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2015窓に張り付くカエル1

もの申すのはむずかしい

2015秋近い夏の空

「生きてるのか」と時々メールで生存を確認されたりする。ここの日記をさぼると、死んじゃったのかもしれないと思われるらしい。姿が見えなくても、なんか書いてれば安心してもらえるんですね。
 ということで、生きている証として、しばらくぶりに書いてみます。締め切り真っ最中なんだけども。

 なんで書かなかったかというと、単に筆無精だってのが大きいんですが、思い悩んでいて書きあぐんでいたという微妙な理由もある。
 ここでニシマキの生存を確認している人は、原発事故以降の村の暮らしはどうなっているのか、気にしてくれている人たちが多い。うさぎがひっくり返ったとか、古いレンズがおもしろいてな話が読みたいわけじゃない。でもね、事故から4年が経って、村のことを書くのはけっこうしんどくなってきているんだった。

 事故直後の村は、いろんなことで想定外だったから、書き留めておくべきことも多かった。想定外というのは、必ずしも悲惨なことばかりではないのだけど、とにかく、変化に事欠かない日々だった。
 でも最近、想定外のことが少なくなった。あいかわらず除染作業は一生懸命だし、国からの予算は潤沢に流れてくるし(しかし自由に使える金はまったくないようだ。当然だけど)全国版はともかく、村のことが福島版のニュースにならない日は珍しいくらいになった。震災以前は村長とかがテレビに出てくるだけで村の大ニュースだったから、これも想定外だった。でもすっかりみんなこの想定外に慣れてしまった。
 消えずに残る放射能とのつきあいも、想定外だった。きのこやタケノコ、イノシシに川魚なんかは、ときどき線量が出ているものがあるから(検出限界以上、という意味)、気をつける必要はある。でもいまや、場所を確認して収穫する、線量を確認して食べる、もしくは捨てちゃう、ひとに出すときには、線量測定の結果を見せる(別に見せてくれなくたって食べるよとそのたんびに答えている)という、新星以前にはまったく考えてもいなかった作業も、もう珍しくもなんともなくなった。
 ひととおり計ると、ある程度の線量はだいたい想像がつく。それでも去年と今年の数値が同じわけでない。減るものもあるけど、ちょっと増えていたりもする。だから30年、50年は計り続けなければいけないはずで、いやはや、めんどくさいことをしてくれたものだ(セシウム137は30年で半減する。30年経っても、半分は残っているということで、60年経っても1/4にしかならない。90年後には計算上はようやく1/8になる。気が長い)。それもこれも、いまのぼくらの日常習慣だ。
 しかしいまだに、こんなところに住んでいると放射能被害が怖いと思う人も少なくないらしい。福島県というくくりであぶないと信じている人もいるし、ちゃんと数値を認識した上で、ほんのちょっとの線量を危険だとしている人もいる。
 子どもの健康が心配だから村には帰らないという人もいれば、この地で子どもを育てたくて、村で暮らす親子もいる。仕事がないから村に帰らない選択肢もある。いっぽう村の企業は、働き手がなくて困っている。完成間近の特別養護老人ホームも働く人がいないので、いまんところはオープンできる見込みがないG。
 いったいなんでこんなことになっちゃっているのか、ひとつひとつ理由はあれど、多くの場合、理由はひとつじゃなく、いくつかの理由が複雑に絡み合っている。一見あんまりしがらみがなさそうな独身一人暮らしだって、なにかを決断するときの理由は一つじゃない。昼飯をハンバーガーにするかカレーにするか牛丼にするかの選択だって、その日の体調やきのうの晩飯のメニューやお財布の具合やら、イスの座り心地やらと考えなきゃいけないことは多いもんだ。
 原発反対デモにでかけていったことがあった。まだ2011年のことだったと思う。知人にも会った。おとなしい人で、なにかを叫ぶような人ではないのだけど、じっとしていられなくて出てきたのだという。そんな、ふつうの人たちがたくさん集まっていた。
 そのうち、シュプレヒコールが始まった。シュピレフコールはとてもシンプルで、復唱しやすい。そのかわり、訴えたい側の複雑な思いはきれいにならされてしまって、問答無用になっちゃっているような気がする。
 原発は、動かしてお金もうけができる人はいるかもしれないけど、幸せになれる人はほとんどいない、というのがぼくの思いだ。でも幸せの感覚はみんながみんなちがうし、幸せになれる人がいないからといって、いっさい動かすべきでないかどうかはいろんな事情を考えなきゃいけないと思っている。
 もうあちこちで動かしちゃってるんだから、いまさら止められないという事情は(電気や経済の事情だけじゃなく)あるんだと思うので、では60年前にさかのぼって、こんなもの導入しなきゃよかったのにと思わなくもないのだけど、それはそれ、原発の工事需要で生活がずいぶん楽になった、我々、原発のおかげで暮らしを助けられたと過去を振り返る年配者は多い(御殿が建ったわけじゃない。電気もなかった暮らしから、少しだけ人並みの暮らしに昇格しただけだ)。
 今でも、ぼくは川内村が本当の意味で復興するには、福島第一、福島第二、ふたつの原発が再稼働して、富岡や大熊の町が昔みたいににぎやかになるしかないと思っている(絶対にそうはならないという前提の話だ)。生活の基盤のすべてがあった富岡・大熊なしで、村の暮らしが元通りにするのはむずかしい。そうそう、原発を止めて、電気のない生活に戻りたいのか、なんて机上の空論が戦わされることがあるけど、ぼくらにとっては、富岡のない生活を無理やり強いられているの今日この頃なのだ(ただしぼく個人的には、富岡への依存度は少なかったから、今も割と平気で暮らせている)。
 そういうこちらの事情を思うと、今稼働していない原発を再稼働するかどうかも、それぞれ微妙な決断になるんだと思う。もちろんぼくは原発なんか動かすべきじゃないと思うけど(地球の大気がせっかく太陽をはじめとする原子力エネルギーを遮ってくれているのに、わざわざめんどくさいものを作り出すことはないだろう)原発立地地域にとって、ぼくはあまりにも外野だ(うちの村長からは、福島の原発についての再稼働はありえないと聞いたけど、よその原発についてはなにも語っていない。もうちょい強く出たらかっこいいと思うけど、よその事情に口出しすまいという大人の判断なんだと思う)。
 あれやこれやと考えないで、原発即時廃止、再稼働反対と叫べれば、どんなにらくちんかと思う。放射線被害についても、福島に住むぼくらは健康を維持できるのか、関東に住む人はどうなのか、どれくらいの数値の汚染物質を食べても平気なのか、なんて考えていないで、放射能はこれっぽっちも許せない、と声高に叫べればどんなに楽なのかと思う。
 でもぼくはここに住んでいるから、単純に放射能がいやだとは言わないし(もちろんなければないほうがいい。それは自然界の放射線だって、たぶん同じだ)、原発が存在した意義も罪も、ずっと考えていかなければいけないんじゃないかと思っているんだけど、昼寝しながらつらつら考えているだけだから、たいそうな結論が出るわけもない。

 長い言い訳になってしまいました。なにかひとつ書こうと思うと、書かなければいけないことがみっつにもよっつにも、百二も二百にもなってしまって、収拾がつかなくなって書きあぐんでいるという懺悔だった。

2015窓に張り付くカエル2

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