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川内村(西)

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とりあえずの報告

11年3月のでかい茸

 地震から、もうすぐ3週間が経つんだそうだ。最初の数日は1日がとてつもなく長かった。最近はあっという間に時間が流れていく。少し、いつものペースに戻ってしまっているのかもしれない。
 地震からすぐはネットが通じず、リアルタイムの報告ができなかったので、メモを書きためてある。ゆっくりまとめようと思ってるんだけど、とりあえず、ここまでのあらすじと現状を報告してみます。


 今、ぼくは東北自動車道白河インターのそばにいます。ひとんちに居候してます。福島県と栃木県の県境の近く。川内村まで行こうとすると、1時間半くらいかかります。
 村のみんなは、それぞれ親戚などを頼って避難したりしていますが、郡山のビックパレットというイベント施設に身を寄せている人も多い。川内村役場も、富岡町役場といっしょに、ここにある。村長もここの住民だ。
 村は、福島第一原発から、一番近いところで15km、遠いところで30kmくらいの範囲にはいる。ぼくが住んでいたのはざっと25kmほどだ。現在は屋内退避の指示が出ている。屋内退避だから、家に帰るのは自由にできる。
 地震の被害は、さっぱりなかった。村全体では、おしゃれなカフェ・ダノニーが全壊に近い被害を受けた。裏山が崩れてきたからだ。それが最大で唯一といっていいのではないかという甚大な被害で、人的な被害はまったくといっていいほどなかったのは不幸中の幸いだった。ぼくの家では、丼がひとつ割れたのと、引き出しが動いてガラスを突き破ったのと、主にはそのふたつ。たいしたことはなかった。
 村には、まだ数十人が残っている。一応名簿はできているが、推移があるので、村でも把握できていないと思われる。もともと屋内退避エリアだから、自由に出入りしていいエリアだ。村の中でも、特に村人が多く残っているのが、ぼくの住んでいた地域だった。酪農家、養豚場、動かせない老人をかかえた家などが残っている。逆に、子どものいる家は、そうそうに出ていった。
 ただしぼくを含めて、避難した人でも、ちょくちょく帰ってくる人が多いようだ。長期戦になるから荷物を取りに来た人もいるし、もう避難はやめて、ここに住もうという人もいる。
 問題は、電話を始め、通信環境が全滅していることだ。これは声を大にして言いたい。国は屋内退避を指示したままで、逃げろとはいっていない。それはそれでいいのだが、通信インフラのないところに居続けるのは、いまどき、なかなかこわいものがある。
 ドコモは、地震直後からまったく通じていない。混んでいるのかとも思ったが、もっと根幹の問題のようだ。ソフトバンクはもともとつながらない。auは、気まぐれでつながったりつながらなかったりしていた。地震翌日、ひかり回線がダウンした。これでインターネットも失った。さらに翌日あたりに、アナログ電話も通じなくなって、それきり今に至る。3週間も放置されている。
 誰かの陰謀ではないかという人もいる。自主避難を呼びかけた村か国が、あきらめがつくように通信手段を切ったなど、なんとなく説得力がある説だけど、そうそう小説みたいなことはないと思われる。すべての通信インフラは海の町からきていて、その町が全滅、あるいは原発の避難地域になってしまったから、というのが理由だと思われる。でももう3週間なのだから、山の街から通信ラインを引っ張ってくるとか、他の手段は考えられないのかと、こんなことを書いているとどんどん怒りがわいてくるので、これはこのへんにしておく。
 通信インフラが全滅したから、村にいる人は、知り合いや親族にえらく心配をかけてしまった。まず、安否が分からない。次に、原発が危ないから早く逃げろと言いたいのに、連絡がとれない。連絡がとれないからますます心配になるということになる。老後を村で過ごしていた夫婦が、子どもたちに泣かれて、ごめんねといいながら避難していったりもした。
 ただし、今になって情報が整理されてみると、我々の村はほとんど放射線被害を受けていないようだ。役場に設置してあるモニターは、そりゃ平常時よりは少し高い数値を示したりしているが、ガイガーカウンター持って村にはいった人の報告もかんがみて、村の数値は、やはり「直ちに健康被害が生じるレベルではない」ということになる。こういうことを言われるから、心配な人は心配しちゃうし、のんきな人は心配しなくなっちゃうんですね。
 しかし現実問題として、今の川内村は、多く見積もっても郡山や福島市と同じレベル。少なくとも、風向きが悪くて放射線が多数飛んでいる原発北東地域に比べると、はるかに少ない。汚染は刻一刻変わっていくけど、単純にコンパスで何kmといわれても、一概に汚染度は同じではないということだ。
 村には、原発の中や外で働いている人がいっぱいいる。そういう人は(もちろんいろんな人がいるけど)放射能に対する知識もある。事故後、何日かぶりに原発から帰ってきた息子を迎えに行ったら、持ってきたものまで、ていねいにスクリーニングしてもらったという話も聞いた。彼らは、放射線の恐ろしさを、よく知っている。ただ、原発に何日も泊まっていた彼も含めて、スクリーニングで異常な数値が出ることはなかったという。
 ぼくらの村は、背後に阿武隈山系最高峰の大滝根山を背負っている。日ごろから、やたらめったら強い風が吹いて、手を焼かされている。この風は強くなくても、いつもなんとなく吹き下ろしてきている。だから、放射線地があがらないのではないかと、素人ながら思っている。
「米は作れないだろうなぁ」と、みんな言っている。作ったって、買ってもらえないだろう。ただ、買ってもらえないというのと、食べられないというのとはちがう。今後に際しては、まずは土壌汚染をきちんと調べてみないと分からないが、今の感触では、それほどの汚染はないのではないかと思われる。でも、きのこ屋さんは廃業を決めたし、子どもの学校を決めるために、そうそうに引っ越しを決めた家族もいた。
 酪農家は、乳の出方をコントロールして、牛は牛乳を出さなくなった。それまでは、毎日搾乳して、そのまま捨てていた。当初、牛乳工場が津波にやられたから集荷に来れなかったので原乳を破棄していたのだが、そのうち福島県産の原乳は出荷中止になった。うちの集落の原乳の放射線値は計ってもらったことがないそうだ。汚染されているかもしれないし、安全かもしれない。厚生労働省の発表によると、すぐ隣の原乳の数値はごく低いから、たぶん大丈夫だと思うんだけど、証拠はない。
 風評被害なのかどうなのかはわからない。しかし今、ぼくの村はあちこちから見放されているという気がしてきた。大丈夫だよ。食べ物もあるし、みんなそれぞれに快適に避難している。家もある。だから、なのか、なのに、なのか、このまま見放されたまま(電話が通じることもなく!?)時間がすぎていくのが、とても不安に思えてきた今日この頃です。
 写真は、一時帰宅したときに、近所の茸屋さんの菌床が放置されているから、できるならちょっと収穫しておいてくれということででかけてきたときの写真。すげーでかい茸がいっぱいだったけど、放射能浴びて育ったのではなくて、とらないでいたからでかくなっただけ。ハウスの中での栽培だし、もらって帰って、おいしくいただきました。出荷はしてないからね。

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