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日本のニュース

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フジガス号に乗る08版

藤波と小川

 HRCのワークスマシンに乗せてもらいました。藤波貴久号。なんとも役得です。
 いえいえ、役得で乗せてもらったのではなくて仕事なのですから、どんな乗り心地だったのかを、みなさまに最大限お伝えしなければいけません。ワークスマシンの乗り味をお伝えするのって、一言でいえばとっても簡単ですが、ちゃんと伝えられるかどうかはうーむ。
 でもとにかく、ご紹介します。
 乗せてもらったのは2007年型のワークスマシンそのもの。ポジションも藤波貴久好みそのままです。
 ただしカラーリングは、2008年型になってます。フレーム関係が黒くて、ヘッドライトの顔つきが変わりました。でも乗り味は、2007年型というわけです。2008年型はこれから作るんで、まだ実体がないんですね(実体があっても、ぼくらが乗せていただくわけにはいきませんが)。
 てんで、調子に乗って、いっぱい書いてしまいました。読みにくいかもしれませんが、ごめんなさい。


 フジガスワークスマシンには、05年の暮に乗せてもらった。あれは4ストロークマシンがデビューして1年目ですから、ワークス仕様の4ストロークエンジンとはどんな代物なんだろうという興味があった。
 市販車RTL250F(モンテッサCOTA4RT)の登場から1年弱。ふつうはワークス活動を先行させて、そこからノウハウをフィードバックして市販化するものだが、この4ストロークの場合は市販先行だったから、ワークス活動ではずいぶん制約があったはず。2005年型ワークスマシンは天国のような乗り味だったけど、それでも現場ではまだまだやり残したことがいっぱいあったにちがいない。2004年まで独占していた世界タイトルも奪われていたし、2005年型マシンはワークスマシンとしての完成形ではなく、4ストローク再会初年度としての道標のようなものだったのだと思う。

07モンテッサワークス横位置

 もちろん乗せてもらった限りでは開発陣のやり残したことなんて想像だにできない。ただ、その後藤波がことあるごとに「マシンがどんどんよくなっている」「去年のマシンとはまるで別物」と語っていたから、2005年型以降の進化の度合いが想像できたわけだ。
 2006年型は試乗の機会がなかったが、大きな変化があったのは2005年型から2006年型になるときで、2007年型はさらにその熟成がほどこされているというニュアンス。もっとも開発陣に「どこが変わったんですか?」と聞けば、ちょっと困った末に「全部です」という答えが返ってくる。ワークスマシンに「前年型の流用」なんて思想はないのだ。
 というわけで、2005年型とどこがちがうのか、あるいは市販車とどこがちがうのか、という疑問は、思い浮かべない方がいい。似たようなかたちはしているけど、同じところはひとつもない。
 エンジンは、排気量は少しずつ大きくなっているようだが、公表はされていない。280cc〜290ccくらいではないかと推測される。2005年のインドア選手権では250ccのスタンダードで走ったこともあるが、絶対的なパワーを得るためというより、必要なエンジン特性を実現するために、もう少し大きな排気量が必要になってきたという変化だ。機械そのものはちがっても、こういう考え方はRTL250FがRTL260Fに進化したのとまったく変わらない。
 クランクケースやシリンダヘッド、エンジンの全部のパーツは、新たに作られた専用設計のものだ。スタンダードのRTLエンジンと見比べてみると、かろうじてちがいが発見できるかもしれない。まちがい探しみたいなもんなので、ミカンを食べながら冬の夜長のお楽しみにちょうどいいかもしれません。

