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不調に喘ぐ藤波貴久

09ポルトガル藤波2

 藤波貴久が、かつてないほどの不調に悩んでいる。2009年、開幕戦こそ3位で表彰台に乗ったが、その翌日、アイルランドの日曜日には5位に終わり、復調を誓った次戦ポルトガル大会だったが、なんと今度はさらに成績を落とす6位の結果に終わった。
 このかつてない不調は、いったいなにが原因なのか。悩める藤波の復活の日はいつか。


 開幕のアイルランド2戦、続くポルトガル。この3戦は、トニー・ボウが2勝、アダム・ラガが1勝を挙げた。昨シーズンからの勢いを見れば、この勢力図はほぼ予想の範疇でもある。
 ところが、藤波だけがつまずいている。藤波は開幕戦3位、第2戦5位、そして第3戦6位と、戦い進めるにつれて成績を落としている。しかしこれは、藤波がどんどん調子を落としているというより、いまだシーズンインの準備が整っていないのだ。

09ポルトガル藤波2

 藤波本人が、開幕戦での3位はかなりの幸運の結果だったと語っている。アルベルト・カベスタニーと同点クリーン差での3位獲得だったことから、4位となってもまったくおかしくない結果ではあった。そして翌日、今度は同じコンディションながら、幸運に見舞われずに5位となった。
 2009年。藤波は新しいシーズンに、いつになく自信を持っていた。このシーズンオフにやってきた、新しいファクトリーマシンが、とてもよい仕上がりを見せていたからだ。ニューマシンはインドア世界選手権の最終戦から実戦投入され、スペイン選手権の開幕戦にも参戦。藤波はこの戦いでラガやボウを破って見事な勝利をおさめている。なんとも幸先がいい。
 ニューマシンは、外観上はこれまでのものとほとんど変わりがないが、エンジン性格などが大きく変わっているという。ホンダの作ったフューエルインジェクション吸気の4ストロークエンジンは、デビュー当時はとても元気のよい、パワフルをアピールするかのようなエンジンだった。ファクトリー仕様もこのセッティングにならって、よりパワーを求めて開発が進んでいった。
 ところが実際にシーズンが始まってみると、有り余るパワーはメリットもあるがデメリットもあることがわかってきた。特に藤波は、アクセルを開けることでライディングのバランスをとる乗り方をする。2ストロークエンジンはオーバーレブ領域でパワーが落ちるし、半クラッチでパワーを逃がすこともできる。50ccや125ccで、そういうテクニックを山ほど学んできた藤波にとって、高回転のコントロールはお手のものでもあった。
 しかし4ストロークは、アクセルを開けないほうがメリットが大きい。アクセルを開ければ、その分だけぐいぐいマシンが進んでいくグリップのよさが、それまでの藤波ライディングの見直しを強いた。2005年、2006年と、藤波はあと一歩のところで世界チャンピオンを取り逃がした。2006年はシーズン前に骨折し、シーズン中には甲状腺の疾患にかかってアメリカと日本で不調をきたすという不運に見舞われたが、それでも2年続けてランキング2位を得た。今思えば、2006年はチャンピオンになってしかるべき年だったし、2005年はマシンとのコンビネーションを模索していたシーズンだったのだ。
 2007年、トニー・ボウがベータから移籍してくると、マシンの方向性に若干の修正が加わった。これまで、藤波とドギー・ランプキンのライディングで仕上がりが確かめられてきた。ボウが加わり、また新たな評価がフィードバックされるようになった。
 2009年のニューマシンは、これまでのリニアなアクセルレスポンスから、マシンがより走るセッティングを施されているという。簡単にいえば、アクセルをちょっと開けただけで、マシンがたくさん進む仕様だ。
 藤波のライディングは、そのトレードマークであるフジガスっぷりが、最近はずいぶんと抑えられている。それでも本質的には、藤波ライディングはやはりフジガス。マシンがたくさん進むニューマシンは、藤波が乗るとものすごく進むマシンになっていく。
 一方ボウは、必要最小限しかアクセルを開けないタイプのライディングをする。マシンが進むニューマシンは、あるいはボウのライディングに、よりマッチしたものかもしれなかった。
 藤波が、ボウ仕様のマシンに無理をして乗っているのかといえば、そんなことはない。開発段階からこの仕様にかかわってきて、今後、今以上のライディングを完成させようと思ったら、今までのフジガスに、さらになにかを加える必要がある。それが、ニューマシンの仕様だった。新しいマシンの戦闘力をきちんと発揮させられれば、2008年までのフジガスにはなかった戦闘力を発揮できるはずだ……。
 こんな中、スペイン選手権に参戦した藤波は、ボウとラガを相手に、すばらしい走りを見せた。この優勝で、藤波はニューマシンとのコンビネーションに自信を持った。そして期待にあふれて迎えたのが、アイルランド大会だった。

