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ネジは古いのか

お気に入りの散歩道

 ペンタックスが、HOYAとのTOBを受け入れて子会社になったらしい。ペンタックスは、カメラ事業へのこだわりが大きかったらしい。ぼくにとっても、ペンタックスはカメラだ。生まれて初めて使った35ミリ一眼レフは、アサヒペンタックスKという1958年型だった。今でもポケットカメラはペンタックスの防水を使っている。
 でも本日は、日本経済やカメラ史について語りたいわけじゃないんだ。ネジを締めるという古典的なアクションについて考えてみたというお話。


 今はもうちがうけど、ペンタックスといえば(正確にはアサヒペンタックスと称してました)、M42プラクチカスクリューマウントだ。アサヒペンタックスは日本で最初に一眼レフを市販した会社で、世界で初めてクィックリターンミラーを一眼レフに取り入れた会社でもある。クィックリターンじゃない一眼レフというのは、いまでもハッセルブラッド(女の子のヌードとか撮るときにはこういうカメラが幅を利かせる)とかはそうなんだけど、写真を1枚撮ると、ファインダーから像が消えてしまう。悲しい。画像を見るには、巻き上げをして、シャッターをチャージしてミラーを元の位置に戻さないといけなかったんだ。クィックリターンミラーが開発されたあとも、レンズの絞りは自分でセットしなければいけなかった。今みたいに、いつでもレンズの最大口径でプレビューが見られて、写真を撮るときにだけ絞りが絞られるシステムは、またもうちょっとあとのことだった。調べたら、自動絞りを製品化したのもペンタックスだった。ペンタックスえらい。
 あれ? すっかりカメラ史になってる。もうちょっと続けちゃおう。
 で、この古きよき時代のペンタックスが採用していたスクリューマウントってのは、レンズを交換するとき、レンズをぐるぐる回してねじ込みでボディに固定するってやり方だった。キヤノンKissとかニコンD40とか使っている人は、ためしにレンズをはずしてみてください(ほこりのないところでやってね)。ボタンひとつ、レンズをくぃっと1/4回転ほど回すと、レンズとボディがばらばらになるはずです。それに対してスクリューマウントは、ぐるぐるぐるぐる。何回回すのかは、調べがつかなかった。ぼくの昔のカメラは、あるとき大事に使ってくれそうな人に無期限に貸してしまったから、今手元になくて検証ができない。残念。
 中学校のときに、当時ペンタックス最上級機種のSPってのを買った。その時説明書にこんなことが書いてあった。スクリューマウントについての記述だ(もちろんうろ覚えにつき、正確ではない)。
「スクリューマウントはネジが摩耗してもさらにぐるぐる締め込めば規定位置にセットできるので、常にきれいな写真が撮れます。機構が摩耗するとなにが写るかわかんないバヨネットマウントとかより優秀です」
 これは負け犬の遠吠えなんじゃないかなぁと思ったんだけど、確かに、バヨネットマウント(ニコンなどが採用。ニコンは一眼レフ開発当時から今にいたるまで、基本マウントを変えない唯一の会社になった)とかスピゴットマウント(キヤノンFDのマウント。ぼくはこのマウントと、この時代のキヤノンが好きだ)では、ガタがでるとレンズそのものがガタガタしてくるリスクがある。スピゴットはそれでもレンズを締めつけるメカがあるからいいんだけど、キヤノンもバヨネットに未練があったらしく、FD後期型ではスピゴットをバヨネット風に改変してしまい、EOSになって完全にバヨネットにしてしまった。いや、バヨネットがいけないわけじゃないんだけどね。
 だからカメラ史ではないといっているのにだ。実は今日インスタントコーヒーを飲もうと思って、ふと気がついたわけです。この前まで飲んでいたのは、フタをくるくる回して開け閉めしていた。今飲んでるのは、フタを1/4ほど回すと開け閉めできる。バヨネットなんだね。
 ただ、なんだか頼りないの。ほんとに締まったのかな、不意に開いてしまわないのかなって。いっしょに使っているクリームのビンはスクリューマウントだから、ぐるぐるぐるぐる。でも確実だし、軽くクルクルっと回せば、あっという間に開け閉めできる。
 スクリューマウントがバヨネットマウントに取って代わったのは脱着が簡単で確実だったからなんだけど、ほんとに締まってるのかなと何度か確認するより、ネジを一発で確実に締めたほうが早いんじゃないかって、コーヒー飲みながら(今もそのコーヒーを飲んでいる)考えたわけだ。
 そういえば、レンズのフードがあるでしょ。レンズの前につけるよけいな光線を遮るやつ。あれも、昔はネジで締まっていたんだけど、最近のはほとんど全部バヨネットだ。最近のは丸くないから、ぐるぐる回して方向がちがっちゃうと困るという技術的理由もあるんだろうけど、でもぼくはバヨネットのフードがきらいだ。だって、すぐに落っことすんだもの。
 バヨネットだから、少しきつく締まっているとはいえ、1/4回転もするとはずれてしまう。山を駆け回ったりしていると、ぜんぜん気がつかない。これがねじ込みだったら、ネジが完全に外れるまで、ぐるぐるぐる、くらいはしないといけないので、発見するまでに猶予がある。バヨネットフタのコーヒー瓶をひっくり返してコーヒーをこぼしたことはまだないけど、レンズのフードはもういくつもなくした。
 1秒コンマ1秒を争うレースの世界では、車輪の脱着にクィックリリースってのを使っている。耐久レースでクィックリリースが登場してきたときには革命だったなぁ。でも、車輪の脱着をバヨネットにしているレース屋さんはない。どう考えてもあぶない。
 そういえば、トライアルマシンの燃料キャップは、いまだにぐるぐる回すやつが多いですね。簡単に開くということは、開いてほしくないときにも簡単に開くということだ。トライアルメーカーは、とことんユーザにやさしくないから、ワンタッチでガソリンキャップが開くようにしようなんて、これから先もそうそう考えないにちがいない。
 簡単にくっつくというのは、簡単にはずれることである。ネジの起源は、確かな記録が残っていないらしい。昔の人が大事に育てた技術は、やっぱり大事にしていかないといけないなぁと思った初夏の物思いなのでした。
 写真は、お気に入りの散歩道。この先、いい感じで湿っていて、ほとんど人が通らないから、あっという間にコケがびっしり。オートバイなんかで走ったらあっという間に壊れてしまう微妙な自然だけど、オートバイならずとも、人間ひとりが歩くのも、なかなか気をつかう散歩道なのだった。

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