07ワークス左
05STD


07ワークス右
07STD

左から07ワークス、05STD
下、07ワークス、07STD

 ヒントとしては、左右幅もちがうので、微妙のかたちのちがいは意味がない。メカニズムとしてどうちがうのかを想像しながら見るのが正しいです。そして、どこがちがうのかを発見しても、それが正解かどうかを確かめる術はありません。機密事項だし、全部ちがうんだから。
 転倒センサーははずされている、レブリミッターもない。ECUは全面的にちがうものがついていて、マッピングの書き換えはコンピュータとの無線によっておこなわれる。カムチェーンテンショナーが、あるんだかないんだかわからないかたちになっている。FEの場合は燃料ポンプも重要なエンジン性能パーツだから、これも特別製。よって、燃料タンクもただ容量が小さいだけでなく中身もちがう。排気量やエンジン性格がちがうから、エキゾースト系も全面的に変更されている。材質的には、もちろんより軽いものが使われているが、形状もちがう。マシンの軽量化は、前後バランスを保ちながらおこなう必要があるから、バランスをとるために、エンジンの搭載位置も変化しているかもしれない。まちがい探しも楽じゃないはずだ。
 さて、ぼくらのように(役得で)ワークスマシンに乗せてもらうチャンスが少なからずあると、ワークスマシンがどんなものかというのはだいたい想像がついてくる。つまらない言い方をすると、機能すべきものがきちんと機能するということなんだけど(たいていのサンデーライダーのマシンは、機能すべきどこかが機能していないことが多い)、それがマシン全体にきめ細かく配慮された結果、その乗り味は天国になる。フロントフォークの中身もリヤショックの中身もちがうから、動くべきものが動いたからといってワークスみたいにはならないにしても、ワークスマシンの基本は、正しく動いて、快適であるということではないかと思う。
 藤波が乗るオートバイなんて、素人が乗れるものなんですか?という素朴な疑問がある。乗りこなせるのか、という意味だったらまったくノーだけど、走らせるだけなら、トライアルをやっている人なら誰でも走らせられる。トライアルをやったことがない人が乗ったら、もしかしたらあぶないかもしれないけど(レスポンスがよすぎてびっくりして暴走する)、それは藤波号に限らず、スタンダードのRTLでも同じことだ。
 2005年型のときには、ブレーキが死ぬほどきくのにびっくりした。乗ったことがない人がトライアルマシンに乗ると、ブレーキがききすぎてコントロールができないと感想をいうことが多いけど、トライアルマシンにそこそこ慣れた人間が、そんな感想を持ってしまう。さわっただけでロックしてしまうという印象だった。
 今回は、あんまりその印象がなかった。2005年のときにびっくりしたから、右手の操作をそうとう警戒していたからかもしれないし、機械的な変化がそう感じさせるのかもしれない。
 ただしこれはワークスマシンの特色ではなくて、藤波号の特色。チームメイトのボウやランプキンは「こんなブレーキには乗れない」というそうだから、ぼくら素人がこわい思いをするのもあたりまえかもしれない。ちなみに、藤波ブレーキは、ランプキンが1回だけ使ったことがあるという。2007年もてぎ大会、1日目で指を脱臼してしまったランプキンは、力を入れた操作ができず、藤波ブレーキを装着して2日目を乗りきったということだ。藤波のセッティングは、フロントブレーキのレバー位置が、きわめてハンドルに近い。最初の数秒だけ、違和感がある。
 ハンドル幅は785mm(ずっと850mmと誤記していました。850mmなんて長さはあり得ないですが、すいません)、藤波の昔からの“寸法”。そして、アクセルの遊びがめちゃめちゃに多い。トライアルライダーのアクセルが、こんなに遊びだらけなのは見たことがない。こういうのは好みの問題だから、なんでかときかれても困る。これが藤波の仕様だ。
 藤波が、デモンストレーションなどで自分のマシン(ワークスマシン)以外に乗らなければいけないとき、まずリクエストするのはポジションだ。ハンドル、マスターシリンダーを含むレバー、ブレーキペダルにフットレスト。この中で、一番高価なパーツがフットレスト。今まで藤波号にはスチール製の独特のかたちをしたフットレストがついていたが(後方からふんばれるかたちになっている)今年からチタン製になった。フットレストの材質は足の裏のタッチに影響するので、とっても大切(らしい)。アルミ製は滑りやすいので、アルミを使う場合はぎざぎざを磨きこんで、グリップをよくするのがふつうだが、チタンには材質的にひっかかりがあって、できあがってきたものから少しギザギザの角を落として使うくらいだという。ブラケットもチタン製で、たいへんお高いものらしい。ただ藤波はこれを1年間使い続けたらしく、2週間に1回交換するボウのアルミ製スペシャル品より、結局安くついたのではないかと藤波はいうが、アルミかチタンかは、安いか高いかではなく、どっちが勝負ができるかで決まるのだ。
 外装品では、2006年型よりホイールが特別製になっている。スポークを指示するリブ部分が細かく軽量化されている。これは、もちろんスタンダードのリムを削ったものではなく、材質からちがうものだ(まねして削るとホイールがばらばらになっちゃうかも)。さらにハブも変わっている。スタンダードから比べると太くなっているが、ただ太くなっただけではなく、その分ハブの肉厚が薄くなっていて、軽量化が進んでいるのだ。
 2007年、ガスガスのラガは、モンテッサCotaのホイールを使っていた。エア漏れに対する信頼性の問題なのか重量の問題なのか、DID製のリムの優秀性を自他共に認めたということになるが、このホイールは市販品で、ワークスマシンについているのは、さらに進化したスペシャル品だ。小川友幸が乗っているマシンのホイールも、これと同一。
 さて乗ってみる。
 アクセルを開けずにエンジンをかけるという儀式は、ワークスマシンといえどスタンダードと変わらない。
 エンジンがかかると、意外に高いアイドリング。ところがこれ、ECUが自動的にやっているのだった。エンジンがかかると、一瞬回転が上がって、すぐに落ちつく。逆にキルスイッチでエンジンを止めるときも、一瞬回転が上がってからストップする。少しでも始動性をよくしようとした結果の仕様なのだろう。これはどっちかというと儀式に慣れていない素人ライダーにこそほしい仕様だ。

