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2018全日本近畿、加賀、西村、和田、ベテラン強し
4月15日、全日本第2戦近畿大会。
IAは加賀国光がさすがの勝利。ベテラン勢が上位を占めたが、武田呼人が1ラップ目にトップで5位に入っている。開幕戦勝利の山崎頌太は7位でランキングトップをキープ。
レディースは西村亜弥が勝利。全18セクションのうち減点は3ヶ所のみのあっばれだった。
IBの勝利はまだまだ元気、和田弘行。2位も近畿のベテラン組塚本厚志、開幕戦勝利の中村道貴が3位となり、ランキングポイントでは2位山森篤志に9点差をつけた。
ここ数年、全日本のスケジュールは、IAに先駆けてIASをスタートさせ、ゴール後、SSまでのインターバルの時間を捻出するようになっていたが、今回はIASが最後のスタートに戻った。
IASを先に出すのは、SS進出の10位までのライダーをきっちり集計する必要があったからだが、これまでは、暫定結果が発表されてから、ライダー・エントラントが抗議できる時間は20分となっていたが、今年からそれが10分に短縮されている。そこには、通常ラップが終了してからSS開始までの時間を圧縮して、最上級クラスであるIASのスタートを(トライアルでは一般的な)全クラスの最後に持ってこようという含みがあったという。
IAが最後にスタートした場合、IASが通常ラップを終えてSSが始まるまで、ギャラリーはIAの最後の健闘を見守ることができるというメリットはあったが、IASがスタートしてからスタートするIAのスタートは、ギャラリーがIASを追って出かけて閑散としてしまっていた。メリットデメリットはあるが、IASが最後にスタートするのがやっぱり一般的だったということだろう。
雨はIAが1ラップ目を終える頃まで、そんなにひどくはなかったけれど降ったり止んだりだった(その間に、早いスタートのIBは試合をほぼ終えている)。嵐がひどかったのは夜半で、現地にいた面々は車が揺れに揺れて眠れず、あげくにテントが飛んだりくしゃくしゃになったりと、たいへんだった。
当初、レディースはIASのみの第4セクションと、第6〜第8をのぞく7セクション3ラップで予定されていたが、移動コースが困難すぎるということで、第1を終えたレディースはセクションのすぐ横を抜けて第3に向かうという、ちょっと無理くりなコースになってしまった。
レディース以外の移動コースは厳しいまま、IBの先頭グループこそ四苦八苦して抜けたものの、中盤グループ以降はまったく抜けられなくなってしまい、そしてコース変更。多くのライダーがいっぺんに走ることで(IBのみ、1分に2台スタートだから、台数が集中するとあっというまに混んでしまう)想定以上にコンディションが悪化したり、コースのそこここにライダーとバイクがいることで、行けるものも行けなくなるというのはままある。これまでも試合途中でコースが変更されたケースは皆無ではなかったのだが、厳しいコースに時間と体力を消耗したライダーもいたから、公平性という点ではどうだったのかという疑問はある。すいているうちに苦しく楽しく抜けていった者、苦しみ抜いてようやく抜けた者、もがき苦しんだあげく別ルートで次セクションに向かった者、そして最初からすんなり別ルートを走った者、思いと体験はそれぞれいろいろになった。
コースが長くとられたことで、慢性的な渋滞はそれほどひどくなかったようだった(トライアルは全参加者、全セクションを見渡すのはむずかしいから、どうしても情報が片寄ってしまう)。IAのトップグループでは、大会終盤には1セクションごとに10分ほど休みながら走れたという声もあった(コースが厳しくて手足がつってしまうので、休まないと走れないという理由もあり)。昔はこんな大会ばっかりだったと喜ぶ顔もあり(Mなのかも)、危険だと憂う声もあり。それでも、疲れ切ったライダーが大地と戦う姿はとても美しかった。
最近のトライアル大会はコースが短めに設定されることが多いが、大先輩たちは、コースで体力を消耗しながらセクションに集中するむずかしさがトライアルの醍醐味と異口同音に語る。時代は移りゆくから、トライアルがどんなふうに変化していくのかはわからないが、簡単だろうがむずかしかろうが、安全性だけは担保したい。いまやレディースクラスがあることで、全日本選手権にはIASからNBまで、つまりあらゆる層の選手が事実上参加できる(レディースは地方選手権に出場していることが条件だが)。これだけ幅があると、安全なコースとセクションを作るのは至難だろうと、ご苦労がしのばれるところだ。
■国際A級
2012年に国際A級チャンピオンとなり、7年間スーパークラスを走っていた加賀国光が、国際A級に戻ってきた。去年は1戦のみ参加で11位となっての降格だが、国際A級では充分勝利が狙える実力を持っている。ただし今シーズン初登場の加賀は、最終スタート(開幕戦勝利)の山崎頌太より13分スタートが早い。トップ争いをするにはむずかしいスタート順ではある。
1ラップ目、2位に2点差、ただ一人一桁減点の8点で回ってきたのは、若手の武田呼人だった。武田は開幕戦でも、1ラップ目に2位に2点差のトップだった。今度こそ、勝利をつかみとれそうな気配だった。
