© トライアル自然山通信 All rights reserved.

ヤマハの電動ファクトリーマシンデビュー
3月23日、東京モーターサイクルショーの会場で、ヤマハTY-Eが発表になり、黒山健一がトライアルGPフランス大会とベルギー大会に出場、世界チャンピオンを目指すことも明らかになった。
このマシン、ヤマハの自己啓発的プロジェクト、エボルビングR&D活動からスタートし、その後ヤマハファクトリーレーシングチームの活動として進められているもの。モーターの出力、最大回転数、バッテリー容量など、マシンの詳細スペックについては回答をもらえなかったが、見てもらった印象がすべてです、ということだった。
フレームはカーボンファイバー製で、車重は世界選手権のレギュレーションに合わせた70kg。メカニカルクラッチと単速ミッションを持つという。メカニカルクラッチというのはワイヤー式ということではなく、電気的にパワーをオンオフするのではなく、エンジンパワーユニットと同じようなクラッチ機構を装備するということ。左手レバーは、油圧式マスターシリンダーが装備されている。単速ミッションとは、その部分での減速はしていない、ということだ。当然、シフトペダルはついていない。
トライアルEクラスは、2017年に1戦のみ組まれて、マルク・コロメがガスガスTXEで勝利しているが、2018年は2戦のシリーズとして、いよいよ世界選手権シリーズとしての歴史のスタートとなる。そこに、ヤマハが世界タイトルを目指して切り込んできた。
この歴史的スタートに際し、ライダーとして選ばれたのがヤマハファクトリーレーシングチーム所属、黒山健一だった。ファクトリーマシンたるTY-Eを実戦デビューさせられるのは、ファクトリーライダー以外にない。
今回の発表は、ヤマハ発動機販売株式会社社長、石井謙司氏より行われた。東京モーターサイクルショーにはヤマハ発動機のブースがなく、3月に就任したばかりの石井社長の挨拶の最後に、センセーショナルなTY-Eのデビューが発表されることになったが、販売会社がファクトリートライアルマシンについての発表をするというあたり、逆にヤマハのこのマシンに対する全社的な期待を感じることができる。
トライアルGP、トライアルEクラスは、7月15日フランス大会、7月22日ベルギー大会の2戦が組まれている。
7月15日は全日本選手権の北海道大会が開催される日で、TY-Eをフランスでデビューさせるとなると、当然黒山健一はこちらは欠席となる。6年連続で小川友幸に奪われ続けている全日本タイトル奪還は黒山とヤマハ陣営にとって大きな目標だったはずだが、TY-EのデビューとトライアルEクラスでの世界タイトルに向けてのプロジェクトは、全日本選手権のタイトル獲得以上に大きな命題ということだ。
黒山健一のコメント
「TY-Eでの世界選手権参戦は、未知の分野への挑戦で、わくわくしています。世界チャンピオンについては、正直なところ未知の部分が大きいのですが、可能性は充分にあると思っています。自身の世界選手権挑戦ではチャンピオンになれていませんし、やり残した思いもあるので、これは自分のトライアルキャリアの中でも、大きな意味を持つものと思っています。全日本選手権北海道大会参戦を断念してフランスへ行くことについては、悩みに悩み、悩み続けた結果の決断です。全日本チャンピオン奪還に向けて、幸先のいいスタートを切ったところですし、感触もよいのですが、チャンピオン返り咲き、V12獲得は自分にとって想像ができるシーンです。しかしTY-Eでの世界選手権参戦は、新しいものへのチャレンジです。世の中が電動に向けて進み出している今、その変化の最先端にいられるという思いも含めて、大きなトライができる喜びは、全日本出場に勝るものとなっています」
主要諸元 | |
---|---|
全長x全幅x全高 | 2,003mmx830mmx1130mm |
ホイールベース | 1,310mm |
最低地上高 | 350mm |
車両重量 | 70kg以下 |
原動機種類 | 交流同期電動機 |
駆動用バッテリー | リチウムイオン |
クラッチ形式 | 油圧・湿式多板 |
フレーム形式 | CFRPモノコック |
このマシンは魅力的に輝いているが、その輝きを支えているのがSixONyというナノ膜コーティング技術。前後フェンダー、左右モーターカバー、フロントフォーク上下ブラケットにこの処理が施されている。SixONyについてはhttps://www.yamaha-motor.co.jp/sixonyをご覧ください。