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黒山6勝目の全日本中部
黒山健一が、今シーズン5勝目をあげた。5勝1敗、3位が一度あるだけで、他はすべて勝利で飾っている。それでも黒山のタイトルは今回は決まらず、チャンピオン決定劇は最終戦に持ち越されることになった。黒山のポイントリードは15点。最終戦では、リタイヤでもしなければタイトル獲得は安泰という計算となる。
優勝争いは、黒山と小川友幸の一騎打ち。最終的には同点クリーン差での黒山の勝利だった。3位は野崎史高だが、前戦に優勝した野崎も今回は不調をきたしていて、トップ二人には大差をつけられた。
今回、渋谷勲が久々に全日本に復帰した(全日本は2007年近畿大会以来、最後に試合に出たのが2007年世界選手権日本大会だった)。マシンはホンダでぱわあくらふとからの参戦となった。渋谷はそこここでさすがのうまさを見せたが、久々の全日本と、なにより4ストロークエンジンの扱い方がまだ不慣れで5位止まり。それでもチームメイトの田中太一をおびやかさんばかりのスコアを残した。
結果の詳細は自然山リザルトのIASクラス結果表をごらんください。
試合速報は自然山モバイルの速報ページをどうぞ。
序盤から、切れ味のいい走りを見せたのは黒山と小川のふたりだった。野崎や田中太一は、キーとなる大岩を攻略できなかったりラインを乱して失敗につながるなど、序盤から減点がかさんで優勝争いからは早々に脱落してしまった。要所要所ではトップの二人をしのぐライディングを見せるのだが、試合に勝つには、別の要素もからんでくるようだ。
野崎以下が失点を重ねている間に、黒山と小川は確実にクリーンを重ねていく。第7セクションまで、小川は5点なし、1点と2点がひとつずつ。黒山は5点と3点と1点がひとつずつ。ここまでは6点差で小川がリードをとっていた。
小川の歯車が噛み合わなくなってきたのは第8セクションだった。ここは岩を越えて短い助走から土壁を登る設定で、まず小川が登りきれなかった。そのあとトライした黒山は、登りざまにゲートマーカーに触れてしまった。
全日本では(というか、日本のルールでは)ゲートマーカーはさわるだけで5点になる。ヨーロッパとはちょっと解釈がちがうのだが、向こうは向こう、こちらはこちら。ところがこのとき、セクション出口ではクリーンにパンチをしたらしい。これで小川のリードは、たった1点に縮んでしまった。試合後、このクリーンは5点に修正されることになるのだが、以後、小川は5点のビハインドの呪縛に縛られながら試合を進めることになった。
中部大会は、IBからIASまで全クラスが12セクションを2ラップしたのち、IASだけはSS(スペシャルセクション)を3セクションこなす。中部大会は、以前から15セクション×2ラップの“世界選手権方式”で大会を運営していたのだが(他の大会は、10〜11セクション×3ラップが一般的)、このシステムにSSを導入してアレンジしたのが現在の中部システムだ。
持ち時間5時間半はいつもと変わらずだが、最後の3セクションは難度の高い、この日初めて走るセクションが並んでいる。一度走ったセクションを猛然と駆け抜けて持ち時間を間に合わせるというわけにはいかない。いつもとは少し異なる持ち時間管理が必要になるのも、中部大会のおもしろさのひとつだ。
ただ、前半の難度が高いこともあって、持ち時間はどうしても前半で消耗しがちになる。結局、1ラップめの3時間半の持ち時間に間に合わなかったのは5名。尾西の4点(4分)を筆頭に、小川毅士3点、黒山と小川が2点、そして田中太一が1点のタイムオーバー減点を喫した。
2ラップめも、試合の流れの多くは変わらずだった。野崎は少し調子を取り戻した様子だったが、それでも1ラップめの大量減点もあってトップ2に切り込んでいくまでにはいたらず。太一も1ラップめを現状維持するのがいっぱいで、野崎に勝負を挑んでいくまでには届かなかった。トップ争いは、黒山と小川以外には存在しない。
1ラップめが終わって、第8セクションがクリーンとなっている修正前の段階で、黒山が小川に1点リードという情報だった。小川は10セクションで2点とったので、それまでの小川1点リード(修正後のスコアでは、この時点で6点リードだった)が逆に1点ビハインドに切り替わっていたのだ。
