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川内村(西)

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1106蒲生さんの炭焼きのキャッチ

蒲生さん逝く

炭窯越しに見る桜

炭窯越しに見る桜。今年は避難中で、桜は見られなかった

蒲生喜好さんが亡くなった。

蒲生さんは、87歳になる炭焼き職人だった。炭焼き一筋、最後の最後まで、炭を焼いていた。90歳まで炭を焼くと言っていた蒲生さんだったが、その願いは、わずかに届かなかった。でも炭焼き職人らしい、大往生だった。

その日蒲生さんは、もう何十年もやっていたように、窯から炭を出していたのだという。炭窯は、炭を焼いているときには1000度にもなっているという。火がおさまったところを見極めて扉を開け、できあがった墨を窯から出してくる。扉を開けるのが早すぎると、扉を開けて空気を吸い込んだ瞬間に再び火が起きて、炭は勢いよく燃えてしまう。じっくり時間を置いてからが確実だが、それでも生産性が落ちるから、いいタイミングを見極めるのが、職人技だ。

蒲生さんは、最後にタイミングを誤ってしまったのか、それとも、そのとき蒲生さんになにかが起きたのか、それはもうわからない。蒲生さんは発見されたとき、炭窯の中に倒れていて、すっかり燃えてしまっていた。一酸化炭素中毒で倒れたあとに火がついたのではないかと見る人が多いけれど、真相はやっぱりわからない。わかっているのは、蒲生さんは長年いっしょに仕事をしていた炭窯で、自らを火葬して生涯を終えたということだ。

蒲生さんの炭窯

ここをクルマで通り過ぎると、車内にもかすかに炭の香りが入ってきた。

311のあの日も、蒲生さんは炭を焼いていた。ところが土でできた昔ながらの炭窯は、あの揺れに耐えられなかった。窯は崩れ、炭に火がついて、お窯はすっかり燃えてしまった。こういう事件もままあることだ。

それから数日後、全村避難となって、蒲生さんも息子さんとビックパレットに避難した。80歳を越えても、自分で木を切り、窯まで木を運び、窯の中にきれいに並べ、火をつけて炭を焼くという仕事を続けてきた蒲生さんである。ビックパレットの避難所で、寝ているだけの生活はずいぶんと苦しかったようだ。息子を相手に、よく言い争いをしていたという。蒲生さんは燃え落ちた窯が気になっていたのだ。早く帰って窯を作り直さないといけない。それで気がせいていて、息子さんと言い争いをする。蒲生さんはそうとうに耳が遠いから、言い争いができる人も何人もいないのだった。

在りし日の蒲生さん

炭焼き仕事をする、在りし日の蒲生さん。耳は遠かったけど、仕事は確かだった。

避難解除にはならなかったけど、蒲生さんはやがて窯に帰ってきた。そしてすぐに窯の再生にとりかかった。世間が放射能の安全や危険を取りざたしてけんけんがくがくのとき、蒲生さんはひたすら窯を作っていた。それが、何十年も続けてきた蒲生さんの生き様だったのだろう。

2週間くらいかかっただろうか、窯はできあがった。そして再び、蒲生さんは炭を焼くようになった。久しぶりに蒲生さんの窯から煙が出ていたときは、すぐ横をクルマで走り抜けながら、とってもうれしかった。原発事故はまだまだ解決しないけど、村の暮らしがひとつ帰ってきたという印象だった。

蒲生さんは、新しい窯で、1回炭を出した。そして2回目に火を入れたのが、最後の仕事になった。

電気やその他の新しいエネルギーに主役の座を奪われた炭。その炭を作り続けてきた蒲生さんは、原発事故で自然エネルギーが見直されようとしているこの時期に、炭焼き職人らしく天へ旅立っていった。

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