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再びチェコはラガ



今シーズン3勝目のラガ

 2008年世界選手権も終盤戦。2005、2006年世界チャンピオンのアダム・ラガと2007年世界チャンピオン、トニー・ボウのタイトル争いは、ここへきてがぜんおもしろくなってきた。ボウが勝てばラガが勝つ。ラガが勝てばまたボウが勝つといった具合で、両者一歩も引かない。ポイント争いでは序盤にリードをとったボウが優位に立っているが、終幕に向けて、ぎりぎりの勝負にどちらが最後まで優位を決められるか。
 一方2004年世界チャンピオンの藤波貴久は、どうにも波に乗れない。今回は優勝戦線とはほど遠く、カベスタニーとの3位争いに勝って表彰台に乗るにとどまった。しかし波にのれないといっても、優勝争いに加わったり、あるいは今シーズン一度も表彰台をはずさない堅実さ、そしてなにより、ボウとラガに割って入っての1勝は価値があった。藤波の2008年シーズンも、まだ終わってはいない。
 2003年までの圧倒的王者ドギー・ランプキンは、日本大会あたりで復調の兆しを見せたが、ここ数戦はまた失速している。そのうまさはいまだに光るものがあるが、勝利を得るライダーからは、一歩後退してしまったようだ。

08チェコ表彰台

 ラガのトライアルは、けっして完璧ではない。コンセントレーションの乱れだろうか。1日を通じて、非の打てないトライを続けるというシーンはめったに見たことがない(2007年もてぎでオールクリーンを達成したのは、珍しく見事だった)。しかし今シーズンのラガは、完璧でない自らのトライアルをカバーしてありあまる強さをみせてくれる。それが、2ラップ目の強さだ。1ラップ目にミスを連発して3位以下に沈んでいても、2ラップ目の後半までに盛り返してきて“定位置”である2位や、あるいは勝利をものにしてしまう。この強さは、チャンピオンをとったシーズンにはなかなか見られなかったものだ。
 チェコの会場は、もう何年も同じくネポムク(Nepomuk)近くのクラモリン(Kramoline)モトクロス場。セクションも、一部を除いて例年とほとんど同じようなものだったという。天気も雨なく太陽も出て、しかも暑くもないという絶好のコンディション。暑い暑いといわれるヨーロッパにあっても、チェコまでやってくると少し状況はちがうのかもしれない。しかし、コンディションがよくて、セクションの状況を把握しているのは、どのライダーにもほとんど同じ条件だから、勝負の行方とは関係がない。
 今回のセクション群の中では、第6から第8セクションの3セクションの難度が高かった。上位4人について、この3セクションの減点と、それ以外の減点を一覧してみると、どのライダーもほとんどがこの3セクションで失点をしているのがわかる。と同時に、勝負そのものは、それ以外のセクションをいかに確実に走破していたかどうかにかかっているということも明らかになってくる。

Rider Lap Total 6 7 8 Other
ラガ 1 13 1 5 5 2
2 7 0 2 5 0
ボウ 1 10 1 3 3 3
2 18 0 5 2 11
藤波 1 18 0 5 5 8
2 21 2 3 5 11
カベスタニー 1 13 0 5 5 3
2 28 5 5 5 13

