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相模川クリーンアップトライアルは終了します
思えば2004年に始めて、10年の長きにわたって、みなさんに楽しんでいただきました相模川クリーンアップトライアル。もう開催は無理かなと思わざるを得ない環境変化が起こったので、開催は終了することにしました。
以下、10年の思い出をまじえての、その思いです。
相模川でトライアル大会をすることになったのは、河川敷の清掃活動をボランティアとして行っている団体さんからの呼びかけに応えてのものでした。清掃活動の呼びかけだったから、清掃活動だけ協力する、でもよかったんだけど、トライアル大会をやることによって、清掃活動や、河川敷を使用する上でのマナーというか慣習などを、少しでも周知できるかなと思ったからでした。
最初は5人くらいしか集まってくれなかった参加者も、多い時には50人くらい、だいたい30人〜40人くらいが参加をしてくれるようになったので、そういう意味ではこの思惑はうまくいったのですが、本来の目的である清掃活動がうまくいったかというと、ちょっと微妙です。オートバイで遊びたくて河川敷にやって来る人は(もちろん過分な協力をしてくれる人もいっぱいいるけど)オートバイに遊びたくてくるんで、おそうじがしたいわけじゃない。現実的には、みんなで清掃活動をするにも、その告知が中途半端だったから、みんなに周知できているわけではなかったということもありました。いろんな人がいるから、こういう点はしかたがないんですけどね。
10年前は、モトクロス少年の親御さんたちが熱心に活動してくれていて(今もそうかもしれないけど、おつきあいがとんとなくなってしまった)ふらりと河川敷に立ち寄って、いろいろ話を聞かせてもらうこともありました。モトクロス少年ではなかったけど、この頃河川敷でモトクロスの腕を磨いていたのが、若き小方誠選手であり、いまは砂田真彦選手の名マインダーである片倉久斗選手でした。
相模川で遊んでいる人はみんな仲間、モトクロスもトライアルもエンデューロも4WDも、ラジコン飛行機も釣りもバーベキューも、みんなでいっしょに活動できれば最高だと思っていたし、小方父さんや片倉父さんと話をしていると、そんなこともできそうな感じだった(トライアル屋さんにお二人の父さんの概観を説明しておくと、小方父さんはちょっと硬派な成田省造さんで、片倉父さんはスーパーマリオのようなお父さんです)。でもそれにはけっこう一生懸命人に向かっていかなければいけなくて、トライアルがやりたくて河川敷に来る人はわざわざモトクロスの人のところに出向いて話をしたりしない。ちょっと幻想だったなと最近では思っている。せめて釣りの人に「うるせーな」といわれない関係を作れればいいなと思っていたのだけど、どうだったでしょう? 釣りの人とも、河川敷に大規模工事が入ったあたりから疎遠になっちゃって、河川敷仲間、みな兄弟とはいかなくなってしまっていた。
その、大規模工事が今回の話の発端だ。最初の大きな工事は、近くに圏央道が建設されて、そのサービスエリアができることになった。それでこのあたりに流れ込んでいる支流の流れを変える工事が入ったのだった。今までの入口が移動したり、多少地形の変化はあったけれど、サービスエリアができて圏央道が開通すると、河川敷に来るのが便利になったという以外は、特に変化はなかったものだった。
でも今思い返すと(そしてちょっと勘ぐってみると)このときに地主たちと件の河川事務所との間にそれまで途切れていたパイプができ上がりつつあったんじゃないかと思う。ここの河川敷は、地主さんと県の河川事務所と自由に遊び回る利用者たちと、微妙な関係で成り立っていた。
まず地主さん。なんせ、何回かの大水で川の流れが変わってしまって、いまとなってはなににも使えない川の底を所有している地主さんもいるということだし、そしてまた、たくさんの地主さんがいるんだという。だから、たとえば県が「ここを整備して公園を造りましょう」と持ちかけても、話はまとまらず、もしくは地主さんに話しさえ届かず、その結果、ぼくたちは自由に(というか好き勝手に)遊び回ることができていたのだった。
10年前には、河川事務所の人とも、何度か河川敷でお会いしてお話をさせていただいた。オートバイが河川敷で遊ぶという点については特にいいも悪いもなく、ただし地形を変えること(これは河川法違反)、水門や防波堤などをこわすこと(これは論外)、利用者同士でケンカになること、そしてゴミの不法投棄はなんとかしなくちゃいけないなぁという感じだった。