第2セクション、小川がクリーンに対して黒山が1点、これでふたりは(その時点での計算で)同点。さらに第5セクション、小川が2点に対して黒山が5点。小川のリードが3点に広がった。
しかし鬼門は、やはり第7、第8とつづく土壁のヒルクライムだった。1ラップめには1回の足付きでクリアした第7セクションでの小川だったが、2ラップめは5点。対して黒山は1点。再び黒山が1点リードをとる。
さらに次の第8セクション。今度は黒山もカードに触ることなくクリーン。そして小川のトライ。小川は岩を越えてから加速して登る土壁の頂点でバランスを崩してしまった。下から見ると、ハンドルが地面に接地(これは転倒)したかにも見えた。出口まで2メートル、小川がマシンを進め、セクションアウトしようというとき、1分間経過を知らせる笛が鳴った。
出口のオブザーバーは1点をパンチしたが、今度はすぐに本部に修正依頼が飛んで、小川のここでの減点は5点となった。タイムオーバーという判定だった。判定は絶対だが、この日の小川には、つくづく第8セクションが鬼門となってしまったことになる。
黒山との点差が6点に開いた。後半のセクションは、前半に比べると確実に走れるものが多い。逆転はむずかしそうだ。その後半部分の11セクションで1点をとった小川は、12セクション2ラップを終えて、黒山に7点のリードを奪われていた(計算だった)。残りSSの3セクションで逆転できるかどうかは、微妙なところだ。
大岩に飛びつくSSの第1セクションはふたりともクリーン。つづくふたつめは、最後のドラム缶への飛びつきよりも、前半部分の岩登りのほうが難所だった。小川はここでラインを大きく乱して3点。黒山のリードは10点に広がった。
ところがその直後、小川がミスをしたその同じところで、黒山が5点となった。その差、5点(実は、この時点で二人は同点になっていたのだ)。SSのみっつめは、登っていく高さは高いが、確実にクリーンできるセクションでもあった。ほとんどのライダーがここをクリーンして、勝負は終わった。黒山は5点差で勝利を確信し、小川は負けを認めていた。
黒山の減点が修正されて、実は黒山の勝利が小川と同点、クリーン差での薄氷を踏む勝利だったことがわかったのは、ゴールしてから1時間ほどが経ってからのことだった。
全日本に復帰した渋谷は、ぱわあくらふとからの参戦で、現在はぱわあくらふと近くで独り住まい。ぱわあくらふととしては田中太一、尾西和博に次ぐ3人目のIASライダーとなるが、田中、尾西はHRCクラブぱわあくらふと所属で、渋谷はクラブRIKIZO所属。最終戦近くになってからのチーム入りだから、HRCからのサポートが受けられないわけだ。渋谷はIASに残留して2009年に全日本を走りたいと語るが、2戦で獲得したポイントでIASに残留可能かどうかを含めて、渋谷の今後についてはもう少しの間、未確定がつづきそうだ。
中国大会でマインダーのお父さんが負傷、試合をリタイヤした坂田匠太は、そのお父さんとともに戦列に復帰した。お父さんの負傷はかなりの重症だが、指の関節を失わずにすんだということだった。
指の負傷情報としては、井内将太郎が競技中に指を骨折した疑いありとのことで、競技は続行したが、負傷者リストに名を連ねることになった。
結果の詳細は自然山リザルトのIASクラス結果表をごらんください。
試合速報は自然山モバイルの速報ページをどうぞ(現場からの速報なので、点数など不正確ですが、臨場感をお楽しみください、ということで……)。
●国際A級
シーズン4勝をあげて、この大会で9位に入れればチャンピオンが決定するという西元良太を軸とした国際A級。今回は、加賀国光、寺澤慎也といった、なつかしい名前がエントリーリストに並んでいる。ポイントランカー予備軍のIAライダーにとっては、目の上のたんこぶといったところ。実戦からは離れていても、いずれ劣らぬ強者である。
今回、IAのセクションのうち、3つがスーパークラスと同じものだった。セクションの難度の設定は、いつの時代でも議論の焦点となる。最近では、ライダーの高齢化とより多くのエントリーを集めるために、IAやIBのセクションをさらに簡単にして危険度を減らしたらどうかという議論がある。一方、全日本選手権としての格式という点で、一定の難易度を守るべきだという意見もある。そういう点で、IASと同じセクションを採用した今回は、比較的難度が高い試合設定になったといえる。それでも、IASとIAのレベル差を客観的に比較できる機会はめったにないので、今回の3つのセクションはいい材料となった。
