材ぶりが期待されている山本直樹は、ポイント獲得まで12点差の24位。
誰が勝つか分からない勝負のおもしろさは、国際A級クラスの魅力のひとつだが、IASからの降格組に、ルーキーの若手が混ざってしのぎを削るようになると、このクラスもより活気に満ちた戦いとなっていくだろう。
今回6位の田中裕人は、去年まで長く小川毅士のマインダー(今年からアシスタントと呼ぶことになった)を務めていた元IAS。自分で走るのは久しぶりだが、2ラップ目に減点をほぼ半減させてこの順位を得た。
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■国際B級
国際B級優勝の樋上真司
「国際B級は5年目になるのかな。長かったですね」
樋上真司が国際B級初勝利。去年はゼッケン1をつけたものの未勝利。表彰台も遠かった。
「去年までは、試合となると緊張してぴりぴりしていたんですけど、今年はそうならずに走れるようになりました。気持ちの切り換えができるようになったかな」
ということだ。気持ちの切り換えができるようになったところで九州でももう1勝?と水を向けると「期待されちゃうとプレッシャーになっちゃうけど、九州もがんばります」と前向きのお答え。
今年の国際B級は、新しいポイント獲得者が多く、シーズンの行方も楽しみだ。
去年、エキジビジョン125を走っていた磯谷玲は、IBに昇格していきなり、11位でポイントを獲得した。
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■エキジビジョン125
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