07ワークスマシン杉谷
07ワークスマシンニシマキ

乗ってみました証拠写真
杉谷(左)とニシマキ

 キルスイッチは、ECUのモードスイッチ兼用になっている。ちょんと押すと青と緑が切り替わる。緑が俗にウェットモードといわれているもので、スタンダードのマッピング。緑がハイパワーで、高さのあるものに挑むときなどに使われる。このスイッチも、当初から比べるとだいぶ小さくなった。さらに2007年型では、スイッチを長押しすることで青よりもさらにパワフルなモードを持っていた。スタンダードのキットではモードはふたつしかもてないが、ワークスのECUは理論上はまだまだセットを隠し持てるのだそうだ。ただあんまり多くても乗り手が混乱するし、切り替えスイッチも肥大化するので、これくらいにおさめてあるという。
 実はこのマシンには、さらに4つ目のモードもあった。エンジンをかけた最初のときにのみ使える超ハイパワーモードで、インドアなどで最初の一発目にとびきり高いのが登場したときに使ってもらおうとしかけたものだという。この場合は、ランプは青も緑もつかない。そして一度切り替えスイッチでモードを変えてしまうと、エンジンがかかっている間は隠しモードには戻れないというしくみになっている。トライアルマシンも、コンピュータやテレビゲームみたいに隠しスイッチや秘密のコマンドが登場する時代になった。
 ただしこのモードによるエンジン特性のちがいは、残念ながら素人にはわかんない。ウェットモードといっても、世界のトップライダーが日常的に使うモードだから、パワーがないわけではない(昔々、ランプキンがベータに乗っていた頃の話、やはり当時はベータに乗っていた黒山健一に言わせると、ランプキンのベータはパワーがない、ということだった。そのランプキンのイギリスの練習風景を見物するチャンスがあった。そこにやってきたイギリス国内のトップライダー。ちょっと乗ってみろといわれてランプキンマシンでセクショントライ。「うへー、とんでもないパワーでおれたちには乗れない」と退散していった。黒山号に乗せたらどうなっちゃうんだろうと思ったけど、黒山にパワーがないなんて言われても、世界のトップを走るには、やはりそれなりのパワーがあるものだというちょっと長すぎる余談でした)。低速から高速域までの出力特性を実感するには、低速から高速まで、きちんと吹け上がらせてあげなければいけないが、こういう特性を実感するのには、トライアルパークはデコボコしていて、あぶない(とほほ)。トップパワーはスタンダードよりはるかに出ているはずだが、もともとスタンダードの250ccエンジンの高速域だって使い切れないのだから、ワークスエンジンの高速域を使いこなすどころか、のぞいてみることもままならないのだった。
 ただし、それでは素人にはとても乗れないものかといえば、そんな高速域を使おうと思わなければ、いたってスムーズに、快適に乗れる。低速域でとことこと走っていると、なんと扱いやすいスムーズなエンジンだろうと感激する。2005年型市販RTL(初期型)は、極低速から鋭いピックアップが特徴で、4ストロークはピックアップがにぶいという風評を払拭するのに貢献したが、乗りやすさを追求すると、スムーズで扱いやすいということになるのだろう。藤波からは「開けただけ出力が出るエンジン特性」が常にリクエストされてきたといい、そのリクエストには終わりがないという。
 マシン全体がとにかく軽い(移籍してきたボウが初めてワークスモンテッサに乗って、第一印象は「軽い」だったそうだ。出力特性や操縦性について語ってほしかった技術陣は、ちょっとがっかりだったらしい)。公表されているデータでは70kg以下。この数値は、ガスガスが市販車で実現しているから驚くものではないが、69kgなのか68kgなのか、乗った感じはそれ以上に軽いんではないかという感じ。いっしょに現場にきていて小川友幸全日本チャンピオン号も軽量だったが(小川号はエンジン関係とフロントフォーク、ホイール関係がワークス)小川号と比べてもうんと軽量という印象だった。
 2年前のことだから記憶はあやふやだが、2005年ワークスでびっくりしていたのに、その比ではない進化があちこちにあった。やはり2年間の開発は、はんぱなものではなかったようだ。しかしそのいくつかは、市販マシンにも確実にフィードバックしている。たとえばケースブリージングジェットなどは、2008年型市販RTL(Cota)にも採用されている。2005年ワークスマシンに乗せてもらって以降、2007年型、2008年型市販マシンに乗ると「ワークスマシンのような乗り味」が感じられたものだったが、これは、ワークスでテストを重ねた数々のテクノロジーが、きちんと反映されているということだろう。ケースブリージングジェットにしても、見れば小さな穴が開いているだけのパーツだが、これが大きな効果を上げているのだ。

