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藤波スペインで優勝

 3月22日、スペイン選手権が開幕した。開幕戦の会場はイビサ島。地中海に浮かぶ観光の島だ。
 スペイン選手権では、2008年にはアダム・ラガがタイトルを獲得。インドア、アウトドアと世界選手権でチャンピオンを獲得したトニー・ボウは2位に甘んじている。トップライダーのほとんどが参戦するスペイン選手権だが、こちらにはこちらの戦いがあるようだ。
 その開幕戦、優勝したのは藤波貴久だった。2009年シーズンは、幸先がいい。

 藤波がスペイン選手権に参加するのは、1年ぶりだ。毎年、この時期にスペイン選手権に参加はしているが、藤波の本命の舞台であるアウトドアの世界選手権シーズンを前に、最後の調整に参加するという意味合いが強い。スペイン選手権は、海外選手の参加を拒まないが、参加してもポイントは与えられないので、スペインチャンピオンにはなれない。それでも藤波らの海外選手(といっても、ランプキンはイギリスに拠点を移したし、ブラズシアクはエンデューロに転向したので、今こういう立場にいるのは藤波しかいない)は、世界のトップクラスの選手とお手合わせができるし、セクションレベルも試合の緊張感も、世界選手権まんまということで、よいプクラティスになるのだった。
 スペイン選手権は、去年から積極的なルール変更を行っている。ルール変更の趣旨は、日本でも思慮が重ねられている、試合の進め方に対する懸念が発端だと思われる。第1セクションで長い間合いを取り、そのわりにラップの最後には大急ぎで走り回る。安全に対するリスクもあるし、観客にも不親切だ。それで、スペインのトライアル協会は大英断をした。
 下見は土曜日にのみ。試合が始まったら、選手は下見をしてはいけない(!)。セクションについたら速やかにセクショントライをするべし。なんとなれば、持ち時間は15セクション×2で、3時間半しか与えられていない。ぐずぐずしていたら、タイムオーバーの憂き目に遭う。
 ただし、セクショントライは連続トライ。第1セクションを2回トライしたら、次に第2セクションへ。こうして1ラップすると、15セクションを2回ずつトライしたことになる。途中3カ所ほどタイムコントロールが設けられていて、時間管理には厳しい。のんびりはしていられない。

09スペイン選手権藤波

 今回、2009年のシーズンインを前に、ちょっとした悶着もあった。新たなルールとして、マインダーがセクションに入ってはならぬということになったのだった。そりゃあんともあぶない。そんなことはありえないと反論する選手たち。協会側の意見としては、マインダーを大挙して連れ回せるワークスライダーが一方的優位に立つのはよろしくないから、マインダーのセクション立ち入りを禁止するのだという。しかしそれは、安全を無視した規則だ。
「スペインの新しいルールは、そのうち世界選手権でも採用されるかもしれないし、ぼくも悪くはないと思う。でも新しいルールが、トライアルの現場ではないところで、トライアル選手でない人たちの手によって作り替えられるのは、ちょっと問題ではないか」
 と、藤波は言う。日本のレギュレーションについても、通じるところがあるのではないだろうか。
 結局、試合当日には、1名のみのマインダーのセクション立ち入りが許可されることになった。選手の安全性をとっても、これは充分な妥協案だった。ということで、マインダーはセクションへの立ち入りができるが、選手はあくまでも歩いてのセクション立ち入りは禁じられている。最近はインカムの使用が前提となっているから、細かい指示はマインダーからライダーに即時伝えられるのだろうが。
 もうひとつ、スタート順も今回から変更になった。通常トライアルでは、ランキングなどが上位のものがあとからスタートする。去年のスペインチャンピオンはアダム・ラガだから、ラガが最終スタート。実績のない藤波らは、最初のグループでのスタートとなるのがふつうだ。
 でもここにも、スペイン協会は改革を施した。今回、トップクラスのTR1クラスは9人のみの参加だった。これを3人ずつの3グループに分け、グループごとにスタートする。最初にスタートするのが、去年の上位3名のトップグループで、次が4位から6位まで、さらに7位から9位までの順。しかしセクションへのトライ順は、成績の上位のものがあとからということになっている。つまり第1セクションを最初にトライするのはカベスタニーで、次がボウ、最後がチャンピオンのラガ。そののち、第2グループがやってきて、オリベラス、フレイシャ、ファハルドの順でトライする。さらに第3グループがやってきて、ベイド、ゴメス、そして藤波がトライ。それぞれのグループの間には10分〜15分のタイムラグがあるから、藤波が到着したときには、ファハルドラの姿もかたちもない。
 ところでイビサ島について。イビサ島は、バルセロナの南西に浮かぶ地中海の島で、絶好の観光スポットとなっている。地中海には、こういった観光名所の島が数多い。セクションに使われたのは海岸線の岩場で、これがごりごりの尖ったヤスリのような形状で、抜群にグリップがいい。グリップがよすぎて進みたい方向にも進めないので、向きを変えるときにはすべてホッピングしていくことになった。とてもとても、タフな大会となった。

順位 ライダー マシン 1回め 2回め 減点 クリーン
1 藤波貴久 Montesa 1 1 2 28
2 トニー・ボウ Montesa 3 0 3 27
3 アダム・ラガ Gas Gas 2 2 4 26
4 ジェロニ・ファハルド Beta 9 2 11 21
5 アルベルト・カベスタニー Sherco 13 16 29 19
6 マルク・フレイシャ Gas Gas 30 23 53 16
7 アルフレッド・ゴメス Montesa 39 29 68 10
8 ダニエル・オリベラス Gas Gas 46 27 73 11
R イバン・ペイド Gas Gas

 この日の藤波は絶好調。けっしてやさしいとはいえない、ちょっとのミスで5点となってしまう難セクションを次々にクリーン。第6セクションで1点、11セクションで1点の計2点で試合をまとめあげた。
 藤波に対してボウやラガは、セクション攻略の失敗でいくつかの減点をしている。対して藤波の減点は、ホッピング中にタイヤが岩に触れてバランスを崩したり、ボウやラガが登りあぐねた大岩を勢いよく登りすぎてついてしまった減点だった。結果はボウに1点差の辛勝だが、トライアル的には完勝だった。
 時間もタイト、しかもセクションも長く、すべてに厳しいトライアル。ここで勝利したことで、藤波の2009年はがぜん楽しみになってきた。

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