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強い小川友幸、九州で復活。新会場玖珠は10点差で勝利
小川友幸(ガッチ)が、ようやく黒山健一の連勝を阻んだ。その勝利は、2016年北海道大会以来となる。チャンピオンガッチは、これでランキングポイントを3点戻し、5連覇7度目のタイトル獲得に向けて再出発だ。
黒山は昨年中部大会から4連勝を続けていた。フューエルインジェクションのニューマシン登場からは負け知らず。今回、そのニューマシンに初めて土がついた。それでも黒山は、いまだガッチに3点差でランキングトップを守っている。
3位は野崎史高。今回は優勝争いには加われなかったという野崎だった。
国際A級は氏川政哉が国際A級初優勝。ランキングでも、リードをちょっと広げてきた。特に1ラップ目のスコアは圧巻だった。
レディースは西村亜弥が今シーズン3連勝を飾ったが、10セクション2ラップで、西村でも48点という厳しい戦いだった。
国際B級は長崎の濵邉伶がやはり初勝利。昨年の九州大会から勢いを増している若手九州勢のひとりが、地元大会で見事な勝利を飾った。
3人が出場のオープントロフィーは、前回近畿大会では国際A級に参加していた喜岡修が勝利した。
10セクション2ラップの戦いを終えて、ガッチのリードは4点。途中、黒山のスコア情報が倒錯したこともあって、ガッチは黒山に1点負けているつもりで走っていたという。
その情報倒錯は、1ラップ目の10セクションでのできごとによるものだった。テープを切ることはなかったものの、黒山はテープを大きく広げてしまい、セクションを抜け出た。これが当初は1点となっていたが、オブザーバーが修正をしなければいけないほどにテープがたるんでしまっていたため、2ラップ目の途中で5点に修正されたということだった。
もし黒山が1点リードでSSに入っていれば、あるいは事態はちがう展開を見せたかもしれなかった。4点差が決まって、ガッチはすべてのライダーを見守ってから、最後にトライする権利を得た。
SS第1は、ガッチはクリーンをする予定だったという。しかし目前で黒山が5点になった。最後の最後、アウトまであと少しというところで引っかかって、時間切れタイムオーバーの5点だった。これでガッチの狙いが変わった。SS第1で勝利を決めたい。そのためには、黒山のスコアを1点だけ上回ればいい。つまりは減点3で抜ければ優勝だ。
岩場で1回足を出したガッチは、躊躇なく3点でマシンを進めた。そしてあぶなげなくアウト。3点。そして優勝が決まった。
残るはSS第2ただひとつ。どこまでもどこまでも上るヒルクライムは、乾けばグリップがいいというが、絶好の好天にもかかわらず、金曜日の雨が激しすぎ、乾くには至っていない。
ことごとくライダーをたたき落とした急坂を、最初に攻略したのは野崎だった。次にトライするのが黒山。すでに優勝はガッチのものになっているが、締めくくりのここをクリーンできれば次に向けての気持ちがちがってくる。
ところが黒山は、最後の急坂に向けて加速中に、後輪テープを巻き込んでしまった。5点。順位には影響がないが、黒山のSSは5点ふたつで終わった。
最後のトライはガッチ。ここでのガッチは、勝負には関係なく、おもいきりのいいトライができる。黒山のひっかかったテープの横を抜けていったラインを左に変えて、滑りやすくなった岩肌のわずかなグリップをつかんで越えていき、野崎が足で運んだ急斜面を減点1で走りきった。
ガッチとしてはクリーンしたかったところだろうが、野崎が3点で抜け出た以外は全員5点だから、ガッチの1点はひときわ光った。今回は逆転劇でこそなかったが、3戦続けて、ガッチのSSは神がかっている。
とはいえ、今回のガッチは、久々に美しい走りが光っていた。1ラップ目第4セクションの最初の登りでの失敗は、試合の流れを決定づけかねない大きな失敗だったが、しっかり修正して勝機を導いている。絶頂期のガッチのように、どのセクションも神がかっている、とは言い難かったが、ガッチらしい走りができれば、勝利は確実に近づいてくる。
黒山健一は、ふたつの5点が決定的な敗因となった。黒山の5点は全部で3つあるが、2ラップ目の第8は全員5点で、これはある意味ノーカウントだった。
一つ目が、1ラップ目の第10、二つ目が2ラップ目の第5。どちらも彼らにとってはクリーンセクションだったから、まるまる10点ほど損をしていることになる。そしてこの日の敗北した点差は、きっちり10点だった。
ひとつめの5点は、テープをたるませたことによるものだった。当初はこれが1点と採点された(クリーンセクションとはいえ、クリーンではなかった)。パンチも1点となっていたのだが、その後オブザーバーがテープを修正したから、それで1点はおかしいということで、5点への修正がされることになった。パンチは1点となっているから、一時は1ラップ目の途中結果が黒山11点、ガッチ12点と発表されたのだが、おってガッチ12点、黒山15点と修正された。
こうなると、黒山陣営としてはあの5点が1点だったらとつい考えてしまう。そんな渦中で、第5での5点があった。結果、10点差をつけられているから、もしも第10が1点であったとしても、10点差が6点差となるだけで結果は変わらない。しかしガッチの受けるプレッシャーはまったく変わっただろうし、SSへの取り組み方も変わってきただろう。
