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行政懇談会で言いたかったこと

1312冬の朝の景色

冬っぽい景色になってきたうちの前。ここは1年半前に除染を終えて今はもとの草ぼうぼうになっている

 原発事故から2年半、村の帰村宣言からざっと2年弱、村はがくんと減ってしまった人口減少をどうするのかで悩み多い。村の活動としては、震災以前の比ではないほどにいろんなことをやっているのだけれど、なっかなか思うように人口は戻らない。さて川内村はこれからいったいどこへいくのか。11月のとある晩、行政区ごとの懇談会がおこなわれて、住民のみなさんの意見を村長以下、役場の課長たちが顔を揃えて、お話し合いがあった。

1312トンパック

住宅の除染が終わって、今は道路の除染をやっている。作業途中の道路は、こんな感じ。

 こういう催しはもう何回かに渡って行われていて、村はそれなりに住民の声を聞こうとしているとは思う。でも住民の声というのはシステマチックじゃなくて、人それぞれで、とても一人一人に対してかなえられるものでもない。だから、特別にせっぱつまった要求とかがない限りは、みんな大きな声を出すことはなくなった。
 原発事故についても、一時はいろいろ意見があったけど、今は落ち着いてきている。気持ちや生活が落ち着いたのではなくて、村や国がなにをしようとしているのか、なにができて、なにができないのか、自分たちにはどんな補償があってどんな補償ができないのか、それがなんとなく、見えてきてしまっている気になってきている。
 村や福島の復興は、なかなかむずかしい夢物語ではないかと、このへんのみんなは考えている。復興というか、一部は景気が回復する業種もあるのだろうけれど、もともとだめなところはだめなままなのではないかと、少しあきらめている節もある。脚光を浴びたりおおもうけをしたり、そういう派手なこととはおよそ無縁に時間が流れていた地域なのだ。
 今回の懇談会、そういうわけだからというわけではないけれど、みんなおとなしかったので、せっかくだから前から言いたかったことを言ってみることにした。みんなの前で発言するというのは、こういう田舎ではいろんな意味で勇気がいることだけれど、地域のみんなにもぼくがどんなやつだか(へんなやつだという印象も含めてだけど)ちょっとはわかってもらってるんじゃないかという勝手な安心感もあった。
 言いたかったのは「村は除染をやめる気はないのか」ということだった。なんというか、今の村にとって、こんなこと言うのは東京都に向かって「オリンピックをやめる気はないか」と言うのとおんなじくらい突拍子もないことだけど、とりあえず笑われないで聞いてもらっただけまずはよかった。
 懇談会の時のぼくの質問はちょっと舌足らずだったけど、言いたかったのはこういうことだ。
 村は、今除染が花盛りだ。村の基幹産業は農業だとみんな言うけど、経済的には圧倒的に除染産業の方が大きい。除染には、村の企業も少なからず関わっているけれど、大手ゼネコンも相当加わっている。ビジネスホテルもできた。内装はそこそこだけど、外装はプレハブで、誰もこれがビジネスホテルとは思わない。飯場みたいなの、というとみんなそれとわかる。
 村の外からは、ゼネコンのえらい人もやってくるけど、日本全国から集まった作業員の人もいる。そういう人の中には、背中に立派なものを背負っている人もいる。村の温泉施設、かわうちの湯が営業中の頃は、夕方お風呂にはいれば、村のひとと作業員の人が、どれくらいの割合でこの地にいるのか、なんとなく察しがついたりしておもしろかった。村のひとの顔を全員知っているわけではないけど(土地の若者にも、かわいい彫り物をしているのはいるにはいるんだが)彫り物やことばを聞けば、土地のひとかどうかはわかるもんだ。
 プレハブの除染基地、彫り物の作業員(彫り物のない人はいっぱいいるし、それで人の価値を決めつけるもんじゃないと思う)、そして除染の成果である放射性廃棄物(とされている草や雑木や土)を詰めた青い袋(隣町では黒い袋だったりする。除染の指揮は行政がとるから、市町村ごとに少し様子がちがう)、そういったいろんなものが、帰村してほしい村にあふれている。
