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川内村(西)

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川内村から中間報告

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4台並んだ放射線測定器

 知らない間に、世の中はゴールデンウィークになってしまった。お天気はいい。今日は海からの風が吹いているから、あんまり外に出たい気分ではないけれど、基本的に、村に残っている人たちは、原発被害について神経質ではない。もう老後にさしかかっている人ばかりだから、いまさら少々放射線を浴びたからといって、直ちに健康に害が出るとは思えないから。
 本日は、放射線のお話。


 川内村の放射線値はざっくりいって、高くありません。でももちろん場所によって変化がある。福島の地方新聞には毎日放射線値が発表されていますが、そういうのに出ているのは役場の横(村長室の前)で、ここはかなり低い。海からの風が山にさえぎられているからじゃないかと想像するのだけど、うちのあたりの半分くらい。数値で言うと、0.2〜0.3μSv/hくらいで、ぼくんちは0.5〜0.6μSv/hあたりをうろうろします。ぼくんちは役場のあたりよりだいぶ標高が高い。理屈はわからないけど、標高が高いと数値は高い。飛行機に乗るとそこそこ多量の放射線を浴びるというのと同じことかもしれないけど、よくわかんない。
 一方、今はもう入れなくなっちゃっているけど、役場より海側では、距離が近くなるのと標高が高いところが多いというのもあって、ずいぶんと数値は高い。4.0μSv/hとか6.0μSv/hとか出ていた。このあたりは20km圏内だから、早い段階で避難指示が出たところだ。村の中にも、こうやって温度差ならぬ放射線値差がある。村は全域が30km圏内に入っているから(正確には、大滝根山の山頂付近とか、誰も住んでいないところで一部圏外がある)、その点では村の中での避難格差は最小限だったのかもしれない。
 村の人たちは、日本中あちこちに逃げていってるけど、役場があるのは郡山市のビックパレット福島だ。ここの線量はそんなに高くないということだけど、子どもたちが通っている小学校のあたりは、もう少し高い。場合によると、1μSv/hくらいあるという。郡山市は原発からは距離にして60kmほどだから、距離で安全危険を推し量るのはまちがっているというのがわかる。
 村には、今子どもたちはいない。子どもは放射線の影響が大人より大きいから逃げるべきだと思うけど、それ以前に、村には今学校がないから、子どもたちが住める環境にないわけだ。子どもを学校に通わせるというのは親にとっては一大使命のようで、学校があれば、少々放射線値が高くても、子を持つ家庭はそこに住んでしまう。お気の毒だと思うけど、そういうものらしい。
 放射線値は、いつもいつも調べていると憂鬱になってくる。ぴーぴー音を出す設定にしておくと、精神衛生上著しくよくない。黙って放射能かぶってたほうが気が楽になる。でも気温とちがって、計測しないと体感ではわかんない相手だから、計測するのは意味がある。大事なのは、そのエリアのだいたいの数値がわかることと、ずっと計測することで日々の傾向が明らかになることなんじゃないかと思う。
 きのうは、村に住み残っている移住者が集まって会議を開いた。結局予定通り飲み会三昧となったのだが、そこで4台の放射線測定器が集まった。ためしに全機スイッチオンしてみたら、ほぼみんなが同じ値を示した。チェルノブイリ事故の当時に買った測定器も最近買った測定器も、そろって同じくらいの値を示し、それぞれの測定器が県や政府が発表する放射線値と、これまたほぼ同じ値を示していることも分かっている。放射線値の数字については、政府発表などを信じても大丈夫。でも、都合の悪い数値は発表しないという工作は可能だから、数値が発表されていないところは要注意。要注意というのは、あぶないという意味ではなくて、危ないのか安全なのか、わからないということだ。経験上、すぐ隣でも数値がちがうところはあるもんだ。
 インターネットには、安全だ、からあぶないから海外へ逃げろというヒステリー気味な悲鳴まで、いろいろな意見がある。最近じゃ、インターネットに流れているのはデマやあやしい論調が多いから、ちゃんとした情報以外は削除できるようになったとかなんだとかという恐ろしい話もある。
 デマについては、関東大震災の時には、朝鮮人が攻めてくるというデマが流れて混乱したという。このデマを流した張本人が、讀売新聞を作り、のちに原子力の父と呼ばれた正力松太郎氏であるというのはおもしろい話であります。
 いわゆるデマの中には、東京に降っている黄色い粉は放射能である、みたいなまるっきりのうそでたらめもあるけど、原子炉がメルトダウンした、とか放射能がばらまかれている、なんてのは、その時点では確たる証拠がないものだったかもしれないけど、結局ほとんど真実だった。むしろ、政府や東電が発表していることに、うそっぽいことが多い。彼らは答弁のプロだから、めったにボロをつかまれるようなことは言わない。警察のほうからきましたと警報器を売りつける詐欺がいるらしい。警察官だとは言ってないから、うそはついてない。信じるほうがお気の毒なだけだ。でも、釈然としない話である。
 川内村に住んでいるぼくらは、原子力立地給付金なるお金を、東京電力よりいただいている。断ることもできるらしいが、めんどくさいからそのままいただいている。年間で数千円。どうやら、東北電力から電気をいっぱい買った人は、給付金もいっぱいもらえるらしい。年間何千円が、いったいどういうわいろだったのかわからないが、それが法律だというのだから、しょうがない。でも、東北電力と電気の契約をしていない人は、1円ももらえない。これも、釈然としない。
 原子力以前、このあたりの村は、ほんとうに貧乏だったらしい。原子力がなかったら、とうにつぶれていたというひとも少なくない。実際のところ、原発の周辺で働いている人はとても多い。農業と林業しかない寒村は、郵便や役場などの公的職業につくか、原発で働くのが、生活の安定につながったのだと思う。彼らが、原発の恩恵にこうむった人なのかどうか、ぼくにはよくわからないけど、ものごころついた頃からそこにある施設に労働力を提供してお金をもらうという行為は、私腹を肥やしたりというのとはちがう話だと思う。

