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名前のお詫び

 新年早々、アホなことをやってお騒がせしました。ジェロニ・ファハルドの件
 藤田秀二氏から電話で「本人に確認したら“おれはファハルドだ”と言っていたので、統一したほうがいいと思う」と連絡をいただいた。たいへん申しわけございませんでした。面目ないです。


 しかして、外国の人の名前はむずかしい。こんなことを書くと、お騒がせのまちがいをしでかしておいてなにをぬかすかと言われそうだけど、外国の人の名前については、大昔から悩まされていた。
 最初は、正しい名前がわかんないってことだ。Freixaなんて、なんて読んだらいいかわかんない。ようやく英語の名前には慣れてきても、スペイン人やイタリア人は、また別の読み方スペシャルがある。今でも、あんまり縁がないドイツ人の名前はさっぱりわかんない。
 今、正しい名前と書いた。正しい名前というのは、たとえばFreixaだったらフレイシャ、ということだ。正しい名前の読み方はなにかと、よく雑誌屋仲間で情報交換したもんです。ケニー・ロバーツがフレディ・スペンサーと競り合っていた頃のことでした。
 その後、世界選手権の舞台と離れて、こういう話題は忘れていたのだけど、知り合いが世界GPのビデオ制作に携わって、難題をふっかけられて困っていた。二人の世界チャンピオン、Wayne GardnerとWayne Raineyのことだ。前者はオーストラリア人で、後者はアメリカ人。母国語はどちらも英語で、日本のレース業界はGardnerのことをワイン・ガードナー、Raineyのことをウェイン・レイニーと書いていた。今、Wikipediaを牽いてみたらここもこうなっていた。
 この原稿をアナウンサーに読ませようとしたら、映像業界に長いプロのアナウンサーは、ワイン・ガードナーと読むのを断固拒否したそうだ。ふたりは同じ名前であり、読みがちがうのはおかしい。ワインと読むのはオーストラリア訛りをバカにしてているとも思える。ふたりともウェインと読む、というのが彼の主張だった。一見、主張は正しいかもしれないけど、当時は「レース界の常識を知らない、困ったちゃんに仕事を頼んじゃったね」と酒の肴になったものだった。
 今思うに、正しいも正しくないもあるのかな。そもそも外国の人の名前をカタカナで表記し、カタカナを読んで発音するという事自体に無理があるんじゃないだろうか。ガードナーは自分のことをワインだというだろうけど、レイニーのことはなんと呼んでいたんだろう? 同じつづりなんだから、やっぱりワインと呼んでたんじゃないかなぁ。
 日本人にとって「ウェ」と「ワ」はまるで別の音だけど、英語圏の人にとっては同じなので、こういう話をしていること自体がなぞなんじゃないかと思う。
 たとえばドギー・ランプキンという人がいる。この名前はこういうものとして日本で流通しているけど、Doug・Lampkinという表記をみることもある。アントニオ・ボウをトニー・ボウと呼ぶみたいなもんだ。Dougはダグと書くのが一般的だけど、カタカナで読むと、ドギーとダグはずいぶん印象がちがう。困った。
 で。
 外国語の発音が得意ではない、といって発音記号を読むのも苦手のニホンジンとして、こういうカタカナ表記から、ほんものに近い発音を読み取ることができないかと考えた。たとえばドギーの場合は、ドギーとカタカナで読んでしまうとドギーだけど、ダグと呼ばれることもあるなら、ダギーでもよいのかもしれない。ドギーと言いながら、ドギーにも聞こえるように発音すると、ホンモノに近いのではないか。
 水のことはウォーターというけど、カタカナ読みでウォーターと発音しても、まず通じない。といって、カタカナ読みでワーラーと発音しても、やっぱり通じない。ウォーターと言いながら、ワーラーにも聞こえるような感じで言ってみると、ようやくほんもののWaterに近くなる(気がする)。
 日本語を使う日本人にとっては、外国の人の名前が固定化されないのはややこしい話だけど、よりホンモノに近い発音を日本の人に伝えるには、ひとつのカタカナ読みに固定しないほうがいいんじゃないかとも思うんだよね。たとえばコロメやフレイシャは、もてぎのプログラムやホンダのレース報告ではマーク・コロメ、マーク・フレイシャと表記されている。でもマークっていったらアメリカやイギリスの人の名前みたいだ。「marcって、なんと発音するの?」「marc」「マーク? マルコ? マルク? マルケ?」「marc」と埒が明かない問答がしばらく続いて、結局聞いている日本人であるこっち側が、マルケじゃないな、マルクかマークだけど、マルクに近いかなと結論を出して、自然山通信ではマルクと表記している。でも聞く人が聞けばマークに聞こえるかもしれない。少なくとも、カタカナ読みのマークでもマルクでもないのは明らかだ。ついでにいえば、フレイシャはフレクシャと発音する人もいる。チームメイトだった藤波もフレクシャと呼んでるから、そっちのほうがホンモノに近いのかもしれない。カベスタニーかキャベスタニーかという問題もある。統一しようとすると頭がこんがらがる。
 藤田さんにすれば「ニシマキの野郎、どうでもいいことを引っ張り出してきて、めんどくさいなぁ」と思いながら、グラナダの会場でファハルドに聞いてくれたんだろうと思う。申しわけない。
 スペイン人Joanは、スペインではホアン、カタルニア人だったらジョアンなんだけど、世界20カ国の皆さんが集まるキャメルトロフィーでスペイン人のJoanにおまえの名前はホアンなのかジョアンなのかと聞いたら、どっちでもいいよ、おんなじなんだと答えた。当のJoanがカタルニア人だったかどうかは把握してなかったけど、きっとあんまりこだわりのないカタルニア人だったのだと思う。カタルニア原理主義者だったらジョアンだと主張するだろうし、スペイン人だったらジョアンと発音する発想はないはずだから。カタルニア語というのは、バルセロナ周辺の、トライアルが盛んな地域ではイタリア語やフランス語より流通している言語だけど、スペイン全土的には、日本でたとえればアイヌ語か琉球語のような感覚らしい。カタルニア人でカタルニア語を話していても、カタルニア語が読めない人も、けっこういるようだ(アンドラの公用語はカタルニア語だけど、アンドラ新聞が読めないスペイン人はいたもんだ)。
 てなわけで、ファハルドとファジャルドは見た目には大きなちがいだけど、ぼくはいまだに、ふたつの表記はおんなじ音を無理やりカタカナ表記したものにすぎないと思ってます。もしかしたら、ファヒャルドってのもいいかもしれない。
 でも藤秀さんの指摘を受けて、ファジャルド事件は反省しました。なるべく混乱しないように、おとなしく世界選手権を伝えていかないといけないなぁと。
(といいつつ、自分ちでやってるクリーンアップトライアルですが、クリーンアップなのかクリーンナップなのか、表記するたびに悩んでます。とほほ)
写真は自然山通信によく情報を提供してくれるペップ・セガレス。カタルニア人。奥さんのベゴーニャさんも、同じ会社にお勤め。もうすぐ彼らはパパとママになる。

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