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やってはいけない使い方

08TDN
Photo:Thanks Pupi!

 トライアルマシンは、たいていの使い方が許容されている。岩の上から落とす、上下反対の状態で崖の上から駆け下りる、泥沼の中でエンジン全開にする等々。PL法とかの担当者がこんな現場を見たら卒倒するでしょうが、これがトライアルの現実だ。
 しかしてこんな道具の使い方が許されている世の中は、トライアル以外にはちょっとない。こんな使い方をすると命の危険があるからやめなさいだのなんだのと、ややこしい説明書がずらずらとついてくる。トライアルって、本当に原始的な(そしてすばらしい)スポーツだと思う。
 この原始的使い方の対極のほうにあるのが最新のIT機器だと思われるけど、申し訳ない、今日は、最新のIT機器をこんなふうに使って遊んでしまいましたというお話。


 自然山通信は、いつもたいてい二人で行動している。杉谷がビデオカメラを持って、ニシマキがスチール(動かないやつ)カメラを持って取材する。全日本選手権も、世界選手権開幕戦もこのパターンで取材した。ところがなぜか、トライアル・デ・ナシオンは、ニシマキひとりがいくことが多い。どういうわけかわかんないけど、自然山通信的通例というやつだ。
 ひとりでしかいかないと、ビデオカメラを持っていくかスチールカメラを持っていくか、どっちか悩む。今までは、たいていビデオカメラ優先だった。必要な何枚かだけ、コンパクトデジカメを使って撮影して、どうしても必要なのはイタリアのあの人やスペインのこの人やイギリスのあんな人にお願いして入手する。トライアルは日本も世界もすてきなムラ社会だから、こんなことが可能だ。
 でも、せっかくいくんだから、やっぱり自分でも写真が撮りたい。それで、ソニーのビデオカメラの上にニコンを重ねてみた。カメラを2台並べて三脚に固定するためのプレートを買ってきて、こいつでニコンとソニーの上面にある三脚ねじを連結させた。なかなか不安定だけど、とにかくカメラは2台くっついた。

08二階建て
ビデオの上にカメラをのせて

 お目当てのライダーがセクションインしたら、ビデオのスイッチを入れる。ビデオのファインダーをのぞきながら、カメラのシャッターをときどき押す。あるいはカメラのファインダーをのぞいて撮影しつつ、お目当てのライダーをファインダーの真ん中に置き続けるように気をつける。そうすれば、ビデオとスチールの両方が撮影できる、はず。
 でもそんなに簡単ではないのだな。スチールのファインダーをのぞいていると、撮影している人間のモードがスチールになる。シャッターを押した瞬間、仕事が終わった気になって、肉眼でライダーを見てしまう。すると、ビデオカメラからははずれてしまう。これは、ビデオだけ撮影していてもときどきあることで、ファインダーを見ているだけでは周囲の状況がわかんないから、きょろきょろと周りを見ながら撮影したりすることもある。で、ふとファインダーを見ると、画面になんにも入ってなくて、慌てたりする。あー、こんなふうに仕事の失敗談を日記に書くべきではなかった。自然山DVD見た人から「ふざけた仕事のしかたをするな」と怒られたらどうしよう。すいません。許してください。もうしません。いや、次はもっとうまくやります。世界一の二刀流になります。がんばります。
 この、ニシマキの二刀流の撮影姿は、みんなから大好評だった……。好評、なのかゲテモノめと思っているのかはわかんないけど「すばらしいアイデアだ」とにっこり笑ってくれるお客さんもいた。世界選手権最終戦のスペイン大会では、地元のテレビ局が取材に来ていたんだけど(バルセロナTVとかそんなの)、夜のニュースにぼくが登場したらしい。なんて紹介されてたんだと聞いたら「日本の最新テクノロジー」と紹介されてたらしい。IT大国ニッポンでテクノロジーの研究者のみなさん、しょうもないものが最新テクノロジーになってしまって、申し訳ないです。ごめんなさい。あやまりっぱなしだなぁ。
 写真は、翌週のトライアル・デ・ナシオンでの一こま。セクションには、各国の取材陣がぞろぞろ集まる。下見中なんかひまだもんだから、ぼくの二刀流を撮ろうとするヤツもいるわけだ。するってーと、イギリスのトライアルセントラルのアンディが、ビデオの上にくっつけられた日本の上に、自分のキヤノンを重ねてきた。シャッターを押そうとしたイタリアのモトクロス誌のプピィは、それで喜んで、隣のジェイク・ミラー(FIMのプレス事務局。ドギー・ランプキンのWEBサイトなんかも彼の仕事)にも、カメラを重ねるように指示しやがった。ジェイクは「こんなゲテモノやろーといっしょにされたくないなぁ」と苦笑いしながらお遊びにつきあってくれたという物語が、この写真には秘められているのだった。
 この直後、ビデオカメラの持ち手が妙にぐらぐらするしているのが発覚。気をつけてはいたつもりなんだけど、1kgちょっとある(もっとか?)カメラにストロボをつけて振り回しているわけだから、持ち手にも想定外のストレスがかかって当然だった。折れたり割れたりしなきゃいいけどなぁと思いつつ、結局最後まで使い切ってしまった。ねじ回しがあれば増し締めできるんだけど、意外なことに、モータースポーツの現場では、めがねのねじを増し締めするような小さなサイズのドライバーは存在しない。だもんで、自分でドライバーを持って歩いていたこともあるんだけど、最近はコンピュータ関係で荷物が増えて、そういう道具の必要性をすっかり忘れていた。忘れていると、事件が起きることになっている。
 最後まで2台のカメラ分の重さに耐えて、持ち手はちぎれずに日本に帰った。負担に耐えられなくなってねじ山が馬鹿になっていたらどうしようとびくびくしながら増し締めしたけど、よかった、閉めたら無事に元通りになりました。めでたしめでたし。
 次は、もっとスマートに二刀流しようっと。