 ボウは、この日も1ラップ目はトップを守った。いつものとおりの集中したいい走りだ。驚くべきは、1ラップ目に5点がひとつもないことだった。1ラップ目、ラガにはふたつの5点があったし、藤波は3個、カベスタニーも2個の5点があった。5位のファハルドになると、5点は4個と増えていく。鬼門の第6から第8までを5点なしで通過するというのは、ボウの突出した才能をあらためてアピールするものとなった。
 しかしそれだけでは勝てないのもトライアルのおもしろいところ。ふたつの5点をとったラガは、それでもボウに3点差でくらいついていた。3点差は、逆転の可能性を大いに含んでいる。しかもラガは、後半に強い。そして、13点のスコアはカベスタニーもまた同様。今シーズン、まだ一度しか表彰台に乗っていないカベスタニーだが、ここでは藤波をくだして1ラップ目同点3位(クリーンも同じだった)につけた。
 藤波はどうしたことか、まったく精彩がない。ここ数戦、優勝争いをしながら最後に3位に落ち着いてしまうというくやしい戦いを続けていた藤波だが、今回はその3位もあやうい。第3セクションで、マインダーが手助けをしたということで5点をとられているが、これは藤波陣営にすれば身に覚えがない。抗議が通らず、5点をもらって試合が進められるが、この5点が、そのまま1ラップ目の低迷の原因となった。しかし結果としては不本意な採点のせいであっても、藤波がこの日、本来の調子でなかったのは明らかだった。
 2ラップ目、大きなハプニングが第2セクションで起こった。ボウがクラッシュしたのだ。第2セクションはトップライダーにとってはとても簡単な設定だった。ボウとラガの3点差は、ここで一気にひっくり返った(ラガと同点だったカベスタニーは、第1で1点、第2で5点をとっているので、逆転はならなかった。カベスタニーが5点だから、第2セクションもそれほどイージーではなかったわけだ)。

08チェコ・カベスタニー
08チェコ・ファハルド
08チェコ・ランプキン

左から4位カベスタニー、5位ファハルド、6位ランプキン

 さらにボウは、11セクションで大きな失点があった。ちんちんに熱くなったサイレンサーが、セクションテープを切断してしまったのだ。この5点が、ラガとの差を決定的にした。
 一方3位争いは、第2セクションでカベスタニーが5点になれば、第3、第4と藤波が連続5点になるという状況で一進一退。勝負は、後半のクリーンのできるセクション群で、どちらががまんをし続けられるかで決することになった。そして、後半にミスをしたカベスタニーが、藤波に逆転を許して勝負は決着した。
 これで残りは3戦。ポイントリーダーのボウとラガの点差は12点。ラガが3連勝しても、ボウが2位をキープすればタイトルはボウのものになる。今のところ、ボウから2位を奪えるのは、チームメイトの藤波しかいないから、ボウの2年連続タイトルもほぼ決定的と思える。ボウと藤波のポイント差は26点に広がったから、藤波には事実上タイトル獲得の目はなくなった。藤波が3連勝してラガが連続3位ならランキング2位獲得が可能になるが、いずれにしても、藤波の命題は、3位以上のポジションだ。


世界選手権チェコ大会

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 計+TP 合計 C
1 Adam Raga 0 0 0 0 0 1 5 5 0 0 0 0 0 2 0 13+0
GasGas SPA 0 0 0 0 0 0 2 5 0 0 0 0 0 0 0 7+0 20 24
2 Toni Bou 0 0 0 1 0 1 3 3 0 0 0 1 0 1 0 10+0
Montesa SPA 0 5 0 1 0 0 5 2 0 0 5 0 0 0 0 18+0 28 19
3 藤波 貴久 0 0 5 0 1 0 5 5 1 0 1 0 0 0 0 18+0
Montesa JPN 0 1 5 5 0 2 3 5 0 0 0 0 0 0 0 21+0 39 18
Pos. Rider 1Lap 2Lap Time Total Clean
4 Albert Cabestany Sh SPA 13+29+1 42 18
5 Jeroni Fajardo Be SPA 22+27+0 49 16
6 Marc Freixa Ga SPA 24+26+0 50 12
7 Dougie Lampkin Be GBR 29+37+0 66 9
8 Michael Brown Be GBR 51+35+0 86 7
9 James Dabill Mo GBR 53+37+0 90 4
L1+L2+T/O C
10 Daniel Oliveras Sh SPA 44+54+0 98 3
11 Daniele Maurino Ga ITA 58+57+0 115 0
12 Francesco Iolitta Sc ITA 65+62+0 127 0
13 Martin Kroustek Be CZE 75+70+0 145 0
R Henri Himmanen Be FIN

