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    2017.08.17

    9/3寅吉カップ

世界のニュース

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標高2000メートルの高地での戦い。

A・カベスタニー

 乾いて薄い空気、強い日差し。世界選手権第9戦アンドラ大会は、久々に山のてっぺんにやってきた。シーズンも残り2戦。藤波貴久とアダム・ラガのチャンピオン争いばかりではなく、ジュニアクラスもユースクラスも、チャンピオン争いがし烈である。今シーズンは、近年まれにみる、白熱した戦いが最後まで続いている。おそらく、チャンピオン争いは次回最終戦ベルギー大会(9月24日開催)の最終セクションまで決着がつかないことだろう。
Photo: Pep Segales


 3連勝していた藤波は、今回は勝てなかった。藤波が負けたというより、アルベルト・カベスタニーが絶好調。まったく足を出そうとしないし、5点はおろか、3点もない。足を踏み外したら500メートルくらい一気に滑落しそうな険しいセクションを、平然と走破してくる。カベスタニーは、ときどきこういう手のつけられないうまさを発揮する。これがコンスタントに出てくるようになると、圧倒的チャンピオンになれる。
 一方、コンスタントという点では、手のつけられないカベスタニーに破れはしたものの、辛くも確実に2位に入った藤波。現在置かれている状況を考えなければ、これぞチャンピオンの戦い方というものだろう。調子はけっしてよくはなかったというし、クリーンをねらって5点になったりする“若い”ライディングもあった。しかしそれでも、最後には手堅いところにつけてくるのだから、今年の藤波はほんとうに強い。

藤波貴久

 指の骨折と、アメリカで発覚した体調不良は、今も完全には回復していない。しかし藤波には、その逆境を自分のものとして取り込んで、すっかり克服してしまう強さがある。藤波にとって不幸だったのは、開幕戦スペイン大会とアメリカ、日本大会で、自分の置かれた逆境に不慣れなまま5戦を消化してしまったことだった。この5戦がなければ、藤波の今年のリザルトは優勝と2位ばかりなのだ。
 ラガは、あいかわらず緊張感なくはしゃぎながら週末をすごしているが、その実、藤波に追いつめられて苦しい戦いを続けている。アダム・ラガといえば、その卓越したうまさが特徴だったが、今のラガにはあまりうまさは感じられない。藤波に追いつめられたプレッシャーによって、本来の走りができていないのは明らかだ。試合をまとめる力はついてきているが、大ミスをしたら勝利ばかりかチャンピオンも逃すという状況は、ラガにとってはかなり苦しいものにちがいない。
 藤波陣営は、チャンピオンシップはすでに標的にしていない。あきらめたわけじゃないけど、執着してとれるものと、執着してもとれないものがある。この場合は後者だから、ベストを尽くしたうえで、結果がどちらに転ぶか、ときの裁定を待つという構えだ。
 大会序盤、第1〜第4セクションは沢沿いに設けられていた。大会中、唯一水のあるゾーンである。ここではカベスタニーと藤波が圧倒的に強かった。それでも、カベスタニーは2ラップ目の第3セクションで1点を減点した。藤波は、両ラップともにすべてをクリーンした。この集中力はさすがである。
 そこから標高差2000メートル以上の山のてっぺんに移動し、最初の第5セクションが、藤波には鬼門だった。1ラップ目はラインを外してどたばたしたあげくに、小さな段差を登れなくて5点になってしまった。2ラップ目は、意外に好調に走れてクリーンがとれそうになって、これが裏目に出た。今の藤波でも、ちょっと欲がでて失敗することがある。バックをとられて5点。このバックは、ちょっと厳しい採点だった。藤波がオブザーバーに駆け寄るが、じっと藤波を見守るシレラ監督が、この5点はしょうがないから、気持ちを切り替えて先へ進もう、と藤波を即す。シレラさんはラインの指示などこそしないものの、藤波に適確に声をかけ、藤波の強さの一翼を担っている。
 それにしても、今回の大会は時間がなかった。結果からみると沢のセクション群で時間を使いすぎた感があるのだが、ここはここで、つるつると滑りやすくて慎重な下見が必要だった。落ちたら致命的なセクションが多く、加えてコースが長かった。1ラップ目も2ラップ目も、多くのライダーがタイムオーバーを喫している。藤波にしても、ゴールしたのは残り2秒という、ぎりぎりのタイミングだった。藤波も体力的にきつい大会だったと言っていたが、ゴールしたライア・サンツなどは、そのままふらふらと倒れてしまったという(体力の消耗に加えて、軽い高山病の症状か。大事にはいたらず)。いやはや、お疲れさまでした。
 ドギー・ランプキンは、減点数では藤浪の上をいっていたが、タイムオーバーで3点を加えて、4位に甘んじた。ライディングの切れはともかく、ランプキンの強さはあいかわらずなのだが、こういう巡り合わせの悪さが、チャンピオンの座から降りてしまったライダーの不幸に思える。

