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全日本第4戦中国大会レポート

小川友幸、余裕の1点差で対戦成績をタイに戻す

天気予報は、見事にはずれた。土曜日はいい天気だったが、午後から雲行きが怪しくなり、時折パラパラと雨が降った。そして夜から本格的に降って、翌日曜日は1日中雨、というのが予報で、それは避けようがないと思われていた。

鳥取市内に宿を取ったライダーは、夜半に激しい雨音を聞き、コンディションの悪化を覚悟していた。ところが会場の鹿野町は、そこまで本格的な雨は降っておらず、トップグループにとっては想定外の神経戦となった。

1706鳥取のIAS表彰台

12セクション2ラップとSSがふたつ。第1セクションは、IASにとっては比較的軽めの設定となっていた。ところがここで小川友幸(小川毅士も登場するので、以下愛称のガッチと表記します)は2点を失う。最後の最後までクリーンして、残り2メートルほど、直角に向きを変えればアウトというポイントでの足つきだった。ちょっと信じがたい。あわてなくてもいいところで慌ててしまっての足つきだったが、パンチをもらうガッチには笑顔があったのが印象的だった。

続いてトライした黒山健一は1点。クリーンするライダーも多かったから、彼らが1点、2点と減点するのは波乱の幕開けだったが、黒山の1点は、もう少し重要な伏線が張られていた。

IASのラインは、岩を越えてすぐターンして斜面を降りる設定だった。黒山は岩越えの勢いをとめきれず、あわやセクションを飛び出しそうになってしまった。テープを止めている杭に衝突して5点を宣告されたものの、オブザーバーの協議で修正の要はなかったということで1点減点でここを抜けることになったのだが、これが、もしかしたらこの日の黒山を象徴するトライだったのかもしれなかった。

1706鳥取の黒山健一

第2セクションでは、黒山はあえなく5点となってしまう。ここでは、ガッチも1点を失った。序盤たった2セクションを走っただけだが、オールクリーンは野崎史高ただ一人になってしまった。1点で追うのが小川毅士と柴田暁のふたり、ガッチは3点、黒山は6点。斎藤晶夫が5点で5位につけているから、黒山は6位ということだ。

「行きすぎたり足りなかったり、オートバイはちゃんと走っているのに、ぼくがそれをコントロールできなかった」

黒山はゴール後に、試合を振り返った。まさに、第1セクションでは行きすぎて、第2セクションでは足りなかった。実は黒山は、今回の戦いを前に、マシンの仕様を大変更した。それは、二次減速比の変更だという。エンジンの出力を、チェーンを介して後輪に伝える二次減速。黒山のエンジンはエンデューロ用のものがベースだ。ミッションも、基本はトライアル専用ではない。これをトライアルにマッチした仕様にするため、思い切って低速の仕様にしたところ、これがなかなかいい感触だったという。

このマシンがデビューして、8ヶ月になる。その間、黒山とヤマハ陣営は、トライアルマシンとしてベストの仕様を固めるべく、日々取り組んできた。去年の2戦と今年の4戦、いうなれば、毎回仕様のちがう状態で全日本を戦っていたという黒山。FIという新しい吸入方式に慣れなければいけない一方、マシンは日々新しくなっている。黒山にはうれしい悲鳴といったところだ。

その影響が、今回も出た。黒山はその後、1ラップ目にひとつ、2ラップ目に入ってもひとつ、全部で3つの5点を喫している。あっけない5点は、黒山の言う通り、新しいマシンの仕様を、黒山が御しきれなかった、ということだったのだろう。

波乱を思わせる幕開けとなったガッチといえば、去年や一昨年の絶好調とはいえないまでも、確実にマシンをセクション出口まで送り出していた。思わぬ小減点での戦いとなって、5点減点は致命的だ。ガッチの5点は、第7セクションでテープを切ってしまったものだけだった。時間がなく、ワンアクションを省いてフロントを回したところ、テープに接触してしまってテープカットとなったものだった。5点一つで、ガッチの1ラップ目の減点は10点だった。

1706鳥取の野崎史高

序盤、好調だった野崎は、同じく第7セクションで5点となったものの、1ラップ目はガッチと同じようなペースで試合を進めていた。1ラップ目の減点は、ガッチと同点の10点。クリーン数はガッチの7に対して野崎は8だったから、順位的には1ラップ目は野崎がトップ。5点二つの黒山が14点で二人を追っている。

