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ヤマハ三冠(と黒山健一)
2008年シーズン、全日本トライアルは黒山健一がタイトルを奪還して再びチャンピオンに返り咲いたが、このシーズン、ヤマハ発動機は、主要二輪スポーツの3種目をすべて勝ち取るという偉業を達成した。
これを機に、ヤマハが3ライダーをSUGOに集めて報道陣に三冠の報告をした。写真は左からモトクロスIA1クラスチャンピオン、成田亮(あきら)選手、ロードレースJSB1000チャンピオン、中須賀克行選手、そしてトライアルIASチャンピオン、黒山健一選手の3人。
そして当日はYZF-R1の試乗などもおこなわれたのだが、雑誌屋さんやロードレースライダーが目を輝かせたのは、彼らには珍しい催しだった。
おこなわれたのは「黒山健一スクール」。TY-S125Fを貸してくれて黒山健一が教えてくれるという、一般ファンには「ずるーい」イベントが、集まった報道陣を相手に繰り広げられたのでした。
当日はなんと前日に初雪が降るというすばらしいお天気で、ロードコースで1000ccのマシンを走らせるにはちょっときついコンディション。
でもトライアルコースをつるつるどろどろ走るには、これもよきかなの絶好のコンディションだった。
午前中は、オフロード系の雑誌編集者さんたちが生徒さんとなった。最近のオートバイ雑誌のみなさんはオートバイに乗らない人が増えているのだけど、オートバイには毎日接しているはずの編集者のみなさんがこんなふうに(けっこういい大人もいたけど)目を輝かせてオートバイの乗り方を教わっている図というのは、たいへんほほえましく、うれしいものだった。
最初は黒山健一について、SUGOの中杉のトライアルコースをぐるぐる。解説を聞きながら8の字が書けるようになると、次には丸太越えにも挑戦したりした。
講習中の黒山先生にちょっとおうかがい。
「こういう、トライアルまるっきりやったことない人を教えることは、よくあるんですか?」
「ヤマハの会社の人たち向けにやったりしています。年に数回ですが」
「こういう場合は、スクールのメニューはどんなふうに組むんですか?」
「今日みたいなところからですが、スクールというより、オフロードとトライアルを体験してもらうというのがメインとなりますね、やっぱり」
というわけで、朝のご挨拶でも木村治男さんが語られたように
「今日は本格的にトライアルをやるとか教わるというより、トライアルの楽しさを知ってもらう日にしたい」
というそのとおりのメニューで進められたわけでした。トライアルぞっこんで毎週トライアルマシンに乗っている人にすれば、8の字と丸太越えなんてトライアルの楽しさのうちには入らないだろうと思うかもしれないけど、みんな実にうきうきとオートバイを走らせていたのが印象的だった。
「トライアルって、オートバイの基本なんですねー」
と、雑誌に山ほど記事を書いてきたようなジャーナリストが、白い息を吐きながら今さらのように感想を語るのも、ほほえましかった(実は不肖ニシマキも、雑誌屋として書いてきたことを、自分でトライアルするようになって、こういうことだったのかとあらためて感じ入ったりしているのでした)。
さて午後になって、午前中に1000ccマシンに試乗してきた人たちがやってきた。北川圭一さんと丸山浩さん。丸山さんは雑誌やテレビにも登場する国際A級ロードレースライダー。北川さんは05、06年の耐久世界チャンピオン。
外野からは見ているのはおもしろい。ロードレースの猛者たちは、午前中のオフロード雑誌社さんたちより、オフロード走行には慣れていないご様子。少し不思議なフォームでマシンに接している。でもそこはそれ、未知のものに飛び込む勇気というか、それを裏付けるオートバイの扱い技術はしっかりしているので、その結果、山の上から落っこちてくるシーンは、午前中よりずっと多く見受けられた。
上がってはいけない斜面を直登してしまった生徒さんを見た黒山健一が、すぐさまダッシュして助けに入ったのはすばらしかった。写真は、3メートルダッシュして助けにいったけど、しかし残念間に合いませんで、革つなぎのMさん泥にまみれるの1シーンでした。
全体に、トライアルを知らない人が丸太を越えられてうれしがっている(みんな、例外なく腕がパンパンになった、こんなに疲れるものだとは思わなかったとおっしゃった)のを見るのは、トライアル屋のひとりとして、たいへんな幸せだった。こんなふうにトライアルを接する機会が、もっともっとあればいいのだけれど。
最後に、生徒さんの中では異常にトライアルが上手なお一人を紹介します。成田亮さん。フルフェイスヘルメットをかぶっていて顔がわかんないけど、トライアルでおなじみの成田亮(りょう)さんではなく、モトクロスチャンピオンの成田亮(あきら)さん。
トライアルは一度やったくらい、と前歴を告白してくれましたが、本当かなぁ。確かに岩にフロントを当てて縮めてためて、なんてトライアル的なことはしないのですが、きちんと前輪をあげて岩にあたっていくという基本の走り方はさすがに脱帽でした。
ふつうなら、初心者はビビって立ち向かえない岩を登っていくから「さすがにモトクロスライダーは、あんな岩に向かうのもこわくないんですね」とうかがうと「こわいですよ〜」と返ってきた。ちょっと安心と同時に、こわいながらも正確にマシンをコントロールして向かっていける能力は、やっぱりふつうの人とはちがうのだと痛感したのでありました。成田選手は本場のスーパークロスに参戦した経験もあるから、やはり本場で頂点を走るとなると、マシンをきちんとあしらう技を会得する必要があったのかもしれませんね。
黒山選手に、成田選手のかっこいい写真が撮れてしまったから、もっとかっこいいことをしてくださいとお願いしたら、今日は成田選手に譲りますといわれてしまったので、今日は黒山選手の走っている写真はなしにしておきました。
そうそう、最初の写真には黒山健一号のTYS250Fが写っていますが、こちらの試乗はなかった。黒山号はライダーの好みに合わせてなかなか乗りにくい仕様になっているので、特に初心者のみなさんにはお勧めできないというわけです(黒山選手の好みがそうなのであって、野崎選手のは乗り気やすいらしい、と以前野崎選手が言ってた)。ちょっと乗りにくいチャンピオンマシンと、誰でも乗れて誰でも楽しい125F。このコントラストが、今のヤマハトライアルの魅力でもあるのかもしれません。ヤマハはモータースポーツ三冠を達成したけど、トライアルではトップクラスと底辺と、まず二冠達成というわけでした。
トライアル初体験のみなさん、ぜひまたどこかで、お会いしましょう。

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