© トライアル自然山通信 All rights reserved.

TYS300Rデビュー
いよいよ全日本選手権開幕戦を翌日に控え、これまでずっと未発表だった野崎史高用TYS300Rが初めて姿を現した。
ヤマハチームとしては久々の2ストロークエンジン、そしてエンジンはじめ、このマシンの基本パッケージは、ヤマハ製ならずスコルパ(シェルコ)製である。
ヤマハチームが走らせる2ストロークと4ストローク(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームの黒山健一)、さて、それぞれどんな活躍を見せてくれるのか、乞うご期待だ。
ヤマハ製の、最後のトライアルマシンはTYZ250。水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載したアルミフレームマシンで、93年にパスカル・クトゥリエのライディングでチャンピオンをとっている。その後、全日本のタイトルは成田匠、藤波貴久、黒山健一とベータライダーに独占され、新時代の幕開けとなった。
それから7年が過ぎて、ヤマハ製2ストロークエンジンがトライアル界に再び姿を現したのは、海の向こう、フランスはスコルパのニューモデルのパワーユニットとしてだった。スコルパSY250Rと命名されたそのマシンは、同時にヤマハTYS250Rとして野崎史高、渋谷勲、成田匠のライディングによって全日本を走った。2002年には、野崎史高がそのマシンで日本人初のジュニアチャンピオンとなっている。
2007年、スコルパは当時の流れである4ストローク化に際し、トライアルマシンとしては意表をつくDOHCの5バルブエンジンを搭載した。ヤマハのモトクロスやエンデューロマシンに使われていた先進技術搭載のエンジンだった。この年からスコルパ・ヤマハに乗り始めた黒山健一は、乗り換えた緒戦の関東大会でオールクリーンを達成している。このときのマシンが、2ストロークのスコルパSY250Rだった(黒山が正式にヤマハチーム入りをしたのは2008年からだった)。
以後、黒山と野崎の乗るヤマハTYSはホンダの小川友幸を相手に、ときに苦戦をし、ときに全戦全勝をしながら戦ってきた。DOHCの圧倒的パワーを武器に、しかし重量的なハンディは否定しようがない4ストロークマシン。しかもそのエンジンは生産を中止されて久しい絶版パワーユニットとなっていた。
その間、スコルパ社は経営問題からシェルコ社の傘下となり、シェルコ製スコルパとして再出発を果たしていた。そしてスコルパは、シェルコ製2ストロークエンジンを搭載したモデルを発表し、世に出した。今シーズン、野崎史高が乗るのは、このシェルコ製スコルパをヤマハ・テクノロジーがスープアップしたものである。
マシンが届いてから、まだまだ日が浅く、熟成や乗り込みはまだこれからと思われるが、プラクティスエリアでの野崎は、軽快そうにニューマシンを操っていた。
燃料タンクにはヤマハの音叉マークが光る。エンジンが、フレームがスコルパ製とあっても、それはまぎれもないヤマハレーシングマシン。黒山はヤマハ製エンジンにこだわりたいということだったが、野崎のこの新しいヤマハトライアルマシンが、トライアルに新しい未来をつくってくれる日にも、期待したいものだ。