今回のSSは難度が高かった。黒山、ガッチとて5点となる可能性は少なくなかった(事実黒山は5点二つだった)。ガッチ25点に対して黒山29点は、たとえSSでガッチが2連続5点を取っても、黒山が2連続3点では勝利はガッチに流れることを意味していた。実際の勝負はSS第1で決まったが、事実上勝負はSSに入る前に決まっていたのだった。
黒山の連勝は4でストップした。これは同時に、フューエルインジェクションのニューマシンの連勝のストップでもあった。実戦経験のない状態で、ライバルのミスによるラッキーともいえる勝利だった昨年の2戦、オフシーズンのテストで完璧に仕上がった状態での開幕戦勝利、初めて気温が高いところでの実戦で出てきた症状と向き合いながらの第2戦での4勝目。そしていよいよマシンが仕上がったところでの初めての敗北。
マシンがいいだけでは勝てない、トライアルのむずかしいところだ。
前回は優勝争いの結果の3位表彰台だった野崎史高だったが、今回は単独3位の表彰台となった。同じ3位でも、今回の3位は結果がよくないということだ。
今回の野崎は、久々にゲートマーカーとの接触などと格闘していた印象だった。ゲートを飛ばしての5点が敗因のトレードマークだった一時期は昨今はすっかり影をひそめていたが、今回は不運が重なりもした。接触しやすいところにゲートが置かれていたと野崎は残念がる。それが救いにはならないとはいえ、そんな気もしないではない。
こんな5点がいくつかあって、それで2位黒山と8点差だから、調子自体は悪くなかったのではないか。トライアルは、ライディング技術もさることながら、流れをつかむ機運も重要になる。
4位小川毅士、5位柴田暁はいつもの通りの順位となった。いつもの通りとの評価がおもしろくないのはファンも我々も、そして当人も同様だ。毅士は指を負傷して熱もあったというが、それでいて序盤は序盤戦はトップにも立った。それだけに結果が惜しいところだ。
柴田は途中からペースを早めて試合の流れをつかもうとしたが、完調でなかった毅士にも大差をつけられてしまった。
これに対して、今年の全日本は6位争いがおもしろい。今回の6位は成田亮。ご存知、IASクラスにあって、ただひとり、アシスタントをつけずに戦う最年長ライダー。開幕戦は失意の12位だったが、第2戦9位、そして今回6位。確実にマシンを安全圏まで運び、しかも減点も減らしてくる走り方は、もっと注目されていい。
今回6位争いに敗れたのは斉藤晶夫。今年の斉藤は、大胆な走破制だけでなく、減点を少なく抑える走りも光っている。セクションを通じ、試合じての確実性が向上すれば、6位以上に入る可能性もあるが、今回は7位ということになった。
大金星の8位はルーキーの久岡孝二。9位野本佳章に1点差、7位斉藤に3点差。IASの難セクション攻略法を着々と進化させている。なにより、昇格以来3戦連続で10位以内に入ってSSを走っている実績が見事だ。
9位野本は、今回は残念な結果。2度にわたるエンスト5点が手痛かったようだ。SSに進出した最後のライダーは砂田真彦。今シーズンはこれまで10位以内に入れたことがなく、3戦目にしてようやく10位。ここからが巻き返しだ。
今シーズンからは15位までにポイントが与えられることになったIAS。今回SSに進出できなかった11位以降のライダーは、足の負傷欠場から復帰した吉良佑哉、岡村将敏、磯谷玲の3名だった。
■国際A級
注目のルーキー、氏川政哉が初優勝を果たした。今回は走破がむずかしいと目されていた難セクションばかり。1ラップ目、ライバルライダーから「抜けられているのは政哉だけ」という声も聞かれた。1ラップ目、氏川の減点は19点。1ラップ目2位は徳丸新伍の32点だから、ぶっちぎりだった。
しかしこの結果に油断が生じたか、2ラップ目、氏川は崩れ始める。10点以上も減点を増やした氏川は、それでも1ラップ目の貯金のおかげで、国際A級初勝利を得た。
前回まで氏川と同点ランキングトップだった平田雅裕は9位でランキングは4位に。2位となった弟の平田貴裕がランキング2位に進出した。3位に今シーズン初表彰台の小野貴史。4位に、元IAチャンピオン坂田匠太が入っている。
■レディース
今回は10セクション2ラップの戦いだったが、レディースもそのまま10セクション2ラップが戦いの舞台となった。かなり厳し目の戦いだ。
それでも、西村をはじめ、トップグループはエスケープせずに果敢にトライしていく。チャンピオン西村亜弥はクリーン2で勝利。難セクションでの勝利だったが、本人の評価としては、まだまだ戦い方があったという。どこまでも上を目指すチャンピオンである。
その孤高のチャンピオンを追うのはたいへんだが、2位争いはまたしても1点差で小谷芙佐子のものになった。小谷、小玉ともにクリーンは1。西村との差はまだ大きいが、競いあいながらレベルアップしているところがすごい。早くこれに追随する新たな勢力が登場してほしいところだ。
■国際B級
長崎の濵邉伶が初勝利。昨年から参戦を開始して、3戦出場、2戦でポイントを獲得してランキング27位。1ラップ目はあまり調子がよくなくて、2ラップ目に挽回ができたので5位くらいには入れるのではないかともくろんでいたところ、結果が出てみたら優勝していて驚いたという濵邉だった。
2位にはランキングトップの山中悟史が1点差で入った。もちろん山中はランキングトップを大差でキープしている。今回の3位小野田瑞希は、これでランキング6位に浮上、今回6位の倉持晃人がランキング2位をキープ、優勝の濵邉はランキング3位に浮上した。