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六畳間でできる?トライアル
トライアルの練習というと、ヒルクライムがあったり、コンクリートの段差があるトライアルパークを思い浮かべる人、多いと思います。トライアルパークは、いろんな技術を試せる素晴らしいフィールド。でも、パークがなければトライアルってできないの? というテーマで書いたもの。
バイカーズステーション誌2007年5月号掲載の分。原題は『六畳間でできる“かもしれない”トライアル』。
トライアルは地形との勝負という印象がある。急斜面だったり滑りやすい岩だったり相手はいろいろだが、地形との勝負と考えると、しかるべき地形がないと練習できないってことになる。
でもね、トライアルが上手になりたいと思ったら、地形相手の挑戦ばかりではない。トライアルは自分との勝負でもある。ものすごくはしょって言うと、頭を使ってうまくなるのが、トライアルだ。
世界選手権では、ウォーミングアップ場として練習場が用意されている。たいていの場合、狭い。でも選手たちは、そこで黙々と(文句をいうこともあるが)練習をする。試合とちがいセクションテープもないので、どう走るかはライダーのみぞ知る。これぞ狭いスペースを有効に使い、効果的な練習をするトップライダーの知恵。ジグゾーパズルのように地形を組み合わせて、ひとつの地形を何倍にも活用して練習する。
こういう知恵は、トップライダーだけの専売特許ではない。へたはへたなりに、まねできる。1979年世界チャンピオン、バーニー・シュライバーは「3m四方の駐車場があれば、トライアルの練習はできる」と言った。こんなに狭くて平らなところでなにをするか。発想の自由度と工夫する心を持って、考えてみよう。
まずスタンディングスティルの練習ができる。ただ立っているのがつまんなくなったら、オートバイの上でぐるりと回ってみるとか逆立ちをしてみるとか、極めるものはいっぱいある。
エンジンがかかっていなくちゃ練習にならぬという人は、2m走ったらエンジンを止め、キックして走り出し、また2m走ったらエンジンを止める練習もあり。正確なスタンディングスティルとキック操作、さらにクラッチワークなど、けっこうなものを一度に学べる。こういう練習は、デコボコのトライアルセクションを走ったときに、必ず生きてくるはずなのだ。
ターンはトライアルの基本だが、平地で黙々とやってるターン練習が基本かどうかは別問題だ。
同じところをぐるぐる回るうちに、わだちができたり目印ができたり、うんとやりやすくなることがある。技術的収穫がないのに、うまく走れたことで納得してしまってはいないか。平らな地形に慣れてしまいそうなら、いっそ、左手をハンドルから離してしまおう。マシンに対しての身の置きかた、ていねいなアクセルワーク、両足のステップワークによるマシンコントロールと、いきなりいろんなことが学べる。ハンドルにしがみついていた人は、ここですてんとなってしまうから、ケガしないでくださいね。
フロントリフトの練習もできる。3m四方の間に確実にフロントを上げて降ろして停止できれば、フロントアップの正確性はずいぶん増しているはず。
そうそう。バックの練習もできます。今どきのルールは、バックは即5点なのできらわれるテクニックだが、少年時代の藤波貴久は練習場からの帰り、必ずバックで帰ったという。帰り道もむだにせずに技術向上に生かす姿勢は、まだまだまねする余地がある。
都会のトライアルと読んで、歩道橋を渡ったりするのかと思ったあなたは、まだまだ修業が足りません。いっしょに出直してみませんか。