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小川友幸開幕2連勝、ぶっちぎり
開幕戦を勝利した小川友幸は、第2戦名阪スポーツランドでも勝利をおさめた。序盤、中盤は黒山健一と大接戦だったが、2ラップ目にリードを広げ、最後は大差での勝利となった。
天気予報は雨風ともに強く、しかし昼過ぎには雨が止むというもの。しかし予報はいいほうに外れて、ウォーミングアップを終える頃には青空も見え始めた。その代わり、今度は風が出てきた。風はけっこう強烈で、台風並だった。
セクションの配置やアウトラインは昨年までと同様。第1セクションでウォーミングアップをしたあとは、何セクションばかり。8セクション3ラップとSS(スペシャルセクション)ふたつという試合のシステムも例年通りだ。
最初の難関は第2セクションだった。壁に飛びついて上りきるヒルクライムが2本。1ラップ目は、誰一人攻略できず。小川友幸(ガッチ)と黒山健一の二人だけが、一本目のヒルクライムを上りきって、しかし二本目ではじき返されている。
第3セクションも、ほぼ直角の絶壁登りが厳しい。次々にはねかえされる中、小川毅士がここを1点で抜けきった。続いた野崎史高は、おりからの強風でラインが飛ばされたか、予定より厳しい斜面を上がってしまい、真っ逆さまにたたき落ちてしまった。野崎が落ちたところにマシンが降ってきて、野崎はハンドルで足首を強打。以後、出血を無理やりおさえ、痛みと戦いながら試合を続けることになった。
第3セクションは黒山が1点で抜け、ガッチは3点。黒山と毅士が6点でトップ、8点のガッチがこれを追うという展開となった。
第4セクションは、岩から崖に飛びつく入口が派手ながら、正否の焦点は出口の斜面。さらさらさくさくの土がライダーの行く手を阻む。上りきれたのはガッチだけ。これで黒山、毅士、ガッチが11点で同点に並んだ(厳密には1点が少ないガッチは3位)。
第5も同じように出口の登りがさらさらさくさく。ここではガッチが見事なクリーンをたたき出し、黒山、野崎、柴田が3点で抜けている。これでガッチが単独トップだ。
第8セクションは本部前の岩盤とそこに続くコンクリートの一本橋。野崎が5点、柴田が3点、毅士が2点、そして黒山がクリーン。ところがここでガッチが5点となってしまう。タイムオーバーだった。これでまたトップは黒山のものとなった。
第9セクションは、これもそそり立つ崖に向かって上っていく。かつては難攻不落だったこの崖も、いまやトップライダーにはクリーンの出るセクションになった。ガッチ、野崎、柴田がクリーン、黒山は1点。10セクションは毅士が5点となり、これで1ラップが終了した。トップは黒山で15点、2位ガッチは16点。その差、1点。3位には21点で柴田が入っている。
この日、ガッチと黒山のふたりは、どちらも調子がよさそうに見えた。減点があったりなかったり、逆転したりされたりはしているものの、勝負はまったく互角だ。強いていえば、第8セクションでタイムオーバーになったガッチには、挽回の余地が多く残されているようには見える。
「ぼくがよかったのではなくて、まわりが悪かっただけ」と謙遜するのは1ラップ目3位の柴田。野崎は第3で足を痛めてからやはりいまひとつ元気がない。毅士も後半9セクション10セクションを連続で5点となってしまった。ただそれでも、柴田が1ラップをトップから6点差でまとめてきたのは、大きな実績だった。
2ラップ目。ガッチと黒山の一進一退は続いた。第2セクションは二人とも5点だったが、この他のセクションは、二人にとってはすべてクリーンセクションになった。難攻不落の第2をのぞくと、ガッチの2ラップ目の減点は第8セクションでの1点だけ、黒山は第5セクションでの2点だけ。ほかのライダーは誰も減点を一桁ではまとめられなかったから、トップ争いと3位以下では大差がつき始めていた。