トライアルライダーにもその他の利用者にも、水門や防波堤を壊そうとする輩はいなかったけれど、安心してはいけない。水門の近くにオートバイや4WDで上り下りしたら楽しそうな斜面があって、ここは初心者ライダーがちょっと冒険心を持って障害物に取り組むにはちょうどいい地形だった。でもみんなで走れば崩れちゃう。それで水門に影響が出たりもする。悪気はなくても、やってることは同じ、という結果になってしまうのを、はたしてどれくらいの人たちがわかってくれているのかは、疑問だった。
そんなこんなで、利用者に注意喚起しようと、立て看板を作ったことがあった。そのとき、そういう目的に使えるお金を持っていたのは、クリーンアップトライアルだけだった。エントリーフィーを集めていたのは、こういう時に使うためだったから、ちゃんと目的通りの使い方ができてうれしかった。エントリーフィーの貯金は、河川敷の一斉清掃の時に軽トラを借りてきたりという経費にも使わせてもらったものだった。
サービスエリアの工事からしばらく、秋を過ぎた頃になると工事が入るようになった。木々を伐採して、平らなエリアを増やしている。もともと河川敷の整備というのは、大雨で増水した時に、河川敷からよけいなものが流れ出て下流域に被害を出さないようにするためのものだから、倒れそうな木は倒しておくというのは理にかなっている。なんで木が倒れそうになっているかというと、あるいはトライアルライダーが熱心にターンの練習を繰り返したので、根っこのまわりがすっかり掘られてしまったという理由もあるかもしれない。
なんでこれまで、こういう工事が行われなかったかというと、地主さんがいっぱいいて、その了解をとりつけるのがたいへんだったからだ。でも10年単位で時間が流れると、地主さんも代替わりして、先代とは異なる考え方の地主さんが現れたり、あるいは権利を放棄して県に管理をお任せしたりするようになってきたんじゃないかと想像する。
ともあれ、河川敷はだいぶ平らになった。相模川クリーンアップトライアルにとって、このエリアがおいしいのは平らだということだ。トライアル場としてはパンチに欠けるけど、それゆえに初心者(とか初心者を脱出できない人とか怖がりとか高齢者とか)にはぴったりのフィールドだった。しかしまるきり平らになってしまうと、どうセクションを作っていいのかも悩んでしまう。
それよりも悩みの種となったのは、走る場所が少なくなって、だんだん河川敷が混雑してきたことだった。
広いところが増えたのだから、河川敷は前よりも広々としているんだけど、トライアルライダーと、エンデューロの練習をしたりトレッキングライディングをしたりする人、それと4WDのみなさんにとっては、少しでも平らじゃない奥地が遊び場所だ。茂みの奥のそんな遊び場所は、いろんなジャンルの遊び人たちが殺到するようになった。
それまで、誰が決めたわけではないんだけど、ここはエンデューロのコース、ここはトライアルのセクションと、なんとなくすみ分けがされていた。でも最近は、そんなことは言っていられなくなって、セクションを作ってトライアルをしていると、突然エンデューロさんが飛び出してきて、ばつが悪そうに引き返していったりしたりもした。誰の土地でもないんだから、ひと言かけてくれれば通っていただくこともできたような気はするけど、声をかけてややこしいことになるより、そっとその場を離れたほうが問題は少ないという処世術かもしれない。自分自身、そういう選択をすることもあるしなぁと思い出したりしたものだ。
ここ1、2年のそういうことを踏まえて思うことがあった。関東圏の遊び場がどんどん減ってきたから、相模川の河川敷を目指す人も増えてきたのかもしれない。今はまだ、トライアル遊びはできる。でもそのうち、ここに集まってくるいろんな人との間で、場所の取り合いみたいなことになりはしないか、という危機感が少しずつ大きくなっていった。
周囲の遊び場がどんどん消滅していく中、相模川だけが奇跡的に残っていた遊び場だった。今でもすてきな遊び場だと思う。でも、もう50人規模の遊びを催せるだけの余地がなくなっちゃったというのが、クリーンアップトライアル休止の一番大きな理由だ。
ここで遊び続ける皆さんと、最後までいっしょに遊べなかったのは残念だった。相模川はトライアルも楽しめるオフロードエリアで、この10年だけでも、たくさんの人がトライアルとふれ、トライアルを楽しんでもらった。
きっとこれから、大きな工事が入って、将来的にはオートバイ手遊べるエリアではなくなってしまうんじゃないかという悲観的な予測はあるのだけれど、せめてそれまで、みんなで仲よく河川敷を楽しんでください。
みなさん、この10年間、本当にありがとうございました。