毅士と柴田は1ラップ目を終えて同点の22点。この小減点の戦いで8点差は、ちょっと大きく、トップ争いとは離されてしまった。6位は斎藤晶夫で33点。野本佳章が38点と続くが、今年は斎藤が成績を伸ばしていておもしろくなっている。毅士、柴田がこの争いに飲み込まれるか、あるいはトップ3に食い込めるかが注目だが、今回のところは6位争いがおもしろい展開となっている。

2ラップ目。雨が降らないばかりか、晴れ間が見えてきて、どんどん天気がよくなっていく。この先は、減点はいよいよ最小限にしなければいけない。

その矢先、野崎が第2で5点となった。ここへきての5点は痛い。さらに第3ではガッチが3点。これでトップがガッチの13点、2位に黒山の14点、3位野崎が15点と、なかなかの大接戦となった。

この戦いが決着したのは、第8での黒山の5点、そして第10での野崎の5点だった。2ラップ目、ガッチはトータル16点でゴールに入った。黒山が21点、野崎が24点。残るSSで逆転の可能性は残っているが、ガッチにすれば先にトライするライバルの減点を見て、それに負けないように走れば勝利が決まる。逆に黒山と野崎にすれば、SSはクリーンをしていかなければ勝ちはない。

SS第1は大岩から大岩にジャンプしながら、沢をのぼっていくセクション。トップトライの吉良佑哉は5点となったが、久岡孝二、成田亮、野本、斎藤と3点が出たが、柴田が5点。そして毅士以降に3点以内の期待が高まっていく。

すでに勝利も表彰台のチャンスがない毅士は3点、そして次がどうしてもクリーンをしたい野崎。ぎりぎりまでがまんをしたが足が出た。判定は、2点。勝利はなくなったが、まだ2位のチャンスが残るスコアだった。

そして黒山。勝利のためには是が非でもクリーンが必要だ。しかしクリーンを目指して5点になると、野崎に2位の座を奪われるリスクもある。それでも野崎同様、ぎりぎりまでがまんをした黒山は、野崎と同じく減点2でセクションアウトした。

最後にトライするガッチは、ライバルにクリーンが出なかったことで、いくぶん楽ができることになった。仮に5点となっても、最低限のアドバンテージが残る計算だ。そのガッチのトライは、黒山よりも野崎よりも落ち着きのあるもので、二人が2点ついたところも、1点のみで切り抜けた。これで、黒山との点差は6点に広がった。

1706鳥取の小川友幸

残り1セクションでの6点差は、すなわち勝利が確定的となったことを意味する。最終SSでたとえ5点になっても、無事にゴールをしさえすれば、ガッチのシーズン2勝目が決まる。

SS第2は、SS第1よりはクリーンの可能性の大きい設定だった。吉良、久岡が1点、柴田が途中の岩飛びジャンプをダニエルで決めると、ちょっと地味ながらも毅士もクリーン。野崎もクリーンを決めて、黒山のトライを見守る。おそらく黒山はクリーンするだろうが、もしも黒山が5点になったら、野崎が逆転2位となる。しかしそこは黒山のこと、最後をクリーンで決めて、2位を守って試合を終えた。

さてすでに勝負が決着しているガッチには、すでに勝負のプレッシャーはない。柴田がダニエルで渡った岩を、ダニエルでなく大きくジャンプして、その先のターンを一気にエアターンして帰ってこようというもくろみだった。もちろん、ガッチのそのたくらみはガッチのみぞ知るところだったが、しかし見守る多くのギャラリーにも、それが伝わることはなかった。

ガッチがやろうとしたエアターンは、柴田らが飛びついたポイントより、さらに岩の下側に着地して、空高くジャンプする必要がある。そんな技は、誰も披露しようと思わず、ガッチが初めてトライするラインどりだ。

しかし残念。岩のいくぶん下側にぶつけられたリヤタイヤは、そこから岩を上ってはくれなかった。最後の最後にガッチが5点。6点差でガッチの勝利が決まったのを知らずにいたファンは、そうとうあせったにちがいないが、ゴールしたガッチは、勝利の喜びより、見せたかった技を完結できなかった残念の方が大きかったように見えた。

ともあれ、これでガッチと黒山は2勝2敗のタイに並んだ(直近の試合で好成績を挙げたほうが上位に来る規則で、順位をつけようとするとガッチがランキング1位、黒山が2位となる)。残りは北海道(7月16日)、中部(10月8日)、東北(10月29日)の3戦。ランキング3位の野崎にはすでに16点の大差をつけて、二人の決戦が始まろうとしている。

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