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へそ曲がり的、廃炉と汚染土壌

福島県の昨日のビッグニュースは、東電が福島第二原発の廃炉を表明したことだった。福島県が原発ゼロになるのは福島県民の悲願だったとのことなので、これはうれしいニュースだった。

もうひとつ、環境庁が除染ではぎとった汚染土壌を再利用する方針を固めたというニュースもあって、こちらはなんのために除染したと思ってるんだと総すかんをくらっている印象。

どちらのニュースもさもありなんと思うんだけど、どちらも世間の反応にちょっと首をかしげたくなるので、ご批判を承知のすけで備忘録として書いておきます。

福島民報号外第二原発廃炉の方針を伝える福島民報の号外

福島第二(浜通りでの原発立地地域では、東電現場の言い方に倣って、この原子力発電所のことをにエフという。以下、にエフと略します。ちなみに福島第一原子力発電所はいちエフ)は、311の津波で被害を受けたけれど、いちエフのように絶望的な事態に陥る寸前に原子炉の温度上昇が止まって、なんとか爆発を免れて現在に至っている。

ぼろぼろになってしまったいちエフに再稼働の望みはこれっぽっちもなくて、2012年に1号機から4号機までが廃炉となり、おって2014年にに5号機と6号機も廃炉となっている。でも、にエフの1号機から4号機は廃炉にならないまま、月日が流れていた。

福島県には10基の原子炉があった。いちエフに6基、にエフに4基。このうち、メルトダウンなどを起こしてぼろぼろになったのはいちエフの4基、ほかの6基は、表面上は健全を保っている。しかしまず東電は、いちエフの残る2基を廃炉にした。4基がぼろぼろになって廃炉作業をしているさなかに、すぐ隣の原子炉に火を入れて発電をするなんて、作業がなんだかわかんなくなる。廃炉にするしかないという判断は比較的早かった。1号機から4号機を廃炉にするのに、似たような構造を持つ5号機と6号機は、廃炉シミュレーション用として重要な役割を持つことになり、そういう意味でも廃炉は必然だった。

でもにエフは廃炉にならずに、3年がすぎ、5年がすぎた。福島県から原発をなくす、というのは福島県の強い意志で(これまでの知事は原発推進で、途中から原発反対になった。現職知事は就任当時から廃炉推進を掲げている。民意を反映すると、こうなるのだろう)東電はさんざん福島県に廃炉をせっつかれていた。

一度だけだけど、にエフを見学させてもらった。地下のポンプは海水に浸かって錆びたまま、震災遺構のようにそのままにしてあるということだった。発電所として再稼働できるような状況ではなくて、がれきが片づけられただけの廃虚だった。

にエフのシミュレーション室にエフの管理室。ただしこれは教育用のシミュレーション室

使用済み燃料プールに燃料棒を出し入れする際のクレーンを制御する部屋にも入れてもらえたし、燃料制御棒が出入りする原子炉格納容器内にも入れてもらえた。再稼働しようという発電所なら、そんなところに赤の他人を入れるなんてちょっと考えられないんだけど、原子力発電所を理解するには、これはとても貴重な存在だった。

いちエフの5号機、6号機とにエフは、いちエフ廃炉の後方支援と位置づけられている。同時に、ぼくが見学させてもらったみたいに、素人平民に対しての学びの場としても、とても重要な役割を持っていると思う。

世間の原子力発電所に対しての声は、廃炉か再稼働かどっちかだ。感情的には理解できるのだけど、原子炉という資産(遺産かもしれない)を廃止にするかどうかは、感情的な話じゃなくて、複雑な判断が存在するんじゃないだろうか。もちろん、原子力発電所なんてどでかい国家事業を廃止にするんだから、東電と福島県の間でだけ話が決まるわけじゃなくて、お国の判断も重要になってくるもんだと思う。

いちエフ遠望10km先のいちエフを望む。2012年4月

再稼働はしない(できない)のは道義的にも物理的にも明らかだ。そのうえで、いちエフの廃炉後方支援の拠点としてにエフを運用するには、原子力発電所としての肩書きがあったほうがいいのか、あるいは発電所ではないほうがいいのか。冷静に判断できる材料があればいいのだけど、福島県が言ってることも、それに答えて今回東電が表明した廃炉の表明も、なんだか感情論ばっかりみたいな気がして、それが心配。にエフは最低限の健全さを保っているから、廃炉にしてばらばらにするより、今はまず手に負えないいちエフをなんとかするのに集中したほうがいいと思うんだけどね(廃炉にはするけど、すぐにはばらさないという選択肢もあるとは思うけど)。

感情論としては、ぼくだって福島県に原発はいらないと思うし、にエフは廃炉になってくれればいいと思うし、感情的に受け入れられない世界が回っていくのも気持ちが悪い。でも、感情論で世の中が進んでいくのも、やっぱりおっかないのだ。

http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/06/post_13814.html

もうひとつ、汚染度の再利用の話題。除染作業ではぎとった土を、土として利用する件も、感情的にはなんだかなぁと思うところはたくさんあるんだけど、それが妥当だという気もする。友だち失いそうな気もするけど。

除染作業は、福島県のあちこちで広くおこなわれた作業で、たとえば一般家屋でいえば、屋根を洗い、周囲の枝を落とし落ち葉を回収し、庭などの表土をはぎとって、別の新しい土を敷く。これで汚染は減らせるということになっていて、実際、検証作業では放射線量が下がったという報告がされている。

