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放射能家庭教師

2011作付けしてない稲作

 放射能の家庭教師に来てくれた友だちがいます。いやー、原子力って、まじめに学校で勉強していたら、きっとさぞおもしろかったんだろうなぁと思うのであります。おもしろいんだろうけど、それ勉強しているうちに、人間として大事ななにかを失うのだったら、やっぱりいやだな。
 とりあえず今回は、家庭教師さんに大事なことを教わった。その家庭教師さんは、たぶんどこかてドロップアウトしてしまったから、東電さまから研究費をいただくような立派な科学者にならずに、ぼくのところにやってきてくれているわけです。ありがとう。


 この友人、トライアル関係のお友だちです。トライアル関係のお友だちは、その人の職業を知らない場合が多い。オートバイで遊んでいるときだけの友だちだから、知らなくたって特に困らない。
 実は彼は、学生時代は某国立大学で原子力だか量子力学だか、なんだかわかんないけどそういうむずかしい学問を学び、今は福島県の放射能測定器の調整などをする職務に就いているという。それで、わざわざ声をかけてきてくれた。そこで初めて、へー、そんなお仕事をされてたんですか、ということになるわけです。
 あ、そうそう。ぼく、放射能という表現が好きです。放射性物質やら放射線やら、単語はいろいろ会って使い分けがむずかしいけど、ぼくは十把一からげに放射能と言ってしまいたい。するってーと、素人がまちがいを書きやがってという人がいるのを知ってて、わざと放射能と表記してます。ぼくたちが勉強したいのは原子力科学でも量子力学でもなく、自分にふりかかる放射能とどう付き合っていくか、なのだから。
 今回の話、どこからどこまで書いていいものやら、よくわからない。まぁ逮捕されることはないにしても、彼の仕事がやりづらくなったり、ぼくのところにお役所の人がやってきたりする可能性はある。家庭教師氏に確認したら「ぼくは会社に福島の人に協力するよといってあるし、大丈夫です」と言ってくれたけど、一応匿名にしておいた。ぼく自身は、今さら逃げも隠れもできない。
 実は、米を収穫したのだ。2011年、原発30km圏内の川内村は、米の作付け禁止区域になっていた。お米は作っちゃいけないというきまりだ。これに違反すると罰金だかなんだかもあるという。騒動を起こした張本人の東電さまの面々がボーナスもらってぬくぬくしているのに、被害者の農家のみんなが罰金だって? というつっこみはここではしない。3月以降、そんなことばっかりなんだもの。で、あらためて考えてみると、3月以前だってそんなことばっかりだった。福島も沖縄も、八ッ場ダムも太平洋戦争も、みんなおんなじ構造だから、気をつけたほうがいいですよ。次はあなたの番だから。
 おっと、そういう話をしたいわけじゃない。お米の作付け禁止だ。2011年、食べられるかどうかわからないから、実際にお米をつくって確認しようとした秋元美誉さんのお米は、全部破棄させられた。ちゃんと測らなきゃ、来年につながらない。測れる米を捨てさせて、汚染の高い米を出荷する。今のお国がやってることを、みんなもっとちゃんと知らなきゃいけないと思う。きっとみんな、知らない間に汚染の高いもの食べさせられてるよ。すぐに死んだりしないと思うけど。
 で、お米を作るとそんな目に遭う。美誉さんのところはずいぶんぐずぐすされたけど測ってもらえたからまだマシで、測りにも出してもらえずに捨てさせられたところもあったらしい(テレビだと、川内村で一軒だけ米を作った、なんて紹介されてますけど、実はあと数軒、お米を作った農家があったわけです。実は)。まったく水の泡、田んぼの米。