09ポルトガル藤波

 今年はいけるはずだという期待は、しかしそれが緊張感を生むことにもなる。
「自分にプレッシャーをかけているつもりはなかったし、そういう実感もないのだが、潜在的なところでプレッシャーがなかったかというと、やっぱりあったのかもしれない。今はメンタル面の大きな問題となっているかもしれないと思っている」
 藤波は語る。ライディングスタイルの完成度の問題なのだが、そこに、焦りや緊張、勝たなければいけないというプレッシャーもからんで、藤波のライディングは完成形とは違う方向に進んでしまっているかのようだ。
「こういうときは、ライディング中の表情も、おっかなびっくり。こんな顔して走っていたら、勝てません」
 だからといって、むりやり表情だけつくろうことはできない。よい表情で走れるというのは、本能のままに走れるときだと、藤波はいう。後輪が少し滑った、さらに開けるのか、少し閉じるのか。トラクションを抜くのかかけるのか、その局面局面でひとつひとつ頭を悩ませていたらセクションの走破には間に合わない。実際には、頭で考えるより早く体を反応させて走っている。ところが今、新しいマシンを上手に走らせるには、藤波は要所要所で考えている。そして考えているひまがないほどの戦況になったのが、この3戦の藤波だ。
 開幕戦は、セクションが難し目だった。なので藤波の5点の失敗も、いくらかは挽回が可能だった。2日目、走りなれたライダーにとっては、相対的に難度が下がった。となると、藤波の不本意な失敗は、成績に大きな影響を与えることになった。
 ポルトガル。セクションの難度はさらに下がっていた。ライバルがクリーンしているセクションを、ひとりだけ5点になっては、勝負は決定的だ。これが、藤波の6位低迷の決定的理由。その背景に、ポテンシャルを上げたニューマシンの存在があった。
 藤波とは若干ライディングスタイルのちがうボウは、ニューマシンとのコンビネーションを順調に仕上げているのかといえば、ボウはボウで、やや手こずっているところがあるらしい。ボウは、今シーズンスペイン選手権で勝利がない。ボウにしてみても、マシンが自分の手足でないような感触を覚えながらライディングすることがあり、それがこの結果なのだという。
 マシンが自分の手足にならないジレンマ。それはどんなトライアルライダーにも共通する課題だが、特に世界のトップクラスを戦うライダーにとって、それがどんなに影響となることか。
「日本大会にはマシンを自分の手足として、本能のままにマシンに乗れるようにしたい。いい成績をあげた上で、日本に帰りたい」

09ポルトガル表彰台

藤波のいない表彰台

 藤波の願いは切実だが、日本大会までには、2日制のイギリス大会があるだけだ。マシンになれるには時間が解決してくれるかもしれないが、イギリスまでに間に合うものかどうか。あるいは……?
「今のマシンに乗り馴れないのが明らかになったからといって、マシンの仕様を元に戻すのはいやだ。新しい仕様がよい性能を持っているのがわかっているのだから、ぜひ乗り馴れてその性能を発揮させたい」
 アイルランドのときにはこう語っていた藤波だが、イギリス大会を前まで3週間を切って、まずは自分のトライアルを取り戻すことを考えているという。

