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第2戦は小川友幸が見事な勝利
4月19日、全日本選手権は第2戦近畿大会。今回は小川友幸(ガッチ)が貫録を見せつけての勝利。2位には2ストロークマシンを乗りこなしてきた野崎史高が入り、大きなミスがいくつかあった黒山健一が3位。まだまだランキングを云々する時期ではないが、ポイントテーブルのリードは2戦目にして小川が躍り出ることになった。
第2セクションの最後の登りで足が出て1点を失った小川は、これはまた前回真壁の再現なのかと不安に思った。開幕戦では、こういう細かいミスが1日中ついて回り、それを挽回するためにクリーンを狙って5点となる悪循環が発生した。たかが1点ではあるが、小川にとってはされど1点。
しかしその心配は今回は杞憂だった。第2セクション以降、小川のパンチカードにはきれいにクリーンが並んだ。第4セクション、第5セクションと、トリッキーなテクニックを要求される入口から、時間のないセクション後半部に後輪が流れやすいさらさら斜面が配置されていて、黒山もここで3点、5点と失っている。さらに凶悪なヒルクライムの第7セクション、3年目となってヒルクライムそのものは攻略方法が見えてきたようだが、最後のゲートを抜けるのがややこしい。ここで1点を失うライダーは少なくない。
そんな中、小川の1ラップ目は、第3から第9までをすべてクリーン。下見をした時点で、オールクリーンは可能、と踏んでいた小川。第2の1点と、最終10セクションでの3点は残念だったか、1ラップ4点は小川だけの好スコアだった。
今回の小川のライバルは、開幕戦の勝者の黒山ではなく、野崎だった。黒山は第3で5点を取ると、続く3セクションだけで13点を失い、トップ争いからは大きく遅れてしまっていた。終わってみれば、3ラップともに一桁減点でまとめられたのは、小川と野崎だけだった。それでも内容を見ると、黒山にも野崎にも、一度もクリーンできていないセクションがあった。黒山の第5セクション、野崎の最終セクションがそれだ。小川は最終セクションこそ1度だけだったが、他の9セクションは2回ずつクリーンをしている。1ラップすべてをクリーンするのは、充分に可能性があった。
2ラップ目以降、もちろん勝負は続いているのだが、小川の勝負は、ラップオールクリーンに集中していった。2ラップ目は、第4、第5で3点を失って、ラップオールクリーンはならなかった。そして3ラップ目、今度は第3で1点をついてしまった。それなら、その1点を守り切ってやると、小川の3ラップ目は1ラップ目にも2ラップ目にも増して気合いの入ったものとなった。
最終10セクション。後輪が簡単に横を向く山砂の浮いた斜面を、右に左に切り替えして登っていく。そして最後に高くはないが処理のむずかしい岩を越える。その最後の岩だった。1点ならば確実に抜けられる。でも、がまんをしてしまった、と小川は語る。1点を守りきらんがため、ぎりぎりまで足を出さなかった結果、最終セクションの小川は、5点となった。
ふたつのSSを残し、小川と野崎の点差は3点。簡単に逆転ができる点差だ。けれどこの日、小川の思いは優勝争いや野崎のことではなく、目前のセクションに集中していた。終わってみれば、SSもふたつともクリーンをしたのは、小川だけだった。
2位、そして1位。開幕戦勝利の黒山が3位となったことで、小川は2戦目にしてランキングトップを奪取して、2点のリードを持っている。
「まだまだ。2点のリードは、次に2位で負ければひっくり返される点差。あってないようなもの」
一昨年、ランキングポイント同点でのチャンピオン争いを繰り広げた小川のタイトル争いは、まだまだ始まったばかりだ。