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日本のニュース

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ノンストップルールあれこれ

2013年のもてぎ黒山健一

ちょっとしたストップで5点になった黒山健一。本人、納得済みの残念でした。

 世界選手権では初めてのノンストップルール。前進を止めたら、足をついていようがなかろうが、問答無用に5点となってトライはおしまい、というルールだ。世界選手権以外では、これまでイギリスの伝統イベントSSDTと、日本のこれまた伝統のツーリングトライアル、イーハトーブトライアルがこのルールを採用している。
 世界選手権開幕戦が終わって、このルールについて、ちょっと考えてみました。


 ノンストップルールの提言は、2年ほど前から取りざたされていたが、今回は特に前触れもなく突然採用が決まった。ライダーとして見たら寝耳に水で、なんだそりゃ、聞いてないぞ状態になったが、一説にはメーカーからの希望があるということで、メーカーの契約をいただいて走っているライダーとしては、あんまり表立って文句も言えないという背景もあるようだ。
 なんでメーカーがノンストップルールにしたいのか。これがよくわからない。ノンストップルールにするとオートバイが売れるようになるという主旨らしいのだが、売れるようになるわけがないじゃないの、というのが大筋で一致した意見だ。少なくとも、世界選手権をノンストップルールにしたから、初心者がオートバイをいっぱい買うというのは、風が吹けば桶屋がもうかる以上に理屈がむずかしい。
 トライアル協会関係の某氏によると、2000年当初に停止1点というルールにした際にはトライアルマシンが止まらずに走れるようにキャスター角を変更したことがあり、これで買い替え需要が促進された。今回もそれを狙っているのではないかという説もあるようだが、メーカー関係者某氏(トニーではありません)に確かめてみたら、キャスター角なんていじっちゃったら別物になっちゃうでしょう、と一笑ものでした。
 もうひとつは、ボウが一人で強い現状をどうにかしようという腹積もりがあったのではないかという説もある。これ、5年ほど前からインドア世界選手権でやっている試行錯誤も同じなんだけど、ライダーの実力もさることながら、運不運が勝敗に影響するという試合のシステム。しかし結果を見れば、インドアではボウ以外に勝者なし。なにをやっても強い者は強いという結果が出てしまった。アウトドアでも、このところ前回の勝者は一番スタートに回すとか、あの手この手で強い者いじめをしてみたが、やっぱり強い者は強い、かえって強い者は毎回一番スタートだから、一番スタートの走り方をすっかり学習してしまって、ますます強くなってしまうという流れもできた。打つ手なし。八方ふさがりの切り札が、ノンストップルールだったのかもしれない。
 かつて、停止1点のノンストップルールの頃、オブザーバーとライダーのトラブル回避のために、採点機器の導入が検討されたこともあった。当時の仕様では、1.5秒止まると5点のブザーが鳴る、赤ランプが点灯するというものだったが、機械の信頼性などが解決できなくてお蔵入りになっていた。そういう特効薬が開発されるでもなく登場した今回のノンストップルールは、違和感を感じたひとは少なくなかった。
 というわけで、ノンストップルールで開催された世界選手権。もてぎの世界選手権には、年に1度しかトライアルを見ないような、世界選手権オンリーの観戦者がいる。毎年欠かさず見に来るのだから、トライアルの楽しさは知っている。自分でやったり、全日本を追いかけたりしない、というくらいの熱心さのファンだ。
 彼らのノンストップ評は、いままでのに比べて、あっけない、というものだった。今までだったら足を出して地面を蹴ってマシンを押し上げ、それを「いけー!」と応援する楽しみがあった。ノンストップだったら、あ、やばい、と思った瞬間にピーと笛が鳴っておしまい。今までなら1分半たっぷりライダーの走りが見られたのに、長いことお目当てのライダーを待っていたと思ったら、入口のなんでもない小石にけつまずいて止まっちゃって5点になったりもして、がっかりすることも少なくなかったという。そういうことは、きっとあちこちであったのだと思う。