こんな中、野崎が調子を上げてきた。といっても痛めた足が回復するわけもなく、痛みを受け入れ、第2セクションをエスケープし、走破できるセクションのトライに集中した。1ラップ目に痛い思いをした第3セクションも、2ラップ目にはしっかりクリーンしている。野崎が柴田を抜いて3位に浮上したのは、2ラップ目の第5セクションでのことだった。右すねは裂傷を負って出血中、左のかかとはステップで強打して腫れている。足を引きずりながら下見をする姿からは、このスコアは考えられない。
試合がもつれたまま、勝負は3ラップ目に。いまだ誰一人攻略できていない第2セクション。誰かはいくのではないか、とは田中裕大、黒山二郎らのアシスタント予想だったが、その誰かが誰なのかが、勝敗を左右することになる。
はたしてその誰かが、ガッチだった。ガッチがクリーン、黒山が5点。均衡は破られた。これで試合の流れは、一気にガッチに傾いた。とはいえ、ガッチはここが勝敗の鍵を握るセクションだったとは言わない。すべてのセクションがキーになるセクションだったという。
しかし黒山は、第2セクションでのガッチのクリーンで、今日の勝敗は見えたと思ったと語っている。黒山とて、第2は無理だと思っていたわけではなかった。途中で傾斜の変わる壁は、いわば二段のように合わせるテクニックが必要で、それがうまく合ったのがガッチで、黒山は3回とも合わなかった、ということだ。
負けを認めてしまったからか、その後黒山は第5、第8と3点が続き、ガッチとの点差を広げてしまった。3セクションを通じてみると、黒山には第2での3回の5点がある他、第5セクションも3回とも2点以上の減点があった。第2セクション以外でも、ガッチは黒山に対して確実なリードを奪っていたのだ。
3ラップが終わって、ガッチのリードは9点にもなっていた。残りはSSのふたつ。10点は逆転の範囲だが、ガッチがどちらかひとつを3点で抜ければ、それでガッチの勝利が確定するという戦況だ。黒山としては、勝利を得るにはSSのふたつともをクリーンするのが最低条件になる。
SS第1は10セクションを手直ししたもので、最初の登りが険しくなっているのと、さくさくの斜面がより難度を増していて、さらに出口がより高くなった。
ここを最初に走破したのは藤原慎也。今回から諸般の事情でマシンをガスガスに変えた。今回は借り物マシン(朝倉匠号)で出場し、次回からは最新型になるということだが、そんな体制で踏ん張った藤原は9位でポイントをゲットしている。
藤原が3点で抜けた後は、また5点のオンパレードが続いた。SSに強い柴田も5点、毅士も5点だ。痛む足でマシンを押し上げた野崎が3点で抜けた後、黒山。黒山は、滑る斜面を抜群のライディングフォームでクリアし、驚異のクリーンに向けて出口にマシンを向けた。そして加速。ところがその途中で何が起きたのか、マシンは突然失速し、5点となった。これで、小川の勝利が決まり、黒山の2位も確定した。
SS第2は、コンクリートの長い一本橋から、第8セクションの岩盤に飛び移る。これもまた、ことごとくライダーをはじき返している。最初にここを走り抜けたのは柴田だった。柴田はここを華麗にクリーン。このクリーンが柴田の順位を押し上げることはなかった。
柴田のあと、毅士、野崎とクリーン。難セクションだが、トップライダーはこれをよく攻略していく。そして黒山。黒山は、SS第1での不思議な5点のあと、これも見事なライディングでマシンを進めていった。ところが最後の岩盤登り。濡れた路面にパワーを食われたのか、岩の頂点まで上りながら失速。なんと黒山は、ふたつのSSをともに5点で試合を終えることになった。
終わってみれば、優勝のガッチと黒山の点差は16点の大差となっていた。黒山と3位野崎の点差はたったの1点だった。
4位は野崎とともに1ラップ目の減点が多すぎた毅士。1ラップ目の3位から少しずつ順位を落とした柴田が5位となった。
アシスタントの山村史人が負傷してしまった田中善弘は6位、野本佳章が7位。8位以降は、開幕戦とは異なる顔ぶれとなった。8位斉藤晶夫、9位藤原慎也、10位砂田真彦は、いずれも開幕戦で無得点に悔しがった面々。16人いるIASは、これで13人がポイントランカーとなった。