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若手たちの開幕戦
3月8日、全日本選手権開幕戦では、若者のたちの活躍も目立っていた。藤波貴久の甥である氏川湧雅の存在は光っているが、それだけではない。全国各地で、同年代の若いライダーの進出が目立ってきている。こういってはたとえが悪いかもしれないけどトライアルにも百匹目の猿現象があるのではないかという気がする。
国際B級クラス、表彰台の中央にたったのは山崎頌太だった。山崎は、一昨年のトライアルGC大会で国際B級に昇格した。去年の全日本では慣れるまでに少し時間がかかったか、A級昇格にはポイントが足りなかった。しかし今シーズンはゼッケン1番である。あとちょっとで、国際B級昇格1年目で国際A級昇格ができる位置にまで来ていた最年少ライダーだった。
ゼッケン1番だし、まわりの若手仲間からも、優勝するのは頌太だ、と茶化されていた。それを照れながらも受け止めていた試合前の山崎は、そこで必勝を誓っていたのではないか。勝利へのプレッシャー、仲間からのプレッシャー、いろんな重圧は、すべてはねのけることができた。
昨年は、3位が最上位、そして4位が1回。今年は開幕戦からシーズン1勝目。A級昇格を1年遅らせたのは、このクラスでチャンピオンをとるため、という運命なのかもしれない。
3位になったのは、ゼッケン7番の岡村祐希だった。ハングリーな感じがなく(いまどきの若者にはハングリー精神をあふれさせている者は少ないけど)淡々と戦いに挑んでいる。父親は今回のA級優勝者の岡本将敏。血統書は確かだが、親子ともライダーだから、親がつきっきりで試合をリードしていくというよそのチームとはちょっと様子がちがっている。そんな中、岡村は自分のペースで成長を続けている。今回は岡村にとって自分の庭のような真壁での戦いだったから、次なる岡村のトライアルは、興味深い。
岡村に続いて、4位入賞したのは沖勇也。沖は、第5戦中部大会で2位に入ったことがあるが、最終戦に欠場して、ポイントを伸ばすことができず、山崎に次ぐ、ランキング7位で国際B級に残った若手だ。今シーズン、沖の活躍もまた、若手のがんばりを牽引する原動力の一人となるにちがいない。
これら昇格組の若手ライダーと同時に、すでに国際B級として走っている先輩たちも、真壁では光っていた。倉持晃人は、第4戦北海道で3位に入りながら、欠場もあってランキング13位で昨シーズンを終えていた。兄俊樹とともに、冬はスノーモビルに出場していて、開幕戦の1週間前まではスノーモビルに気持ちを集中させていた。北海道の遠征から帰ってきて、いきなり半年ぶりのトライアルマシンにまたがってこの成績だった。今年の倉持、きっとおもしろい。
倉持の次のポジション、7位となったのが中村道貴(まさたか)。ここまで上位入賞がなかったライダーだが、2015年は最初からこの勢いだ。まだまだ上位を目指せる勢いなので、こちらも楽しみだ。
この他、今年から国際B級に昇格した若手は少なくない。今回は上位には入れなかったが、いつも練習している仲間が上位に入っている姿に、きっと勇気をもらっているはず。今年の(今年も)若手ライダーの活躍は、見逃せない。
シーズンの流れとして、開幕戦あたりはベテランが強く、体力的に厳しくなる夏場あたりから若手が台頭してくるのがこれまでの例だった。才能ある若手が、ベテランをしのぐ活躍を見せることはあったが、全体の流れは変わっていなかった。しかし今年は、若手が集団で上位を占める勢いを感じさせる。
国際A級では、氏川湧雅が4位に入った。トライアルGC優勝から国際B級チャンピオンとエリートコースまっしぐら、世界チャンピオンの血統を継ぐライダーだが、開幕戦から4位はなかなかの結果になった。
前日の練習中でアシスタントを務める予定の祖父藤波由隆さん(藤波貴久のお父さん)が負傷、会社の予定があるために今シーズンは柴田のアシスタントをやめることになった田中裕人に急きょ声がかかって、田中裕人アシスタントで開幕戦を戦うことになった。その甲斐もあってか、1ラップ目は3位。2ラップ目にスコアを落として4位に落ちてしまったが、勝てる実感はつかむことができたという。
今回、国際A級スーパーから白バイ隊員に転職してトライアルの現場から遠ざかっていた西元良太が復帰、氏川と前後して戦いを進めていた。氏川は西元の調子がいいのを見て、これをターゲットとしてトライを進めたが、まだ上位につけるライダーがいたということだ。今回の氏川は、A級ルーキーだったからスタート順も早かったが、これで次回からは上位陣としてのスタート順を得ることができる。いよいよ国際A級初優勝の日も近い。田中裕人は、氏川と由隆さんの要請を受けてスケジュールを調整、今シーズンは引き続き氏川のアシスタントを務めることになったという。
国際A級では、いまのところ目立った若手は氏川だけだが、氏川とB級チャンピオン争いを演じた久岡孝二や最終戦でランキング3位となった木本真央、A級2年目の倉持俊輝など、今回は20位以降で苦しんだ若手も、今シーズンのこれからがあなどれない。