07試乗会の藤波

 2007年の3人のライダーのうち、もっとも手がかからなかったのはボウで、4ストロークについて右も左もわからなかったボウは、偉大な二人の先輩ライダーの作った仕様を、そのまま乗って走っていたという。マシンのコンディションについては、3人が3人とも細かく注文を出すのがクラッチだったそうで、ミートのしかたやタッチについて、メンテナンスする方にはわからないちがいを指摘して改善を要求してくるのだそうだ。今のトライアルライディングは、それだけクラッチを酷使しているということなのだろう。
 このマシン、日本に帰ってきてからもてぎでのHRCサンクスデイ、前日の撮影と大活躍で、藤波によるとクラッチが本調子ではないということだが、当日のクラッチのどこが具合が悪いのかは、もちろんさっぱりわからない。
 軽くて、いろんな動きがスムーズで、タッチも最高ときているんだから、文句のつけようがない。もしぶっ壊したらえらいこっちゃと思うと無茶はできないけど、明らかにうまくなってような気がしてしまうので、転んでもいいやと思えれば、今までいく気にならなかったあんなところやこんなところもいってしまえるかもしれない。
 サスペンションはしなやか、向きを変えたり前を上げたり降ろしたりが、思ったとおりに動く(素人のレベルで、だけど)。これに乗れば、藤波みたいに前輪をずっとあげたまま、後輪だけでポンポンと岩から岩に移動したりができるような気になってくる(ぼくらの前に試乗したDさんのライディングを見ていると、前輪をあげて、後輪をはずませようと努力している雰囲気があふれていて、ほほえましかった。できないんだけど、できるような気になってしまうほど、快適なマシンというわけです。そのあと自分で乗ったら、やっぱりおんなじような気分になっていた。Dさんよりうんとへたっぴな自分としては、努力している雰囲気も感じられなかっただろうけど)。
 軽量化がぐんぐん推し進められ、補機類の進化も著しく、コンピュータ関係も進化し続けている。「軽量化は、どれだけ進んでくれてもかまわない。50kgはおおげさかもしれないけど、60kgちょうどになってくれたら、軽すぎて困ることなんてなにもない」という。こんな要求に応える開発陣もたいへんだが、モンテッサHRCの苦労は、まだまだ続きそうだ。

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