 村に帰りたいひと、残っているひとが望むのは、元通りの村だ。買い物や仕事の拠点である浜通りが壊滅的状況では、元通りの村にはなりようがないのは先刻承知でも、それでも心情的には元通りを望む。
 除染は汚染された家や庭をきれいにしてくれるけれど、放射能がどれだけなくなったのかは、見ただけではわからない。目に見えるのは、除染騒ぎが帰村移行ずっと続いていて、それはまだまだ続きそうだということだ。除染が続くということは、それだけ汚染されているという証しでもある。そういうところに帰ってきたり、あらたに住みたいと思うひとがどれだけいるだろうか。
 除染をやめてしまうというのは、もちろん極論だ。でも川内村と同じくらいに汚染されていて、それでも仰々しい除染をせずに終わらせてしまっているところがある。そういうところはどうなったかというと、多くのひとは、そのまんまそこに住んでいる。状況を知らないのはいいことではないけれど、生活が変わった、変わらないというのは大きなことだ。
 村の中には、特にぼくが住んでいるあたりは、帰村が進んでいるとされるエリアでもある。それはなんでかというと、村の一番端にあって隣の船引や郡山に比較的近いことと、除染が早めに一段落して、界隈に除染の片鱗が見られないことが大きいんじゃないかと思うのだった。
 そしてもうひとつ、こっちの方が大事なんだけど、大きな汚染から2年経って、このあたりの線量はずいぶんと下がった。それは念入りな除染の成果でもあるのだけれど、森林などまったく除染の手がついていないところも多い。そして、そういうところも、線量は低くなっている。ぼくはトライアル大会の準備で山の中にはいる。除染はしていない、まったく手つかずのところもある。2011年は、0.5μSv/hくらいが最低で、高いところでは1μSv/hくらいあった。それが今では、低いところでは0.1μSv/hくらいになっていて、ぼくの家のあたりと変わらない。高いところでも0.4μSv/hくらいだ。ひとつの除染もしていないのに。
 ケースバイケースということはある。除染によって安心を得るという効果ももちろんある。でも除染には莫大なお金がかかる。一説には、小さな小さなぼくんちは、裏手が森林なのだけど、住宅から20mは除染を行ったから、その費用は500万円ほどになるという(酒の席での話だから数値的な根拠はまるでない)。500万円あったら、同じくらいの大きさの家なら新築できるんじゃないかというくらいだ。
 そしてまた、事件の張本人である福島第一原発では、予算が削られて作業に苦労しているという。除染を削ったからあっちにお金が流れるわけではぜんぜんないけど、むだなお金を使う必要なんかないと思うのだ。
 そういえば帰村を決めた頃の懇談会でも、ぼくは質問していたんだった。
 除染は必要なことだと思うけど、当然実績がない。効果を疑問視する声もある。たいへんなむだなことになるかもしれないけど、それでも除染はやるのか、と。
 国からやってきたお役人は、除染はきちんと効果が認められていて、だからやるのだと教科書に書いてあるであろうことを繰り返していたけど、村長は「むだを承知でもやるしかない」と答えていた。官僚ってのは頭がいい人ばっかりのはずなのに、なんですぐうそがばれる官僚答弁するのが好きなのかなぁ。
 今回はお国の役人はいなかったから、そういう型にはまった答弁は聞かずにすんだ。村長は「気持ちはわからんでもないが、除染をやめるわけにはいかない」と答えて、ぼくの質問時間は終わりました。
 ぼくの一言で除染計画が見直されるなんて思っていないしので、これはこれでいい。ぼくが言っておきたかっただけだから。
 除染が基幹産業の村に、これまでより多くのひとを住まわせる復興計画って、いかにもたいへんそう。村にはぜひがんばっていただきたい。

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