興味のある方は、第1セクション、第9セクション、第12セクションの、IA、IAS、それぞれの減点を見比べてみてください。IAの結果表では、全体に減点がかさんでいるが、それでも全員が5点というわけでもなく、IASが全員クリーンしているわけではないところが興味深いと思う。
さて今回は、チーム三谷の柴田暁が初優勝。成田匠、三谷英明、小森文彦らがIAを走らなくなったのが要因なのか、今シーズンは若手ライダーが頭角を現すよいチャンスとなった。西元良太もそうだし、次に名乗りを上げたのが柴田だった。ここまで、2位と3位と表彰台にのぼった経験が一回ずつある。いよいよ表彰台の中央にのって、ランキングもふたたび本多元治を逆転して2位に浮上した。
今回の柴田は、1ラップめから他を圧倒していた。1ラップめ6点はIAクラスのベストスコア。1ラップめに2位につけた本多が15点だから、その絶好調ぶりがうかがえる。今回の柴田がすばらしかったのは、1ラップめのこの好調で勝利を意識しすぎることなく、冷静に試合をまとめていったことだ。2ラップめにやや減点を増やしたが、こんなふうに自分をコントロールして試合が進められたら、西元に続く若手IAの出世頭となるにちがいない。
2位に入ったのはIAS経験者の佃大輔。1ラップめの10位から2ラップめに追い上げてこのポジションを得た。ベテランの面目躍如といったところだ。
3位斉藤は、柴田と並ぶ次世代をになうべき若手のホープ。ベテラン勢に負けじと、こういった若手が台頭してくると、日本のトライアルもおもしろくなる。
そして4位に、西元良太が入った。1ラップめはふたつの5点、3つの3点、ふたつの2点で11位と低迷したが、2ラップめにまずまずの調子を取り戻した。調子はいいときも悪いときもある。
「勝てなかったとネガティブに評価するより、2ラップめに自分のペースを取り戻せたところを自己評価したい」
と西元は今回の試合を振り返る。そして西元は、この4位で2008年の全日本チャンピオンを獲得した。1戦を残して、ランキング2位に浮上した柴田に26点差。堂々たるタイトル獲得だ。西元にすれば、1996年のバイクトライアル・ベンジャミンクラスチャンピオンに次いで、自身ふたつ目のメジャータイトル獲得となった。
*国際A級全ライダーのセクションごとの結果は、自然山リザルトのこちらをごらんください。
◎国際B級
宿敵上福浦とのシーソーゲームに、前戦中国大会で決着を付けてランキングを10点リードとした小野田は、ここでもまたまた勝利して3連勝達成で今シーズン4勝目。今回4位となった上福浦との間には17点のリードを築いた。タイトルは、ほぼ確定的といってもいいところまでこぎつけた。
次戦、最終戦SUGOでは、小野田は13位に入ればタイトルを決定する。小野田に対して逆転チャンピオンの可能性が(計算上)残っているのは上福浦だけ。この場合も、小野田が14位以下となって、かつ上福浦が優勝するのが条件となる。上福浦が2位以下なら、小野田はリタイヤしてもチャンピオンになれる計算だ。
しかし今回のトピックスは、突然2位に入った松岡一樹だった。しかも1ラップめには、小野田すら抑えてトップに立っていた。今シーズンのここまで、表彰台はもちろん、ポイント獲得圏内にすら入ったことがない松岡のいきなりの表彰台躍進は明るい驚きだった。
しかし実は、松岡の躍進は偶然とばかりには言い切れない。去年、MFJが将来を見据えて導入したエキシビジョン125ccクラス、これにただひとり、黙々と参戦していたのが松岡だった。去年の松岡はNAライダーだったから、現実的な問題としてIBセクションを走るのは厳しかった。しかし若い松岡は、全日本のIBセクションを、着実に自分のものとして成長してきたのだろう。いよいよIBクラスに参戦した2008年は、参戦3戦めにしてポイント獲得。と同時に表彰台に登った。
今回、意外な難セクションだったのが土手の法面を登っていく第1セクション。松岡は、ここをただひとり別のラインを通って確実な3点で抜けていた。自分自身のライディングスタイルを持つかどうかは、飛躍の大きな鍵になるといわれている。松岡ははたして、今後どんな成長を遂げるだろうか。

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