08空
15mmで撮った空

 お次の禁じ手は、オークションでの衝動買いが発端。ニコン用フォクトレンダー・スーパーワイドへリア15mmF4.5ってレンズが3万円で落札できた。このレンズ、もう絶版になっているから、3万円なら買いかしらんという感じではあった。定価がいくらだったかは忘れたけど。
 ところがこのレンズ、ふつうにつふるとミラーにレンズがあたっちゃう。なので、ミラーアップをしてじゃないと装着できない。ミラーをあげちゃうから、ファインダーにはなんにも見えない。ピントもわからない。ものすごく不便なレンズである。しかもさらに問題なのは、今使っているデジタル一眼レフには、ミラーアップ機構がついてない。
 でもぼくは知っている。一眼レフのミラーは、指で持ち上げると、言いなりになって持ち上がる。これは、中学生のときに初めて一眼レフカメラを手にしたとき、ほとんど最初にやってみたことだ。以来、歴代のぼくの一眼レフは、みんなミラーをそーっと持ち上げられているけど、どのカメラも、例外なくミラーは指で持ち上げられた。
 だったら、そのまま持ち上げた状態にしておけば、このレンズもくっつくはずではないかと、ちょっと調子が悪くなって、杉谷のところに出張していた(一度雨に濡れてから、ときどき、写真がシマシマになって写ることがある)ニコンD70に、このレンズを挿入(装着という感じじゃない)してみた。ファインダーではなんにも見えないから、撮ってみて、液晶画面でできあがりを確認するしかない。露出もオートが使えないし露出計も機能しないから、マニュアルでてきとうに撮るしかない。このアナログな感じが、なんだかとってもなつかしい。このレンズには、外付けのファインダーが付属している。でもデジタルカメラは、35mmカメラに対してひとまわり狭い範囲しか写らないから、15mm用のファインダーをのぞいて撮ったものは、頭が切れたりしていることが多かった。22mm相当のファインダーをさがしてきて、それを使わないと、なにが写ったのかも液晶を確認するまでわからない。これではアナログ以前に、ばくちだ。
 なんで、こんなにあと玉が飛び出しているかといえば、それがレンズの設計にとって自然であるかららしい。むりやりたとえれば、軽量コンパクトを狙ってむりやり軽く小さなオートバイを作ろうとはしないで、自然に設計したらこんなになっちゃった。文句あるかとばかり、100kgのトライアルマシンを作っちゃったようなもんだ。でもその100kgが、とても使いにくいのに、なぜか抜群のグリップを発揮するとか、そのグリップ感覚がライダーに至福の快感を与えてくれるとか、まぁそんな感じのレンズなのだった。レンズ業界的には、歪曲収差が小さいとかいろいろ並べることばもあるんだろうけど、ぼくはテクニカルタームにはめっぽう弱いので、撮ったものを見てたいへん気に入ってしまいました、という感想を書くだけにしておきます。
 見た目には、ごらんのとおり、ごく薄い。レンズの主要部分はカメラの内部に入り込んでしまって、外側には1cmそこらあるかないか。ほとんど、ボディだけ持って歩いているような感じがナイスなのです。

08カメラ08レンズ
左:レンズをつけたD70/右:その15mmレンズ

 でも、よいこの皆さんはこんなことまねしちゃいけませんよ。レンズの説明書には「ミラーアップのできるカメラで使え」と書いてあって、D70は、逆立ちしてもミラーアップができるカメラじゃないんだから。
 ちなみにぼくは、D70よりももうちょっと雨に強いD200というカメラも持っているけど、このカメラはミラーのあたりの寸法がD70よりも小さくて、物理的にこのレンズを挿入することができませんでした。結果的に罪を重ねることができず、犯人としてはちょっと胸をなでおろした次第です。
 でも、こういう本来の使い方じゃない使い方って、楽しいんだよなぁ。

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