世界選手権・3位までと藤波
Pos. Rider
Machine Nat.
Sections Lap Tatal Clean
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 Total Time
1 Toni Bou 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 0 4 1 5 27
Montesa SPA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
2 Adam Raga 0 0 2 2 0 0 2 0 0 0 1 0 1 0 0 8 1 13 23
GasGas SPA 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 4 0
3 Albert Cabestany 0 0 5 3 0 0 1 0 0 0 0 5 0 0 0 14 1 21 24
Sherco SPA 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 6 0
=======================================================
6 藤波 貴久 0 0 3 0 0 5 3 0 0 0 0 5 3 5 0 24 0 42 19
Montesa JPN 0 0 5 0 0 5 1 0 0 0 0 5 0 2 0 18 0
世界選手権・4位以下
Pos. Rider Machine Nat. Lap1 Lap2 Time Tatal Clean
4 Jeroni Fajardo Be SPA 14 13 2 29 22
5 Marc Freixa Ga SPA 30 8 0 38 16
6 藤波貴久 Mo JPN 24 18 0 42 19
7 James Dabill Ga GBR 28 14 2 44 17
8 Dougie Lampkin Be GBR 21 27 0 48 17
9 Loris Gubian Ga FRA 35 18 0 53 11
10 Michael Brown Sh GBR 30 30 0 60 11
11 Daniel Oliveras Ga SPA 41 25 0 66 9
12 Henri Himmanen Be FIN 59 48 0 107 5
ジュニア
1 Alfredo Gomez Mo SPA 8 6 0 14 24
2 Alex Wigg Be GBR 10 5 0 15 23
3 Matteo Grattarola Sh ITA 16 13 0 19 23
4 Guillaume Laniel Ga FRA 14 9 0 23 20
5 Jack Challoner Be GBR 21 7 0 28 18
6 Francesc Moret Ga SPA 22 7 0 29 16
7 Alexandre Ferrer Sh FRA 18 12 0 30 20
8 Ross Danby Ga GBR 22 12 0 34 17
9 Benoit Dabnicourt Be FRA 27 10 0 37 15
10 Ivan Peydro Ga SPA 18 36 0 54 9
11 Simone Staltari Ga ITA 40 15 0 55 13
12 Mardon Moi Be NOR 37 22 0 59 9
13 Jan Peters Be GER 47 30 0 77 10
14 James Fry Sh GBR 41 37 0 78 7
15 Ben Wibberley Ga GBR 47 43 0 90 5
16 Seoung Won An Sh GBR 56 37 0 93 5
17 Jean Philippe Lerda Sh FRA 49 52 0 101 4
DNS Pedro Maia Ga POR
ユース(125cc)
1 Janathan Richardson Sh GBR 7 8 0 15 21
2 Tanguy Mottin Ga FRA 14 6 0 20 22
3 Maxime Warenghien Sh BEL 16 10 0 26 21
4 Hakon Pedersen Sh NOR 12 15 0 27 20
5 Luca Cotone Be ITA 15 14 0 29 18
6 Carlos Traviesa Ga SPA 19 11 0 30 19
7 Jonathan Walker Sh GBR 19 14 0 33 16
8 Marc Horrach Ga SPA 19 18 0 37 18
9 Pere Borrellas Ga SPA 27 14 0 41 17
10 Francesc Ciurana Be SPA 25 17 0 42 15
11 Ben Morphett Be GBR 17 26 0 43 18
12 Matteo Poli Be ITA 23 20 0 43 17
13 Guillaume Pot Sh FRA 23 20 0 43 15
14 IB Andersen Ga NOR 26 21 0 47 12
15 Romain Tessariol Ga FRA 19 28 0 47 10
16 Marcos Mendez Sh SPA 26 22 0 48 12
17 Gianluca Tournour Ga ITA 32 17 0 49 12
18 Matteo Cominoli Be ITA 37 24 0 61 11
19 Aaro Castells Ga SPA 34 32 0 66 8
20 Pedro Sousa Ga POR 42 37 0 79 8
21 Diogo Vieira Ga POR 48 45 0 93 6
22 Gabriel Marcinow Ga POL 48 47 0 95 4

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