2013年のもてぎトニー・ボウ

5点の採点に納得がいかないトニー・ボウ。ただし停止5点ではなくて、カードを動かした動かさないという問題でした

 横で見ていたトライアル委員長ティエリー・ミショーさん(3回の世界チャンピオン)は「ノンストップルールにはいいところも悪いところもある。これから世界中のトライアル関係者によって育てていくルール」と語ったが、どうももう少しのんびりした採点基準がお望みのような感じだった。
 とあるセクション、黒山健一が5点になった。停止5点を取られたのだが、黒山としては覚えがない、というか、納得がいかない。「5点になったのはどこですか?」とオブザーバーに聞くと、セクションの後半のポイントだという答えだった。「ここで5点なら、そのずっと前の、セクションの入口の部分でも5点だったと思うんですけど」と黒山が応酬。どこまでがネタなのかわからないが、お客さんの笑いはとった。でも本音でもあったはず。たぶんミショーがオブザーバーをやったら、ここで黒山が5点になることはなかったと思う。ただ、そのミショーの採点基準の根拠はどうだと問われると、そんなものはないから、ややこしい。レギュレーションの文面に忠実に採点すると、日本式の厳しい5点の採点にならざるをえない。
 試合が終わって黒山に「いくつか納得いかない5点があったと思うが、あれがなかったら成績も上がっていたはずという思いはあるか?」と聞いてみた。黒山は笑顔で「そんなこと言い出したら、ライバルにだって納得いかない5点はあったはず」とぜんぜん気にしていないそぶり(本心はどうなのかはわからないけど)だった。お客さんには、ライダーとオブザーバーがケンカしているように見えても、実はしこりの残らないやりとりをしていることが多いというのを知っててくれるとうれしいかな、と思います。
 ともあれ、こんなふうに5点の採点はむずかしい。トップライダーに聞いたところでも「ノンストップルールは危険だ。オブザーバーによってぜんぜんちがう採点がされる可能性がある」と異口同音に答えてくれた。ファハルドなどは記者会見でもう少ししゃべらせてくれと断って「オブザーバーが勝負を決めるような危険性もはらんでいる。極端を言えば、オブザーバーが好きなライダーは勝てるし、オブザーバーがきらいなライダーは5点になる」と語った。日本の厳正な採点ではこういうことはほとんど起こらないが、世界各国では充分考えられるし、瞬時の判断には無意識の影響も考えられる。難にしても、むずかしい問題だ。採点は、トライアルの永遠のテーマだが、ノンストップルールの採用になって、さらに難問となっている。
 ただし今回、採点トラブルは、そんなに目立たなかった。あらゆる関係者が手探りだから、5点を宣告されたライダーも、あー、これで5点なのかと納得していたのではないか見方もある。あるいは、ストップ1点の時にはもがいて3点という余地が残っていたのでトライを続け、あとで文句を言ってみる、という構図になっていたのに対し、ストップ5点はもがきようがなく、そこで流れが止まってしまうから採点にも納得せざるをえない、という一面もあるような気がしている。
 これから世界選手権はアメリカを経てヨーロッパラウンドに移る。ヨーロッパでは、よくも悪くももう少しゆるい採点をしそうだから、それでノンストップルールの評価がどうなるのか、気にしていきたいところだと思っている。
 さて一方で、今後ノンストップルールが世界的に定着するならば(するならば)、全日本を始め日本のトライアルルールもノンストップに、という動きになることも考えられる。黒山健一は言う。
「採点の問題とかもありますけど、ノンストップルールは、ライダーとしてむずかしい」
 トップライダーにとっては、よりクリーンがむずかしいトライアルになるし、下位のライダーにとっては、5点ばかりになる。セクションを簡単に設定すればいいのかもしれないが、そうなるとトップライダーの競り合いが単調になりそうだ。難所の手前でラインを修正して一気にトライするという緊張感もなくなってしまう。
 しかし一方で、流れが止まらないトライアルは、スムーズで美しい。ターンのテクニックや、走りながらマシンを修正するテクニックが、走りにしっかり見えてくる。さて、どちらのトライアルが、トライアルの将来にとって有益だろうか。
 ちなみに、これまで、すっかり動きを止めた状態のマシンを必死で押し上げるシーンがそこここで見られて、それをがんばりと見る向きと見苦しいと見る向きがあったけれど、そういうアクションはノンストップルールではあり得ない。一方、ストップしてもいいなら足をつかずに走り抜けられるセクションでも、止まってはいけないと言われると足つきばたばたで抜け出なければいけないケースも多々出てきて、トップライダーの意外な見苦しいライディングを見せられることもあった。すべて、一長一短で、どちらがいいとは決めにくい。
 それでも、藤波や黒山、野崎などは、どちらかというとノンストップルールに否定的ではない(肯定的、とまでは言えない)。彼らが世界選手権を走り、ライダーとして伸び盛りの頃、ルールは停止1点のノンストップルールだった。その後にトライアルを始めたより若いライダーがノンストップルールへの戸惑いが多いのと対照的だ。
 しかし藤波や黒山らとて、自転車トライアルでテクニックを磨いたクチだから、ストップアンドゴーがトライアルのスタイルだった。オートバイで世界選手権に出て、そのスタイルを修正してきた。これからのライダーは、自身のトライアルスタイルをどう組み立てていくかも、課題になるのかもしれない。いやはや、むずかしい時代になったものだ。

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