●ジュニアカップ
 ロリス・グビアンとアレック・ウイグしか勝っていないジュニアカップに、3人目の勝利者がでた。フランス人のラニエル・ギュラム。1ラップ目のわずかなリードを守っての初優勝だ。
 グビアンは2位を守って選手権のリードをキープした。グビアンを追撃しなければいけないウイグは、ついに6位まで転落。ユースでのタイトル獲得に2年を要したウイグと、無冠のままジュニアに昇格したグビアン。ジュニアカップの勝利の女神は、どちらに微笑むことになるのだろう。
 最近無得点が続いていたライア・サンツが10位に入ってポイント圏に復活したのが、ちょっとうれしい。

L1+L2+T/O C
1 Guillaume Laniel Ga FRA 18+9+0 27 16
2 Loris Gubian Sh FRA 19+9+0 28 20
3 Matteo Grattarola Sh ITA 19+14+0 33 12
4 Alfredo Gomez Mo SPA 18+16+0 34 17
5 Sam Haslam Sh GBR 22+20+0 42 12
6 Alex Wigg Mo GBR 24+21+1 46 15
7 Ross Danby Ga GBR 32+32+0 64 12
8 Emil Gyllenhammar Ga SWE 34+32+0 66 8
9 Jochen Schafer Mo GER 29+41+0 70 6
10 Laia Sanz Mo SPA 41+40+0 81 3
11 Christian Kregeloh Sh GER 40+42+0 82 6
12 David Millan Sh SPA 44+40+0 84 6
13 Ivan Peydro Ga SPA 46+53+0 99 1
14 Jan Junklewitz Sh GER 47+53+0 100 0
15 Martin Hemmer Be NOR 56+55+0 111 1
16 Jan Peters Be GER 64+54+0 118 2
17 Maxime Mathy Ga BEL 61+61+0 122 1
18 Jean-Phillippe Lerda Scorpa FRA 66+63+0 129 0
19 Ronald Commo Be USA 65+69+0 134 0
20 Richard Rosenstatter GasGs AUT 73+69+0 142 0
21 Harry Harvey Ga GBR 73+73+0 146 0
22 Marc Minder Be SUI 75+73+0 148 0

●FIMユースカップ125cc
 ユースカップは5人目の勝利者がでた。タイトル争いはジャック・チャロナー(イギリス/ベータ)でほぼ趨勢が決まったが、ユースカップは未完成のライダーがシーズン途中に登場して、どんどん完成の域に達することがあるから、興味はまだまだつきない。
 今回はレトアニアのライダーがブービー賞。ブービーメイカーは、女子ライダーのドンナ・フォックスだった。

Pos. Rider 1Lap 2Lap Time Total Clean
1 Alexandre Ferrer Sh FRA 12+7+0 19 19
2 Adrian Pastoriza Ga SPA 9+18+0 27 16
3 Jack Challoner Be GBR 12+17+0 29 14
4 Pau Botella Ga SPA 14+16+0 30 15
5 Luca Cotone Sh ITA 20+20+0 40 14
6 Francesc Moret Ga SPA 30+14+0 44 15
7 Benoit Dagnicourt Be FRA 17+30+0 47 10
8 Maxime Warenghien Sh BEL 22+26+0 48 11
9 Pere Borrellas Ga SPA 34+22+0 56 11
10 Jonathan Richardson Sh GBR 32+26+0 58 8
11 Jake Whitaker HM NZE 24+35+0 59 11
12 Francesc Ciurana Be SPA 33+32+0 65 7
13 Marc Horrach Ga SPA 31+39+0 70 6
14 Simone Staltari Ga ITA 31+43+0 74 6
15 Jonathan Walker Sh GBR 40+38+0 78 5
16 Jack Thompson Sh GBR 43+43+0 86 4
17 Dennis Stetter Ga GER 45+41+0 86 4
18 Jiri Fikejz Sh CZE 41+51+0 92 2
19 Pascal Springmann Ga GER 44+57+0 101 2
20 Kevin Bick Sh GER 54+59+0 113 3
21 Julien Rousselle Ga BEL 62+57+0 119 1
22 Gabriel Marcinow Sh POL 65+64+0 129 0
23 Kaspars Vernieks Sh LET 69+64+0 133 1
24 Donna Fox Sh GBR 71+71+0 142 0

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