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ベータ祭という出会いの場
正しくは、ベータオフロードパーティというイベントなのだが、すっかりベータ祭という愛称で親しまれているこのイベント、今年は12月18日に開催された。会場は小川毅士が管理人を務めるオフロードパークSHIRAIだ。
ベータという名前は冠しているが、ベータ乗りでなければ仲間には入れないということはない。ホンダもガスガスもヤマハもシェルコも、いろんなのが集まっている。ミニモトクロッサーに乗っている子どもとかもいる。ちょっと大げさに言えば、関東圏のオフロードファンはみんなここに集結している、という感じだ。
ベータのイベントらしさを感じるのは、スクールの講師陣にベータのライダーがずらりと顔をそろえていること。トライアルで言えば、小川毅士(IASランキング4位)、田中善弘(IASランキング6位)、成田亮(IASランキング11位)、永久保恭平(IAランキング4位)、磯谷玲(IAランキング5位。2017年はIASを走る)、山崎頌太(IAランキング12位)、磯谷郁(IBランキング6位)、西村亜弥(レディースチャンピオン)、宮崎航(小川毅士アシスタント。IAライダー)と豪華絢爛(野本佳章は別イベントがあって、土曜日の準備のあと、会場をあとにした)。エンデューロも、ベータに乗るライダーがずらりと勢ぞろいだ。
オフロードパークSHIRAIは、駐車場からパークのメインエリアまでが、そこそこのオフロードコースになっている。トライアルライダーなら、なんでもない移動コースだけれど、初心ライダーやトライアル経験のないオフロードライダーだと、もしかするとちょっと厳しいかもしれない移動になる。でもみんな、るんるんしながら山の上まで上がっていたから、きっとちょっと苦労しただけですんだんですね(移動だけでおなかいっぱい、といってた人もいた)。
オフロードパーティとはいえ、SHIRAIのコースにはモトクロスができるようなトラックはない。だからスピード系を楽しみたい人たちには、このイベントは向いていないと思われる。トライアルはもちろんだけど、エンデューロの人たちも、この日は悪路走破を楽しむのを目的としている。
こんな大岩を攻略しようとするエンデューロライダーたちは、やってることはもはやトライアルだと思うのだけど、会場でストレンジモーターサイクル(宮城県)の和泉拓さんとお話しして「なるほど!」と思ったのは、エンデューロとトライアルは、同じ会場で同じことをやっていても、まったく別の楽しみだという思いを持っている人が多いのではないかということだった。朝をかきながら登山道を歩いている人に、オートバイのライダーが(そこで登山者とオートバイが出あうのはどうよ、という常識的懸念は置いておいて)オートバイの方が楽しいですよ、といってもよけいなお世話なのと同様、エンデューロマシンで岩を乗り越えるについては、トライアルバイクで同じことをするのとはまったく別のものなのだということだった。
エンデューロをやっている人で、トライアルバイクを持っている人はけっこういる。そういうみんなに出会ったわけではないけれど、彼らのトライアルバイクはテクニックの練習用であって、トライアルを楽しむためのものではない。ご本人にとってメインのマシンではないから、どうしてもガレージにおいて置かれることが多くなる。そして乗らなくなってしまうのではないかということだった。
そんな中でも、今回はトライアルの体験コースや初級者クラスのスクールが人気で、トライアルを始めてみたい、という人の勢いは感じとることができた。トライアルはなかなか敷居が高い世界でもあるから、始めたい人の思いのすべてをかなえてあげられてこなかった、ということもあるんじゃないかと思う。こういうイベントがその解決策のすべてではないはずだけれど、一助にはなるにちがいない。
イベントの締めくくりは、まずはトライアルのデモンストレーションから始まった。ライダーはずらりと勢ぞろいしている。2017年にIBゼッケン1番となる磯谷郁(いそがやかおる)にはちょっと荷が重いセクションだったが、それでも果敢にトライして、特にベータファンのみんなに雄姿を見せた。郁に続いてトライした山崎頌太は国際A級1年目。後輩に対して、しっかり先輩の実力を見せなければいけないプレッシャーを跳ね返して、華麗な走りを見せていた。
ご注目はこの人。磯谷玲(いそがやあきら)。IAランキング5位ながら、2017年はIASに挑戦する。ルーキーのIAS挑戦はこのところなかなか険しい印象が強いが、このルーキーはどんな戦いぶりを見せてくれるだろうか。
若いスターたちのあと、成田亮、田中善弘、小川毅士のトップスターは、さらに大岩に挑戦、ギャラリーをびっくりさせてデモンストレーションを締めくくった。トライアルは、行く先々でこういうデモンストレーションができて、多くの人を楽しませることができる。ただしそれもそれができる人がいるからであって、これだけのライダーを集めるベータという集合の強さの現われでもある。
すべての最後に用意されていたのは、エンデューロライダーとトライアルライダーのよーいどんの競争だった。エンデューロライダーにも障害物の大岩は用意されていたが(へたくそトライアルライダーでは越えられない)、トライアルライダーに指示されたルートにはさらに大岩が続いていて、スーパークラスのライダーでないと走破はできないのではないかという難所続き。ご指名のライダーは成田、田中、小川の3人。彼らはひるむことなく、しかも立ち止まることなく、大岩を次々に走破していって、エンデューロライダーのスピードに挑んでいった。結果は負けちゃったけど、いやこれはコース設定次第でいくらでも結果は変わってくるから、今回の勝負はトライアルライダーにはちと厳しかった。それでも、意外なスピードは思い知ってもらえたはずだ。
いいマシンを作って売るのがメーカーのお仕事だけど、日本のオフロード界にはメーカーの存在が希薄になっている。となると、いいマシンを売りながら、どのようにお客さんを楽しませていくかも、これからのインポーターの大事な仕事になっていくのかもしれない。