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SSDT 4日目

 4日目、この日は、スコティッシュらしいスコティッシュとなったと杉谷から一報。どういうことかといえば、ものすごくたいへんだったということだ。トップのパスケットも、減点8をとった。トータル12点、2位ジャービスとコナーに2点差。この日は全体に減点を増やしているが、8位のダン・ソープは、それでも減点2で帰ってきた。スコティッシュ・スペシャリストの感覚は、想像を絶する。
 日本勢は、かなりダメージを負った模様。森進太郎はタイムオーバーもなく安泰だが、それ以外はことごとくタイムオーバーをくらっており、杉谷と小林由利子以外は失格の模様。失格となっても元気があれば出走は可能だが、その元気が残っているかどうかもきわどいところだ。
 金曜日になればだいぶ楽になるはずだったのだが(といっても、土曜日がまたたいへん)今回の魔の手は木曜日に潜んでいた。


 ここまでの3日間、お天気もよく、初出場のみなさんの「すげーたいへん」という感想をよそに、杉谷からは「今年は比較的楽」という報告が届いていた。沢はつるつるだし湿地帯ははまれば出られないしで、お天気と関係なくたいへんなのだが、雨が降ろうものなら体力を奪われるし沢も増水するので、やっぱりたいへんなことになる。
 その雨が、木曜日になってどかんと降った。3日目まででそうそうやられていた日本勢初出場組は、この雨で壊滅的なダメージを負った。
 リザルト6枚目、下から4番目248位にいるのが野牧さんだ。この日の減点は917点、タイムオーバーも146点(146分オーバー)あるが、50点減点もいくつもある。セクションの見落としは、ひとつふたつなら許してもらえるが、いくつかのセクションが固まっているグループ(SSDTではヒル・丘と呼ばれている)をまるごと見落とすと、それで失格ということになっている。タイムオーバーは60分以上で失格。野牧さんは、このどちらにも該当してしまうから、失格は免れようがない。
 杉谷は、ムーアの中でひどくヨレヨレになっている野牧さんに遭遇している。「もう走りたくない」と青ざめていたそうだ。その後、野牧さんがランチコントロールに到着したのは夕方6時だったとのことで、バックマーカーにもうやめなさいと言われ、ここで走行続行を断念。19セクション以降は全部50点となっている。エンジンもプラグが死んだかなんかで、ちゃんとかからない状態なので、人間はアーミー(イギリス陸軍)の車に乗せてもらい、マシンはハンバーガー屋さんに運んでもらったらしい。マシンはアーミーの車には乗せられなかったのだ。
 野牧さんのちょっと上、猪倉さんは242位。こちらは5点ばかりだが50点はない。タイムオーバーは69点(別に3点のペナルティがついている)。この日214点、トータル642点。60分以上で失格だから、惜しいところだが失格となるのかもしれない。小林由利子さんが初出場の時、女性ライダーということでずいぶん手厚い歓迎を受けた。ある日70分ほどのタイムオーバーをしてしまったが、失格圏からたったの10分オーバーだし、温情があるのではないかと思っていたら、手厚い歓迎と競技の規則は別物だった。こういうのを、本当の歓迎というのだと感心したのを思い出した。
 その小林さんは、猪倉さんのさらにちょっと上、239位。タイムオーバー減点60点、この日200点、トータル570点。タイムオーバー60分がぎりぎりだが、どうだろう? 60分以下、60分未満という数えかたは、日本人と欧米人では感覚がちがうのでむずかしいのだ。
 神部さんは229位。この日200点、トータル514点だが、タイムオーバーが101点ある。これは失格を免れない状況だ。神部さんはブレーキペダルを止めるねじがだめになってしまっていて、まともにリヤブレーキが使えない状態らしい。さらにエンジンが焼きついて、圧縮がない。なにやら、キックでは始動ができない、クラッチも切れなくなってきて、セクションでまくれてスプロケットも曲げたということで、その苦労はいかばかりなり。こういう状況では、明日以降の出走はむずかしそうだ。
 さらに状況が厳しいのは宮川さん。宮川さんは神部さんのひとつ上のポジションの228位。タイムオーバー100点、この日203点、トータル512点。宮川さんの場合、マシンは無事なんだが、胸を強打したのがどんどんひどくなっていて、フロントはまったく引けず、神部さんが目撃していたところによると、悲惨な状態でささりまくっているという。最初にやった手も、あいかわらずぱんぱんで、これ以上走り続けるのは危険という感じになっていた。失格を機に、明日は1日休んで、元気が出れば最終日だけ走るかもしれないという結論に至ったようだ。鎮痛剤服用で走っているというのも、なんとも悲惨だ。
