© トライアル自然山通信 All rights reserved.

11/12 City Trial Japanへのお誘い
Pさんへ
Pさんが大阪にお住まいと聞いて、お勧めイベントのご紹介です。11月12日に曜日に開催で、場所は大阪市の中央公開堂前の中之島通りになります。
中之島通りといえば、大阪駅にも大坂城にも近いし、中央公会堂は歴史的にもかっこいい建物だし、大阪にうとい当方にはいまひとつピンとこないのですが、大阪のど真ん中での開催ということになるのかと思います。
なにをやるかというと、トライアルです。トライアルといわれても、あんまりおおざっばな名称で内容はわからないと思いますが、当方の世界では産業革命以来、トライアルという名前で定着している、そういうモータースポーツのカテゴリーなのです。
ふつう、モータースポーツといえばよーいどんでスタートして早いものが勝つ、F1やMOTO GPのような、いわゆるレースがなじみ深いと思いますが、トライアルはそういう点ではかなり毛色が変わったモータースポーツです。ほとんどの場合、よーいどんではなく、一人ずつ走る。そして、オートバイがこんなところを走るの? というへんてこ、もといすごいところを走ります。どう考えてもオートバイが走れるようなところじゃないので、失敗する人もいます。失敗したり、足をついたりすると、それに準じた減点が課せられます。減点によって勝敗が決まるという点では、ゴルフと共通するかもしれません。
参加者は10名。全日本選手権を走る、トップ10の選手たちです。トップの中のトップが走るので、こんなところを走るの? というところを、上手に走る選手も現れると思います。どうやって難所を越えていくのか、これは一見の価値があります。トライアルを見たことない、なんならオートバイにひとつも興味がなかった人が、たまたま競技風景を見てしまったばっかりに、トライアルにずっぽりはまってしまったという例もあるくらいです。
ちなみに、このこんなところが走れるのか、というこんなところのことを、セクションといいます。セクションのインからアウトまで、時間にして1分程度の攻防になりますが、体力的にはもちろん、失敗のないように、センチ単位、ミリ単位の正確性でマシンを運ばなければいけないとあって、選手は精神的にも消耗します。1分間奮闘した選手は疲労困ぱい。しかし競技は、これを数セクション繰り返して競われます。そういう点では、お客さんには少し寒いかもしれないけど、11月のこの時期の開催は、選手がパフォーマンスを発揮するには絶好の時期となるかもしれません。
この大会、シティ・トライアル・ジャパン大会といって、2018年から開催が始まりました。最初の開催は通天閣本通商店街でした。道幅数メートルの中にセクションが敷き詰められ、お客さんと選手の距離は2メートルあるかないかです。あぶなくないかといえばもちろんあぶなかったりするのですが、アクセルとブレーキを踏みまちがえるようなおかしな運転手はこの大会に参加する資格がありませんから、最初に想像するより安全にことが運んだりします。おそらく想像を絶するいろんなことを、お見せできること、まちがいないです。
今回登場する10名のライダーはというと、まずゼッケン1番(去年の全日本チャンピオンということです)は小川友幸。47歳になる大大大ベテランです。こんなベテランになって、しかも全日本タイトル10連覇記録を更新中というすごいライダーです。年齢を重ねるに従い、反射神経とか身体能力は若い頃とはちがってきている悩みは当然あると思いますが、小川選手はそれを感じさせない強さを持っています。
一般論として、トライアルは生涯スポーツといわれていて、何歳になっても楽しめるものです。年齢を重ねるということは、それだけ経験も積んでいるということで、それがさまざまな場面での応用につながります。自分でトライアルをやるようになると、そのちょっとした応用が鮮烈に見えてきたりして、またおもしろいです。老若男女楽しめるトライアルは、奥も深いのです。ただ、何歳になっても楽しめるといっても、それは趣味の範囲のもので、日本のトップを争う大会は難易度も高いですから、小川選手の年齢で勝ち続けるのは本当にすごいことです。シーズン序盤の劣勢から、後半戦に3連勝して巻き返してきた、その不屈の精神も立派です。
その小川選手を苦しめたのが、氏川政哉。20歳で、実は小川選手とは同じチームで、同じホンダの、ほとんど同じマシンに乗っています。チームメイトで熾烈なチャンピオン争いというわけです。大ベテランの経験と若い瞬発力の戦い、二輪のモータースポーツはライダーの動きがそのまま見えますし、特にトライアルはライダーのアクションが観客席からでも手に取るように見えますから、ひとりひとりの乗り方のくせのちがいなども見ることができます。
現在ランキング3位につけているのは、これも45歳のベテランの黒山健一。黒山選手も11回の全日本タイトルを持ち、世界選手権大会4回の優勝経験を持つ日本が誇る名選手です。現在はヤマハの電動マシンを走らせています。まだ誰も買えない、ヤマハエレクトリックテクノロジーの結集がどんな走りを見せてくれるか。モータースポーツの未来を占う意味でも、黒山選手の活躍は注目なのです。黒山選手は兵庫県出身なので、この大会はまず地元大会ということになります。