T・ボウ

 あいかわらず、好不調の波が大きいのがトニー・ボウだ。今回も、前半戦はカベスタニーに次いで2位のポジションにいた。しかしそれが維持できない。優勝もするけど、失敗すると6位にまで落ちてしまうというコントラストが、今のボウの実力だ。今の段階ではまだうわさ話だが、来シーズンボウはベータをでることが確定的。次のチームでは、おそらくボウのこういった欠点が急速に改善されて、強いボウがみられるようになるのだろうが、2006年のボウは、強くて弱いライダーといった評価になるだろうか(2007年のボウの課題は、マシンへの慣熟となるだろうが、これについてはまたいずれ)。
 今シーズンのトップ5は、ラガ、藤波、カベスタニー、ランプキン、ボウ。スタート順はフランス大会までのランキングで、ローテーションが組まれている(フランス大会までは、去年のランキング順)。フランス大会の時点でのランキングはラガ、ランプキン、ボウ、カベスタニー、藤波の順だった。今回はボウが最後にスタートし、藤波が最後から2番目にスタートしている。
 トップ5の中で、6位以下に落ちたことがないのはラガひとりだ。そしてトップ5を脅かす最右翼はジェロニ・ファハルド。シーズン序盤にはマルク・コロメがファハルドにぴったりついて戦っていたが、今コロメはスコルパに移って4ストロークの開発に忙しい。コロメなしのファハルドがどんな戦いをしていくか、これからが正念場のファハルドだ。
 そのコロメがチームに加わって、見ちがえるように強いライディングをしているのがタデウス・ブラズシアクだ。難セクションでは乱暴に走り抜けることで成績をだしていたのがタデウスの走り方だったが、一転、トップライダーと同じように確実に刻んで走るテクニックを身につけはじめた。まだ成績には結びついていないで本人は納得していないが、点数的にもフレイシャにあと一歩に迫っている。彼の成長は、ちょっとおもしろい。
 同じように成長しているのが小川毅士。難度の高いポイントをするするっと抜けて大喝采を受けることもあるが、セクションを通して成績を見れば、3点や5点になってしまうケースが多い。成長については自覚もあるようだが、次はその成長を成績につなげないとという思いがある。一桁入賞まであと一歩だが、そのあと一歩が遠い。焦らずに取り組みたい一方、残り試合はあと一戦で、焦らずにはいられない。
 ジュニアクラスでは、今回マイケル・ブラウン(イギリス・ベータ)がチャンピオン争いから脱落した。見かけのポイントでは、ダニエル・ジベールの179点に対してマイケルは172点で7点差だが、有効得点制をとっているこのクラス、マイケルが最終戦で優勝しても、ポイントはたった5点しか加算されないのだ。一方ランキング2位のダニエル・オリベラスは現在176点。最終戦でオリベラスが優勝しジベールが2位に終わった場合、オリベラスのポイントは181点となり、対してジベールのポイントは179点で変わらない。最後の大逆転が見られるか。ふたりは同じスペインのフェデレーションチームに属するチームメイトだが、ジベールはモンテッサ、オリベラスはガスガスに乗っている。勝利数は今の時点で3勝で横並び。2004年、最終戦まで続いた125クラスでのふたりのタイトル争いが、再びジュニアクラスで再現する。
 125クラスは、最近めっきりエントリーが多い。若いライダーの登竜門としてのこのクラスの存在が、ようやくその価値を認められてきたようだ。今回はロシアの選手のエントリーもあった(もちろん結果は最下位。いくつか3点があったのが立派)。こちらのタイトル争いは、今回5位と低迷したロリス・グビアン(フランス・シェルコ)が163点で見掛け上のランキングトップ。しかし全戦に参加しているグビアンは最終戦で優勝してもランキングポイントは9点しか加算されない。対してランキング3位にアレックス・ウイグ(イギリス・ガスガス)は日本大会に不参加だったので、最終戦の得点がそのまま加算される。グビアンが優勝しても、ウイグが3位ならウイグのチャンピオンが決定する計算だ。
 今回は、イタリアのマテオ・グラッタローラが優勝した。マテオは日本大会に続いて2勝目。マテオも全戦参加していて、最終戦で優勝してもポイントは14点しか加算されない。125クラスのチャンピオン争いは、電卓片手にちょっと忙しい。
 最終戦ベルギー大会は、泣いても笑っても3週間後。女性世界選手権大会第2戦と併催で、会場は去年と同じ、ベルギーのスパ・フランコルシャンで開催される。
●世界選手権

Pos. Name Machine Nation Lap1 Lap2 Tatal(+TimeP.) Clean Points
1 アルベルト・カベスタニー シェルコ SPA 3 4 7+1 24 160
2 藤波貴久 モンテッサ JPN 8 10 18 21 171
3 アダム・ラガ ガスガス SPA 10 8 18 17 181
4 ドギー・ランプキン モンテッサ GBR 10 6 16+3 20 159
5 ジェロニ・ファハルド ガスガス SPA 12 12 24+4 17 120
6 トニー・ボウ ベータ SPA 15 27 42+1 16 145
7 マルク・フレイシャ ベータ SPA 23 32 55+5 10 96
8 タデウス・ブラズシアク スコルパ POL 34 33 67+2 5 76

●ジュニア

Pos. Name Machine Nation Tatal(+TimeP.) Clean Points
1 マテオ・グラッタローラ シェルコ ITA 9 17 162-6
2 アレックス・ウイグ ガスガス GBR 12 17 158
3 アルフレッド・ゴメス ガスガス SPA 13 15 138-8
4 リー・サンプソン シェルコ GBR 20 15 109-4
5 ロリス・グビアン シェルコ FRA 29 9 171-8
6 アレクシ・セルバンテス ガスガス FRA 30 11 53

●125

Pos. Name Machine Nation Tatal(+TimeP.) Clean Points
1 ダニエル・ジベール モンテッサ SPA 21 20 194-15
2 ダニエル・オリベラス ガスガス SPA 23+3 17 191-15
3 マイケル・ブラウン ベータ GBR 35 17 187-15
4 フランチェスコ・イオリタ シェルコ ITA 61 9 120-7
5 ニコラス・ゴンタルド ガスガス FRA 61 5 130-9
6 ライア・サンツ モンテッサ SPA 66 5 97-4

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