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黒山、北海道で快勝
全日本第4戦北海道大会は、8月2日、毎年恒例の上川郡和寒町わっさむサーキットで開催。第2戦九州大会に続いて、黒山健一が横綱っぷりを見せて2連勝を飾った。2位小川友幸、3位野崎史高、4位小川毅士と、ここまではゼッケンとおり。
お天気は雨模様。雨量はそんなに多くはなかったが、土は滑りやすくなって、ライダーを苦しめることになった。特に最終セクションは、IA、IASはだれひとりとして抜け出られない難セクションとなってしまった。
◆国際A級スーパークラス
黒山は、試合序盤から好調だった。黒山と北海道大会の相性は、必ずしもよくはない。肩を脱臼した痛い思い出もあるし、マシンの不調と戦ったときもある。タイトルを逃したシーズンも、北海道での敗退が大きなターニングポイントとなっていた。
さらにその中でも、ラップ後半のセクションが鬼門だった。北海道大会のセクション設定は、この何年も(というか、ここで開催されるようになってから、ずっと)基本的にまったく同じ配置でおこなわれている(一度だけとなりのお祭り会場まで足を伸ばしたことがあったが、それっきり。そのときも、大雨だった)。岩の配置もほぼそのままだから、いい思い出も悲しい思い出もこの会場にやってくると鮮明に思い出されてしまう。
黒山の悲しい思い出は、ラップ後半にあった。今回のセクションでいえば、6セクションから8セクション。特に6と8は、会場の下側にある川を横切るセクション設定となっている。この川からの岩登りで失敗するのが、黒山の負の思い出だ。しかもここで失敗すると、川に墜落してびしょびしょになる。試合展開もよろしくないが、濡れ鼠になって気持ちも沈む。この悲しい連鎖を断ち切るために、今回の北海道は、とにかくこの川のセクション群を克服したい。黒山の北海道大会の目的の一つが、ここにあった。
「今回は、まず川のセクションをやっつけてやろうと、それが大きな目標でした」
と語る黒山。しかし試合は、黒山の鬼門にさしかかる頃には、大勢が決まりかけていた。第1セクション、いつもなら長いにらみ合いの末にトライすることになるのだが、今回は15分ほどの下見の末にトライ。黒山と尾西和博がクリーンするも、小川友幸が5点。出口の岩場を、得意の合わせ技で一気に抜けようとした小川だったが、ひっかかって立ち往生、そのまま崩れるようにマシンを倒してしまった。いきなり、黒山と小川の間に5点のギャップが生まれた。
ここで小川が流れを呼び込むことができれば、5点差はセクション一つでひっくり返せるものなのだが、第1セクションで5点となった悪い流れから、小川がなかなか抜け出せない。
そして5点差のままやってきたのが第7セクションだった。第7セクションは、毎年難セクションとして印象深いが、今回は雨に濡れてツルッツル。その難度はとても厳しくなっていた。
ぐしょぐしょの泥沼からスタートして一段、さらにそこからもう一段。その二段目が、ほぼすべてのライダーを跳ね返す凶悪ポイントとなった。
そんな中、ここをたったの1点で通過したのが、黒山だった。しかも黒山の1点は、この難関ポイントを足付きなしで通過したあと、1分の持ち時間の残りわずかのところで足をついてマシンを進めたものだ。これで黒山と小川の点差は9点に広がった。しかも黒山と小川の間には、このあたりでそろそろ勝っておきたい、勝たなければいけない野崎史高が割って入っていた。
このあと、結局全員が5点となった最終セクションを終えて、黒山が7点、野崎が15点、小川は19点。黒山のリードは、圧倒的だった。
3人のトップ争い以外では、渋谷勲が好調だった。第1セクションをクリーンした尾西をはじめ、勝ちたい気持ちが溢れ出ている小川毅士を尻目に、1ラップ目は確実に4位をキープしていた。減点は21。小川友幸に2点差だから、表彰台争いはもちろん、黒山次第では、優勝戦線にも加われる可能性を残すスコアだ。
