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ニコンFと15mm

ニコンFなるカメラ

ぼくはへそまがりなので、ついぞ使ったことがなかったのだけど、日本のカメラ史に残る歴史的なカメラといえば、やっぱりニコンFだろう。

乗馬中に落っことしたニコンFがそのまま動いたとか、カンボジア戦線の弾丸に撃ち抜かれてダメになりながら持ち主の一ノ瀬泰三を守ったとか、いろんな伝説があるけれど、この当時のカメラはかっこよかったもんだ。

いま、ぼくの手元にはなぜかブラックボディのニコンFが1台あった。

ニコンFの時代、ぼくはキヤノンF1というカメラを使っていた。みんながニコンを使っているので、ちがうのがいいなと思ってキヤノンを買ってみたものの、レース界では圧倒的にニコンユーザーが多かった。そのうちキヤノンが起死回生のキャンペーンを打って、サーキットはキヤノンユーザーばかりになってしまったのだけど、F1もニューF1も、すてきなカメラだったなぁ。

そんなキヤノンユーザーからしても、ニコンFは威厳のあるカメラだった。当時ニコンF2が世に出ていて、ニコンFはすでに現役は退いていたから、誰かが使っているのはほとんど見たことがないけど(唯一、森岡進さんはニコンFにモータードライブをつけて、はでなストラップつけてモトクロスの取材をしていた)日本のカメラ産業を世界レベルに押し上げた立役者なんだから、思わず敬礼をしたくなってしまう。

このニコンFは、とあるオートバイ屋さんに遊びに行ったら「うちにあってもゴミになるから持っていけ」と言われて大喜びで持って帰ってきたものだけど、だけどいまとなってはフィルムで写真なんか撮らないから、うちに持ってきてもゴミにしないで持っているのはけっこう至難なのであった。

ニコンFは圧倒的にアイレベルファインダーをつけた姿がかっこいいのだけど、これはフォトミックファインダーがついた1970年ごろのモデルだった(ネットで調べたら製造番号から年式が明らかになった)。わりと後期のモデルみたいだ。

フォトミックファインダー(露出計が入ったファインダーで、そうじゃないアイレベルファインダー装着だと、露出は勘であわせる)はとにかくでっかい。そのでっかいプリズムファインダーの端っこにはヨゴレがあるのがもったいないところだけど、スローシャッターも切れているみたいだし、さすがに馬の上から落っことしても壊れないカメラだけあって、いまだに使えそうなんである。

と、これまたどうしてうちにあるのかわからないけれど、ファインダーをはずしてフタをするだけというアクセサリーが売られていたことがあった。アクセサリーシューに別体のファインダーを装着するだけの使命のアクセサリーだ。どういうふうに使うかというと、こんなふうに使う。

ニコンFと15mm

このレンズは、15mmF4.5の広角レンズだけど、一眼レフの要であるミラーを格納した状態でないとくっつかない。ミラーをたたんじゃうとファインダーでは画像が確認できないので、あってもしょうがないペンタプリズムのファインダーは外してしまって、外付けのファインダーをくっつけて、これで照準を合わせましょうだ。

レンズと外付けファインダーとシューアダプター(という名前の不思議なアクセサリー)は、いずれもコシナ製でフォクトレンダーブランドになっている。コシナって会社は、社長さんの趣味にまかせて製品を作っている感じがあって、大量に売れるわけはないけど、ちょっとそそられるものを作って売っている。大手のメーカーのものとちがって、そのうち買おうとか思っていると製造中止になってしまっていたりする。

こういう、カメラらしいカメラは、ときどきシャッターを切ってみると、懐かしい感じで、わくわくする。でももうしわけないけど、フィルムを通して写真を撮るところまでにはいたらない。フィルム現像したり引き延ばしをしたりは楽しかったけど、ぼくにとってはそういう写真の趣味より、被写体に向かうことのほうが楽しかった、ということかもしれない。

ところでニコンといえば、なんで買ったのか、こんなフードを持っていた。HK-2という24mmレンズ用のかぶせ型フード。ぼくは24mmのニコンレンズは持ってないんだけど、1万円で譲ってもらったおよそいい評判を聞いたことがない16mmF2.8というレンズを持っている。49mmから52mmにフィルター径を変換するリングを介して無理やりくっつけてみたら、なかなかぴったり。

ニコンFの登場から50年。フィルム時代のかっちりとした職人芸は影も形もなくなってしまった今のデジタルカメラ。しかも性能なんかどうでも軽けりゃいいという設計で作られたレンズだけど、カメラを持ってる楽しさは、なんとなく共通していたりすると思うのは、へそまがりのぼくだけかな。

ニコンのフードを付けたα7

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