2011作付けしてない田んぼの稲

 雑草の育つ田んぼを見ながら、この1年、もったいないなぁと思っていたら、なんだか見たようなものが田んぼに育っているではないですか。それは、お米だった。誰が田植えをしたんだろう、いやいや、誰も田植えはしていない。勝手に出てきちゃった稲穂だ。1年前の秋、収穫の時にこぼれて地面に落ちたお米が、冬の寒さにも雨風にも、ついでに放射能にも耐えて、芽を出して育って実をつけたのでありました。
 へー、そんなことがあるもんだなぁと最初はぼう然と見ていたんだけど、これだって米なんだから、測れるじゃないかと気がついた。気がつくのが遅かった。折から、村では除染の名のもとに、地面をはがしたりいろんなことが始まっていて、田んぼも草刈り部隊が入っていた。これ、お国が県に依頼して、まわりまわって地域の人々がやってるんだけど、1日1万円ほどもらえるなかなかおいしいアルバイトだった。自分ちの草刈りには金が出ないけど、除染だとお金が出る。雇用対策という面もあるのかもしれない。まぁ、除染についてはこれまたいろいろ思うところあるのだけど、今回はこれについても通過します。

2011除染という草刈り

 で、除染の草刈りをしている横で、あわてて稲刈りをしました。ちゃんと田植えをしたわけではないから、遠くから見ると立派に稲穂が実っているように見えて、近くで見ると雑草だらけ。なので収穫も雑草ばっかり。その中から稲を選り抜くのがけっこうめんどくさいです。
 それでもこのお米は、まるで無農薬。化学肥料もいっさいなし(そのかわり有機肥料もないけど)。かなり健康的なお米です。放射能だけがちょっとふられたというところが不幸。でもこの不幸がどれくらいの不幸なのかは、測ってみないとわかんないじゃんね。
 とれたお米は、物干し竿につるして乾燥しました。ふつうの田んぼだったら、田んぼにずらりと天日干しの稲が並ぶんだけど、ほんの少ししか収穫できず。まぁしょうがない。件の放射能家庭教師氏は、このお米を測ってくれるってんで、わざわざ取りに来てくださったのでした。
 12月から、我が村でも食品の放射能検査ができるようになった。そっちに持ってけば簡単ではあるんだけど、なんせ村にはお米がないことになっているから、お米なんか持ち込むとめんどくさいことになりそうだ。検査してるのは村の人なんだけど、測ったデータは県に報告することになっているわけで(県の検査機械だから、まぁ当然です)、へんなものを持ち込むと、検査してるご担当にもご迷惑かかりそうだから、今回はあくまで水面下だ。
 家庭教師氏は、仕事で福島だのなんだのにはよく来てるそうなんだけど、仕事ってのはそうそう自由な時間がとれるわけでもなく、ぼくのほうも、お米を測ってもらうには脱穀したり精米したりしなきゃいけなくて、年末でなかなかやってるヒマがないなんて言ってるうちに、どんどん時間がたってしまって、いよいよ年もおしまいという頃になって、駆け込みでお米をお渡しできることになった。

2011脱穀を手伝ううさぎ

 稲穂から米粒をはぎとる脱穀作業は、いまどきは稲刈りといっしょに機械がやってくれるのがふつうだけど、ほんの数kgのお米に機械を使っていたら、ロスが多そうだから、全部手でやった。この作業、大昔はやっぱり手作業だったんだろうなぁ。気が遠くなる。去年の収穫の時には足踏み式の脱穀機を使って、これもずいぶん手間のかかる機械だったけど、完全な手作業は天文学的に気が遠い作業になるにちがいない。脱穀したら、収穫したら2kgほどになった。ざっと一升。でもこれは籾だから、玄米にして白米にして、くず米を捨てたら、どれくらいになっちゃうだろうな。
 最初は玄米にして測ってもらおうと思ってたけど、放射能は籾の状態が一番とりこんでるはずだから、籾の状態でしっかり測ろうということで、籾をお渡しした。とりあえず、お米の話はここまで。お米は、今測定中だ。素人はすぐ答えを知りたがるから、どれくらいだった? と聞いてみるんだけど、ちゃんとした答えを出したいからと、なかなか教えてもらえない。どうやら食べても問題なさそうな値であるそうだけど、これについてはちょっと待たれ、ということだ。

2011もぐりで収穫した米

 なんだか妙に長くなっちゃったから、この続きはまた今度(忘れちゃうから、できるだけ早いところ書きます)。
 今回は、かくして禁断のお米の収穫が無事に終わりました、というところまで。まぁ禁断のといっても、禁止されているのはお米の作付けであって、誰も作付けなんかしていないという点で、怒られる筋合いじゃないんですけどね。

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