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川内村(西)

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イノシシの放射能測定

1112イノシシの測定

体験交流館の受付にできた食品の検査会場

 12月1日から、村にベクレル測定器が入った。フィンランドのHIDEXというメーカーのものらしい。とりあえず1台しかないので、フル回転で計測しても、1日に10検体ちょっとしか測れない。それでも今は村に住んでいる人自体が少ないから、自分の家の畑(タンボは作付け禁止になっているけど、畑の規制はない)の作物とかを測ってもらえるようになった。
 一度なにかを測ってもらおうと思っていたら、Fくんがおみやげを持ってやってきた。交通事故に遭ったイノシシだという。足1本もらったので、早速測りにいってみた。


 イノシシは、うちのちょっと先のじっさまが見つけた。交通事故でやられて、寒空の下、タンボで伸びていたそうだ。じっさまによると、こんないい肉は見たことがない。脂がたっぷりなので、脂もちゃんととっておいて、家の扉とかに塗ってやると、開け閉めがスムーズになったりするんだぞということだった。
 とはいえ、お亡くなりになったイノシシを潤滑剤にだけ使うのはもったいない。でも最近のニュースでは、イノシシは思いきり内部被曝していて高い放射線値が検出されるから出荷停止となっている。このへんではイノシシの肉なんか売ってる人は誰もいないけど、とれれば食べる。この季節、鍋にするとおいしいのだ。
 測定には、検体が1kg必要だそうだ。1kgって、そこそこ大きい。もものあたりが一番多目だったので、この肉を検査に持っていった。
 検査は講習を受けた村の人がやっている。持ち込まれた食品は切り刻まれたりおろされたり、細かい状態に処理される。なんということはなくて、包丁や大根おろしを使った台所仕事だ。切り刻まれて計量された検体はビーカーに入れられる。そのまんまビーカーに入れると、ビーカーが汚れてしまうから、ビニール袋に入れてからビーカーに入れる。作業中のゴム手袋も、使い捨てだそうだ。

1112イノシシの測定

下ごしらえの調理中

 調理?が終わった検体は、ビーカーに入れられて計測を待つ。ビーカーを入れる計測器たるや、ちょっとした骨壷みたいな大きさだけど、その重さが100kgあるんだそうだ。それぐらいの壁で外の放射能が測定に影響しない環境を作ってるってことでしょうね。
 骨壷にはパソコンがつながっていて、測定データを記録するようになっている。測定が始まったら、黙って20分待っていればいい。その間に、受け付けられた分の台所仕事をせっせとやっておくのが、係の方のお仕事になる。10kgの大根おろしとか、相当な重労働だ。放射能計測というのは、思いきり力仕事なのだと知りました。
 検出限界は50ベクレル/1kg。この数字が頼りないと思う人は、もっと低い数字が出せるところに検体を持っていくしかない。パソコンが吐き出したデータには50ベクレル以下の数字も出ているんだけど、お渡しするときにはNDと表示する。
 こういうの、安全デマの流布ではないかという人もいると思うし、ぼくも正直なところ、数字が出てるならちゃんと出してほしいと思う。でも測定の先生によれば、ND以下の数字は信頼性が低いものなので、数字として出すのは適切ではないということらしい。50以上はそれなりに正確な数字だと思っていいけど、35という数字が出ていたとしてもそれは49かもしれないし10かもしれない、みたいな話なのかな。それならNDなんて不思議な言い方をしないで、50ベクレル以下という表現の方が正直な気がするけど、それだと今度は50ベクレルに近いような気がしてしまうのかもしれないね。情報操作はしてはならんけど、生の情報そのままだと伝わりにくいということは確かにある。情報をどんなふうに加工して世間に出すのかは、むずかしい問題だと思う。放射能測定の場合は、お国のやることがどうも信じられないという前提だから、最初の出発点からけつまずいてしまってるんですね、きっと。
 すでに自分ちで作った野菜とかを持ち込んでる人はけっこういて、そのほとんどがND。これまでに蜂蜜が54ベクレル、ムキタケって茸では200ベクレルが出たそうだけど、どちらもいわゆる暫定基準値の500ベクレルは下回っているから、食べてもよかろうということになる。
 でイノシシだ。検体を持ち込んだのが閉店時間の午後3時をすぎていたから、受け付けるだけ受け付けて、明日の一番で測るね、ということになってその日は帰ったのだけど、そしたら朝一番で電話かかってきた。けっこう高いのが出たんで、とりあえず電話してみました、ということだった。その数値は写真の通りだけど、セシウム134が500ベクレル、セシウム137が647ベクレル。1日から測定を始めた中では、ぶっちぎりに高い数値だった。

1112イノシシの測定結果

イノシシの測定結果

 暫定基準値は500ベクレル。500と647を足すと1147ベクレルだから、暫定基準値の倍近い数字だ(一説には暫定基準値はそれぞれのセシウムの数値を足したものではないという話もあるけど、お国がいっているのは放射性セシウムが500ベクレル、ということだから、134と137を足した数字が500以下とみるべきだろうと思うんだけど、そういうふうに明記した文書は見つからなかった。だまされればラッキー、みたいに考えてるんだったら、いやだな)。
 測定してるのはごくふつうの村の人だから、このイノシシを食べられるか食べられないかの結論は言ってくれない。イノシシをくれたじっさまにも、数字を報告しただけにしておいた。ひとつだけ確かなのは、これを売ったりしてはいけない、ということだ。
 個人的には、イノシシは毎日食うようなものではないから、イノシシが大好きなら食べればいいし、そんなに好きでないなら食べないほうが身のためだ。じっさまによると、今回のイノシシはまれにみるいいイノシシだったというから、そういうことなら、ちょっと食べてみるのも悪くないなと思ってる。
 セシウム134は半減期が2年だというから、2年間冷凍しておけば、2年後には250ベクレルになってるのかもしれなくて、ほんとにそうなるかどうか試してみるのもおもしろいと思ったけど、それまで冷凍庫にセシウムのイノシシがいすわっているのもなんだかなぁと思うので、まぁ、食べるにしろなんにしろ、早めに処分しちまおうとは思ってる。ちなみに、検体そのものは、ある程度の高い数字が出たら、再検査なのかなんなのか、お預かりすることになってるというシステムだそうで、お預けしてきた。
 ここには、もうしばらくすると検査機がもう一機入るんだそうで、検査効率があがることになる。台所仕事がたいへんだから、強力なジューサーみたいなのと、検査アプリケーションがもう少しスムーズに動くように、メモリをたっぷり積んだパソコンを支給してあげるといいと思う。

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