本物の線量計

20kmぎりぎりの診療所にある高そうな線量計。換算すると、0.6μSv/hくらい。

 311の以前、この地域の放射線値がどのくらいだったのかは、ほとんどデータがなくてわからない。ただ、中に3軒だけ、原発に対する警戒心が強い人たちがいて、チェルノブイリ事故の頃に線量計を買って持っていた。彼らによると、311以前は0.08μSv/hほどだったようだ。ゼロではないのが、原発からの風で運ばれてきたものか、チェルノブイリからきたものか、1960年代の水爆実験でまかれたものか、それとも自然界にもともとあるものなのかは、さっぱりわからない。でも、まったく安全だと思っていた頃に比べると、今は5倍くらいの放射線値があって、それでもまだ隣の隣の村よりは何倍も低い放射線値を示しているということだ。
 放射線値はいくつだったら安全なのかと、みんなよく聞く。京大原子炉実験所の小出裕章先生によると、放射線なんてものは、微量でも危ないものだから、いくつなら安全などという基準はないという。そのうえで、そこに住む人はそれぞれの土地の汚染を受け入れて住むべきなのだとおっしゃる。
 今、村に住んでいるみんなは、この村の汚染を受け入れて、このくらいだったら死にゃしない(自分の残り人生の間に、まず健康には影響がないだろうと確信する)と思って暮らしている。まぁ、この先、また東のほうでどかんとキノコ雲でもあがったら、あわてて逃げていくことになるんだろうけど、今のところはそんな感じです。

レイコさんあらわる

東京まできたついでにと、わざわざぼくんちまでやってきてくれた三好レイコさん。放牧されている犬と戯れながら電話中の図

 遊びに来たい人は、どうぞ遊びにきてください。直ちに健康に影響をおよぼすことはありません。でも自信がないから(地震はあるかもしれない)、これから妊娠する予定の人とか妊婦さんとか、幼いお子さんは来ないほうがいいと思います。せめて45歳をすぎた妙齢の紳士淑女のみなさんと、この村で再びお会いできる日を、ぼくは心待ちにしています。

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