小川毅士は、1ラップ目5つの5点を喫して6位の滑り出し。調子が悪いのかと思いきや、むしろ勝ちたい気持ちの空回りだったようだ。絶好調ではなかったが、けっして悪い状態ではなかったという。
雨は、傘がなくても不自由がない時間帯もあるものの、傘をささずにはいられないときもあった。雨水を含んで、セクションはいよいよ難攻不落となってきた。10セクションはまったく不可能。スーパークラスだけでなく、A級も5点ばかり。B級もたったひとり、大西貢が1回だけ3点で抜けただけというありさまとなった。
セクションのコンディション悪化は、黒山の減点も増やすことになった。とはいえ、小川(友)も同じように減点を増やしてきたから、点差は縮まらない。黒山としては、1ラップ目の好調ぶりは失いつつ、2位以下とのマージンは保っているから、ほどよく緊張感をもってセクションを重ねていく。
2ラップ目に入って、調子を落としてしまったのが野崎と渋谷だった。ここで小川(友)が2位に進出。野崎は3ラップ目にはさらに減点を増やして、3位の座を確定的にしてしまった。黒山、小川(友)、野崎のトップ3はそろって目指すは勝利だから、3位はうれしくない結果だ。
渋谷は第4セクションで転倒して背中を強打。その影響がその後のセクションに出てしまって、トップ3に食い込むのどころか、小川(毅)や田中善弘にも追い立てられることになった。結局、小川(毅)がタイムオーバー2点を加えて95点。田中が100点、渋谷が100点と僅差の4位争いの結果、渋谷は6位に甘んじることになってしまった。軽量のベータEVOを得た今年の田中は、1戦ごとにポジションをあげてきている。新型ベータのポテンシャルに、田中の高い走破力が加われば、さらにポジションをあげられそうな勢い。
第1セクションをクリーンして幸先が良かった尾西和博が7位、以下、柴田暁、西元良太、斎藤晶夫と続いた。
今回は10名参加で10名全員がポイント獲得となる。
「1ラップ目は、できすぎたくらいのできだった。うまく決まったし、運よく足を出さずにすんだというところもあった。1ラップ目のリードが、その後の展開を有利にしたというのもあったと思う。ぼく自身の仕上がりとしては、2ラップ目3ラップ目の減点が本来のものだと思ってます。だから油断なく、後半戦を戦っていきたいと思います」
◆国際A級
雨の影響で、A級もセクションは過酷になった。こういった状況では、ベテランの経験がものをいう。
過去、地元SUGOで一度優勝経験のある小野貴史は、雨模様の天気を見て遅まわりでセクショントライする作戦とした。ライバルがトライするのを見て、ラインをじっくり観察して勝負しようというもくろみだ。
それでも1ラップ2ラップとトップをとったのは野本佳章だった。野本は第1セクションで5点となりながらも、その後はよく減点をまとめて2位宮崎に5点のリードを保って3ラップ目に突入。
3ラップ目、コンディションの悪化に伴ってわずかに減点を増やした野本に対して、最少減点で3ラップ目をまとめた小野が勝利。3位は1ラップ2ラップと2位につけていた宮崎が入った。
ランキングトップの藤巻は4位。
◆国際B級
国際B級も難セクションぞろいだった。優勝した山本直樹からして第1セクションで5点。山本は、1ラップ目は6位だった。
1ラップ目のトップは大西貢。四国愛媛から遠征のベテランだ。2ラップ目のトップは椎根広守。福島県からの、これもベテラン選手。雨模様でベテランの強さが光ったかっこうだ。
今回は遠方からの遠征組が多かった。沖縄からの富名腰慶亮、熊本から朝倉匠、愛媛からの吉良祐哉など、若手の遠征が目立っている。すばらしい。
優勝は、3ラップ目に追い上げた山本。ベテラン勢の活躍も2ラップまでだった。
ランキング2位の松岡一樹は8位とちょっと低迷。ランキング2位は変わらないが、3連勝の山本とは25ポイント差と大量リードを奪われている。