しかし残念。2ラップ目、多くのライダーが体力の消耗に苦しんだが、武田ももちろん例外ではなかった。ラスト4セクション、1ラップ目は4連続クリーンしたこの終盤に、武田は5点、1点、3点と、減点を積み重ねた。最終セクションはクリーンしたものの、武田の勝利はお預けとなってしまった。
優勝は加賀。武田と加賀の点差はわずか2点だったが、その間に3人の強豪がひしめき、武田は5位となっていた。2位は加賀と同点クリーン数差の永久保恭平、1点差で小野貴史。その小野と同点クリーン数差で武井誠也。そして武田が武井に1点差の5位で続いた。
開幕戦勝利の山崎は7位で、ランキングトップを守っている。2戦目にして、毎戦表彰台をキープするライダーはいなくなった。6位以上を守っているのが、小野と武田の二人だけだ。まだまだシーズンは始まったばかりだが、今年の国際A級は目が離せないランキング争いが展開されそうだ。
■レディース
靱帯のけがで開幕戦を欠場した小谷芙佐子は、マシンとともに会場には現れたものの、まだ大会を走るにはいたらず欠場が続く。今回は、昨年中部大会で全日本にデビューした宮本美奈を加えて5名がスタートした。
このクラスのみ、難コースはキャンセルになったが、それでもコンディションは厳しかった。今回は、全11セクションのうち6セクションを使っての3ラップ。クリーンセクションの第1から始まり、中盤の3セクションが勝負セクションとなった。
勝ち続けること、完璧なトライアルが目標の西村亜弥は、この難コンディションでもオールクリーンを目指すが、しかし第5セクションで5点。ここは宮本が3点、小玉絵里加が2点で抜けている。この時点でトップは小玉のものとなったが、それ以上に5点をとったことでの西村のショックは大きかった。
それでも1ラップ目の西村の減点はここのみ。小玉に2点差に迫られてはいるが、トップは安泰そうだ。ただ西村の場合、トップをとるだけでは高い自己評価は得られない。
2ラップ目、西村はその第5セクションを1点で抜けた。2ラップ目も減点はここだけ。西村6点、小玉17点とトップ争いは先が見えてきた。
一方、3位争いは激しかった。1ラップ目の3位は宮本、開幕戦で3位となった山中玲美は宮本に6点差で4位につけた。2ラップ目、宮本16点に対し山中は14点。ちょっと差が縮まったが、まだ差がある。4点差で最終ラップに突入した。
3ラップ目。西村は、鬼門の第5セクションをクリーン。これで、ラップオールクリーン達成が現実的になってきた。ところが最後の最後、最終第11セクションで1点を失い、結局このラップも減点は1点。トータル7点は2位小玉にトリプルスコア以上の差をつけるぶっちぎりだが、西村の自己評価は最低に近かった。
小玉は、3ラップ目に6点の自己ベストスコアをマークして2位。3位争いは、山中が最後に7点のベストスコアをマークして宮本を逆転。開幕戦に続く3位表彰台を得た。
■国際B級
今回、唯一試合途中でコースが変更になったのはIBで優勝したのは、南海の荒法師、1982年の国際B級チャンピオン、和田弘行だった。近畿大会にだけ出てきて、若手や常連ライダーを蹴散らして表彰台に立つやっかいな大ベテランだが、2012年近畿大会以来、このところ勝利がない。
今回和田のスタートは8時1分。第1セクションで撮影した和田のトライ写真は8時2分に撮られていた。「コースが厳しくて渋滞するのはわかっていたから、とにかく早回りをしようと、第1も第2もまったく下見をしなかった」と語っている。第1は明るいところからくらい沢に入るので、トンネルに入るような状態になる。「目が見えない、岩がどこにあるかわからん」と叫びながらクリーン。なんと1ラップ目は第5セクションで1点をついただけの、たった1点で10セクションを走りきってしまった。
1ラップ目2位につけたのは、和田よりはずいぶん若いも、和田と同じく地元近くの大会にだけ出てきてトップ争いをする塚本厚志だが、塚本の減点は13点だから、いかに和田が突出していたかがわかる。2ラップ目の和田は、手など攣りながらラップ13点と、1ラップ目よりはふつうになったが、それでも他にこれを上回る選手は現れず、6年ぶりのぶっちぎり勝利となった。
2位は塚本。和田に敗れたことが悔しそうで、今シーズンは中国大会か中部大会にまた出場して、リベンジを果たすということだ。
いつもの全日本ライダーは、和田と塚本に上位の2席を譲ったが、3位となったのは開幕戦の勝利者の中村道貴。塚本に1点差は悔しいが、ランキング2位の山森篤志は今回5位で、そのポイント差は9点に広がっている。ランキング争いに一喜一憂するのはまだまだ早いが、ランキング2位から7位までが6点差におさまっていることを考えると、中村が序盤戦のうちに頭一つ出て優勢を保っている。
■オープントロフィーIA・オーバー50
全日本選手権ではなく、併催の承認大会として組み込まれているオープントロフィー。国際A級経験者(現役も可)で50歳以上のライダーが国際B級セクションを走って昔とったきねづかを競うクラスだが、今回は2名が参加。
優勝の喜岡修は減点21点、ベストラップが8点。国際B級のリザルトに照らしてみると、ベストラップでは3番手、順位では2番手相当になる。さすが国際A級。
このクラスは国際B級のあと、インターバルを置いてスタートしていったが、こういう大ベテランの走りを国際B級選手がお手本にできるスタート順だとおもしろいなぁと、ふと思ってみました(選手権はそういう舞台ではないので、これは妄想です)。