ランキング4位は野﨑史高。野﨑選手が乗るのもヤマハのマシンですが、こちらはハイパワーのDOHCエンジンを積んでいます。いわばヤマハは、同じヤマハのライダー同士、エンジンと電動とで勝負を競っていることになります。
ランキング5位は大阪人の柴田暁。スペイン製TRRSというマシンに乗っていますが、これは2ストロークエンジンです。ガソリンにオイルを混ぜてエンジン内部を潤滑して、燃料を送るのもフューエルインジェクションではなくてキャブレターという、仕様だけを見れば一昔前のメカニズムという感じがするかもしれませんが、それがどんな走りをするか、ぜひご自分の目で確かめてください。柴田選手は大阪人。地元パワーで、すごい走りを見せてくれるかもしれません。そういう見せ場を作るライダーでもあるんです。
ランキング6位は小川毅士。京都生まれですが、現在は茨城県に拠点を置いています。小川友幸と同姓ですが、親戚ではありません。こちらの小川が乗るのも、2ストロークエンジンマシン。イタリアのベータというメーカーのものになります。ランキング争いでは、柴田選手、小川選手の争いが接戦です。二人は2ポイント差、あるいはランキング3位の野﨑選手までも6点差、8点差ですから、可能性としては、このあたりまでランキングが逆転するかもしれません。
シリーズランキングは、1位に25ポイント、2位に20、3位に16、4位に13、5位11、6位10、7位9、以下、15位まで1ポイント刻みで続いて、15位が1ポイントとなります。MOTO GPなどではクラッシュしてマシンを壊してリタイヤするケースがまま見られますが、トライアルはひっくり返っても転がり落ちても、リタイヤにつながることがほとんどありません。ライバルが無得点に終わればランキングの逆転のチャンスは広がりますが、そんなわけでランキング争いはあくまで自力で獲得しなければいけません。
たとえばチャンピオン争いは10ポイント差。氏川が逆転でタイトルを獲得するには、氏川が優勝して、なおかつ小川友幸が4位以下とならなければいけません。小川サイドから見れば、自身が3位以上に入れば、氏川の成績に左右されることなく、チャンピオンが決まります。
柴田と小川毅士は2ポイント差ですから、柴田がランキング5位をキープするには、とにかく小川より上位の成績をおさめること。逆に小川が柴田を逆転するには、4位以上で小川が柴田より上位に入るか、5位以下の場合は柴田よりふたつ以上好順位を得る必要があるということになります。
参加選手は10人。ランキング7位は23歳の久岡孝二(ホンダ)、8位が武井誠也(ホンダ)、9位田中善弘(ホンダ)、10位磯谷玲(ベータ)が厳しいセクションに挑みます。
トライアルは、減点数が少ないライダーが上位、もしも同点になったら、減点ゼロの数が多いほうが上位となります。今回は全日本選手権という大枠のルールとはちがったルールを一部採用するので、いつもとちがう競技になっているのですが、ルールを変えても全日本選手権として、多くの人にトップクラスの戦いを楽しんでもらおうという、主催者の意欲の現れでもあります。ぜひふらりとやってきて、お楽しみいただければと思います。
注目は、オートバイとライダーが織りなすびっくり仰天のパフォーマンスなのですが、トライアルの魅力は、ライダーとお客さんの距離の近さです。まずライディング中にも、ライダーの顔がばっちり見える。ふつうはフルフェイスへルメットをかぶっていたりゴーグルをしていたりして、なかなか顔が見えないモータースポーツですが、トライアルでは息苦しいから、視界が狭くなるからと、顔の前になにかがあるのを避けたいライダーが多いのです。そして、真剣なライディング姿とは裏腹、マシンを降りたとき、パドックで出会える素の表情に触れて、推しのライダーを見つけるファンの方々も多いようです。
今回のシティ・トライアル・ジャパンがさらにすごいのは、このエンターテインメントを観戦無料で楽しめるということです。事前にチケットを申し込むと、さらに無料ガチャも手に入るらしいので、公式サイトのチケット申込からお申し込みください。
https://event.tiget.net/city_trial_japan_2023#ticket
そうそう、トライアル競技といえば、たいていは山の奥で開催となります。参加選手はオートバイを運んでいくのでクルマで行くのが必然ですが、観戦する側も電車やバスを乗り継いでいくのは至難な会場ロケーションであることがほとんどです。なので今回のように、電車で移動して歩いていけるのはとても新鮮。大会を見て、そのまま飲みに行ったりしたら楽しいだろうなぁと思います。お好み焼きとかのおいしいお店、ぜひ教えてください。
開場は朝の10時、競技が始まるのが11時、お昼をはさんで、決勝終了が15時の予定となっています。それでは、当日お会いできるのを、楽しみにしています。