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10年ごしの初優勝、小川毅士!
小川毅士が優勝した。いつ優勝するかと誰もが心待ちにしていた次世代のエースだが、ようやく勝ち名乗り。そしてまた、小川毅士の勝利は、2014年シーズン4人目の勝利者の誕生でもあった。
小川友幸は2位、野崎史高が3位、黒山健一が4位となり、黒山と野崎は選手権ポイント上、同点。小川は二人に16点差をつけ、最終戦菅生では無事に完走すればタイトルを獲得という有利な展開を作っている。
小川毅士は、この日は序盤から好調だった。いつものトップ3がそれぞれにミスをおかしていく中、光るライディングを見せてステディな試合運びを見せ、いつもとちょっとちがう印象が見受けられた毅士だった。
しかし第6セクションで後輪を滑らせながらのリカバリーで3点となると、第7、第8と連続して5点となり、ここでトップ3に順位を譲ることになるも、毅士の序盤の活躍で上位4人がほぼ横一線という、いつもとは少し様相が異なる展開となっていた。
2ラップ目、1ラップ目序盤の不調からやや立ち直った野崎に対し、小川友幸と黒山が調子を崩した。小川毅士がひとつ、野崎がふたつの5点で2ラップ目をまとめたのに対し、小川友幸と黒山はそれぞれ4つずつの5点がある。
12セクション2ラップが終わったとき、トップは小川毅士。2位は本人も意外そうな野崎。毅士と野崎の点差は4点。さらに野崎と2点差で小川友幸、小川友幸に1点差で黒山。毅士から黒山までが6点という僅差で、2セクションによる最後の勝負のSSに入った。
SSのスタート順はこの時点の成績順ではなく、スタート順。上位陣では、毅士が真っ先にトライすることになる。
SSの第1は上り下りと濡れた岩登り、として巨大水タンク登り。毅士は濡れた岩で1回足をついて、確実にマシンを進めた。小川友幸と野崎はここをクリーンして、逆転勝利に望みをつなげた。黒山はここで1点となり、この時点で勝利はなくなった。
最後のSSは、タイヤとコンクリートブロックの組み合わせ。人工セクションならではのトリッキーな設定だ。毅士はここを正確にトライ。柴田暁の2点、加賀国光の1点につづいて見事なクリーンだった。ライバルのトライを待つことなく、これで小川毅士の勝利が決定だ。
2000年から全日本に挑戦を開始した若き小川毅士。ルーキー時代から次世代のホープと期待され、その年にランキング2位で国際A級の昇格キップを手に入れ、3年間の国際A級の戦いの末、2003年にランキング2位を得てスーパークラスへの昇格キップを手にした(このときのチャンピオンは現在柴田のアシスタントを務める田中裕人だった)。
2004年からは、世界選手権への参戦などを経験しつつ、途中、マシンをホンダからベータへスイッチし、しかしここまでついぞ優勝経験のないまま、トップクラスへの挑戦は11年目となっていた。
今シーズン2014年は、2013年までIASで戦っていた宮崎航がアシスタントに就き、強力なチーム体制を作っての参戦だった。出身がブラック団以外のライダーの勝利は成田匠以来となる。
「これまで勝てるチャンスをさんざんつぶしてきて、ようやく勝てた。ここまで来るには、いろんな人のお世話になったけれど、これを機に勝てるライダーになって恩返しをしたい。まずは、今日はライバルの不調があったからの勝利でもあるので、次は文句なしの勝利ができるよう、がんばりたい」
小川友幸のアシスタント、田中裕大によれば、この日のトップが目指すはオールクリーンで、だいたい1ラップ5点平均くらいがあるべきスコアだったのではないかということだった。思い通りにはいかないのがトライアルだが、そう考えると、この日はミスをしながらのトップ争いだったといえる。しかしまず、小川毅士がチャンスを確実にものにし、見事な優勝を飾ったのは大きなニュースだ。
この日は、日本のトライアルの新たな出発点となるかもしれない。