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世界選手権のノーストップ

2005年のテスト風景
2005年のテスト風景。藤波マシンに乗るランプキンと黒山マシンに乗るボウ。ヘッドライトに機器がついている

世界選手権が、ノーストップルールを採用することになりそうだ。FIMとトライアル・マニュファクチャラーズの合議ということだから、もう決定だろう。

ルールの詳細はまだわからず。日本がどんな対応をするかもわからないが、これまでFIMがどんな動きをしてきたかなどを踏まえて、あれこれ考えてみました。

まず、ノーストップルールというからには、止まったら5点というルールだと思われる。過去、停止1点というルールが採用されたことはあった。しかし止まったかどうかの判定がむずかしく、このルールは撤回された。

反対に、止まろうがバックしようが、なんでもいいというルールもあった。このルールと同時に採用されたのが、セクションを1分半のうちに走りなさいという現在のセクション制限時間のルールだ。持ち時間内であれば、何度やり直しをしてもよかった。大岩に上れなくて、バックしてもう一度トライして、なんてことを時間いっぱい繰り返している選手もいた。

どれも帯に短したすきに長しで、ちょうどいいるーるにはなかなかならない。おそらく、なんだかんだといいつつも、今のルールが一番いいんじゃないのかなと思い始めた時に、今回のルール改正のニュースだ。

やっぱり、と思うのは、現在のトライアル委員長が、イギリス人のデイビッド・ウイロビーさんであること。イギリス人は、伝統的にノーストップルールが好きだ。イギリス人は伝統を重んじるから、イギリスで生まれたトライアルは、もともとノーストップだったのだという思いが強いらしい。マーチン・ランプキンとかにも聞いても、だいたいノーストップを推す声が多い。

ただし、とも考える。大昔のマシンは、クラッチがスパスパ切れるわけではないから、そもそも止まれない。ラジアルのトライアルタイヤも存在しないから、仮に止まっていいとしても再スタートはむずかしい。大昔のトライアルは、ノーストップであるベクシテノーストップだったのだと思われる。

今のトライアルは、誰が最初に築いたのかはわからないけど、止まって刻んで難所を克服していくというパターンになっている。その原形ができたのがエディ・ルジャーン時代で、ジョルディ・タレスの時代にそのパターンが進化して、今、トニー・ボウの時代になってさらに進化が続いているというところではないだろうか。

もちろんルジャーン時代以前だって、スタンディングスティルというテクニックはあって、マシンをぴたりと止める技術はトライアルの基本テクニックだった。しかしそれを、セクションの中で多用するという発想は、それまでのトライアルにはあんまりなかった。

ノーストップを推すする人は、ノーストップがトライアルらしいいさぎよい姿だからという。トライアルは失敗を許さない競技だ。ラインをまちがえたらそれでおしまい。まちがえたまま次のポイントに挑戦しなければいけない。しかし昨今のトライアルでは、適当にマシンを進めて、後はホッピングでマシンの位置を修正していく。こういったアクションを、いさぎ悪いトライアルとして見ていた長老たちは少なくなかったようだ。そして特にイギリスの長老には、そういう人たちが多いように思う。

しかし今回のプレスリリースでは「今のトライアルはかっこ悪いからノーストップルールにしました」とは言っていない。世界選手権への参加者が減り続けている現状を打破するためにルールの変更をおこなうといっている。ノーストップだと、参加者が増えるのか?

イギリス人の視点からすると、もしかすると参加者は増えるかもしれない。イギリス人はノーストップルールが比較的得意だ。長老たちがノーストップ推進派なのだから、末裔にもその血が流れている。そしてSSDTはノーストップだ。イギリス人の実力派ライダーでSSDTに出ないライダーはまずいないから、ここでノーストップの訓練はできている。イギリス人ライダーにとっては、これならおれでもチャンスがあるんじゃないかと思うにちがいない。

一方、過去、停止1点ルールが採用されたのも、広く参加者が集まれるようにという大義があった。ライダーからは、止まってようやく走れるセクションを、止まらずに走るなんて危険じゃないかという意見が出た。FIMはセクションはやさしくするから、とライダーを納得させたものの、FIMはセクションを査察はするが(その頃はもしかしたら査察という制度はなかったかもしれない)セクションを作るのは地元であることが多い。ものさしはいろいろで、中にはそれまでとまったく変わらないか、もっとむずかしい設定のセクションを作ってきたところもあった。

結局、そんなセクションを走れたのは、一部のトップライダーだけだった。うまい連中はどんなルールでもうまく、うまくないライダーはルールではなかなか救えないというのが、このときの教訓だった。

その後はイギリス人が切望?しているにも関わらず、ノーストップルールの話は立ち消えとなったままだった。止まる、という定義がむずかしいのも理由のひとつだった。動きを止めるというのは、タイヤの動きなのか、タイヤだったら前輪なのか後輪なのか、両輪をロックさせた場合はどうなるのか、真上に飛び上がっている時など、前方向には進んでいない瞬間もあるのではないか、等々。

一度、FIMでは機械によって停止を判定しようと試みたことがあった。フロントハブにセンサーを装着して、前輪が動きを止めると、ステアリングトップに設けられたインジケーターが赤く光る。動いている時は緑色に光っている、というしくみだった。(そのときの記事はこちら

でも実験は一度だけで終わった。機械自体の信頼性の問題もあったし、試合中にぶっ壊れたらどうするのかという問題もあった。ライダーにすれば「こういう機械がくっついたら、おれたちは前輪を回したまま停止する技術を身につけるさ」てなもんだった。トップライダーには、なにをもっても歯が立たない。逆に技術のないライダーにとっては、たいへんなことになる。

技術がないライダーがたいへんなのは道理だからそれでいいのだということなら、ルールを変更して参加者を増やそうなどと考える必要はないわけなので、FIMにはもっと深い思惑があるのだろう。

ノーストップルールの詳細はこれから発表されるというが、ホッピングによる位置調整はストップの範疇に入るのかどうか、など、採点が微妙になる予感はいっぱいある。今持っている技術を使えなくなるとしたら、トップライダーはさらに別の技術を開発してくるはずなので、下位ライダーとの差は、けっして縮まることはないような気がするのだけれど、どうなるだろう。

さて、このノーストップルール。日本ではどうなるのかという興味もある。過去、停止1点のルールは日本でも採用された。これはFIMのトライアル規則が改定されたからそれに倣ったということだった。今回は世界選手権がノーストップルールを採用するということなので、ヨーロッパ選手権やナショナル選手権はまた別ということになる。全日本選手権はノーストップルールとはならず、もてぎの世界選手権の時だけノーストップルールで戦うということになるのではないかと思われるけど、実はどうなるのかは、まだわからない。

FIMの発表を受けて、ノーストップルールについて昔話を含めて書いてみました。

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