 さて、ページを1枚戻って5枚目のリザルト。3日間忘れていたけど、杉谷のSSDT仲間にボイタ・クレッカという北欧の人がいる。ジャーナリストで、世界選手権にも出場してみたことがある。とんでもない状況になって、すぐにリタイヤしたそうだけど。その昔、トライアルジャーナルの宮田光幸さんが出場してぼろぼろになったことがあるが(確か1987年の頃だと思った。宮田さんも、当然若かった)その頃すでにボイタはよれよれと走るライダーだった。そのボイタは、今年も走っている。196位。この日の減点は134点、トータル403点。しかしきちんとクリーンもしているし、タイムオーバーは29点にとどまっている。ボイタは、今年60歳になったそうだ。イギリス人でなくても、こういう人もいる。根性や技術とはまったく無縁そうに走るひとで、しかしこういう結果で帰ってくるということは、根性も技術がなければありえない。ボイタは、今回のSSDTが30回目となるんだそうだ。人生の半分、SSDTに出場していることになる。
 杉谷は4ページ目の真ん中よりは上、138位。本日の減点87点、うちタイムオーバー減点は25点。トータルでは289点。2枚目はおろか、いまや4枚目が定着しそうな杉谷だが、出発の朝までDVDの編集をやって、その前々日には自然山通信の校了をやってというスケジュールでのスコットランド行きだから、この成績でも走っているだけえらい。よく見たら、30セクションのうち、5点はふたつしかなかった。
 3ページ目真ん中、101位にはイリス・クラマー。彼女は、おー、タイムオーバーがない。上品なうまさがイリスの持ち味だけど、しっかりたくましさも成長しているようだ。本日67点、トータル223点。
 2枚目の下から2番目にいるのが83位森進太郎。こちらもタイムオーバーなし。本人はいたく満足の一日となったようだが、杉谷に言わせると、国際A級の若者がこの程度で喜んでいてどうする、杉谷だって40歳前はそのくらいで走れていたわい、ということになる。今でも、出発の前の日まで編集作業で徹夜してなければ、このへんの成績で走るのは、夢ではないと思いますけども。でも進太郎は去年はパンクでリタイヤだったから(リヤタイヤのビートが落ちて走れなくなった。杉谷も同様のトラブルを起こしたが、杉谷はリヤにフロントのチューブを入れて帰ってきた。進太郎は、18インチのタイヤに21インチのチューブを入れるという発想がなかったらしい)、ちゃんと成長している。きっと杉谷だって、成長しているのだ。
 2枚目上のほう、51位はライア・サンツ。減点はたったの36点だが、タイムオーバーが7点ある。1年目で、スコティッシュの走り方をまだ把握しきっていないんじゃないかと思う。まぁ、イギリスのおじさんたちを見ていると、そんなに簡単にわかるものではないと思う。ライアはニューカマーでも5位となっている。これは変わらず。
 さて1枚目。
 パスケット、ジャービス、コナー、ビルバオ、ヘミングウェイ、ダビル、コリー、ソープ。このあたりまでは来るべき人が上位に来ている。パスケットからソープまでは10点。ソープが優勝するというのはちょっとむずかしいが、ヘミングウェイあたりまでは充分可能性がある。なんせソープとても、1日平均6点に満たない減点なのだ。ジェームス・ランプキンは22位、ハリー・ランプキンは31位。
 ところで、ふと気がついたら、ジョアン・ポンス(シェルコ4T)がリタイヤリストに載っている。マシンの問題なのか人間の故障なのかはわからないが、新しい4ストロークの実力も、気になるところだ。
 オーバー40のリザルトを見たら、杉谷は28位だった。これがすごいのかどうかは、よくわからない。ちなみに、お気の毒なことにオーバー40の80位は小林由利子さんだった。
 女性クラスは、圧倒的にライア・サンツがトップで110点。イリス・クラマー、223点。ケティ・サンターが383点、そして小林由利子さん570点となっている。
 ともあれ木曜日は、これがスコティッシュだという、これまででもっとも長い一日となった。寒さ、雨、風。コースとセクションそのものは毎年変わらないが、去年よりもうんときつい木曜日だった。

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