この作業では、おびただしい汚染物質が出る。枝葉、土などなど。枝葉は腐って小さくなったりもするけれど、その際に熱を生じて火災が起きたりするリスクもある。その点、土は安全だけど、量が減ることはないから、置き場所に困る。多くの批判を浴びながら、汚染物質の減容化施設(燃やせば容量は劇的に減る)が建設されたりもしたけれど、土を燃やすわけにはいかないし、燃やしても量は減らない。

減容化施設川内村内にあった減容化施設。すでに役目を終えて解体された

原発周辺の自治体に土地を提供してもらって廃棄物の置き場を作ったけれど、山ほどの汚染物質をおさめるほどではなく、どうしたもんかいなと環境庁は思案の末、そうだ、汚染の少ない土は、再利用しちゃおうって発見して、今回の発表になった。

汚染土壌にもいろいろあって、たとえばぼくらの住むあたりから出た土は、双葉郡全体のレベルで比べると、汚染度はごく少ない。というか、そもそも除染なんて必要なんだろうかと思ったこともあって、除染で出た土は、せめて浜通りの原発に近い、より汚染の高い土地の除染に使ったらいいんじゃないかと思ったりもした。でもそんな話を誰かにすると、そんなこと言うと、その土地の人に袋だたきにあいますよ、みたいな反応が多くて、誰も名案だとは言ってくれなかった。袋に入れた汚染物質は厳重に管理されていて、誰かがそれがいいと思っても、お国がうんといわなければ土を自由にするなんてできないのだけれど。

そんなこんなしているうち、3年すぎ5年すぎ、7年がすぎた。土を汚染した放射性物質は、主にCs(セシウム)134とCs137で、Cs134の半減期が2年、Cs137の半減期が30年だ。

ちなみに学習院の田崎教授のサイト(http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/Cs137vs134.html)を見ると、除染をしない場合のセシウムの減り方が表になっている。

経過年数 1 2 3 5 10 20 30 50
減り方 0.78 0.62 0.51 0.37 0.23 0.17 0.14 0.09

事故当時を1として、Cs134は2年で半分、4年で1/4になるけど、Cs137は30年でようやく半分だから、1年や2年ではあんまり減らない。でもCs134とCs137はほぼ同容量ずつ原子炉から飛び出したとされているから、こんなふうに、だいたいの減り方を計算することができる。

つまり、ざっと0.5μSv/hくらいの、ちょっと線量が高くていやだなぁという地域であっても、そのままなんにもしないで放置しておくと、3年後は0.25μSv/hになって、年間1mSvほどの、ほぼ人が住めるくらいには放射線量は減ってしまう。現状は事故後7年がすぎているから、放射能は事故当時の1/3くらいになっているはず。もちろんこれは、なにも除染をしない場合のことで、除染をしたらさらに減っていると考えるのがふつうだ(へそ曲がりのぼくとしては、除染がまるで効果がないばかりか、まったく逆効果を引き起こしている可能性もゼロではないんじゃないかと勘ぐっている。なんの確証もないんですが)。

除染後のおうち初期頃に除染を行ったおうち。周囲が不気味なほどにきれいになっている

つまりはたいがい汚染の高かった土壌でも、7年もたった今となっては汚染は1/3になっているということだ。事故当時でも、除染をしなけりゃほんとにあぶない状態だったのかというと、そんなことはなかったんじゃないかと思っているんだけど、あぶない状況だったとしても、今はずいぶん状況がちがっている、変化している。

もっとも、じゃ、除染しないで放置しとけばよかったのかといえば、やっぱり除染はしといてよかったと思う。にエフの廃炉について、感情論は怖いと書いたけれど、自分の住む家がきれい、きたないという感覚は感情論意外のものではなくて、これは物理学では決着がつかないと思うからだ。

除染で出た汚染物質除染作業で出た枝葉や土はこんな袋に入れられる

除染をした土壌を再利用するという報道に対して、なんのために除染をしたのだと憤っている人は多いけれど、一時期自分の目の前からどこかにどけてくれれば、生活の安心度はずいぶん高くなる(除染をしなければいけないところはそもそも不安で絶対いやだという人もいるだろうけど、そういう人に向けてはこんな話はしません。実際、友人にそういう人もいます。それはそれだと思っています)。いったん隔離しておいて、そこそこ安全な線量に下がったら、また戻すでもよかったんじゃないかと思ったりもする。実際、長いことかけていい土にした畑の土をはぎ取られて悲しんでいた農家の方々もいたから、どこかで保管してもらってほとぼりがさめた頃に返してくれることにしたら、それなりに説得力のある策なんじゃないか。でも、みんな納得しないでしょうね。

感情論で世の中が動くのはこわいと思いつつ、経済や政治の哲学だけで世の中が動くのはもっとこわい。うそつきばっかりの政治家たちにはほとんと困ったもんだと思っているけれど、放射能や原発政策については、まだまだぼくらが知らないところで政治や経済が動いていて、しかもそれを大きな力を持っている皆さんがないしょにしているじゃないかと、なんとなくずーっと思ってる。そのうえで、にエフの廃炉と汚染土壌の再利用については、なんかもやもやしたものを感じてしまうんで、書いておきました。読んでるほうはもっともやもやするかもしれないけど、ごめんなさい。

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